正の電圧源から負の電圧を生成する - 市場の要求とソリューション
要約
正の電圧と負の電圧の両方を必要とする機器は少なくありません。例えば、IoT(Internet of Things)対応のデバイスや、産業用センサー、メータ機器、精密機器、医療用機器では、一般的に両方の電圧を使用します。通常、それらの電圧は対称的なものであり、単一の電源から生成することが求められます。本稿は、営業担当者にも理解できるような説明を心がけて執筆します。つまり、製品の販促に役立つような知見が得られる記事にすることを目指します。そのような観点から、市場のトレンド、技術的な要件、ソリューションの比較/分析も行います。
用語の定義
まず、本稿で使用する用語について定義しておきましょう。本稿では、コンバータ、レギュレータ、コントローラという用語を以下のような意味で使用します。
コンバータ:パワー・マネージメント(給電)に使用する電圧変換IC(パワー・スイッチを内蔵しているものと内蔵していないものの両方を含む)
レギュレータ:コントローラとパワー・スイッチを内蔵したコンバータ
コントローラ:外付けのパワー・スイッチなどを制御するために使用するコンバータ
本稿で対象とする市場
多くの電子回路は、電源として1つ以上の負の電圧を必要とします。多くの場合、それと対称的な正の電圧も使用されます。典型的なアプリケーションの例としては、以下のようなものがあります。
- 電気自動車(EV)で使用されるチャージャやトラクション・インバータ用のゲート・ドライバ。窒化ガリウム(GaN)ベースのFET やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁型ゲート・バイポーラ・トランジスタ)などを駆動するために使用されます。
- 産業用アプリケーションや医療用アプリケーションで使用される高性能のA/D コンバータ(ADC)、D/A コンバータ(DAC)、レールto レールのオペアンプ
- 民生製品用の液晶ディスプレイ
- (アバランシェ)フォト・ダイオードの駆動
- X線装置をはじめとする医療用機器
以下では、上記のような用途で使われる一般的な電源回路を示しながら、その特徴を詳しく説明していきます。
ゲート・ドライバ
一般に、出力の大きいスイッチング電源(SMPS:Switch-mode Power Supply)やモータ・ドライブには負の電源電圧が必要になります。その理由としては、以下のような事柄が挙げられます。
- システムの基板レイアウトは、密に配置/カップリングされたものになっているとは限りません。通常、その回路のグラウンドにはシステムの様々な個所からのノイズがカップリングされます。そのため、グラウンド・レベルの付近で電位が変動する可能性があります。
- IGBTやシリコン・カーバイト(SiC)、GaN FETといった主要なパワー・デバイスは、そのすべてがモジュール内に収容されている場合を除き、ゲート制御回路から最大で数cm 離れた位置に配置されます。そのため、ゲート・ドライバからの信号がパワー・デバイスに届くまでに歪む可能性があります。結果として、安全を確保するために大きめのマージンを確保しなければならなくなります。
- GaN FETなどの高度なパワー・デバイスは、低い閾値でターンオンする傾向があります。つまり、ゲート電圧のリンギングに対して敏感です。高電圧に対応する一部のGaN FET は、CGD や製造プロセスに依存するばらつきが大きく、ミラー効果によってターンオンする可能性が高くなります。その場合、パワー・デバイスを確実にオフの状態に維持したい場合には、負のゲート電圧を印加することが推奨されます。また、一部のIGBT では、完全にオフの状態にするためには負の電圧が必要になります。
ここでは、負の電圧を必要とするアプリケーションの一例として、絶縁型のドライバ「ADuM4120」を使用するケースを紹介します。図1の回路において、パワー・デバイスは正の電圧V1と負の電圧V2によって駆動されます。
レールtoレールのオペアンプ
多くのシグナル・コンディショニング用回路では、レールtoレールのオペアンプが使用されます。例えば、電源電圧に近いレベルまでの広範な出力電圧が求められる場合や、入力がリファレンスの上下にスイングする場合、最大限の精度が求められる場合などがそれに該当します。図2に示したのは、フォノ・プリアンプ・システムの一般的な構成例です。この回路には、15Vの正の電源電圧と-15Vの負の電源電圧が1つずつ必要になります。
要件
一般に、主電源から正の電源電圧を生成するためのICについては十分に理解されています。例えば、LDO(低ドロップアウト)レギュレータや、スイッチング方式の降圧/昇圧/昇降圧コンバータなどは広く普及しているからです。しかし、負の電圧を生成するための選択肢や、妥協すべき事柄について詳しく論じた文献などの数は限られています。以下では、負の電圧を生成するために求められる要件や設計上の課題について説明します。
絶縁
正の電圧と負の電圧は、電源から絶縁しなければならないケースがあります。例えば、安全を確保しなければならない場合や、コモン・グラウンドが存在しない場合には絶縁が必要になります。具体的な例を挙げると、EVのパワートレインでは、12Vの制御バスは主に12Vの補助バッテリから供給されます。低電圧による障害が安全上の危険につながることがないようにするためには、それを絶縁して高電圧のバッテリを制御しなければなりません。多くの場合、その12Vの電圧は、±5Vまたはガルバニック絶縁が施された±15Vに変換されます。その上でトラクション・インバータまたはチャージャの複数のシグナル・チェーンやドライバICに供給されます。太陽光発電(PV:Photovoltaic)用のインバータやモータ・ドライブといった産業用インバータでも、絶縁が必要になることがあります。
コンパクトなサイズ
医療分野では、患者の体調をモニタリングするための機器が使用されます。その種のアプリケーションでは、小型化の実現が主要な設計上の目標になることが少なくありません。また、そのような機器では、高精度のADCを複数使用し、様々なセンサーからの信号を検出/増幅する必要があります。それらのADCに正負の電源電圧を供給可能な小型のソリューションが強く求められています。
効率
あらゆる新規の設計では、効率を改善することが1つの目標になります。例えば、オペアンプのアプリケーションでは、出力に明らかな歪みが見られない限り、電源電圧を低くすることが一般的なトレンドになっています。また、電源電圧の生成に必要な電力が少ないほど、効率は高くなります。
タイミングと対称性
医療用のX線装置のような特殊なアプリケーションの場合、正負の電圧は対称的かつ絶対値の差が最小であることが求められます(絶対的な精度は必ずしも高くなくても構いません)。したがって、両方の電圧に対しては、正確なレギュレートとタイミング制御を適用するべきです。
多彩なソリューション
ここからは、負の電圧を生成するためのソリューションをいくつかピックアップし、複雑さと一般的な性能の観点から順に示していきます。比較を行えるようにするために、それぞれの長所と短所に関する説明も加えます。
ツェナー・ダイオード
最初に紹介するのは、ツェナー・ダイオードを使用する方法です。これは、ICを使わずに正/負の電圧を生成するための簡単な方法として知られています。図3の例では、電圧源V3の出力がツェナー・ダイオードDZと抵抗RZによって分割されます。V3が9VでDZのツェナー電圧が5Vである場合、ゲートは5Vと-4Vで駆動されます。ICを追加する必要がないことから、これは低コストのソリューションだと言えます。但し、その効率は非常に低くなります。そのため、数十mAの電流と十分にレギュレートされた出力電圧が必要なアプリケーションには適していません。現実的には、このトポロジが使用されるケースは少ないでしょう。
チャージ・ポンプ
チャージ・ポンプを使用すれば、正の入力電圧を簡単に反転させることができます。簡単だと表現する理由は、磁気部品を使用する必要がないからです。実際、このような機能を実現するためのチャージ・ポンプICは数多く提供されています。選択肢が多いことから、様々な状況に対して望ましい手段になり得ます。
電力に関する要件が厳しくないケースを対象として、アナログ・デバイセズは多数のチャージ・ポンプ製品を提供しています。その中には、レギュレート機能を備えているものと備えていないものがあります。図4に示した「LTC1983」は、レギュレート機能を備える製品の一例です。このソリューションは、フォーム・ファクタが小さく非常にシンプルだと言えます。しかし、効率が悪く、電磁干渉(EMI)が大きくなる可能性があります。また、この種のデバイスは負荷電流の面で制約があります。そのため、一般的には必要な電流が100mA未満のアプリケーションで使用されます。
医療用の装置、センサー・システム、通信アプリケーションなどでは、特に他の敏感な回路との干渉を避ける必要があります。つまり、ノイズが小さく、EMI性能が高いことが求められます。そのようなケースを対象として、アナログ・デバイセズは「LTC3265」のような製品も提供しています(図5)。この製品は、2つのチャージ・ポンプの出力をそれぞれ受け取る低ノイズのLDOレギュレータを内蔵しています。その出力電流は、50mAまでに制限されています。ただ、EMI性能が非常に高く、正と負の両方の出力を単一のICによって生成できる点は大きな魅力だと言えます。実際、出力ノイズが非常に小さいので、高精度の計測アプリケーションに適しています。その種のアプリケーションにおいて、低電力のオペアンプやデータ・コンバータ(ADC、DAC)を駆動する用途に最適です。
アプリケーションによっては、多くの負荷電流に対応する必要がある正の電源(システムの電力用)と、少ない負荷電流に対応する必要がある負の電源(バイアスまたはリファレンス用)の両方が必要になることがあります。そのようなアプリケーションでは、ICを追加することなく、負の電圧を生成するディスクリートのチャージ・ポンプを任意の降圧/昇圧レギュレータに追加することで対応できるケースが少なくありません。「Generating Negative Output Voltage from Positive Input Voltage Using MAX17291 Boost Converter IC with Active Discharge Feature」(アクティブ放電機能を備える昇圧コンバータIC「MAX17291」を使用し、正の入力電圧から負の出力電圧を生成する)では、「MAX17291」とチャージ・ポンプを構成する外付け回路を組み合わせる例を紹介しています。ただ、この方法には、チャージ・ポンプの負荷レギュレーションと動的負荷応答の面で欠点があります。
チャージ・ポンプは、いくつかの条件が満たされる場合には有用なソリューションになります。すなわち、入力と出力の組み合わせが既知で、正確なレギュレートを行う必要がなく、他のフィルタによって、関連するノイズによる干渉を処理できるケースです。
反転コンバータ
入力電圧または出力電圧の範囲が広く、厳格なレギュレートが必要なアプリケーションでは、インダクタをベースとするSMPSを使用することが推奨されます。SMPSには、正から負への変換に対応できるトポロジがいくつか存在します。ただ、それらすべてが反転トポロジに分類されてしまうケースがあります。それが原因で、技術者が混乱してしまうことがあります。
それらのトポロジでは同等の電力変換を実行できる場合が多いのですが、それぞれに異なる設計上の妥協点が存在します。一般的なトポロジとしては、以下の3つが挙げられます。
- トポロジ1: 降圧コンバータICを利用する反転昇降圧コンバータ
- トポロジ2: スタンドアロンの反転昇降圧コンバータ
- トポロジ3: デュアルインダクタ(CÜK)を使用する反転昇降圧コンバータ
最初の2つは似ていますが、トポロジ1の方が選択肢の幅が広くなります。但し、降圧コンバータICとしては、負電圧を生成することを目的として設計されたものを使用するわけではありません。
【トポロジ1】降圧コンバータICを利用する反転昇降圧コンバータ
このトポロジでは、一般的な同期型降圧コンバータICを使用します。図6に示したように、回路のグラウンド側を出力として使用すると、反転昇降圧(IBB:Inverting Buck-boost)コンバータを構成できます。同期型降圧レギュレータや降圧コントローラは数多く提供されています。選択肢も多いことから、この方法は広く使われています。ノイズに敏感なアプリケーション向けには、Silent Switcher 3技術を適用した「LT8624S」などが適しています。この製品に限らず、Silent Switcher®を適用したモノリシック型の降圧レギュレータICを使用してIBBコンバータを構成する方法は非常に有用です。そのようにすれば、非常に帯域幅が広くEMI性能/ノイズ性能に優れる負電源を実現できるからです。図6に示したのはLT8624Sを使用してIBBコンバータを構成した例ですが、これは「負電圧を必要とするアプリケーションに最適な反転昇降圧コンバータ、高速な遷移と優れたノイズ性能を実現」にも掲載されています。フィルタの効果を更に得たい場合には、負の入力に対応する低ノイズのLDOレギュレータを出力に追加するとよいでしょう。また、このトポロジを採用しつつ、より大きな電力に対応したいケースもあるはずです。そのような場合に対応できるよう、アナログ・デバイセズは、外付けのパワー・スイッチと組み合わせられる様々な同期型降圧コントローラを提供しています。
このトポロジの欠点は、降圧コンバータICが自身のグラウンド(負の出力電圧)を基準としており、システム・グラウンド(出力の正側)を基準として使用していないことです。イネーブル信号、SYNC信号、PGOOD信号を受信するといった機能を実行するために、マイクロコントローラが必要になるケースがあるでしょう。その場合、外付けのレベル・シフタ回路が必要になる可能性があります。このことは、短所になり得ます。図6の回路は、レベル・シフタ回路を追加した例でもあります。また、「負の電圧の生成に使用する昇降圧回路にレベル・シフタが必要な理由」にも、レベル・シフタを追加した回路例が掲載されています。なお、PMBus®/I2Cによる通信が必要な場合、レベル・シフタが機能しない可能性があります。その場合、外付けのデジタル・アイソレータICが必要になるかもしれません。
外部のセンシングや制御を必要としないコンバータが必要な場合、降圧コンバータICをIBBコンバータとして使用する方法は有用です。また、選択肢の幅は非常に広くなります。任意の定格電圧/定格電流に対応するあらゆる降圧POL(Point of Load)コンバータは、IBBコンバータとして構成することが可能です。但し、ほとんどの場合、外部から制御を行うためには外付けのレベル・シフタ回路が必要になります。
【トポロジ2】スタンドアロンの反転昇降圧コンバータ
アプリケーションで外付けのレベル・シフタを使いたくない場合には、2つの対処策が考えられます。1つは、非同期型のIBBコンバータを構成するというものです。もう1つは、レベル・シフタを内蔵している降圧コンバータICを使用する方法です。以下、それぞれについて説明します。
- 非同期型のIBBコンバータ: 非同期型のIBBコンバータは、プライマリ・スイッチとして使用するPMOS と同期スイッチの代わりに使用するダイオードをコンバータIC と組み合わせることによって実現可能です。その場合、コンバータIC は、レベル・シフタを使用することなく、システム・グラウンドを基準にすることができます。ここで、負荷(出力先)の正側は入力グラウンドに接続します。この方法で使用するコンバータIC の選択肢としては「LTC3863」が挙げられます(図7)。一般に、PMOS とダイオードを使用して構成した非同期型コンバータは、NMOS をベースとする同期型コンバータよりも損失が大きくなります。つまり、降圧コンバータIC を使用する方法よりも効率が低くなる可能性が高いと言えます。
- レベル・シフタを内蔵する降圧型IBBコンバータ: 先述したとおり、降圧コンバータIC をIBB コンバータとして使用する場合には外付けのレベル・シフタが必要になる可能性があります。ただ、降圧コンバータ製品の中には、各入出力信号に専用のレベル・シフタを内蔵しているものがあります。その種の製品を採用すれば非常に便利です。例えば、降圧型のIBBコンバータ「MAX17577/MAX17578」や「MAX17579/MAX17580」は、EN ピンとRESET ピン専用のレベル・シフタを内蔵しています。
多くの電力と高い効率が求められる場合には「LTC3896」がお勧めです。同製品はレベル・シフタを内蔵しているだけでなく、より洗練された機能と高い性能を備える同期型コントローラです。パッケージとして38ピンのTSSOPを採用した比較的大きなICですが、電力効率が非常に高く、両方のスイッチとしてNMOSを使用できます。この製品は、100Wを超える電力が必要な場合に推奨されます。
【トポロジ3】デュアルインダクタ(CÜK)を使用する反転昇降圧コンバータ
スイッチング・ノイズが問題になる可能性がある場合には、CÜKコンバータを使用する方法が有力な候補になります。そうすれば、IBBコンバータよりもノイズを抑えた状態で負の出力電圧を生成できるからです。このトポロジでは、2つのインダクタと1つのカップリング・コンデンサを使用します(図8)。この手法の長所は簡素であることです。入力の反転に必要なのはローサイドのスイッチだけで済みます。また、そのスイッチとしてNMOSを使用できるので高い効率が得られます。例えば、図8に示した「LT8330」には8本しかピンがなく、回路設計は容易です。このレギュレータICは、2つのエラー・アンプを内蔵しています。それらを使用することで、正または負の出力電圧を検出することができます。これに類似する製品としては「LT8331」、「LT8333」、「LT8334」、「LT8570」、「LT8580」などがあります。様々なアプリケーションの要件に対応するために、それぞれ異なる定格値と機能を備えています。
このトポロジには2つのインダクタが必要です。ただ、2つのインダクタが図8に示すようにカップリングされている場合、出力リップルが大きく低減されます。そのため、出力コンデンサのサイズを小さくできる可能性があります。また、このトポロジでは、入力側と出力側のそれぞれに1つのインダクタが配置されます。このことから、電流が連続的になり、回路全体のノイズが他のトポロジよりも小さくなります。なお、より多くの電力が必要な場合には、「LT3758」などコントローラICとローサイドの外付けFETを組み合わせて使用するとよいでしょう。
フライバック・コンバータ
(フライバック・コンバータのように)絶縁用のトランスが必要な場合、出力側に巻線を1つ追加することによって、非常に簡単に正/負の電圧を生成できるようになります。具体的には、図9に示すように、トランスの複数の巻線をブロッキング・ダイオードと共に異なる向きに配置します。それにより、正/負の電圧を生成できます。例えば、「LT8306」を採用すればフィードバック用のオプト・カプラは必要ありません。そのため、部品点数を減らすことができます。
この手法は便利ですが、生成される負電圧はレギュレートされません。そのため、レギュレートが必要な場合には、負の入力に対応するLDOレギュレータを出力に追加する方法が推奨されます。
特殊なデュアルマルチトポロジ・コンバータ
負の電源を必要とする大半のアプリケーションでは、それと相補的な関係にある正の電源も必要になります。そこで、アナログ・デバイセズは、正/負の複数の電圧を単一のICで提供可能な数多くのソリューションを提供しています。それらの製品では、本稿で紹介したトポロジを活用しています。
具体的な例としては、以下のようなものがあります。
- LT8582: 42V入力、3A出力のデュアル昇圧/反転レギュレータ(図10)
- LT8471: 50V入力、2A出力のデュアルマルチトポロジ・レギュレータ
- ADP5076: 5.5V入力、2A/1.2A出力のデュアル昇圧/反転レギュレータ
- ADP1034: 60V入力、3チャンネルの絶縁型マイクロパワー・マネージメント・ユニット
パワー・モジュール・ソリューション
多くの技術者は、電源向けのソリューションとして、非常にサイズの小さいものや完全集積型の既製品を求めます。その場合、マイクロパワー・モジュールが検討すべき選択肢の1つになります。
例えば「LTM4655」は、40V入力、4Aのデュアル出力、反転型のμModule®レギュレータです。2つの完全に独立した出力チャンネルは、それぞれ正または負の出力用に構成できます。EN55022のクラスBに準拠しており、EMI性能の高さが実証されています。これを使用すれば、設計作業とトラブルシューティングの作業を大幅に簡素化できます。
「LTM8049」も優れた選択肢の1つです。この製品は、最大20Vの入力電圧に対応します。2つの出力からは最大24Vまたは最小-24Vの電源を得ることができます。
まとめ
負の電源電圧をシステムに追加するのは容易ではありません。実際、多くのICベンダーは、各種製品について負の電圧が不要であることを長所として挙げています。例えば、GaN FETのメーカーは、負の電圧でゲートを駆動しないよう顧客を説得する傾向があります。また、オペアンプのメーカーは、より性能の高い単電源のオペアンプを推奨します。とはいえ、負の電源電圧が必要になるアプリケーションは間違いなく存在します。特に、ハイエンドのアプリケーションの多くはそれに該当するケースが少なくありません。
表1は、本稿で紹介したいくつかのソリューションを比較しやすいようにまとめたものです。アナログ・デバイセズは、様々なトポロジ、様々な定格値に対応する非常に多くのコンバータ製品を提供しています。表1には推奨される制限事項や一般的な特性が記載されていますが、それらはやや主観的なものになっています。そのため、製品ごとに表現の意味に差がある可能性があります。各種の製品についてはanalog.com/jpで検索することができます。また、最寄りの販売代理店にご連絡いただければ、お客様の設計に最適な製品をご提案いたします。ぜひお気軽にお問い合わせください。
トポロジ | ICのチャンネル数 | 絶縁 | 推奨される負荷電流 | 効率 | レギュレート | ソリューションのコスト | ノイズ | IC製品の例 |
ツェナー・ダイオード | 0 | なし | 10mA未満 | 低 | なし | 低 | 中 | なし |
チャージ・ポンプ | 1 | なし | 100mA未満 | 低 | なし | 低 | 大 | LTC1983 |
チャージ・ポンプ+ LDOレギュレータ | 2 | なし | 100mA未満 | 低 | なし | 中 | 小 | LTC3265 |
反転昇降圧 | 1 | なし | 0.5A~2A | 中 | あり | 中 | 小~中 | LTC3863, MAX17579 |
1 | なし | 2A~10A以上 | 高 | あり | 中~高 | 小~中 | LTC3896 | |
降圧ICを使用する反転昇降圧コンバータ | 1 | なし | 0.1A~10A以上 | 高 | あり | 低~中 | 小~中 | LT8624S |
デュアルインダクタの反転(CÜK)コンバータ | 1 | なし | 0.1A~10A以上 | 高 | あり | 中~高 | 小 | LT8330/LT8331/LT8333/LT8334, LT8570, LT8580 |
フライバック・コンバータ | 1または2 | あり | 0.1A~10A以上 | 中 | 巻線が2つ以上の場合はなし | 中~高 | 中~大 | LT8306 |
マルチトポロジ・コンバータ | 2以上 | なし | 0.1A~3A | 高 | あり | 中~高 | 小~中 | LT8582, LT8471 |
パワー・モジュール | 1または2 | なし | 0.1A~10A以上 | 高 | あり | 高 | 小~中 | LTM4655, LTM8049 |
参考資料
Ryan Schnell「ユニポーラのゲート・ドライバをバイポーラで使用する」Analog Dialogue、Vol. 52、No. 10、2018年10月
Frederik Dostal「負の電圧の生成に使用する昇降圧回路にレベル・シフタが必要な理由」Analog Dialogue、Vol. 57、No. 2、2023年5月
パワー・スイッチ内蔵型昇圧レギュレータ、Analog Devices
Steven Keeping「Using an Inverting Regulator for Buck/Boost DC-to-DC Voltage Conversion(反転レギュレータを利用し、昇圧/降圧型のDC/DC電圧変換を実現する)」DigiKey、2015年8月
Thomas Schaeffner「The Best Way to Generate a Negative Voltage for your System(システムに必要な負電圧を生成するための最良の方法)」Newelectronics、2018年1月
Frederik Dostal「The Art of Generating Negative Voltages( 負電圧を生成するための優れた技術)」Power Systems Design、2016年1月
著者について
Randyco Prasetyoは、アナログ・デバイセズのプロダクト・アプリケーション担当プリンシパル・エンジニアです。2011年にLinear Technology(現在は アナログ・デバイセズに統合)に入社しました。昇圧型/絶縁型パワー・コンバータの製品ラインを担当しています。衛星通信業界で10年間就業した後、妻と2人の子供と共に渡米。カリフォルニア工科州立大学で、ティーチング・アシスタントとスモッグ技術者として働きながら研究を続...
この記事に関して
製品
高精度ゲート・ドライバ、絶縁型、2A出力
ThinSOTの100mA安定化チャージポンプ・インバータ
昇圧型と反転型のチャージポンプを備えた低ノイズの双極性電源
SEPICまたは反転型のデュアルμModule DC/DCコンバータ
EN55022B準拠の40V、デュアル4A、シングル8A降圧、または50W反転µModuleレギュレータ
高入力電圧の昇圧、フライバック、SEPIC および反転コントローラ
1A、65Vスイッチ、ソフトスタート、および同期を備えた昇圧/SEPIC/反転型DC/DCコンバータ
65Vスイッチ、ソフトスタート、および同期機能を内蔵した昇圧/SEPIC/反転DC/DCコンバータ
5A、40Vスイッチ内蔵の低IQブースト/SEPIC/反転型コンバータ
3A、40Vスイッチを持つ低 IQブースト/SEPIC/反転型コンバータ
0.5A、140Vスイッチを内蔵した低静止電流の昇圧/SEPIC/フライバック/反転コンバータ
1A、60Vスイッチを内蔵した低静止電流の昇圧/SEPIC/反転コンバータ
1A、60Vスイッチを内蔵した低静止電流の昇圧/SEPIC/反転コンバータ
低静止電流の150V、同期整流式反転型DC/DCコントローラ
低静止電流の150V、同期整流式反転型DC/DCコントローラ
4.5V~60V、300mA高効率、同期整流、反転出力DC-DCコンバータ
4.5V~60V、300mA高効率、同期整流、反転出力DC-DCコンバータ
4.5V~60V、1A高効率、同期整流、反転出力DC-DCコンバータ
4.5V~60V、1A高効率、同期整流、反転出力DC-DCコンバータ
低静止電流の60V反転型DC/DCコントローラ
18V、4A、超低ノイズ・リファレンス降圧Silent Switcher®(サイレント・スイッチャ)3
高電圧、1Aマイクロパワーブーストコンバータ、短絡保護およびTrue Shutdown内蔵
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