ゲーム・オブ・ドローンズ【Part 2】BMS/電源/通信のアーキテクチャが成否を分ける理由
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主なポイント
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概要
ドローンをはじめとする現代の無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)は、フィードバック制御用の複数のサブシステムを密に結合することによって実現されています。それらのサブシステムによって、UAVの安定性、安全性、自律性、スケーラビリティが決定づけられます。本稿では、特に重要な2つのサブシステムに注目することにします。1つは、インテリジェントなパワー・マネージメントとバッテリ管理(バッテリ・マネージメント)を実現するサブシステムです。もう1つは、ミッション・クリティカルな通信を担うサブシステムです。これらに問題がある場合、UAVの安定性、飛行時間、運用上の安全性が低下するおそれがあります。
本稿では、各サブシステム間の相互作用についても詳しく解説します。その上で、産業グレードのUAVには民生用のドローンとは根本的に異なるアーキテクチャが必要である理由を明らかにします。バッテリ管理システム(BMS:Battery Management System)は、保護を実現するための単なるアクセサリではありません。そうではなく、飛行に不可欠なコントローラです。また、目視外飛行(BVLOS:Beyond Visual Line of Sight)においては、高度な通信リンクによって実現されるアーキテクチャが重要な意味を持ちます。それにより、運用、自律性、安全性が大きく左右されるからです。これら2つのサブシステムを組み合わせることにより、航空グレードのミッション・クリティカルなUAV用プラットフォームを実現できます。それにより、ホビー用のドローンとは明確に異なるレベルの性能が確立されます。なお、本稿では基本的にドローンも含む総称としてUAVという表記を使用することにします。
はじめに
UAVは、ホビー用の機器からミッション・クリティカルなシステムへと進化を遂げつつあります。この変革を後押ししたのは、推進力の大幅な進歩や空気力学的な改良だけではありません。大きな役割を果たしたのは、次に挙げる3つの領域の基礎的なサブシステムです。1つ目は、本連載記事のPart 1で解説したセンシングとナビゲーション(航法)を担うサブシステムです。2つ目としては、通信/テレメトリ用のサブシステムが挙げられます。そして3つ目がパワー・マネージメント用のサブシステムです。これらの中で、パワー・マネージメント技術は最も軽視されがちなものかもしれません。しかし、実際にはパワー・マネージメント技術は運用の成否を分ける決定的な要素となります。
BVLOS、産業分野で求められる検査、偵察を担うUAVは、プロフェッショナル向けのものだと言えるでしょう。その種のUAV(以下、プロ用UAV)については、民生用のドローンのように「墜落するまで飛行する」というアプローチは許容されません。プロ用UAVのプラットフォームには、エネルギーの余裕の定量的な把握、予測可能な健全性(SOH:State of Health)のトラッキング、動的な負荷条件の下でのデタミニスティックな電力供給が求められます。バッテリは、もはや受動的なエネルギー貯蔵庫ではありません。監視/制御された能動的なサブシステムであり、飛行時間、UAVが担うミッションの成功確率、安全性に直接影響を及ぼします。本稿では、プロ用UAVに必要な2つのサブシステムについて詳しく説明します。1つは、テレメトリ用のサブシステムに含まれる通信リンクです。もう1つは、パワー・マネージメント/バッテリ管理を担うサブシステムです。これらは、システム工学の面からアーキテクチャに必要な要素だと言えます。本稿では、飛行に不可欠なコントローラとしてのBMSの役割について特に詳しく解説します。また、電力品質が推進力の安定性に及ぼす影響について明らかにします。更に、スケーラビリティを決定づけるSWaP-C(サイズ、重量、電力、コスト)のトレードオフについても解説を加えます。
解説に当たっては、具体的な例として、バッテリ・スタック・モニタ「ADBMS6815」やソフトウェア無線(SDR:Software Defined Radio)対応のトランシーバ「AD9361」、Part 1で紹介した慣性計測ユニット(IMU:Inertial Measurement Unit)「ADIS16501」といった実績のあるソリューションを取り上げます。また、それらを組み合わせた統合型アーキテクチャのフレームワークを紹介します。そのシステムは、ナビゲーション、通信、パワー・システムが一元化されたレジリエントなプラットフォームとして機能します。インテリジェントなパワー・マネージメント・システムを導入することにより、遠隔制御される無人の航空機から、過酷な環境においても高い信頼性と再現性を確保しつつ安全に飛行できる自律型のシステムへの移行を図ることが可能になります。
エネルギーの制御を担うBMSとパワー・マネージメント・システム
まずは、プロ用UAVに必要なBMSとパワー・マネージメント・システムとはどのようなものなのかを明らかにします。
BMSは飛行に不可欠なコントローラ
プロ用UAVのBMSは単なる便利な機能ではありません。そうではなく、飛行に不可欠なサブシステムです。リチウムをベースとするバッテリは、アクティブな電気化学システムだと言えます。そのため、安全に使用するためには継続的な監視が必要になります。BMSは、セルの電圧、電流、温度を監視します。また、セル・バランシングの機能や、過電圧、過電流、熱暴走に対する保護機能を提供します。更に、充電状態(SOC:State of Charge)とSOHを高い精度で推定する機能も備えています。これらの指標は、飛行時間の予測、自動帰還(RTL:Return-to-Launch)用のロジック、自律的な意思決定の面で非常に重要な意味を持ちます。利用可能なエネルギーの余裕を正確に把握できないUAVは、目視外で安全な飛行を実現することはできません。
推力の安定性を決める電力品質
電力品質は、飛行の安定性に直接影響を及ぼします。離陸時、上昇時、またはアグレッシブな機動時に生じる大きな消費電流は、バッテリの内部抵抗に比例する電圧降下を引き起こします。過度に電圧が低下すると、モーターの出力が低下して電子速度コントローラ(ESC:Electronic Speed Controller)が不安定になり、リセット動作が引き起こされたり、発振が生じたりするおそれがあります。
インテリジェントなBMSは、放電の動的な挙動を監視し、ピーク電流を制限します。また、利用可能な電力の余裕をフライト・コントローラに伝達することにより、電圧降下や電力供給の問題を緩和します。同様に、熱の管理も重要です。放電レートが高いと発熱が生じます。それによって内部抵抗が増大し、バッテリの劣化が加速します。複数個所の温度を監視し、状態に応じて動的にディレーティングすることにより、システムの状態を安全な範囲内に維持し、突発的な故障を防ぐことが可能になります。
SWaP-Cのトレードオフとスケーラビリティ
UAVにおいて、電力に関する設計はSWaP-Cによる制約を受けます。バッテリの容量を増やすと質量が増え、より多くの推力が必要になります。つまり、効率的ではない状態に陥ります。そのため、バッテリの容量を増やすだけでなく、スマートなパワー・マネージメント技術を導入することも重要になります。高電圧に対応するバッテリ・パックを使用すれば、電流量と抵抗による損失を低減できます。但し、より高度なモニタリングとバランシングが必要になります。
上述したことは、まさに民生用のプラットフォームと産業用(プロ用)のプラットフォームの違いに相当します。多くの場合、ホビー用のドローンでは、最小限の監視機能を備えるセル数の少ないバッテリ・パックが使用されます。一方、産業用のUAVには、高精度の監視機能とデジタル通信機能が必要です。場合によっては、冗長性も備える12直列(12S)以上のスマート・バッテリが使用されます。BMSの機能とパワー・マネージメントの機能が統合されたICを使用すれば、部品点数、重量、損失を削減できます。その結果、飛行時間を延ばしてフリート(機体群)の信頼性を高めることが可能になります。
プロ用UAVを用いたミッションのレベルでは、エネルギーの状態を正確に把握することが重要です。それにより、予知保全と運用規模の拡大を図れるようになります。バッテリは主要な消耗品であり、SOHや大きな負荷がかかった事象をトラッキングすることが、ダウンタイムの低減と飛行中の故障の防止につながります。つまり、BMSは電力を制御する装置として機能するだけでなく、フリートを管理するためのセンサーとしても機能します。
12セルのバッテリ・スタックに対応するモニタIC
一般に、リチウム・ポリマー(以下、LiPo)バッテリ用のBMSソリューションは多くの機能を備えています。代表的なものは、電圧/電流の測定、温度の検出、通信、SOC/SOHの推定、障害の検出、保護、セル・バランシング、制御などの機能です。
一方、UAVでは、12Sのリチウム・イオン(以下、Li-ion)/LiPoのバッテリ・パックがよく使用されます。このタイプのバッテリ・スタックに対しては、ADBMS6815が堅牢性と精度に優れる選択肢になります。この車載グレードのバッテリ・モニタICは、最大12個の直列セルに対応します。セル当たりの測定範囲は0V~5V、寿命期間を通した最大測定誤差は1.5mV未満です。約304マイクロ秒ですべてのセルの測定を行うために、高速な変換を実現可能なA/Dコンバータ(ADC)を搭載しています。同ICの高い精度は、大電流を消費する飛行条件の下、セルごとの厳密な監視が求められるUAVのアプリケーションに適しています。また、より高い電圧に対応するために、同ICは複数個をスタックして使用できます。SPI(Serial Peripheral Interface)による通信を使用するので、ノイズを抑えつつ長い配線を実現することが可能です。このことは、ノイズの多いESCや分散推進システムを備えるドローンにおいて実装上の大きなメリットになります。
UAVには、絶縁、冗長性、SOC/SOHの正確なトラッキングといった特有のニーズがあります。それらに対応するために、ADBMS6815は他の電流検出ICやクーロン・カウンタICと組み合わせられるようになっています。また、オプションとして、「LTC3300-1」のようなアクティブ・バランシング用のソリューションと連携させることも可能です。図1のアーキテクチャでは、ADBMS6815とLTC3300-1に、デジタル温度センサー「ADT7420」、マイクロコントローラ「MAX32660」、暗号コントローラ「MAXQ1065」、セキュア・コプロセッサ「DS2478」を組み合わせています。このアーキテクチャは、UAVで使用するLiPoスマート・パックを対象としたものであり、セルの監視、アクティブ・バランシング、温度の検出、セキュア認証、システム制御の機能が統合されています。一般的な指針として、6S~8Sまたはモジュール型のバッテリ・パックには「ADBMS6817」、10S~12Sのバッテリ・パックにはADBMS6815が適しています。どちらの製品ファミリも、ASIL(Automotive Safety Integrity Level)対応のバリエーション、低消費電力のスタンバイ機能、温度検出用の柔軟性の高いGPIO(General-purpose Input/Output)を備えています。これらの製品を使用すれば、BMSを全面的に再設計することなくスケーラビリティと安全性を確保できます。
通信とテレメトリは、UAVのライフライン
すべてのUAVにおいて、RF対応の通信リンクとテレメトリ・リンクはミッション・クリティカルなものです。それらは、航空機の神経系としての役割を果たします。これらのリンクを介し、オペレータはコマンド&コントロール(C2)の発行、テレメトリ・データの受信、ミッションの更新、フェイルセーフのトリガ、システムの状態監視を行います。リンクの品質の低下は、レイテンシ、パケットのロス、不安定な制御を招きます。リンクが完全に遮断されると、制御権が失われてミッションが中断します。
BVLOSに対応するUAVや産業用のUAVでは、安全性の確保、規制への適合、リモートIDへの対応が必須です。そのため、デタミニスティックでレジリエントなRFリンクは、推進システムやナビゲーション・システムと同じくらい重要なものになります。RFリンクが途絶した場合、UAVが通常どおり飛行を維持できる状態にあったとしても、事実上、ミッションは完遂されることなく終了します。
このような要件に対応するために、UAVの設計を担当する多くの技術者は、ソフトウェア・デファインドのRFトランシーバを選択します。AD9361と「AD9364」は、70MHz~6GHzの周波数帯、2×2のMIMO(Multi Input Multi Output)に対応する集積度の高いトランシーバです。いずれも、UAVで一般的に使われる周波数帯と200kHz~56MHzの帯域幅をサポートします。AD9361は、広帯域幅のデータ伝送やビデオ伝送に適した高い感度とスループットを備えています。それに対し、AD9364は、より少ない消費電力でAD9361と同等のRF性能を提供します。そのため、AD9364は消費電力に制約がある小型のプラットフォームに適しています。
ネットワークに接続されるUAV-ドローンでセルラ通信を活用する
セルラ、特に5G NR(New Radio)によるコネクティビティは、UAVにおける通信に変革をもたらしました。既存のインフラを利用することにより、BVLOSの広域運用が可能になったのです。小さなレイテンシ、高いスループット、管理されたサービス品質(QoS:Quality of Service)、保護されたC2リンクを確保するネットワーク・スライシング、シームレスなモビリティにより、多くのミッションにおいて専用の地上局が不要になります。
セルラ・ネットワークを利用すれば、ナビゲーションの堅牢性も向上します。GNSS(Global Navigation Satellite System)の信号が劣化するような環境では、ネットワークをベースとする測位によって慣性ナビゲーションが補完されます。また、将来の6G(第6世代移動通信システム)のコンセプトでは、通信、測位、センシングの機能の統合が更に進むとされています。
図2に示したのは、UAVをユーザ端末(UE:User Equipment)クラスのデバイスとして利用するセルラ通信のアーキテクチャです。この図において、ドローンは3GPP対応のUEとして動作し、地上のセルラ通信インフラに接続されます。UAV上では、フライト・コントローラやFPGA/SoC(System on Chip)により、ミッション用のロジック処理、デジタル・フロントエンドの処理、外付けのセルラUEモデムとのやり取りが行われます。RFトランシーバの「ADRV9026」は、広帯域に対応するRFフロントエンドとして機能します。同ICと共に使用するパワー・アンプ(PA)、低ノイズ・アンプ(LNA)、フィルタ、RFアイソレーションにより、Sub-6GHz帯における堅牢な動作が支えられます。ホールドオーバー発振器を用いてGNSSに同期したタイミング信号を生成することにより、GNSSの性能が低下した場合やGNSSを利用できない場合でも、安定した動作が確保されます。また、MIMO対応のアンテナ・システムにより、安定した状態でUAVをUEとして接続できます。
メインの通信経路は、UAVから地上のgNodeB(gNB)までの4G LTE/5G NRに対応するセルラ・リンクです。これらのリンクは、モビリティの管理、セキュリティ、ユーザ・プレーンのルーティングのために、5Gのコア・ネットワークに接続されます。オプションのセカンダリ・リンク(衛星やマイクロ波システムなど)は、バックアップのコマンド&コントロールや、ペイロードの高速転送に利用できます。下流のアプリケーションのエンドポイントには、コマンド、コントロール、テレメトリのための地上管制局や、データの処理と配信を担うクラウド/エッジのサービスなどがあります。このアーキテクチャは、レジリエントなマルチリンクのUAV通信をサポートします。その構造においては、UE、無線アクセス・ネットワーク(RAN:Radio Access Network)、コア・ネットワークの機能が明確に分離されます。
では、ドローン上のセルラ通信システム(cellular-on-a-drone)のアーキテクチャはどのように利用されるのでしょうか。現在、実現される可能性が非常に高いと考えられるのは、次の2つの用途です。
- セルラの中継またはカバレッジの拡張:UAVは空中中継局として機能し、一時的なカバレッジや緊急時用のカバレッジを提供します。
- 空中UE:UAVは、地上の5GネットワークにUEとして接続し、C2通信とペイロード・データのバックホールに利用されます。
どちらの用途においても、RF対応のハードウェアは、UAVのSWaPの制約に加え、5G NRの帯域幅とMIMOの要件を満たす必要があります。5G NRのFR1(Frequency Range 1。以下、単にFR1と表記します)における広帯域性能(100MHz以上、2×2のMIMO)を実現したい場合、ADRV9026はシングルチップの強力なソリューションになります。同ICは、リニアライゼーション用のオブザベーション・パスを備えた4T4R(4送信、4受信)のアーキテクチャを採用しています。一方、より小型のプラットフォームや40MHz以下のチャンネルには、より消費電力の少ない「ADRV9002」の方が適しています。表1に示したのは、小型戦術UAVのプラットフォームにおける電力バジェットを分析した例です。このドローンの最大離陸重量(MTOW:Maximum Takeoff Weight)は5kgです。また、400Wh(14.8V、27Ah)のバッテリを搭載しています。
| サブシステム | 電力〔W〕 | デューティ・サイクル | 平均電力〔W〕 |
| 推進(ホバリング) | 180 | 100% | 180 |
| フライト・コントローラ | 5 | 100% | 5 |
| ペイロード(カメラ) | 10 | 100% | 10 |
| RFサブシステム: | |||
| •ADRV9002(2×) | 3 (Rx), 4 (Tx) | 50% Tx | 3.5 |
| •GaN PA(2×1W) | 5 | 50% Tx | 2.5 |
| •FPGA/ベースバンド | 8 | 100% | 8 |
| •GNSSに同期する発振器 | 2 | 100% | 2 |
| RF電力の合計値 | 16 | ||
| システムの消費電力の合計値 | 211 | ||
「ADRV9040」は、空中の次世代Node B(gNBに相当)やプライベートの5Gのノードをターゲットとした製品です。しかし、消費電力と放熱量が多いので、一般的にはより大型のUAVでしか利用できません。表2は、UAVに関連する要件に注目しつつ、各RFトランシーバを比較したものです。
| 項目 | ADRV9002 | ADRV9026 | ADRV9040 |
| チャンネル数/MIMO | 2T2R(1×2または2×2の狭帯域のSDRに最適) | 4T4R+オブザベーション・パス(2×2/4×4のFR1無線、デュアルバンドの2×2に最適) | 8T8R+ORx+内蔵DFE(8アンテナのO-RU/gNB相当のノードに対応) |
| 調整可能な範囲 | 30MHz~6GHz | 75MHz~6GHz | 600MHz~7.125GHz |
| 瞬時帯域幅 | 最高約40MHz | Rx/Tx:最高200MHz、Tx合成/ORx:最高450MHz | 約400MHz。DPDをサポート |
| デュプレックス方式に関する留意点 | TDDまたは狭帯域のFDDのプロトタイプに最適。FR1の仕様をすべて満たすにはチャンネル帯域幅が足りない | 外付けのデュプレクサにより、FR1に対応するTDDと一部のFDDのコンセプトに強く適合。広い帯域幅によって100MHz以上の5G NRのキャリアをサポート | TDD/FDDのマクロ/ミニマクロ・セルの無線に最適。広い帯域幅とDFEが理由となり、無線ユニットのアーキテクチャに有利 |
| 電力/熱(ドローンへの影響) | 小型UAVに対しては、3製品の中でSWaPが最良(正確な消費電力はモード/プロファイルによって異なるので、設計変数として扱う) | SWaPは中程度だが、伝導冷却を適用すれば中型UAVへの搭載が可能 | データシートに記載されているように、全ブロックを有効化した際の消費電力は約13W。そのため、大型UAV向け。慎重な熱設計が必要 |
サブシステムを統合したUAVのシステム・アーキテクチャ
ドローンを含むUAVのアーキテクチャは、ここまでに説明した3つのサブシステムを統合することで実現されます。本稿では、アナログ・デバイセズのICをベースとしてこのアーキテクチャを構成する例を紹介します。主要な性能はそれらのICによって決まります。そして、高精度のセンシング、レジリエントな通信、堅牢な電力制御の3つが柱として形成されます。ADIS16501(IMU)は、バイアスの安定性が高いことを1つの特徴とします。これを使用すれば、ノイズを抑えた状態で慣性を測定し、高い精度のデータを得ることができます。また、GNSSや気圧センサー、オプティカル・フロー(ビジョン・センサー)を融合する際には、拡張カルマン・フィルタ(EKF:Extended Kalman Filter)によって信頼性の高いバックボーンが形成されます。その結果、フライト・コントローラによって安定した状態推定が実現されることになります。つまり、デタミニスティックな制御ループが構築され、自律的な動作が可能になります。
通信に関しては、ADRV9026(RF対応のトランシーバ)を中心に構築されるソフトウェア・デファインドのサブシステムがバックボーンになります。そのサブシステムにより、暗号化やスペクトラム・アジリティに対応しつつ、テレメトリ、コマンド、ペイロード(ビデオ)に対する干渉への耐性を備えた柔軟性の高いリンクが実現されます。
電力の面で信頼性を支えるのは、ADBMS6815(バッテリ・モニタ)とLTC3300-1(セル・バランサ)です。これらは、セル電圧の高精度の測定、バランシング、保護の機能を提供します。それにより、6S~12SのLi-ion/LiPoバッテリ・スタックを管理することが可能になります。結果として、アビオニクス、RFシステム、推進システムにクリーンな電源電圧が供給されます。その下流では、ブラシレスDC(BLDC)モーター用のドライブ、電流検出、ホール・センサーからのフィードバックによって、推進系をクローズド・ループで制御します。また、ミッション(ペイロード)用のセンサーとAI用のアクセラレータは、故障を他の系統から隔離できる並列パイプラインとして動作します。安全を確保するための階層化された対策により、壊滅的な故障を回避し、グレースフル・デグラデーション(機能を段階的に縮退させる)を確保します。全体として、ADIS16501、ADRV9026、ADBMS6815は、ナビゲーション、通信、電力の3つの柱を形成します。それにより、安定性や安全性を損なうことなく機能を拡張することが可能になります。
図3に示したのは、UAVのアーキテクチャの全体像です。このアーキテクチャは、プロ用UAVの自律飛行に求められる性能と信頼性を兼ね備えています。つまり、産業分野で実施される検査や測量、失敗が許されない戦術的な情報収集/監視/偵察(ISR:Intelligence, Surveillance, and Reconnaissance)のミッションなどの用途に対応することが可能です。
まとめ
ドローンは、ホビー用のものから、産業グレードの自律型プラットフォームを採用したプロ用UAVへと進化しつつあります。それを支えているのは、少しずつ改良された個々のコンポーネントではありません。センシング、通信、パワー・マネージメントを、システム・レベルでセーフティ・クリティカルなアーキテクチャに統合したことによって実現されています。Part 1、Part 2の2回にわたり解説してきたように、BMSはアクセサリをはるかに超える存在です。ミッションの継続時間、運用上の安全性、フリートの長期的な信頼性を決定づける飛行に不可欠なコントローラだと言ってよいでしょう。インテリジェントなパワー・マネージメント・システムを、高精度の慣性センサーやレジリエントかつソフトウェア・デファインドな通信リンクと組み合わせることで、BVLOSの運用、自律的な意思決定、規制への遵守に必要な基盤が完成します。
本稿で取り上げたナビゲーション用のADIS16501(IMU)、通信用のADRV9026(トランシーバ)、電力制御用のADBMS6815(バッテリ・モニタ)は、アーキテクチャのフレームワークを支える柱になります。このようにシステムを構成するのは、失敗が許されないUAVシステムを実現するための実績のあるアプローチだと言えます。これらの要素は、個々に切り離されたサブシステムではなく、統合されたプラットフォームにおいて相互に依存し合います。状態の推定を高い精度で行うためには、安定した電源が必要です。デタミニスティックな通信には、エネルギーについて予測可能な余裕を確保しなければなりません。自律的なミッションにおいては、残りの飛行時間をリアルタイムで把握する必要があります。3つの柱のうちいずれか1つでも軽視すれば、ミッションは失敗に終わります。
最後に、次世代のプロ用UAVを設計する技術者に対して明確な教訓を提示しておきます。それは、飛行制御や通信の機能と同じように、パワー・マネージメント機能を厳格に扱わなければならないというものです。高精度な監視機能に対して投資を行い、予測用のアルゴリズムを実装し、グレースフル・デグラデーションを実現可能なアーキテクチャを設計してください。バッテリはブラック・ボックスではありません。戦略的なアセットであり、センサーとしても、コントローラとしても機能します。分野によっては、飛行時間がミッションの能力に直結し、ダウンタイムがそのまま金銭的な損失につながります。単に飛行を実現できるだけのプラットフォームになるか、実用に耐えるプラットフォームになるかの分かれ目は、より優れた機能/性能のBMSを選択できるかどうかにかかっています。UAVは、単なるツールから重要なインフラへと移行しつつあります。そうしたなかでも、パワー・マネージメント・システムは、信頼性、安全性、自律性の実現を支える要素であり続けるでしょう。
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製品
12チャンネル・マルチセル・バッテリ・モニタ
Precision, MEMS IMU
RFアジャイル・トランシーバ
9mΩのMOSFET内蔵の低静止電流サージ・ストッパ
電流検出機能と128マイクロステッピング・インデクサを内蔵した36V、3.8Aステッピング・モータ・ドライバ
Servo drive for 3-phase BLDC motors 12 to 28V, 30A, with CAN Interface
1メガ・ピクセルTime of Flightモジュール
データ・アクイジション・システム、16ビット、8チャンネル、同時サンプリングA/Dコンバータ内蔵
人工知能(AI)マイクロコントローラ、低消費電力畳み込みニューラル・ネットワーク・アクセラレータ内蔵
8GHz~16GHz、4チャンネル、X帯およびKu帯ビームフォーマー
周波数シンセサイザ、フラクショナル-N、13 GHz、ダイレクト・モジュレーション/高速波形発生
レシーバ・ダウンコンバータ、4チャンネル、24GHz
24 GHz VCO と PGA、2 チャンネル PA 出力付き
PCパワーフェイルおよびリセットコントローラ
超薄型の20V入力、3A降圧DC/DC μModuleレギュレータ
USB Type-Cチャージャ検出器、OVP内蔵
バッテリ・バックアップ・システム・マネージャ
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2.5V~16V入力、7Aスイッチング電流高効率昇降圧コンバータ
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リニア・レギュレータ(LDO)、800 m A、超低ノイズ/高PSRR
−2V~70Vの広い入力電圧範囲、2.2MHzの広帯域幅、PWM除去を備えた電流検出アンプ
クリア・ピンおよび警告出力を備えたデジタル・パワー・モニタ
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