ゲーム・オブ・ドローンズ【Part 1】IMUがナビゲーション機能の成否を分ける理由
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質問
産業用のUAVの設計者は、なぜ有人航空機で使われるような冗長化された慣性システムのアーキテクチャを模倣しようとするのでしょう? ドローンには、SWaP(サイズ、重量、消費電力)の面で厳しい制約が課せられます。そのような制限があるなか、UAVにそのようなアーキテクチャを適用するというのは現実的な考えなのでしょうか?
回答
最先端のUAVは、都市部の空域や紛争地域でも完全な自律飛行を実現できるものに進化しつつあります。それに伴い、慣性計測の完全性は、基本的な機能/性能の実現に必要なだけでなく、安全性の確保や認証の取得の成否を左右する重要な要素になりました。先進的なUAVでは、求められる要件を満たすために、IMUをデュアル構成またはトリプル構成で使用するプラットフォームが用いられるようになってきています。それにより、一般的な有人航空機の運用上の慣行に倣って、多数決ロジック(投票ロジック)が組み込まれているということです。そのような冗長化された構成が可能になった理由としては、高度に集積化されたMEMS(Micro Electro Mechanical System)ベースのIMUモジュールが登場したことが挙げられます。それにより、コストや重量に関する制限を満たしつつ、航空機と同様の冗長性を確保できるようになったのです。例えば、あるMEMSベースのIMUモジュールは、15mm×15mmのサイズ、1.3g未満の重量、44mAの消費電流という仕様を実現しています。そのため、トリプル構成の慣性計測システムを構築した場合でも、重量はわずか数gしか増加しません。しかも、ミッション・クリティカルな用途に求められるフォールト・トレランスなシステムを実現できます。

はじめに
UAVは、商業、産業、防衛といった様々な分野で急速に普及しています。それに伴い、高精度かつリアルタイム対応のナビゲーション機能/制御機能が強く求められるようになりました。UAVは、都市部における荷物の配送や洋上風力タービンの点検、精密農業(Precision Agriculture)といった様々な用途で使用されます。どのような用途であるのかにかかわらず、UAVには、絶えず変化する状況下や過酷な環境下でも安定した航行を維持することが求められます。この能力の鍵を握るのがIMUです。一般的には、IMUに注目が集まることは少ないのかもしれません。しかし、IMUは極めて重要な役割を果たすコンポーネントであることを理解しておく必要があります。
GPSレシーバーは、1秒ごとに位置情報を更新します。一方、ビジョン・システムでは、限られたフレーム・レートで画像処理が実行されます。それらの機器とは異なり、IMUは1000Hz程度のレートで動作し、クローズド・ループの飛行制御に不可欠なデータを高いレートで取得して連続的に提供します。IMUはナビゲーション・システムの心臓部とも言えるような存在であり、それによって確実な航行が実現されます。言い換えれば、突風に対処したり、高い精度でホバリングを維持したり、アグレッシブな機動を実行したりすることが可能になります。また、GNSSからの信号の途絶や視覚的な基準点の消失が発生した場合でも、正確なナビゲーションが維持されます。このようにIMUは極めて重要な役割を担っているのにもかかわらず、その選定については十分な理解が得られていないというのが実状です。多くのシステム設計者は、IMUの性能がナビゲーション・システム全体に及ぼす影響を過小評価していると言ってもよいでしょう。実際、IMUの性能は、推定器(Estimator)における処理の収束、制御のレイテンシ、ミッションの成功率、運用時の安全性を確保するためのマージンの大きさなどに影響を及ぼします。
本稿では、なぜIMUが飛行の安定性を決定づけるのか、慣性の測定誤差はナビゲーションのアルゴリズムを通じてどのように伝搬するのかを明らかにします。また、民生レベルのIMUと、ナビゲーション機能用のミッション・クリティカルなIMUの違いについて解説します。続いて、マルチセンサー・フュージョン・システムのアーキテクチャについて説明した上で、IMUの性能が不十分である場合に運用に及ぶ影響について詳述します。更に、アナログ・デバイセズが提供するMEMSベースのIMU製品を紹介します。小型、高性能、低消費電力の各IMUを使用すれば、ミッション・クリティカルな用途に求められる安定性を実現できます。自律化が進んだUAVは、より安全性が重視される用途で使用されるようになるはずです。IMUについては、技術的な興味から関心を持っているという方もいるでしょう。しかし、UAVの設計を担う方は、IMUの役割について必ず正しく理解しておかなければなりません。
IMUはナビゲーションとセンシングのキーデバイス
なぜ、IMUによって飛行の安定性が決まるのか?
UAVは航行を維持するために、主にIMUから高レートで継続的に提供される状態量(位置、速度、姿勢の情報)を活用します。GNSSや気圧センサー、ビジョン・センサーなどは絶対的な基準情報を提供します。しかし、それらの更新レートは、100Hz~1000Hzで動作する制御ループを備えた機体を安定させるためのものとしては遅すぎます。モーターに対して制御用の指示を発行する合間に、機体の姿勢を維持して外乱を抑制できるほど高速に応答するセンサーはIMUだけです。
慣性ベースのナビゲーション機能は、本質的に積分処理によって実現されます。そのため、IMUの性能が極めて重要な意味を持ちます。ナビゲーションを実現する際には、加速度センサーで測定した値を積分して速度と位置を求めます。また、ジャイロ・スコープで測定した値も取り入れて姿勢の値を算出します。その際には、両センサーによる測定値に含まれるバイアスやノイズの成分が時間の経過に伴い累積して増幅されることになります。このことから、IMUの性能が重要になるのです。民生グレードのIMUの場合、ジャイロ・スコープのバイアスが1時間当たり数十°、加速度センサーのバイアスが数十μg程度になります。そのため、数分の間に姿勢の誤差が数°まで増大し、位置のドリフトが数十mに達する可能性があります。一方、ミッション・クリティカルな用途に向けたIMUは、バイアスの安定性が1時間当たり1°未満に抑えられています。ノイズ密度も低いので、誤差が大幅に低減されます。そのようなIMUを採用すれば、GNSSの精度が低下した場合や、屋内の用途でGNSSを利用できない場合でも、安定したホバリング、高い精度のデッド・レコニング、予測可能な制御を実現できます。
IMU製品は、精度やミッションの要件に応じて4つのグレードに分類されます(表1)。民生グレードの製品は基本的かつ低コストなものであり、一般的な電子機器に適しています。産業グレードの製品は、自動車やオートメーション・システムに求められる耐久性と信頼性を備えています。ミッション・クリティカル・グレードの製品は、過酷な環境で稼働する防衛用のシステムや高度なロボットに組み込まれた場合でも、極めて高い安定性と精度を発揮します。そしてナビゲーション・グレードの製品は、民間の航空機や人工衛星など、長時間の運用が求められる重要なアプリケーションにおいて、極めて高い精度を提供します。IMUを採用する際には適切なグレードの製品を選択することが重要です。単に利用可能な最高性能のものを選ぶのではなく、ミッションの要件に基づいて選定を実施する必要があります。
| グレード | GPSに依存しないナビゲーション | 定義 | 最適な用途 |
| 民生グレード | 数秒 | 精度よりもコストを重視して設計されています。最小限のキャリブレーションしか行えず、システムへの統合には多くの労力を要します。 | スマートフォン、家電、エントリ・レベルのモーション検出機器 |
| 産業グレード | 約1分 | 信頼性、耐久性、費用対効果に優れる製品です。日常的な自動化の用途において確かな性能を発揮します。 | 自動車、産業用ロボット、一般的なオートメーション設備 |
| ミッション・クリティカル・グレード | 約10分 | 精度とバイアスの安定性に優れる製品であり、過酷な環境でも高い性能を発揮します。 | 防衛システム、自律型プラットフォーム、高度なロボット |
| ナビゲーション・グレード | 数時間 | 極めて精度が高く、決して失敗が許されないミッション向けに設計されています。 | 民間の航空機、人工衛星、宇宙船 |
誤差の増大、運用に及ぶ影響
慣性ベースのナビゲーション機能の基礎となる数学的な原理は、ミッションの成否に直接影響を及ぼします。加速度センサーのバイアスが一定である場合、位置の誤差は2次関数的に増大します。一方、ジャイロ・スコープについてはわずかなバイアスが存在するだけでも、姿勢のずれが生じます。これらの誤差は、一度累積してしまうと単純なフィルタによって除去することはできません。センサーのレベルで誤差の発生を防ぐか、高精度の補助的な計測を実施して補正を行う必要があります。IMUの性能が低い場合、運用上の問題が生じてしまうかもしれません。例えば、ウェイポイントを見落とす、ホバリングが不安定になる、ジンバルの安定性が低下する、障害物の回避に失敗するといった具合です。また、UAVを高い精度で着陸させたい場合、更新レートの低いGNSSからの情報を補完するために、IMUによる慣性ナビゲーションを利用します。性能の低いIMUを使用すると、着陸直前の数秒の間に数mもの位置の誤差が累積し、正確な着陸が困難になります。図1は、性能の低いIMUと性能が高いIMUがUAVのミッションに及ぼす影響の違いについてまとめたものです。
一方、高い完全性を備えるIMUを使用すれば、推定器は小さな補正を連続的に適用できるようになります。それにより、制御の安定性と動作の予測可能性を確保できます。IMUの精度は、内蔵センサーの性能、センサー・フュージョンのアルゴリズム、外部キャリブレーションに依存します。ハイエンドのIMUを使用すれば、高精度のモーション・トラッキングを実現できます。それに対し、民生用のIMUを使用するとドリフトが生じる可能性があります。
測定値から状態量を導き出すセンサー・フュージョン
マルチセンサー・フュージョンのアーキテクチャにIMUに統合すれば、その能力を最大限に活用することが可能になります。UAVでは、IMUとGNSS、気圧センサー、磁力センサーを組み合わせます。最先端のUAVでは、カメラ、LIDAR、レーダーなども併用されます。各センサーには不確実性が存在しますが、拡張カルマン・フィルタ(EKF:Extended Kalman Filter)などの推定器はそれに基づいて重み付けを行います。EKFの役割は、位置、速度、姿勢などの状態量を推定することです。IMUは高速な予測に利用され、低速のセンサーは長期的なドリフトの補正に使用されます。図2に、UAVのナビゲーション・システムで使用されるプラットフォームの例を示しました。ご覧のとおり、モジュール式のマルチセンサー・フュージョンを活用しています。
IMUの性能は、推定器の動作に直接影響を及ぼします。ノイズ性能と安定性が高いIMUを使用することにより、推定器のフィルタは慣性伝搬を信頼することが可能になります。その結果、遅延が小さく抑えられ、高精度の制御が実現されます。ノイズが大きいIMUやドリフトが生じるIMUを使用すると、低速のセンサーに対する依存度が高まります。特に、GNSSの信号が途切れた際、遅延や振動が生じるリスクが増大します。UAVの自律性を向上させるために、オプティカル・フローやレーダーなどのモダリティを追加することで推定器の性能を高めることは可能です。しかし、それらはIMUに取って代わるものではありません。あくまでも、補正を支援するレベルの改善が得られるだけです。
現実の運用環境で高い精度を実現するIMU製品
温度の変化や激しい振動が生じている場合でも、UAVによる精密な制御を維持できるようにするにはどうすればよいのでしょうか。そのためには、システムに最適なIMUを選定する必要があります。つまり、システムの性能に関する要件にマッチしたノイズ密度、バイアスの安定性、環境に対するレジリエンスを備えた製品を選ばなければなりません。その上で、質の高いセンサー・フュージョン、適応型のフィルタリング、機械学習を用いた誤差の補正といった高度な技術を駆使し、IMUの性能を最大限に引き出す必要があります。また、モジュール式のシステム・アーキテクチャを採用した上で、クリーンな電源電圧が生成されるようにし、機械的なアイソレーションを適切に施すとよいでしょう。それにより、信頼性が一層向上します。加えて、包括的なキャリブレーションと環境試験によって長期的な精度を検証する必要があります。更に、データに基づいて継続的な改善を図ることで、製品のライフサイクル全体にわたって性能を最適化します。このようなアプローチにより、優れた安定性、高精度の制御、競争優位性をもたらすUAV向けのセンシング・ソリューションを実現できます。なお、ロボットや産業用システムの制御についても同じことが言えます。
「ADIS16501」は、小型でありながら産業用のUAVに対して慣性航法システム(INS:Inertial Navigation System)に迫る性能を提供可能なIMU製品です(図3)。ジャイロ・スコープのバイアスの安定性は2.7° /時で、角度ランダム・ウォーク性能は約0.15° /√時。このような性能を備えることから、精密な姿勢の制御や自律航行を実現できます。帯域幅は480Hz~590Hzであり、最高で約1000Hzの制御ループに対応可能です。その場合、EKFは、GPSやビジョン・システムによる頻繁な補正よりも、慣性伝搬による状態推定を重視できます。そのため遅延が低減され、強風が生じていたり激しい機動が必要になったりする場合でも応答性に優れた航行を維持することが可能になります。ADIS16501が工場から出荷される際には-40℃~85℃を対象としたキャリブレーションが実施されます。そのため、現場での複雑なキャリブレーション作業は不要です。
ADIS16501は、ダイナミック・レンジが±14gの加速度センサーを内蔵しています。GPSの信号が不安定な環境で、正確なホバリング、ウェイポイントのトラッキング、着陸を実現できるようにするために、機動時に向けたヘッドルームの確保と高いノイズ性能を両立しています。
ADIS16501のパッケージは15mm×15mmのBGAです。重量は1.3g未満、消費電流は約44mA~55mA、耐衝撃性は1500gであり、UAVの重心付近に容易に配置できます。また、同製品は角度変化量/速度変化量の出力機能、同期機能、セルフテスト機能、SPI(Serial Peripheral Interface)ベースのシンプルな通信機能を備えています。そのため、コストや複雑さを伴うミッション・クリティカル・グレードのIMUと同等の安定性と信頼性を実現可能です。アナログ・デバイセズは、UAV用のプラットフォームで用いられるセンサー・フュージョン・システムに最適な高性能のIMU製品群を提供しています。表2に、ADIS16500シリーズの製品の概要をまとめました。
| 仕様 | ADIS16575 | ADIS16577 | ADIS16545 | ADIS16547 |
| ジャイロ・スコープのダイナミック・レンジ〔°/秒〕 | ±450/±2000 | ±450/±2000 | ±125/±450/±2000 | ±125/±450/±2000 |
| ジャイロ・スコープの動作中のバイアス安定性〔°/時〕 | 2/7.5 | 2/7.5 | 0.5/0.8/2.8 | 0.5/0.8/2.8 |
| ジャイロ・スコープの角度ランダム・ウォーク〔°/√時〕 | 0.2/0.35 | 0.2/0.35 | 0.07/0.07/0.13 | 0.07/0.07/0.13 |
| ジャイロ・スコープのノイズ密度〔°/秒/√Hz〕 | 0.004/0.006 | 0.004/0.006 | 0.0016/0.0018/0.003 | 0.0016/0.0018/0.003 |
| 加速度センサーのダイナミック・レンジ〔g〕 | ±8 | ±40 | ±8 | ±40 |
| 加速度センサーの動作中のバイアス安定性〔μg〕 | 2.9 | 13 | 2.8 | 13 |
| 加速度センサーの速度ランダム・ウォーク〔m/秒/√時〕 | 0.009 | 0.04 | 0.008 | 0.04 |
| 加速度センサーのノイズ密度〔μg/√Hz〕 | 15 | 80 | 15 | 82 |
| 消費電流〔mA〕 | 30 | 30 | 140 | 140 |
| 追加機能 | FIFO、連続的なバイアス推定 | FIFO、連続的なバイアス推定 | 連続的なバイアス推定 | 連続的なバイアス推定 |
ナビゲーションの完全性と自律性
UAVの自律化が進むにつれ、慣性データの完全性がより重要になっています。エッジでの認識/マッピング/制御に使われるAI用のアルゴリズムには、ノイズが小さく安定したモーション・データを供給しなければなりません。ノイズが含まれたデータを引き渡すと、画像の鮮明さが損なわれたり、健全性を監視するための振動のデータが劣化したりすることになります。また、GPSを利用できない環境における位置の推定精度も低下します。
先進的なUAVのプラットフォームでは、安全性を確保し、認証を取得するための要件を満たすことを目的として、有人航空機で用いられる設計手法を取り入れるケースが増えてきました。例えば、SWaPの小さいMEMSモジュールを使用し、冗長化された慣性システムの構成(多数決ロジックを備えたデュアル/トリプルIMUの構成など)が採用されるようになっています。高性能のIMU、堅牢性の高いセンサー・フュージョン、レーダーなどの補完的なセンサーを組み合わせることで、信頼性の高い自律飛行を実現可能なナビゲーション機能用の基盤が確立されます。図4は、UAVでセンサー・フュージョンを利用して安定した飛行を実現するための制御フローを表しています。
IMUは、UAVの飛行の安定性と自律ナビゲーションを実現するための代替が不可能な基盤として用いられます。高レートかつデタミニスティックなモーション・データを提供する能力により、マルチロータ機の姿勢の維持や固定翼機の進路の保持に不可欠なクローズド・ループ制御のアーキテクチャを実現できます。GNSS、気圧センサー、ビジョン・センサーも重要な絶対基準になる情報を提供します。しかし、それらはIMUが提供するような時間分解能や動作の連続性に対応することはできません。民生グレードのIMUとミッション・クリティカル・グレードのIMUの性能の差は、運用の成否に直結します。例えば、安定した制御が行われるか、振動を生じさせる制御が行われるかといった違いが生じます。また、測位の精度がm単位になるかm以下の単位になるかといった差異も生じ得ます。更には、GPSの信号が途絶した環境で航行が可能な時間が数分か数時間かといった違いが生まれます。
先述したように、IMUの性能は民生グレードからナビゲーション・グレードまでに分類されます。IMUの選定は、単にコンポーネントの仕様を決定するということではありません。そうではなく、システムのアーキテクチャの根幹にかかわる重要な判断を下すということを意味します。慣性伝搬の誤差に関する数学的な原理は厳格なものです。バイアスは累積してドリフトになり、ノイズはセンサー・フュージョンによる正確な推定を阻害し、環境に対する安定性の欠如はミッションの遂行能力を低下させます。センサー・フュージョンを利用する先進的なアーキテクチャであれば、ある程度の問題は補正できるでしょう。しかし、センサーのレベルで失われた精度をアルゴリズムで回復させるのは不可能です。ADIS16500シリーズのような信頼性の高いIMUは、要件の厳しい用途に求められるバイアスの安定性、低いノイズ・フロア、環境に対するレジリエンスを備えています。それだけでなく、SWaPやコストの面でも商用レベルの要件を満たします。
今後は、高度なIMU、AIによる認識技術、冗長化されたアーキテクチャ、マルチモーダルのセンサー群の融合が図られることになるでしょう。それにより、次世代の自律型プラットフォームが生み出されるはずです。UAVは遠隔からの操縦を前提とするシステムから、都市の空域、産業施設内、紛争地域などで完全に自律的に活動するエージェントへと進化しつつあります。その過程で、慣性データの信頼性は、単に性能を左右するだけでなく、安全性の実現や認証の取得の可否をも左右する重要な要素として存在し続けます。信頼性の高い自律飛行を実現するためには、ナビゲーションの能力がセンサーの性能に大きく依存することを理解しておかなければなりません。IMUこそが、その能力を支えるために不可欠な心臓部として機能するのです。
多くのメーカーは、UAVの性能を最大化し、運用範囲を拡大して、競争上の優位性を確立したいと考えているでしょう。そのためには、IMUの選定とシステムへの統合を戦略的な優先事項として捉えなければなりません。センサー・フュージョンに対応するプラットフォームの堅牢性は、そのシステムに入力されるデータの中で最もレートが高く最も信頼性の高いものに依存します。飛行制御の領域では、慣性データが常にそれに相当する入力になるのです。
まとめ:性能、安全性、スケーラビリティを考慮したUAVの設計
UAVは、単なる独立した構成要素の寄せ集めとして実現されるのではありません。ナビゲーション、電力、通信に関する各種の機能が絶えず相互作用する密に結合されたシステムとして構成されます。例えば、IMUにドリフトが生じると制御ループの安定性が損なわれます。そうした不具合は単独で終わることは稀であり、フィードバック・ループを通じてエラーが連鎖/増幅していきます。産業用のUAVが成功を収めているのは、各サブシステムを個別に最適化するのではなく、それらを一体化したシステム全体の性能を注視して設計が行われているからです。高精度のIMUで取得した慣性データは、状態の正確な推定を可能にします。集積度が高くSWaPやコストが最適化された製品を採用することで、有人航空機のレベルの性能を実現することができます。
UAVにはIMUと同様に極めて重要なサブシステムが存在します。1つは、インテリジェントなパワー・マネージメントやバッテリ管理(バッテリ・マネージメント)に使用するアーキテクチャです。もう1つは、ミッション・クリティカルな通信リンクです。それらに問題があると、飛行の安定性、長い航続時間、運用上の安全性を実現できない可能性があります。次回(Part 2)は、これらのサブシステムの間の相互作用について検討します。その上で、なぜ産業用のUAVには民生用のドローンとは根本的に異なるアーキテクチャが必要なのかを明らかにします。
UAVについては、規制の整備が進み、より高度な自律性や規模の拡大が求められるようになりました。それに伴い、本稿で述べたようなシステム・エンジニアリングの考え方は不可欠なものになります。UAVについては、部分的な最適化にとどまらず、全体的な視点から設計を実施することが重要です。そのようなアプローチにより、安全性と信頼性が高く、ミッション・クリティカルな次世代のプラットフォームを実現することが可能になります。
著者について
この記事に関して
製品
Precision, MEMS IMU
12チャンネル・マルチセル・バッテリ・モニタ
RFアジャイル・トランシーバ