Altera FPGA向け電源ソリューション

Altera FPGA向け電源ソリューション

著者の連絡先情報

要約

フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)は、デジタル信号処理、医療用画像処理、高性能コンピューティングをはじめとする多岐にわたるアプリケーションならびにエンドマーケットで使用されています。本アプリケーションノートでは、FPGAの給電に関する問題を概説すると共に、Altera® FPGAの給電に対するマキシムのソリューションを紹介します。

はじめに

フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)は、多岐にわたるアプリケーションおよびエンドマーケットで使用されており、さらに、設計のフレキシビリティに優れ、エンジニアリングコストが低いことからASICを上回るマーケットシェアを占めています。FPGA向けの電源設計および管理は、アプリケーション全体の重要な要素のひとつです。この記事では、電源設計に関する問題の一部を解決する方法を考察すると共に、コスト、サイズおよび効率の間のトレードオフを解説します。さらに、マキシムのAltera® FPGA向けソリューションも併せて紹介します。

FPGAの概要

FPGAはプログラム可能なデバイスであり、プログラム可能なインターコネクトを介して接続される設定可能なロジックブロック(CLB)のアレイで構成されています。これらのCLBは通常、ルックアップテーブル、フリップフロップ、マルチプレクサなどさまざまなデジタルロジックコンポーネントで構成されています。FPGAを構成するその他のコンポーネントには、入出力端子ドライバ回路(I/O)、メモリ、デジタルクロックマネジメント(DCM)回路があります。現代のFPGAは、FIFOおよびエラー修正コード(ECC)ロジック、DSPブロック、PCI Express® コントローラ、イーサネットMACブロック、高速ギガビットトランシーバをはじめとする機能を備えています(図1)。
図1. 標準的なFPGAアプリケーショブロック図
図1. 標準的なFPGAアプリケーショブロック図

FPGAアプリケーション向けシステムレベル電源アーキテクチャ

通信分野における大半の高性能/高出力FPGAアプリケーションは、48Vバックプレーンより給電されているプラグインカード上に搭載されています。これらのアプリケーションでは、個々のカードに対して2ステージ中間バスアーキテクチャ(IBA)が通常使用されています(図2)。第1のステージはステップダウンコンバータで、48Vを12Vや5Vなどの中間電圧に変換します。プラグインカードは、安全上の理由から、さらには、電流ループおよびカード間の干渉の可能性を排除するためにしばしば相互分離されています。IBAの第2段は、ポイントオブブロード(POL)レギュレータとして知られている非絶縁レギュレータを使用して、中間電圧を複数のさらに低いDC電圧に変換します。コンピューティング、産業および自動車分野で使用されているFPGAは通常、12Vから24Vの非絶縁電源から電力を受けています。
図2. FPGA向けの標準的な2ステージ中間バスアーキテクチャ(IBA)
図2. FPGA向けの標準的な2ステージ中間バスアーキテクチャ(IBA)

POLレギュレータ

POLは高性能レギュレータであり、そのVOUTレールは、個々の負荷の近くに配置されています。この配置により、高過渡電流の供給と、FPGAなどの高性能半導体デバイスに求められるノイズの低減という困難な問題の解決を図れます。POLを設計する際に検討すべきアプリケーションレベルのパラメータは以下のとおりです。
  • コスト
  • サイズ
  • 効率
上記のそれぞれのパラメータの優先順位は、エンドマーケットによってしばしば異なります。したがって、各ソリューションを個別に検討する必要があります。たとえば、産業市場および医療市場がコストよりもサイズを優先する傾向にあるのに対し、ワイヤレスアプリケーションは、一般的にサイズよりもコストを優先します。バッテリで作動するアプリケーションの場合には、効率がとりわけ重要であり、民生用アプリケーションは、3つのすべてのパラメータを非常に意識しています。通常、どの種類のDC-DCレギュレータ(低ドロップアウトリニアレギュレータまたはスイッチモード電源)を使用するかは、求められる効率によって決まります。

低ドロップアウトリニアレギュレータ(LDO)

LDOは、比較的簡単に実装することが可能で、安価であり、ノイズをほとんど発生しません。LDOの最大の欠点は効率が悪いことであり、この効率は、VOUTとVINの比率に左右されます。たとえば、VINが3.3V、VOUTが1.2VのLDOの効率はわずか36%です。電力差は、熱として消散されます。

スイッチモード電源(SMPS)

SMPSは通常、90%を超える効率を実現していますが、LDOよりも実装が困難です。また、SMPSは、LDOと比較してより多くのノイズを発生、放射します。
LDOは通常、比較的低い電力を必要とするアプリケーション向けに検討されています。SMPSは、効率が優れていることから高電力アプリケーションに使用されています。高効率は、熱管理および信頼性にとって重要なパラメータです。効率が高くなるほどデバイスの温度が低くなるため、信頼性が改善され、さらに、必要なヒートシンクの小型化と相まってソリューション全体のダウンサイジングが可能になります。

標準的なFPGA電源に関する要求事項

高性能デバイスの好例として、Altera Stratix® V FPGAが挙げられます。この部品の電源要求事項を表1に示します。
表1. Altera Stratix V電源*の推奨動作条件
Power Supply Description Voltage (V, min) Voltage (V, typ) Voltage (V, max)
VCC Core voltage and peripheral circuitry power supply 0.82 0.85 0.88
VCCPT Power supply for programmable power technology 1.45 1.5 1.55
VCCAUX Auxiliary supply for the programmable power technology 2.375 2.5 2.625
VCCPD I/O predriver (3.0V) power supply 2.85 3.0 3.15
I/O predriver (2.5V) power supply 2.375 2.5 2.625
VCCIO I/O buffers (3.0V) power supply 2.85 3.0 3.15
I/O buffers (2.5V) power supply 2.375 2.5 2.625
I/O buffers (1.8V) power supply 1.71 1.8 1.89
I/O buffers (1.5V) power supply 1.425 1.5 1.575
I/O buffers (1.35V) power supply 1.283 1.35 1.45
I/O buffers (1.25V) power supply 1.19 1.25 1.31
I/O buffers (1.2V) power supply 1.14 1.2 1.26
VCCPGM Configuration pins (3.0V) power supply 2.85 3.0 3.15
Configuration pins (2.5V) power supply 2.375 2.5 2.625
Configuration pins (1.8V) power supply 1.71 1.8 1.89
VCCA_FPLL PLL analog voltage-regulator power supply 2.375 2.5 2.625
VCCD_FPLL PLL digital voltage-regulator power supply 1.45 1.5 1.55
VCCBAT Battery back-up power supply (for design security volatile key register) 1.2 3.0
Transceiver GX and GS Power Supplies
VCCA_GXBL** Transceiver high-voltage power (left side) 2.85, 2.375 3.0, 2.5 3.15, 2.62
VCCA_GXBR** Transceiver high-voltage power (right side)
VCCHIP_L Transceiver HIP digital power (left side) 0.82 0.85 0.88
VCCHIP_R Transceiver HIP digital power (right side)
VCCHSSI_L Transceiver PCS power (left side) 0.82 0.85 0.88
VCCHSSI_R Transceiver PCS power (right side)
VCCR_GXBL Receiver power (left side) 0.82, 0.95 0.85, 1.0 0.88, 1.05
VCCR_GXBR Receiver power (right side)
VCCR_GXBL Transmitter power (left side) 0.82, 0.95 0.85, 1.0 0.88, 1.05
VCCT_GXBR Transmitter power (right side)
VCCH_GXBL Transmitter output buffer power (left side) 1.425 1.5 1.575
VCCH_GXBR Transmitter output buffer power (right side)
*Altera Stratix Vに関する最新情報は、以下をご覧ください:www.altera.com/products/devices/stratix-fpgas/stratix-v/stxv-index.jsp
**CMU PLL、レシーバCDRの一方あるいは両方が6.5Gbpsを超える基本データ転送速度で構成されている場合は、この電源を3.0Vに接続する必要があります。転送速度が6.5Gbps以下であれば、この電源を3.0Vまたは2.5Vに接続できます。
ほとんどのアプリケーションの場合、電圧レール毎に個別の電源を用意するのは実際的ではありません。そのため、Alteraは、電源シェアリングガイドラインを提供しています。たとえば、データ転送速度が6.5Gbps以下で設計されているStratix Vトランシーバは通常、図3に示す構成を使用することができます。この場合、SMPSは、それぞれに最大20Aを断続的に給電しなければならない可能性があります。
図3. データ転送速度が6.5GbpsのStratix Vトランシーバ向け電源シェアリング
図3. データ転送速度が6.5GbpsのStratix Vトランシーバ向け電源シェアリング
AlteraなどのFPGAメーカーは、該当するFPGAの必要な機能に基づいてFPGAデバイスの必要電源を概算するためのソフトウェアスプレッドシートをしばしば用意しています。詳細は、www.altera.com/powerをご覧ください。設計者は、設計の早い段階でこれらのスプレッドシートを使用し、適切な電源および熱管理コンポーネントの選択を進めるべきです。図3に示すStratix Vセットアップに必要な電力量の一例を表2に示します。この電力量は、システム効率および必要なパワーレギュレータソリューションの決定に寄与します。
表2. 電力量の計算
VOUT (V) IOUT_MAX (A) POUT (W) VIN (V) Efficiency (Estimated) PIN* = POUT/Eff. IIN* Required (A) Power Dissipated (W)
VCC, VCCHIP_[L,R], VCCHSSI_[L,R] 0.85 3.0 2.55 5.0 0.93 2.74 0.55 0.19
VCCR_GXB[L,R], VCCT_GXB[L,R] 0.85 2.0 1.7 5.0 0.93 1.83 0.36 0.13
VCCIO, VCCPD, VCCPGM 2.5 0.7 1.75 5.0 0.95 1.84 0.37 0.09
VCCAUX, VCCA_GXB[L,R], VCCA_FPLL 2.5 1.0 2.5 5.0 0.93 2.7 0.54 0.20
VCCPT, VCCH_GXB[L,R], VCCD_FPLL, VCCD_BATT 1.5 0.7 1.05 5.0 0.6 1.88 0.38 0.83
Total 9.55 10.99 2.2 1.44
*PINおよびIINは、図3に示すDC入力電源からの電力および電流です。

電源について

FPGA電源レール電圧および電流の概算に電力概算ツールを使用することに加え、パワーレギュレータの選択に関わる事柄は他にもあります。考慮すべき点の一部を以下に解説します。

スタートアップシーケンシング/トラッキング

FPGAに給電するためには、一般的に3つ以上の電圧レールが必要です。これらのレールの間にパワーアップおよびパワーダウン用シーケンシングを実装するのが良い設計手法です。このシーケンシングの一番の利点は、パワーアップ時の突入電流を制限できることです。また、FPGA自体がシーケンシングを必要としない場合であっても、マイクロコントローラやフラッシュPROMなどシステム構成に含まれるその他のデバイスがシーケンシングを必要とする場合があります。シーケンシングが無視された場合、シーケンシングを必要とするデバイスが損傷したり、あるいは、ラッチアップにより不具合が発生する可能性があります。
シーケンシングには3つの種類があります。
  • 同時トラッキング(「同期トラッキング」としても知られている)
  • シーケンシャル
  • レシオメトリックトラッキング
3種類のシーケンシングと、電圧レールがどのように相互上昇するかを図4に示します。
図4. 3種類のシーケンシング:(a)同時トラッキング、(b)シーケンシャル、(c)レシオメトリックトラッキング
図4. 3種類のシーケンシング:(a)同時トラッキング、(b)シーケンシャル、(c)レシオメトリックトラッキング
一般的にはFPGAに適したシーケンシング方法である同時トラッキングを使用すると、電圧レールは同時に、また同一速度で個々の最終セットポイントまで上昇します。これにより、ラッチアップとバスコンテンションに起因する不安定な起動を防止することができます。また、FPGAの損傷の原因となり得る寄生コンダクションパスの作動が回避されます。この種類のシーケンシングに必要なスタートアップ突入電流が高くなるほど、電圧レールを確実に同時上昇させるためにより大きなコンデンサバンクが必要になる場合があります。突入電流の問題は、マキシムの大半のPOLに内蔵されている調整可能なソフトスタート機能により緩和されます。たとえば、MAX8686は、同時トラッキングを容易にし、ひとつのコンデンサの値によりプログラム可能なソフトスタート時間を提供します。
シーケンシャルシーケンシングの主な利点は、一般的に実装が簡単で、必要なスタートアップ突入電流が同時シーケンシングやレシオメトリックシーケンシングよりも少ないことです。しかし、この方法を用いた場合、電圧レール間で最大電圧差が生じます。この電圧差により、デバイスの挙動の信頼性が損なわれる可能性があります。
レシオメトリックトラッキングは、すべての電圧レールを個々のセットポイントまで同時に上昇させます。これにより、シーケンシャルシーケンシングと比較してレール間の電圧差が低減されます。このレベルのスタートアップ突入電流は、同時トラッキングの電流レベルとシーケンシャルシーケンシングの電流レベルの間に位置します。

単調なスタートアップ電圧上昇

スタートアップ時に電圧レールを単調に上昇させるには、パワーアップを確実に実施するために重要です。すなわち、電圧レールは、個々のセットポイントまで上昇し続け、途中で降下しないことが求められます。POLに十分な出力キャパシタンスがない場合、降下が発生する可能性があります(図5)。内部ロジックブロックが有効動作状態に初期化されている場合、ほとんどのFPGAコア電圧のクリティカルエリアは、0.5Vと0.9Vの間に存在します。
図5. スタートアップ時の非単調電圧上昇の例
図5. スタートアップ時の非単調電圧上昇の例

ソフトスタート

大半のAltera FPGAは、最小スタートアップ上昇速度および最大スタートアップ上昇速度をそれぞれ50µs、100msに定めています。しかし、例外は存在します。たとえば、Stratix Vの最小スタートアップ上昇速度は200µsです。
電源レギュレータは、スタートアップ時に電流制限を徐々に上昇させてソフトスタートを実行します。このため、電圧レールの上昇速度は遅くなり、FPGAに流れるピーク突入電流は減少します。マキシムのPOLにより、いずれかのPOL端子に接続されているソフトスタートコンデンサの値に基づいてソフトスタート時間をプログラムすることができます。

プリバイアストスタートアップ

電源が停止された際に、FPGA電圧レールがある電圧レベルでバイアスされたままになる状態が存在します。このプリバイアスは通常、FPGAを通るさまざまな寄生コンダクションパスの結果です。電源が再起動し、プリバイアスト出力電圧を低下させると、FPGAのスタートアップが失敗する可能性があります。そのため、目的の順序で並んでいる他のFPGA電圧レールと共に電源の出力電圧をセットポイントまで上昇させる必要があります。
図6. プリバイアスト出力の推奨シーケンシャルシーケンシングスタートアップ
図6. プリバイアスト出力の推奨シーケンシャルシーケンシングスタートアップ

PCBレイアウト

PCBの設計に取り組んでいるエンジニアは、コンポーネントの配置、信号経路および基板層に配慮しなければなりません。FPGAのデザインに強く推奨されているのが、信号経路層間にグランド層を持つ多層基板です。グランド層で提供されるシールディングによって、隣接する配線層に配慮せずに各層の信号を配線できます。その結果、より簡素化され、より実用的なレイアウトが可能になります。
PCB層順(スタックアップ)における電源電圧とグランドプレーンの配置は、電源電流パスの寄生インダクタンスに大きな影響を及ぼします。
  • 優先順位の高い電圧供給層を、コンポーネント層の近く(PCBスタックアップの上半分)に配置する必要があります。たとえば、過渡電流が高い電源の場合は、コンポーネント層の近くに個々の関連電圧プレーンとグランドプレーンを配置する必要があります。この配置により、高過渡電流を流さなければならない経路長(寄生インダクタンス)が短くなります。
  • 優先順位の低い電源は、コンポーネント層から離して(PCBスタックアップの下半分)配置する必要があります。
デカップリングコンデンサは、FPGA電源端子のできる限り近くに接続する必要があります。デカップリングコンデンサは、電源から伝播するノイズと、周囲回路から放射されるノイズを低減します。
SMPSレイアウトに関して推奨されている事柄の一部を以下に紹介します。
  • 重要なコンポーネントの間を短く幅広い配線にして、電源スイッチ電流パス内の寄生インダクタンスを最小限に抑えます。これにより、FPGA内に伝播、放射される可能性のある電圧スパイクが減少します。
  • レギュレータのデカップリングコンデンサを、レギュレータのIC端子のできる限り近くに配置します。電源プレーンとアナロググランドプレーンを離します。
  • ゲートドライブ電流により発生するインピーダンスを低減するため、レギュレータのドライバ端子からMOSFETゲート端子までのトレースを常に短く、幅広くしておきます。
  • 内部グランドプレーンに接続される高電流電源コンポーネントには、多数のグランドビアを使用してループインピーダンスを低減する必要があります。
レイアウトに関する詳細については、MAX8686データシートをご覧ください。

電源過渡応答

FPGAは、複数のクロックドメインを備えているため異なる周波数で多数の機能を実装することができます。その結果、電流要件のステップ変化が大きくなる可能性があります。「過渡応答」とは、上述のような負荷電流の突然の変化に対応する電源の能力を指します。レギュレータは、レギュレータ自体のセットポイントを大幅にオーバーシュートあるいはアンダーシュートすることなく、また、出力電圧に持続リンギングを生じることなく応答する必要があります。レギュレータの過渡応答は、以下に左右されます。
  1. 出力電圧(あるいは、電流モードコントローラの場合は電流)の変化を検出した際にレギュレータの制御ループが応答する速度。
  2. 出力キャパシタンスの値および質。
制御ループユニティゲインクロスオーバー周波数は通常、レギュレータスイッチング周波数の1/10になるように設計されます。したがって、高いスイッチング周波数(最大1MHz)で動作することにより素早く応答するようレギュレータを設計することができます。
出力コンデンサは、非常に低い等価直列抵抗(ESR)であり、VOUT過渡オーバーシュートおよびアンダーシュートの大きさを最小限に抑えられるほど大きい容量であることが求められます。ポリマコンデンサは、最小のESRで最大のキャパシタンスをもたらします。セラミックコンデンサは、優れた高周波特性を備えていますが、デバイス当りの総キャパシタンスは、ポリマコンデンサの1/2から1/4です。一般的には、バルク出力キャパシタンスにはポリマまたはタンタルコンデンサが使用されるのに対し、FPGA入力電源端子には、最終ステージフィルタリング用として比較的低い値のセラミックコンデンサが使用されます(図7)。
図7. Altera FPGA向けの12VIN、20Aで1.2VOUTの2相MAX8686電源設計。(a)過渡応答:2Aから12Aの負荷ステップで22mVOUTの電圧変動。(b) 5AOUTでVOUTリップルは5mV未満。


図7. Altera FPGA向けの12VIN、20Aで1.2VOUTの2相MAX8686電源設計。(a)過渡応答:2Aから12Aの負荷ステップで22mVOUTの電圧変動。(b) 5AOUTでVOUTリップルは5mV未満。
図7. Altera FPGA向けの12VIN、20Aで1.2VOUTの2相MAX8686電源設計。(a)過渡応答:2Aから12Aの負荷ステップで22mVOUTの電圧変動。(b) 5AOUTでVOUTリップルは5mV未満。

外部クロックとの同期

FPGAが使用されるアプリケーションには通常、共通クロックとの同期を実行するための電源レギュレータが必要です。多くのPOLは、外部SYNC端子を備えているため、システム設計者は、1つまたは複数のレギュレータを共通のシステムクロックに同期させることができます。

マルチフェーズ動作

マルチフェーズレギュレータは、基本的に同期および360/n (nは各位相を示す)度位相がずれている複数のレギュレータで動作します。負荷電流が20Aから30Aを超えると、マルチフェーズレギュレータを用いた設計の利点が顕著になります。以下の利点があります。
  1. 入力リップル電流が低下し、結果的に必要な入力キャパシタンスは大幅に低減する。
  2. 実効的にリップル周波数が倍増することにより出力リップル電圧が低下する。
  3. 損失をより多くのコンポーネントに分散させることでコンポーネントの温度が低下する。
図8. マルチフェーズレギュレータブロック図
図8. マルチフェーズレギュレータブロック図

リモート検出

電源出力とFPGA電源端子との間で大幅な電圧降下が発生する可能性があります。この電圧降下は、負荷電流が高く、FPGA電源端子のすぐ近くにレギュレータ回路を配置することが不可能なアプリケーションで発生します。リモート検出は、1組の専用トレースを用いてFPGAの電源端子の電圧を正確に測定することでこの問題を解決します(図9)。また、リモート検出は、公差が極めて厳しい(3%以下)電圧レールにも推奨されています。
図9. リモート検出ブロック図
図9. リモート検出ブロック図

マキシムのAltera FPGA向け電源ソリューション

マキシムは、LODレギュレータとSMPSレギュレータの両方を提供しています。SMPSレギュレータは通常、より高い電力のFPGA電圧レールを供給するために選択されます。SMPSレギュレータは、システム効率と熱の管理を向上させます。マキシムのSMPSレギュレータは、正確な監視および制御による性能、電力密度、品質およびデジタル電源管理が必要な場合の完全な電源管理ソリューションとなります。
マキシムの電源レギュレータには以下のものがあります。
  • PWMコントローラ
  • PWMレギュレータ—集積されたMOSFETおよび/または内部補償およびデジタルププログラミング機能を備えたコントローラ
  • PMBus™デジタルシステム制御および監視
  • デジタル電源制御IC

同期PWMコントローラ

同期PWMコントローラは、外部ショットキダイオードの代わりにMOSFETに使用して同期整流を実装するため、効率が向上します。スイッチングMOSFETがコントローラICの外部にあるため、同期PWMコントローラは、高い電流レベルに対応することができます。設計者は、特定の電流要件に最適なディスクリートMOSFETを選択することができます。
マキシムは、FPGAと併用できるさまざまな同期PWMコントローラを提供しています。たとえば、MAX15026はシングルコントローラ、MAX15023はデュアルコントローラ、MAX15048/MAX15049はトリプルコントローラであり、いずれも最大28VINで動作するため、5VINおよび12VIN FPGAアプリケーションに適しています。さらに、マキシムは、MAX15046などの産業用および自動車用高電圧コントローラ(最大40VIN)も提供しています。マキシムの大半のデュアル(またはそれ以上の)コントローラは、シーケンシングおよびトラッキングも内蔵しているため、設計者は、外部シーケンサを必要とすることなくマルチレールICを使用することができます。

PWMレギュレータ

マキシムの選りすぐりのPWMレギュレータは、入力電圧が2.5Vから28Vまでの範囲の1Aから200Aまでの出力電流を簡単に制御します。レギュレータは、PWMコントーラと一体となった切換MOSFETを備えています。MAX15053MAX15041MAX8686がその一例です。MAX15021およびMAX17017はマルチレールレギュレータであり、デュアルおよびクワド電源レールに対応しています。これらのICの多くは、広く採用されている固定出力電圧オプションと完全内部補償を備えています。
一部の部品は、シーケンシングやトラッキングをはじめとするすべてのタイミングイベントのマイクロ秒単位のプログラミングを可能にするデジタルプログラミング機能、オプションデジタル制御機能さらには監視機能に対応しています。これらの極めてフレキシブルな監視機能は、警告および異常スレッショルドのインテリジェント設定に配慮したものです。各レギュレータの異常対応手順の個別設定も簡単に行えます。0.2%の精度の出力電圧の微調整によって、高性能FPGAの厳しい公差に確実に対応します。デジタルプログラミング化および監視は、リモート接続によるフィールド更新を可能にし、さらには、高価なフィールド補修を回避するのに役立ちます。また、故障を調査し、根本原因を突き止めることができるようイベントを記録する能力を備えているという利点もあります。マキシムのPOLレギュレータの詳しいリストは、当社の製品ガイド「Altera FPGA向けアナログソリューション」に掲載されています。

POLデジタルシステム制御および監視

通信および演算アプリケーションで使用されるラックベースのインフラストラクチャ設備には、電源およびファンを始動、停止する高度な電源管理が必要です。これらの市場向けの装置を構築する一部の顧客は、パワーマネジメントバス(PMBus™)プロトコルを採用しています。PMBusは、オープンスタンダードパワーマネジメントプロトコルであり、完全定義されたコマンド言語を採用しています。この言語のお陰で、電源システム内の電源コンバータおよびその他のデバイスとの通信が容易になります。マキシムは、複数のPMBusモニタおよびシステムコントローラを提供しています。MAX34440/MAX34441/MAX34446は、複雑なシステムMBusモニタのよい例です。これらのデバイスは、電源の出力電圧を監視し、ユーザーによる設定が可能な過電圧および不足電圧スレッショルドを絶えずチェックします。MAX34440は、最大6つの電源を管理することができます(図10)。MAX34441は、最大5つの電源を監視することが可能で、さらにはクローズドループファン速度コントローラを内蔵しています。MAX34440、MAX34441のいずれも、ユーザー設定可能なレベルに合わせて電源出力電圧を増減させることができます。マージニングはクローズドループ配列で実行されるため、デバイスはパルス幅変調(PWM)出力を自動的に調整し、その結果の出力電圧を測定します。また、この電源マネージャは、パワーアップとパワーダウンの両方で電源を任意の順序にシーケンスすることができます。外部電流検知アンプ(CSA)を追加すれば、これらのデバイスは電流を監視することができます。
図10. MAX34440 PMBus 6チャネル電源マネージャ
図10. MAX34440 PMBus 6チャネル電源マネージャ
電源データロガーのMAX34446は、電圧の過電圧状態および不足電圧状態、さらには過電流状態および過熱状態を監視します。このデバイスは、ユーザープログラマブルなスレッショルドを絶えずチェックします。これらのスレッショルドを超えた場合、デバイスは、最近のリアルタイム動作状態を不揮発性フラッシュメモリに記録します(図11)。 デバイスは、最大4つの電圧または電流、さらには3つの温度センサーを監視することができます。
図11. MAX34440/MAX34441/MAX34446異常検出/記録
図11. MAX34440/MAX34441/MAX34446異常検出/記録
MAX8688は、完全統合デジタル電源コントローラ/モニタの一例であり、既存のPOLで作動して完全なデジタルプログラミング化を可能にします(図12)。基準入力、フィードバックノードおよび出力イネーブルとインタフェース接続することで、MAX8688は、POLを制御してトラッキング、シーケンシング、マージング、出力電圧の動的調整などの機能を実行します。
図12. MAX8688デジタルシステムのPOL制御および監視
図12. MAX8688デジタルシステムのPOL制御および監視

デジタル電源制御IC

歴史的に、電源メーカーは、LDOおよびSMPSレギュレータに重点を置いてきました。しかし、システムレベルの電源管理機能を使用している複雑なインフラストラクチャ設備においては、より高度なデジタル制御ループが、出力電圧に関係なく確実に自動補償を行います。この高度なデジタル制御ループは、設計の簡素化と動的電源管理を可能にします。アナログ制御ループを使用する一般的な電源レギュレータとは異なり、デジタル電源制御IC (DPC)は、デジタル回路を使用して電源の制御ループを実装します。高度なシステム電源管理を必要としている顧客は、トータルソリューションコストの面で恩恵を受けることができます。この文書で既述したアナログ電源レギュレータと同様に、これらのDPCも、PMBusインタフェースを介してシステムコントローラと通信する統合オンチップデジタル電源管理機能を備えているため、グラフィカルユーザーインタフェース(GUI)を介して電源設計を簡単に行うことができます。デジタル制御ループICにはいくつかの利点があります。
  • 製品化までの時間が短い:高度なDPCは、出力電圧に関係なく制御ループを自動補償することで設計時間を短縮することができます。アナログ制御機能を備えた内部補償POLの恩恵を既に受けている顧客の場合、デジタル制御が使いやすさをさらに高めてくれます。
  • 低コスト:DPCは、コンポーネントの数を低減し、小型化します。出力コンデンサは、50%まで低減が可能です。より少ない数のコンポーネントで信頼性が向上します。
  • 性能および信頼性の向上:IOUT過渡に対する応答は最適制御されるため、VOUT過渡は減少します。制御アルゴリズムは、電圧、電流および温度の変動に応じて調整を行うことで効率を高めます。
  • フレキシビリティの強化:DPCは、システム電源管理を簡素化します。システム電源は、PMBusを介して制御され、将来のシステム設計に備えて新たな電源を簡単に追加したり除去することができます。

InTune™デジタル電源

マキシムのInTuneデジタル制御電源製品は、フィルタキャパシタンスが小さく、高効率の高性能DC-DC電源設計を簡単に実現することができます。InTuneデジタル電源テクノロジーは、競合他社が採用している比例・積分・微分(PID)制御ではなく「状態空間」または「モデル予測」制御に基づいています。その結果、過渡応答が速くなります。競合するPIDコントローラとは異なり、InTuneアーキテクチャは、フィードバックアナログ-デジタルコンバータ(ADC)を使用しています。ADCは、出力電圧範囲全体をデジタル化するため、競合コントローラで使用されている「窓付き」ADCに起因する問題点は排除されています。ADCの自動補償ルーティンは、測定されたパラメータに基づいており、幅広い動作条件において高い精度と効率を確保します。
図13に示すMAX15301は、すべての機能を内蔵し、フレキシブルかつ効率的なデジタルPOLコントローラであり、InTuneアーキテクチャを基礎にしており、高度な電源管理機能および遠隔測定機能を備えています。
図13. MAX15301の標準動作回路
図13. MAX15301の標準動作回路
表3. 共通Altera FPGA/CPLD電源電圧に関する電圧要件
FPGA
VCC¹ (Tolerance)
VCCAUX² (Tolerance) VCCIO (Tolerance) VCCPD (Tolerance)
Stratix V 0.85V (±30mV) 2.5V (±5%) 1.2V, 1.25V, 1.35V, 1.5V, 1.8V, 2.5V, 3.0V (±5%) 2.5V, 3.0V (±5%)
Stratix IV 0.90V³ (±30mV) 2.5V (±5%) 1.2V, 1.5V, 1.8V, 2.5V, 3.0V (±5%) 2.5V, 3.0V (±5%)
Arria II 0.90V (±30mV) see VCCPD 1.2V, 1.5V, 1.8V, 2.5V, 3.3V (±5%) 2.5V, 3.0V, 3.3V (±5%)
Arria GX 1.20V (±50mV) see VCCPD 1.2V, 1.5V, 1.8V, 2.5V, 3.0V, 3.3V (±5%) 3.3 (±5%)
Cyclone IV E 1.0V (±30mV) 1.2V (±50mV) 2.5V (±5%) 1.2V, 1.5V, 1.8V, 2.5V, 3.0V, 3.3V (±5%)
Cyclone IV GX 1.2V (±40mV) 2.5V (±5%) 1.2V, 1.5V, 1.8V, 2.5V, 3.0V, 3.3V (±5%)
Cyclone III 1.20V (±50mV) 2.5V (±5%) 1.2V, 1.5V, 1.8V, 2.5V, 3.0V, 3.3V (±5%)
MAX V 1.8V (±5%) 1.2V, 1.5V, 1.8V, 2.5V, 3.3V (~±5%)
MAX II 3.3V (±300mV) 2.5V (±5%) 1.8V (±5%) 1.5V, 1.8V, 2.5V, 3.3V (~±5%)
Hardcopy IV 0.9V (±30mV) 2.5V (±5%) 1.2V, 1.5V, 1.8V, 2.5V, 3.0V (~±5%) 2.5V, 3.3V (±5%)
*最新の仕様については、該当するデバイスのデータシートをご確認ください。
注:
  1. 一部のAlteraデバイスでは、コア電源電圧をVCCINTと呼んでいます。
  2. Cyclone FPGAs向けVCCA。
  3. Stratix IV GTのコア電圧は0.95 ±30mVです。

参考文献