高速差動ADCドラむバの「亀通芏則」

私たちアプリケヌション・゚ンゞニアには、差動入力を備えた高速A/DコンバヌタADCの駆動に関するさたざたな質問がひっきりなしに届きたす。実際、適正なADCドラむバや構成を遞択するのは容易なこずではありたせん。堅牢なADC回路の蚭蚈をいくらかでも簡玠化するために、私たちは䞀連の陥りやすい問題点や事故䟋ず、その゜リュヌションを蓄積しおきたした。本皿では、実際にADCを駆動する回路、すなわちADCドラむバや差動アンプなどのさたざたな名称で呌ばれおいる回路が、高速信号の凊理の成吊を巊右するものであるこずを前提に話を進めたす。

はじめに

珟代の高性胜ADCの倧半は、差動入力を䜿っおコモンモヌド・ノむズず干枉を陀去し、ダむナミック・レンゞを埓来の2倍に拡倧するずずもに、バランス信号䌝送によっお性胜党䜓を改善しおいたす。差動入力を持぀ADC は、シングル゚ンド入力信号も凊理するこずができたすが、最適なADC性胜は入力信号が差動のずきに達成可胜です。ADCドラむバ回路は、その芁求に合う信号を提䟛するように特別に蚭蚈されるこずがよくあり、振幅スケヌリング、シングル゚ンド差動倉換、バッファ凊理、コモンモヌド・オフセット電圧の調敎、フィルタ凊理など、倚くの重芁な機胜を実行したす。 AD8138の発売以来、差動ADCドラむバはデヌタ・アクむゞション・システムにずっお䞍可欠なシグナル・コンディショニング郚品ずなっおいたす。

Figure 1
図1. 差動アンプ

基本的な電圧垰還型の完党差動ADCドラむバを、図1に瀺したす。これは、埓来の垰還型オペアンプ回路ずは2぀の点で異なりたす。差動ADCドラむバには、通垞のオペアンプに察し、出力端子VONず入力端子VOCMが远加されおいたす。これらの端子により、差動入力を持぀ADCに信号をむンタヌフェヌスする堎合、柔軟性が倧幅にアップしたす。

差動ADCドラむバは、シングル゚ンド出力の代わりにVOPずVON間のバランス差動出力を生成したすVOCMを基準。Pは正盞、Nは逆盞を瀺しおいたす。VOCM入力は、出力コモンモヌド電圧を蚭定したす。入力ず出力が芏定の制限範囲内にある限り、出力コモンモヌド電圧はVOCM入力に印加された電圧ず等しくなりたす。アンプ入力端子VA+、VAの電圧は、負垰還ず高オヌプン・ルヌプ・ゲむンによっおほが同じ倀になりたす。

以䞋の説明で、いく぀かの定矩ずその重芁性を瀺したす。入力信号が平衡しおいる堎合、共通リファレンス電圧点を基準にVIPずVINの公称振幅は等しくなりたすが、䜍盞が逆になりたす。入力がシングル゚ンドのずきは、どちらかかの入力が固定電圧ずなり、ほかの電圧はそれを基準に倉動したす。いずれの堎合も、入力信号はVIPVINず定矩したす。

差動モヌド入力電圧VIN,dmずコモンモヌド入力電圧VIN, cmを匏1ず匏2に定矩したす。

Equation 1-2
     (1, 2)

このコモンモヌドに関する定矩は、バランス入力に぀いおはもちろん、シングル゚ンド入力に察しおも有効です。

出力も差動モヌドずコモンモヌドを持ち、匏3ず匏4のように定矩されたす。

Equation 3-4
     (3, 4)

ここでは、出力コモンモヌド・レベルを蚭定するVOCM入力端子ず、実際の出力コモンモヌド電圧VOUT, cmずの違いに泚意しおください。

差動ADCドラむバの解析は、埓来のオペアンプの堎合よりもかなり耇雑なものずなりたす。匏を簡単にするために、䟿宜䞊、2぀の垰還率β1、β2を匏5ず匏6のように定矩したす。

Equation 5-6
     (5, 6)

ほずんどのADCアプリケヌションではβ1β2ですが、ベヌタ・ミスマッチが性胜にどのように圱響するか盎芳的に理解するこずが必芁であり、そのためにはVIP、VIN、VOCM、β1、β2に関するVOUT, dmの䞀般的なクロヌズド・ルヌプ匏が圹に立ちたす。VOUT, dmの匏匏7には、アンプの有限な呚波数䟝存のオヌプン・ルヌプ電圧ゲむン項A(s)が含たれおいたす。

Equation 7
     (7)

β1≠β2のずき差動出力電圧はVOCMに䟝存したすが、この堎合、差動出力でオフセットず過倧なノむズが生成されるので、望たしくない結果が生じたす。電圧垰還アヌキテクチャのゲむン垯域幅積は䞀定です。面癜いこずに、ゲむン垯域幅積のゲむンは2぀の垰還率の平均の逆数ずなりたす。

β1β2≡βのずき、匏7を簡単にするず匏8のように衚せたす。

Equation 8
     (8)

これはかなり銎染みのある匏です。A(s) → ∞のずき、理想的なクロヌズド・ルヌプ・ゲむンはRF/RGずしお簡単に衚されたす。ゲむン垯域幅積の匏もかなり銎染みのあるもので、埓来のオペアンプず同様、ノむズ・ゲむンは1/βです。

垰還率がマッチした差動ADCドラむバの理想的なクロヌズド・ルヌプ・ゲむンは、匏9で衚されたす。

Equation 9
     (9)

差動ADCドラむバの重芁な性胜評䟡尺床である出力の平衡性には、振幅バランス、䜍盞バランスずいう2぀の芁玠がありたす。振幅バランスは、2぀の出力の振幅がどれだけマッチングするかを瀺しおおり、理想的なアンプでは振幅が正確に䞀臎したす。出力の䜍盞バランスは、2぀の出力の䜍盞差がどれだけ180°に近いかを瀺したす。出力振幅たたは䜍盞振幅がアンバランスの堎合、出力に奜たしくないコモンモヌド成分が生成されたす。出力バランス誀差匏10は、差動入力信号で生成される出力コモンモヌド電圧ず、その入力信号で生成される出力差動モヌド電圧ずの比の察数衚瀺であり、dB単䜍で衚されたす。

Equation 10
     (10)

内郚のコモンモヌド垰還ルヌプは、VOUT, cmずVOCM入力ぞの電圧が等しくなるように動䜜したす。これで優れた出力バランスを達成できたす。

ADCドラむバ入力の終端

ADCドラむバは、高速信号を凊理するシステムで頻繁に䜿甚されたす。信号波長より長い距離で離れたデバむス間では、シグナル・むンテグリティの喪倱を防ぐために、コントロヌルされたむンピヌダンスの䌝送ラむンで接続する必芁がありたす。最良の性胜は、䌝送ラむンが特性むンピヌダンスの䞡端で終端されたずきに達成されたす。ドラむバは䞀般にADCの近くに配眮されるので、䞡デバむス間でのコントロヌルされたむンピヌダンスは必芁ありたせん。ただし、ADCドラむバ入力ぞの受信信号接続は、コントロヌルされたむンピヌダンスによる接続適切な抵抗に終端されるが必芁なほど長くなる堎合がよくありたす。

ADCドラむバの入力抵抗は、差動であれシングル゚ンドであれ、所望の終端抵抗ず同等かそれ以䞊のものずし、終端抵抗RTをアンプ入力ず䞊列に接続しお必芁な抵抗倀を達成できるようにしたす。この䟋に瀺すADCドラむバはすべお、垰還比がバランスするよう蚭蚈されおいたす図2を参照。

Figure 2
図2. 差動アンプの入力むンピヌダンス

2぀のアンプ入力間の電圧差は負垰還によっおれロずなるため、これらは仮想ショヌト状態で、差動入力抵抗RINは単に2×RGずなりたす。䌝送ラむンの抵抗RLをマッチングするために、匏11に瀺す抵抗RTを差動入力間に接続したす。図3は、代衚的な抵抗倀RF200Ω、RG200Ω、所望の抵抗RL, dm100Ω、RT133Ωを瀺しおいたす。

Equation 11
     (11)
Figure 3
図3. 100Ωラむンのマッチング

シングル゚ンド入力を終端するには、もっず倚くの手間を芁したす。図4は、シングル゚ンド入力ず差動出力を持぀ADCドラむバの動䜜を瀺しおいたす。

Figure 4
図4. ADCドラむバのシングル゚ンド入力䟋

入力はシングル゚ンドですが、VIN, dmはVINず等しい入力です。抵抗RFずRGは等しく、平衡しおいるので、ゲむンはナニティ・ゲむンであり、差動出力VOPVONは入力ず等しく、4Vp-pずなりたす。VOUT, cmはVOCM2.5Vず等しく、䞋偎の垰還回路により入力電圧VA+ずVAはVOP/2ず等しくなりたす。

匏3ず匏4を䜿甚するず、VOPVOCMVIN/2であり、同盞電圧の振幅は2.5Vを䞭心に±1Vずなりたす。たた、VONVOCMVIN/2であり、逆盞電圧の振幅は2.5Vを䞭心に±1Vです。したがっお、VA+ずVAの振幅は1.25Vを䞭心に±0.5Vずなりたす。VINで䟛絊する電流のAC成分は2V0.5V/500Ω3mAなので、マッチングが必芁なグラりンドに察する抵抗倀は、VINから芋お667Ωずなりたす。

各ルヌプの垰還率をマッチングするずきにこのシングル゚ンド入力抵抗を求める䞀般匏を匏12に瀺したす。ここでRIN, seはシングル゚ンド入力抵抗です。

Equation 12
     (12)

ここで終端抵抗の蚈算を始めたすが、たず、アンプ・ゲむンの匏がれロ・むンピヌダンス入力信号源をベヌスにしおいる点に留意する必芁がありたす。シングル゚ンド入力に起因するアンバランスの環境䞋で、マッチングが必芁ずなる重芁な゜ヌス・むンピヌダンスは、回路䞊偎のRGにのみ抵抗倀を付加したす。平衡を維持するには、抵抗を䞋偎RGに远加しおこのマッチングを行う必芁がありたすが、そうするずゲむンに圱響を䞎えたす。

シングル゚ンド信号の終端を行うためには、クロヌズド型の゜リュヌションを採甚するこずもできたすが、䞀般には反埩法が䜿甚されたす。この必芁性に぀いおは次の䟋で明らかにしたす。

図5の堎合、䜎ノむズを維持するために、シングル゚ンド差動ゲむンが1であるこず、50Ωの入力終端、200Ω近蟺の倀を持぀垰還ゲむン抵抗が必芁です。

匏12から、シングル゚ンド入力抵抗は267Ωずなりたす。たた、匏13により、267Ωの入力抵抗を50Ωたで䞋げるために䞊列抵抗RTを61.5Ωにする必芁がありたす。

Figure 5
図5. シングル゚ンド入力むンピヌダンス
Equation 13
     (13)

図6は゜ヌス抵抗ず終端抵抗を備えた回路を瀺しおいたす。50Ωの抵抗を持぀゜ヌスの解攟端電圧は2Vp-pです。゜ヌスが50Ωに終端されるず、入力電圧は1Vp-pに䞋がりたす。この電圧はナニティ・ゲむン・ドラむバの差動出力電圧でもありたす。

Figure 6
図6. ゜ヌス抵抗ず終端抵抗を備えたシングル゚ンド回路

この回路は䞀芋完党なものにみえるかも知れたせんが、50Ωず䞊列に61.5Ωのマッチしおいない抵抗が䞊偎のRGにのみ远加されおいたす。そのため、ゲむンずシングル゚ンド入力の抵抗が倉わり、垰還率にミスマッチが起きたす。小さなゲむンの堎合、入力抵抗の倉化が小さいためずりあえずこのミスマッチは無芖されたすが、垰還率はマッチングしおいる必芁がありたす。これを達成する最も簡単な方法は、䞋偎RGに抵抗を加えるこずです。図7は、䞊蚘の䞊列組合せが゜ヌス抵抗ずしお䜜動するテブナンThevenin等䟡回路を瀺しおいたす。

Figure 7
図7. 入力゜ヌスのテブナン等䟡回路

この眮換えで、27.6Ωの抵抗RTSを䞋偎ルヌプに加えお、垰還率をマッチングさせたす図8を参照。

Figure 8
図8.バランス・シングル゚ンド終端回路

ここでは、1.1Vp-pのテブナン電圧が1Vp-pの適正終端電圧より倧きく、ゲむン抵抗がそれぞれ27.6Ω増倧しおクロヌズド・ルヌプ・ゲむンが䜎䞋しおいる点に泚意しおください。これらの逆の効果は、倧きな抵抗1kΩず小さなゲむン1たたは2の堎合、互いに盞殺する傟向がありたすが、小さな抵抗たたは高いゲむンの堎合は完党に盞殺するわけではありたせん。

図8の回路の解析は簡単であり、差動出力電圧は匏14で求められたす。

Equation 14
     (14)

差動出力電圧は所望の1Vp-pには達しおいたせんが、匏15に瀺すように垰還抵抗を倉曎しお最終的なゲむン調敎を個別に行うこずができたす。

Equation 15
     (15)

図9は完成した回路であり、暙準の1%抵抗倀で実装されおいたす。

Figure 9
図9. 完党なシングル゚ンド終端回路

解説: 図9を参照するず、RFずRGが倉わったためにドラむバのシングル゚ンド入力抵抗RIN, seが倉化しおいたす。ドラむバのゲむン抵抗は䞊偎ルヌプで200Ωであり、䞋偎ルヌプで200Ω28Ω228Ωです。異なるゲむン抵抗倀を持぀RIN, seの蚈算には、匏16ず匏17に瀺すように、最初に蚈算する2぀のベヌタ倀が必芁になりたす。

Equation 16
     (16)
Equation 17
     (17)

入力抵抗RIN,seは匏18のように蚈算したす。

Equation 18
     (18)

これは元の蚈算倀の267Ωにほが近い倀であり、RIN,seはRTず䞊列接続されおいるため、RTの蚈算に倧きな圱響はありたせん。

もっず正確なトヌタル・ゲむンが必芁な堎合は、高粟床抵抗、あるいは盎列のトリム抵抗を䜿甚できたす。

1倍たたは2倍のクロヌズド・ルヌプ・ゲむンを埗るには、ここで説明した方法を䞀床実行するだけで十分です。もっず倧きなゲむンの堎合は、RTSの倀がRGの倀に近づき、匏12で蚈算したRIN, seず匏18で蚈算したRIN, seの倀の差は倧きくなりたす。これらの堎合は䜕回か反埩が必芁ずなりたすが、その䜜業が倧倉すぎおは困りたす。

最近発衚された差動アンプ蚈算ツヌルのADIsimDiffAmp参考文献2ずADI Diff Amp Calculator参考文献3はダりンロヌドできるので、骚の折れる仕事はすべお任せるこずができたす。これらのツヌルを䜿っお、䞊述した蚈算をわずか数秒で実行できたす。

入力コモンモヌド電圧範囲

入力コモンモヌド電圧範囲ICMVRは、通垞動䜜で差動アンプ入力に印加できる電圧の範囲を瀺しおいたす。この入力に珟れる電圧は、ICMV、Vacm、たたはVA±などず衚されたす。この仕様に぀いおは、間違った理解がなされおいる堎合がよくありたす。差動アンプ入力の実際の電圧を決めるこず、特に入力電圧を基準にそれを決める䜜業で間違えるこずが倚いのです。倉数VIN, cm、β、およびVOCMがわかっおいれば、βの倀が異なる堎合には䞀般匏19を、βの倀が同じならば簡玠な匏20を䜿っおアンプ入力電圧VA±を蚈算できたす。

Equation 19
     (19)
Equation 20
     (20)

VAは垞に入力信号の小振幅バヌゞョンずなりたすが図4を参照、このこずを芚えおおくず䟿利かも知れたせん。入力コモンモヌド電圧の範囲はアンプの皮類によっお異なりたす。アナログ・デバむセズの高速差動ADCドラむバには、センタヌ型centered、シフト型shiftedずいう2぀の入力段構成がありたす。センタヌ型ADCドラむバは、各電源レヌルから内偎ぞ玄1Vのヘッドルヌムを必芁ずしたすこのため、センタヌ型ず呌ぶ。シフト型入力段は2぀のトランゞスタを加えお、入力がVSレヌル近くたでスむングできるようにしたす。図10は、代衚的な差動アンプQ2、Q3の簡略入力回路図です。

Figure 10
図10. ICMVRをシフトした簡略差動アンプ

シフト型入力アヌキテクチャを䜿甚すれば、差動アンプは単電源で駆動されおいるずきでもバむポヌラ入力信号を凊理できるため、グラりンド以䞋の入力を持぀単電源アプリケヌションに最適です。入力の远加されたPNPトランゞスタQ1、Q4は、差動ペアぞの入力をVbe 1トランゞスタ分だけシフトアップしたす。たずえば、INに0.3Vが印加されるず、ポむントAは0.7Vになっお、差動ぺアは適正に動䜜できたす。PNPがないずセンタヌ型入力段、ポむントAの0.3VでNPN差動ペアは逆バむアスされ、通垞動䜜が停止したす。衚1に、アナログ・デバむセズ補ADCドラむバの各皮仕様のクむック・リファレンスを瀺しおいたす。

衚を芋ればすぐにわかるように、ドラむバにはシフトICMVRず非シフトICMVRがありたす。

衚1. 高速ADCドラむバの仕様

ADCドラむバ ICMVR VOCM ADC Noise Budget at 10 Gain of Oversampling Analog Front End
電源電圧 電源電圧 電源電圧 (V)
出力振幅 (mA)
補品番号 BW (MHz) Slew Rate (V/µs) Noise (nV) ±5 V
±5 V ±3.3 V
±3 V
±5 V ±5 V
±3.3 V
±3 V
AD8132 360 1000 8 –4.7 to +3
0.3 to 3 0.3 to 1.3 0.3 to 1 ±3.6
1 to 3.7 —
0.3 to 1 ±1
12
AD8137 76 450 8.25 –4 to +4 1 to 4 1 to 2.3 1 to 2 ±4 1 to 4 1 to 2.3 1 to 2 RR 3.2
AD8138 320 1150 5 –4.7 to +3.4 0.3 to 3.2 — —
±3.8 1 to 3.8 —
—
±1.4 20
AD8139 410 800 2.25 –4 to +4 1 to 4 —
—
±3.5 1.5 to 3.5 —
— RR 24.5
2300 5000 1.4 –3.5 to +3.5 1.3 to 3.7 —
—
±3.5 1.5 to 3.5 —
—
±1.2 20
1000 2800 3.6 –4.8 to +3.2 0.2 to 3.2 —
—
±3.8 1.2 to 3.2 —
—
±1 9
1900 6000
 
2.2
—
0.3 to 3 0.3 to 1.2 —
—
1.2 to 3.8 1.2 to 2.1 —
±0.8 39.5
1000 4700 2.6
–4.7 to +3.4 0.3 to 3.4 —
—
±3.7 1.3 to 3.7
—
— ±1.2 37
1400 6800 2.6
—
1.1 to 3.9 0.9 to 2.4 —
—
1.3 to 3.5 1.3 to 1.9 —
±0.8 36.5

入出力の結合ACかDCか

AC結合ずDC結合のどちらが必芁かは、差動ADCドラむバの遞択に倧きく圱響する可胜性がありたす。考慮する事項は入力結合ず出力結合で異なりたす。

図11にAC結合入力段を瀺したす。

Figure 11
図11. AC結合ADCドラむバ

AC結合入力を持぀差動入力差動出力アプリケヌションの堎合、アンプ入力端子に珟れるDCコモンモヌド電圧は、DC出力コモンモヌド電圧ず等しくなりたす。これは、DC垰還電流が入力コンデンサによっおブロックされるからです。たた、DCの垰還率はマッチングしお、ナニティゲむンに等しくなりたす。VOCM結果的には、DC入力コモンモヌドは、電源䞭倮倀近くに蚭定されるこずがほずんどです。センタヌ型入力コモンモヌド範囲を持぀ADCドラむバは、入力コモンモヌド電圧が芏定範囲の䞭倮付近の倀をずるこのタむプのアプリケヌションに最適です。

AC結合シングル゚ンド入力差動出力アプリケヌションは、察応する差動入力アプリケヌションに䌌おいたすが、アンプ入力端子にコモンモヌド・リップル枛衰した入力信号の盞䌌波圢が発生したす。センタヌ型入力コモンモヌド範囲を持぀ADCドラむバは、入力コモンモヌド電圧の平均倀をその芏定範囲の䞭倮倀付近に蚭定するず、ほずんどのアプリケヌションではリップルに察しお倚くのマヌゞンを確保するこずができたす。

入力結合が遞べる堎合は、AC結合入力を持぀ADCドラむバの消費電力がDC結合入力を持぀同皮のドラむバよりも小さくなるこずに泚意しおください。これは、DCコモンモヌド電流がどちらの垰還ルヌプにも流れないためです。

ADCドラむバ出力のAC結合は、ドラむバ出力で埗られる電圧ずは実質的に異なる入力コモンモヌド電圧がADCで必芁な堎合に圹立ちたす。VOCMが電源の䞭倮倀付近に蚭定されおいるず、ドラむバは最倧出力振幅を発揮したす。このこずで問題が生じるのは、入力コモンモヌド電圧が非垞に䜎い条件のもずで䜎電圧ADCを駆動するずきです。この問題に察する簡単な゜リュヌション図12は、ドラむバ出力ずADC入力間をAC結合しおドラむバ出力からADCのDCコモンモヌド電圧を陀去するこずです。これによっおADCに適したコモンモヌド・レベルを、AC結合のADC偎で印加できたす。たずえば、ドラむバは単電源5Vで動䜜し、VOCM2.5Vずしたす。ADCは単電源1.8Vで動䜜し、必芁な入力コモンモヌド電圧0.9VがADC CMVにより印加されたす。

Figure 12
図12. DC結合入力ずAC結合出力

シフト型入力コモンモヌド範囲を持぀ドラむバは、䞀般に単電源で動䜜するDC結合システムで最良な動䜜を瀺したす。これは、出力コモンモヌド電圧が垰還ルヌプを介しお分圧され、その倉化する成分が負のレヌルであるグラりンドに近づくためです。シングル゚ンド入力では、入力コモンモヌド電圧が入力関連のリップルのために負のレヌルに近づく可胜性さえありたす。

䞡電源で動䜜し、シングル゚ンド入力あるいは差動入力、ACDC結合を䜿甚するシステムは、䞀般にヘッドルヌムが増すためどちらのタむプの入力段でも優れた動䜜を瀺したす。

衚2には、入力結合ず電源のさたざたな組合せで䜿甚される最も䞀般的なADC入力ドラむバのタむプを瀺しおいたす。ただし、これらの遞択は必ずしもベストではないかもしれたせん。個別のシステムはケヌスバむケヌスで解析する必芁がありたす。

衚2. 結合ず入力段の遞択

入力統合 入力信号 電源 入力のタむプ
任意 任意 䞡電源
いずれか䞀方
AC シングル゚ンド
単電源 䞭倮
DC シングル゚ンド 単電源
シフト
AC
差動
単電源
䞭倮
DC
差動
単電源
䞭倮

出力振幅

ADCのダむナミック・レンゞを最倧化するには、入力信号をそのコンバヌタの最倧入力レンゞになるように蚭定する必芁がありたす。しかし、この堎合は泚意が必芁です。ADCを匷力に駆動しすぎるず入力を損ねる危険性があり、匱すぎるず分解胜が損なわれたす。ADCを最倧入力レンゞにするずいうこずは、アンプ出力を最倧レンゞたでスむングさせるずいう意味ではありたせん。差動出力の倧きな利点は、各出力の振幅スむングが埓来のシングル゚ンド出力の半分で枈むずいう点です。ドラむバ出力は電源レヌルから離れた状態小さい振幅を維持できるので、歪みも䜎枛できたす。しかし、シングル゚ンドの堎合はそうではありたせん。ドラむバの出力電圧がレヌルに近づくず、アンプは盎線性を倱い、歪みを発生させたす。

衚1を芋るず、出力電圧の最埌の1ミリボルトたで必芁なアプリケヌションでは、かなり倚くのADCドラむバがレヌルtoレヌル出力を備えおいたす。たた、負荷にもよりたすが、代衚的なヘッドルヌム電源電圧からの動䜜䜙裕は、数ミリボルトから数癟ミリボルトの範囲にわたっおいたす。

Figure 13
図13. 5V電源を備えたADA4932の高調波歪みずVOCMの呚波数特性

図13は、 ADA4932の呚波数別の高調波歪みずVOCMの関係を瀺しおいたす。このデバむスは、出力振幅の兞型倀が各レヌルの1.2V以内に収たるようになっおいたす1.2Vのヘッドルヌム。出力振幅は、信号1VのVOCMずVPEAKを合蚈した倧きさです。信号の歪みは2.8Vを過ぎる点から劣化が始たっおいたす3.8VPEAK5Vレヌルより1.2V小さい倀。これより䜎い領域では、2.2V1VPEAKでもただ䜎歪みの倀を瀺しおいたす。同じタむプの動䜜に぀いおは、垯域幅ずスルヌレヌトを説明する際に觊れるこずにしたす。

ノむズ

ADCは完党ではないので倚くのノむズ芁玠、量子化ノむズ、電子ノむズランダム・ノむズ、高調波歪みなどを持っおいたす。ノむズ特性はほずんどのアプリケヌションで重芁ですが、䞀般にブロヌドバンド・システムでは最も重芁な性胜指暙ずみなされたす。

すべおのADCでは量子化ノむズが発生したすが、これはビット数nに䟝存しおおり、nが増えるず量子化ノむズが枛少したす。理想的なコンバヌタでも量子化ノむズが発生するので、このノむズはランダム・ノむズや高調波歪みず比范するためのベンチマヌクずしお䜿甚されたす。ADCドラむバの出力ノむズは、ADCドラむバのランダム・ノむズや歪みず同レベルかそれ以䞋に抑える必芁がありたす。たず、ADCのノむズや歪みの特性を怜蚎し、次にADCの性胜ずADCドラむバのノむズをどのように比范・怜蚎するか説明したす。

量子化ノむズは、無限の分解胜を持぀アナログ信号を有限分解胜のデゞタル倀ずしお量子化するために生じるノむズです。nビットADCは、2nのバむナリ・レベルを有しおいたす。あるレベルず次のレベルの差は、分解できる最小の差を衚したす。これは最䞋䜍ビットLSBたたはq量子レベルquantum levelの頭文字ず呌ばれおいたす。1ステップの量子レベルは、コンバヌタのレンゞの1/2nです。電圧の倉化が完党なnビットADCで倉換され、それがアナログ信号に戻されおADCの入力ずの差をずるずすれば、その差をノむズずみなすこずができたす。量子化ノむズのRMS倀は次匏で衚されたす。

Equation 21
     (21)

この匏から、ナむキスト垯域幅でのnビットADCの信号察量子化ノむズ比dBの察数匏を導出できたす匏22。これはnビット・コンバヌタで達成可胜な最高のS/N比です。

ADCのランダム・ノむズは熱ノむズ、ショット・ノむズ、フリッカ・ノむズが合わさったもので、䞀般に量子化ノむズより倧きくなりたす。ADCの非盎線性に起因する高調波歪みは、入力信号ず高調波関係にある出力においお、䞍芁な信号を発生させたす。党高調波歪みノむズTHDは、ADCのフルスケヌル入力範囲に近いアナログ入力ず電子ノむズ高調波歪みを比范するために重芁なADC性胜指暙です。電子ノむズは、考慮察象になる最高次高調波の呚波数を含む垯域幅に぀いお積分されたす。ここでは、THDの「合蚈」は、2乗和の平方RSSにより求められる最初の5぀の高調波次次歪み成分含んでいたす匏23。

Equation 22
     (22)
Equation 23
     (23)

入力信号はv1ずするず、最初の5぀の高調波歪み積はv2からv6たでであり、最埌のvnはADCの電子ノむズです。THDノむズの逆数、すなわち信号ノむズ歪み比SINADは、䞀般にdB単䜍で衚されたす。

Equation 24
     (24)

SINADを信号察量子化ノむズ比に眮き換えれば匏22、信号察量子化ノむズ比ずSINADが同じ堎合にコンバヌタの有効ビット数ENOBを定矩できたす。

Equation 25
     (25)

ENOBは、匏26に瀺すようにSINADを甚いお衚すこずもできたす。

Equation 26
     (26)

ENOBを䜿っおADCドラむバのノむズ性胜ずADCのノむズ性胜を比范し、そのADCの駆動に察する適合性を刀定するこずができたす。差動ADCドラむバのノむズ・モデルを図14に瀺したす。

Figure 14
図14. 差動ADCドラむバのノむズ・モデル

匏27は䞀般的なケヌスに察応したもので、8぀の゜ヌスの党出力ノむズ密床に察する寄䞎をそれぞれ衚しおいたす。ここでは、β1β2≡βずしたす。

Equation 27
     (27)

党出力ノむズ電圧密床vno, dmは、これらの成分の2乗和平方根を蚈算しお求めたす。党出力ノむズ電圧密床を蚈算する堎合は、スプレッドシヌトに入力するのが䞀番良い方法です。新しいADI Diff Amp Calculator参考文献3は、ノむズ、ゲむン、その他の差動ADCドラむバ動䜜を短時間で蚈算するツヌルであり、アナログ・デバむセズのりェブサむトから利甚できたす。

ADCドラむバのノむズ性胜はADCのENOBを䜿っお比范できたす。この手順の䞀䟋ずしお、ゲむン2の差動ドラむバの遞択、評䟡を取り䞊げたす。この堎合、 AD9445 ADCは5V電源で動䜜し、2Vのフルスケヌル入力を備えおいたす。この回路は、単極フィルタで制限された50MHz3dBの垯域幅を占有するダむレクト結合ブロヌドバンド信号を凊理したす。各皮条件に察応したENOB仕様を蚘茉したデヌタシヌトから、50MHzのナむキスト垯域幅でENOB12ビットずなりたす。

ADA4939は、盎接結合できる高性胜なブロヌドバンド差動ADCドラむバです。ずころで、ノむズずいう芳点からするず、これはAD9445を駆動するのに適したドラむバでしょうかデヌタシヌトでは差動ゲむンはほが2で、RF402Ω、RG200Ωを掚奚しおいたす。たた、この堎合の党出力電圧ノむズ密床を9.7nV√Hzず芏定しおいたす。

たず、䞀定の入力ノむズ電力スペクトル密床が䞎えられたずきのシステム・ノむズ垯域幅BNを蚈算したす。この垯域幅は、システム垯域幅を決める実際のフィルタず同じノむズ電力を出力する方圢ロヌパスフィルタの等䟡垯域幅です。単極フィルタの堎合は、ここに瀺されおいるようにBNは3dB垯域幅のπ/2倍ずなりたす。

Equation 28
     (28)

次に、システム垯域幅に぀いお2乗平方根のノむズ密床を積分しお、出力RMSノむズを求めたす。

Equation 29
     (29)

ノむズの振幅はガりス分垃を瀺すものず仮定し、ピヌクtoピヌク・ノむズに関する䞀般的な±3σの制限範囲を甚いおそのノむズ電圧は99.7%ぐらいの確率でその制限範囲内に存圚したす、ピヌクtoピヌク出力ノむズを蚈算したす。

Equation 30
     (30)

ここで、ドラむバのピヌクtoピヌク出力ノむズずAD9445の1LSB分の電圧を比范したす。これは、匏31に瀺すように12ビットのENOBず2Vのフルスケヌル入力範囲に基づいお行いたす。

Equation 31
     (31)

ドラむバのピヌクtoピヌク出力ノむズは、12ビットENOBずいう点から芋るず、ADCのLSBに盞圓したす。したがっお、ノむズずいう芳点からするず、ドラむバはこのアプリケヌションにずっお優れた遞択肢ずいえたす。最終的な決定は、ドラむバADCの組合せを詊䜜し、テストしおから行いたす。

電源電圧

電源の電圧電流に぀いお怜蚎するこずで、ADCドラむバの遞択肢をうたく絞り蟌むこずができたす。衚1には、電源から芋たADCドラむバの性胜を参考甚に簡朔にたずめおいたす。電源電圧は、垯域幅や信号の振幅、ICMVRなどに圱響したす。仕様を慎重に考慮しおトレヌドオフを怜蚎するこずは、差動アンプの遞択にずっお重芁です。

電源電圧倉動陀去比PSRは、もう䞀぀の重芁な仕様です。アンプ入力ずしおの電源ピンの圹割は、無芖されるこずがよくありたす。電源ラむンのノむズ電源ラむンに結合するノむズは、出力信号を砎綻させる可胜性がありたす。

たずえば、電源ラむンに60MHzで50mVp-pのノむズがのったADA4937-1に぀いお考えおみたしょう。50MHzでのPSRは70dBずなりたす。これは、電源ラむン䞊のノむズがアンプの出力においおおよそ16ÎŒVたで䜎枛されるこずを意味したす。1Vフルスケヌル入力を備えた16ビット・システムでは1LSBは15.3ÎŒVなので、これではLSBは電源ラむンからのノむズに埋もれおしたうこずになりたす。

こうした状況は、盎列のSMTフェラむト・ビヌズ、L1/L2、シャント・バむパス・コンデンサC1/C2を加えるこずで改善できたす。

Figure 15
図15. 電源のバむパス

50MHzで、フェラむト・ビヌズは60Ωのむンピヌダンスを持ち、10nF0.01ÎŒFコンデンサは0.32Ωのむンピヌダンスを持ちたす。この2぀の玠子で構成されるアッテネヌタは、45.5dBのノむズの枛衰を提䟛したす。

Equation 32
     (32)

このノむズ・アッテネヌタLPFの枛衰ず70dBのPSRにより、玄115dBの陀去比が䞎えられたす。このため、ノむズは1LSBをはるかに䞋回る玄90nV p-pにたで䜎枛されたす。

高調波歪み

呚波数領域内の䜎い高調波歪み特性は、狭垯域システム、広垯域システムの䞡方にずっお重芁です。ドラむバの非盎線性は、アンプ出力で、シングル・トヌンの高調波歪みずマルチトヌン盞互倉調を生成したす。

ノむズ解析䟋で甚いるのず同じ方法を歪みの解析に適甚でき、ADA4939の高調波歪みず、2Vフルスケヌル出力を備えたAD9445の12ビットENOBの1LSBずを比范したす。ノむズ解析では、1ENOB LSBは488ÎŒVであるこずが瀺されおいたす。

ADA4939仕様曞の歪みに関するデヌタはゲむン2の堎合のもので、呚波数ごずに2次高調波ず3次高調波を比范しおいたす。衚3は、ゲむン2での高調波歪みデヌタず2Vp-pの差動出力振幅を瀺しおいたす。

衚3. ADA4939の2次ず3次の高調波歪み

パラメヌタ 高調波歪み
HD2 @ 10 MHz –102 dBc
HD2 @ 70 MHz –83 dBc
HD2 @ 70 MHz –83 dBc
HD2 @ 100 MHz –77 dBc
HD2 @ 10 MHz –101 dBc
HD2 @ 70 MHz
–97 dBc
HD2 @ 100 MHz
–97 dBc

衚䞭のデヌタは、高調波歪みが呚波数ずずもに増倧しおいるこず、たた圓該垯域幅50MHzにおけるHD2がHD3よりも倚いこずを瀺しおいたす。高調波歪み積は察象呚波数より高い呚波数たでなので、その振幅はシステム垯域の制限で䜎枛できたす。システムが50MHzのブリック・りォヌル・フィルタ急峻な枛衰を持぀方圢フィルタを備えおいる堎合は、25MHzより高い呚波数のみが重芁です。高い呚波数の高調波成分がすべおフィルタによっお陀去されるからです。それでも最倧50MHzのシステムの評䟡を行うのは、珟実のフィルタ機胜では高調波を十分に抑止できず、歪み積が信号垯域幅に折り返される危険性がありたす。図16はADA4939の電源を倉えた時の高調波歪みの呚波数特性を瀺しおおり、出力電圧は2Vp-pです。

Figure 16
図16. 高調波歪みの呚波数特性

50MHzでのHD2は、2Vp-p入力信号を基準にしお玄88dBcです。高調波信号レベルを1ENOB LSBず比范するために、このレベルを電圧に倉換する必芁がありたす匏33を参照。

Equation 33
     (33)

この歪み積はわずか80ÎŒVp-pであり、1ENOBの16%です。歪みずいう芳点からするず、ADA4939はAD9445 ADC甚ドラむバずしおの有力な候補です。

ADCドラむバは負垰還アンプなので、出力歪みはアンプ回路のルヌプ・ゲむンの倧きさに巊右されたす。負垰還アンプに固有のオヌプン・ルヌプ歪みは1/(1 + LG)倍で䜎枛されたす。この匏のLGは䜿甚可胜なルヌプ・ゲむンです。

アンプの入力誀差電圧は、倧きなフォワヌド電圧ゲむンA(s)で乗算され、垰還率βを経お入力に入り、そこでは入力をサヌボしお誀差を最小限に抑えたす。したがっお、この皮のアンプのゲむンはA(s)×βです。ルヌプ・ゲむンA(s)、β、たたはその䞡方が枛少するず、高調波歪みは増倧したす。電圧垰還アンプは、積分噚ず同様、盎流あるいは䜎呚波では倧きなゲむンA(s)を瀺し、アンプ固有の高い呚波数にあるナニティゲむン呚波数に向かっお1/fごずにロヌルオフするように蚭蚈されおいたす。A(s)のロヌルオフに䌎っお、ルヌプ・ゲむンは䜎䞋し、歪みは増したす。このため、高調波歪み特性はA(s)の逆数になりたす。

電流垰還アンプは、誀差電流を垰還信号ずしお䜿甚したす。誀差電流は倧きなフォワヌド・トランスむンピヌダンスT(s)で乗算されお出力電圧に倉換されたす。その出力電圧は垰還率1/RFを経お垰還電流に倉換されたす。これによっお、入力誀差電流は最小限に抑えられる可胜性がありたす。したがっお、理想的な電流垰還アンプのルヌプ・ゲむンはT(s)×(1/RF)T(s)/RFずなりたす。A(s)ず同様、T(s)も倧きなDC倀を持ち、このロヌルオフに䌎っお呚波数が増倧し、ルヌプ・ゲむンが䜎䞋しお、高調波歪みが増したす。

ルヌプ・ゲむンも垰還率1/RFに盎接巊右されたす。理想的な電流垰還アンプのルヌプ・ゲむンは、クロヌズド・ルヌプ電圧ゲむンに䟝存しないので、高調波歪み性胜はクロヌズド・ルヌプ・ゲむンが増しおも劣化したせん。実際の電流垰還アンプの堎合、ルヌプ・ゲむンはある皋床クロヌズド・ルヌプ・ゲむンに圱響されたすが、それは電圧垰還アンプの堎合ほど倧きくありたせん。したがっお、高クロヌズド・ルヌプ・ゲむンや䜎歪みを必芁ずするアプリケヌションには、電圧垰還アンプよりもADA4927などの電流垰還アンプのほうが適しおいたす。図17は、クロヌズド・ルヌプ・ゲむンが増倧しおも歪み性胜がいかによく維持されるかを瀺しおいたす。

Figure 17
図17. ゲむンず歪みの呚波数特性

垯域幅ずスルヌレヌト

垯域幅ずスルヌレヌトは、ADCドラむバ・アプリケヌションにずっお特に重芁です。䞀般に、デバむスの垯域幅は小信号垯域幅を意味しおおり、スルヌレヌトは倧信号振幅でのアンプ出力の最倧倉化率を衚したす。

ENOB有効ビット数に類䌌したEUBW有効䜿甚可胜垯域幅ずいう略語は、垯域幅を衚珟するための新しい甚語です。ADCドラむバやオペアンプの倚くは広い垯域幅仕様を謳っおいたすが、垯域幅党郚が䜿甚可胜なわけではありたせん。たずえば、3dBの垯域幅ずいうのは、垯域幅を衚す方法ずしお旧来から䜿われおいたすが、これはすべおの垯域幅が䜿甚可胜であるこずを瀺しおはいたせん。3dB垯域幅における振幅誀差ず䜍盞誀差は、実際に「ブレヌク」する呚波数に達するはるか1/10以䞊手前に怜知するこずができたす。実際には、䜕がアンプのEUBWで、その倀をどうやっお求めるのでしょうか䜿甚可胜垯域幅を求める方法ずしおは、デヌタシヌトの歪み特性のプロットを参照するこずをお勧めしたす。

図18の䟋に瀺すように、2次3次高調波で80dBcより倧きな倀を維持するためには、このADCドラむバを60MHzより倧きな呚波数で䜿甚しおはなりたせん。各アプリケヌションは異なるので、十分な垯域幅ず適正な歪み性胜を備えたドラむバにはシステム条件が指針ずなりたす。

Figure 18
図18. ADA4937電流垰還ADCドラむバの歪み曲線

倧振幅信号特性のパラメヌタであるスルヌレヌトは、アンプ出力が過剰な歪みなしに入力をトラッキングできる、倉化率の最倧倀を衚したす。ここで、スルヌレヌトずいう芳点でサむン波出力を考えおみたす。

Equation 34
     (34)

れロ点亀差時の匏34の導関数倉化率、すなわち最倧倉化レヌトは次匏で衚されたす。

Equation 35
     (35)

ここで、dv/dt maxはスルヌレヌト、Vpはピヌク電圧、fはフルパワヌ垯域幅FPBWです。FPBWは次匏で求めたす。

Equation 36
     (36)

したがっお、ADCドラむバを遞択するずきは、ゲむン、垯域幅、スルヌレヌトFPBWを考慮したうえで、アンプがアプリケヌションに適しおいるか刀断したす。

安定性

差動ADCドラむバの安定性に関する考慮事項は、オペアンプの堎合ず同じです。重芁な仕様は䜍盞䜙裕です。特定のアンプ構成の䜍盞䜙裕はデヌタシヌトから刀定できたすが、実際のシステムでは、PCボヌド・レむアりトにおける寄生効果で䜍盞䜙裕が倧幅に䜎枛する可胜性がありたす。

電圧負垰還アンプの安定性は、ルヌプ・ゲむンA(s)×βの倧きさず笊合に巊右されたす。差動ADCドラむバは䞀般的なオペアンプ回路よりいくらか動䜜が耇雑になりたすが、これは2぀の垰還率があるためです。ルヌプ・ゲむンは匏7ず匏8の分母に含たれおいたす。匏37は、マッチングしおいない垰還率β1≠β2の堎合のルヌプ・ゲむンを衚しおいたす。

Equation 37
     (37)

垰還率がマッチングしおいない堎合、有効な垰還率は単に2぀の垰還率の平均倀ずなりたす。その2぀がマッチしお、βずしお定矩されるず、ルヌプ・ゲむンはA(s)×βず単玔に衚すこずができたす。

垰還アンプを安定させるには、そのルヌプ・ゲむンを1にならないようにするか、それず同等の措眮ずしお180°の䜍盞シフトで振幅を1ずしたす。電圧垰還アンプの堎合、ルヌプ・ゲむンの倧きさがそのオヌプン・ルヌプ・ゲむン呚波数のプロット䞊で1すなわち、0dBずなる地点は、A(s)の倧きさが垰還率の逆数ずなる地点です。基本的なアンプ・アプリケヌションでは、垰還は玔粋に抵抗性のもので、垰還ルヌプの呚りに䜍盞シフトはいっさい発生したせん。マッチした垰還率では、垰還率1RFGの逆数呚波数独立の逆数がノむズ・ゲむンず呌ばれるこずがよくありたす。䞀定のノむズ・ゲむンdBをオヌプン・ルヌプ・ゲむンA(s)ず同じグラフにプロットした堎合、2぀の線が亀差する呚波数はルヌプ・ゲむンが10dBの時です。その呚波数のA(s)の䜍盞ず180°䜍盞の差は、䜍盞䜙裕ず定矩されおいたす。安定した動䜜を埗るには、その倀を45°以䞊に維持する必芁がありたす。図19は、RFG1ノむズ・ゲむン1の堎合のADA4932のナニティ・ルヌプ・ゲむン䜍眮を瀺しおいたす。

Figure 19
図19. ADA4932のオヌプン・ルヌプ・ゲむンの振幅ず䜍盞の呚波数特性

図19をさらに詳しく芋るず、ADA4932はノむズ・ゲむン1のずきに䜍盞䜙裕が玄50°であるこずがわかりたす各ルヌプで100%垰還。ADCドラむバをれロ・ゲむンで動䜜させるのは実甚的ではありたせんが、1以䞋の差動ゲむンたずえば、RF/RG0.25、ノむズ・ゲむン1.25で安定的に䜿甚するこずができたす。このこずはすべおの差動ADCドラむバに圓おはたるわけではありたせん。ADCドラむバのデヌタシヌトはすべお、最小安定ゲむンを蚘茉しおいたす。

電流垰還ADCドラむバの䜍盞䜙裕は、オヌプン・ルヌプ応答からも刀定するこずができたす。電流垰還アンプはフォワヌド・ゲむンA(s)の代わりにフォワヌド・トランスむンピヌダンスT(s)を甚いおおり、誀差電流を垰還信号ずしお䜿甚しおいたす。マッチした垰還抵抗を備えた電流垰還ドラむバのルヌプ・ゲむンはT(s)/RFなので、T(s)RFのずき、電流垰還アンプのルヌプ・ゲむンの倧きさは1すなわち、0dBずなりたす。この地点は、電圧垰還アンプの堎合ず同様、オヌプン・ルヌプ・トランスむンピヌダンス䜍盞のプロット䞊で、簡単に芋぀けるこずができたす。1kΩたでの抵抗の比をプロットすれば、察数プロットで抵抗を衚すこずができたす。図20は、RF300Ωの堎合の電流垰還ADCドラむバADA4927のナニティ・ルヌプ・ゲむン䜍眮ず䜍盞䜙裕を瀺しおいたす。

Figure 20
図20. ADA4927のオヌプン・ルヌプ・ゲむンの振幅ず䜍盞の呚波数特性

300Ωの垰還抵抗の暪線がトランスむンピヌダンス曲線に亀差する地点で、ルヌプ・ゲむンは0dBになりたす。この呚波数では、T(s)の䜍盞が玄135°であり、䜍盞䜙裕が45°ずなっおいたす。䜍盞䜙裕ず安定性はRFの増倧に䌎っお倧きくなり、RFの䜎枛に䌎っお小さくなっおいたす。埓っお電流垰還アンプは、垞に十分な䜍盞䜙裕を持぀玔抵抗性の垰還を䜿甚する必芁がありたす。

PCBレむアりト

安定したADCドラむバを蚭蚈できたら、それをPCボヌド䞊で実珟する必芁がありたす。䜍盞䜙裕の䞀郚はボヌドの寄生玠子によっお必ず倱われるので、その芁玠は最小限に抑える努力をしたす。特に重芁なのは、負荷容量、垰還ルヌプのむンダクタンス、加算ノヌドの容量です。これらの寄生リアクタンスによっお、垰還ルヌプに遅れ䜍盞シフトが加わり、䜍盞䜙裕が䜎䞋したす。蚭蚈によっおは、PCボヌドの䞍適切なレむアりトによっお20°以䞊の䜍盞䜙裕が倱われたす。

電圧垰還アンプでは、RFず加算ノヌドの容量で圢成されるポヌルに起因する、䜍盞シフトを最小限に抑えるために、可胜な限り小さなRFを䜿甚するのが最良の方法です。倧きなRFが必芁な堎合は、各垰還抵抗の䞡端に䞊列に接続した小さなコンデンサCFで補償できたす。この堎合、各垰還抵抗は、RFCFず加算ノヌド容量のRG倍が等しくなるような倀を持぀ものずしたす。

PCBレむアりトは、必然的に蚭蚈の最終ステップの1぀ずなりたす。残念なこずに、これは蚭蚈で最も頻繁に芋過ごされるステップの1぀でもありたす。高速回路の性胜がレむアりトに倧きく䟝存しおいる堎合でさえ、こういったこずが起きたす。高性胜蚭蚈は、䞍泚意たたは粗雑なレむアりトによっお劥協の産物ずなったり、ひどいずきは無益なものにさえなりたす。ここでは適切な高速PCB蚭蚈の党おのケヌスを取り䞊げるこずはできたせんが、重芁点をいく぀か指摘しおおきたす。

寄生玠子は、高速回路の性胜を損なう原因になりたす。寄生容量は郚品パッド、パタヌン、およびグラりンド電源プレヌンによっお圢成されたす。グラりンド・プレヌンの存圚しない長いパタヌンは寄生むンダクタンスを圢成し、それによっお過枡応答での「リンギング」など、䞍安定な動䜜が生じる危険性がありたす。寄生容量は、垰還応答にポヌルを発生させお、ピヌキングや䞍安定性の原因ずなるため、特にアンプの加算ノヌドにずっおは危険芁玠です。この改善方法の1぀ずしお、ドラむバ実装や垰還郚品パッドから䞋の領域は、必ずボヌドのすべおの局でグラりンド・プレヌンず電源プレヌンから切り離すずいう方法がありたす。

䞍芁な寄生リアクタンスを最小化するには、たず、すべおのパタヌンを可胜な限り短くしたす。FR-4基板の倖偎の局の50ΩPCボヌド・パタヌンは、2.8pF/むンチ、7nH/むンチ皋床の芏制成分を持ちたす。これらの寄生リアクタンスは、内偎の局の50Ωパタヌンで玄30%増倧したす。たた、パタヌンのむンダクタンスを最小限に抑えるために、長いパタヌンの䞋にはグラりンド・プレヌンがあるようにしたす。パタヌンを短い幅で小さくするこずは、寄生容量ず寄生むンダクタンスの最小化ず蚭蚈品質の維持に圹立ちたす。

電源のバむパスもレむアりトにずっおの重芁事項です。電源バむパス・コンデンサやVOCMバむパス・コンデンサは、可胜な限りアンプのピンの近くに配眮したす。たた、電源に耇数皮類のバむパス・コンデンサを䜿甚するこずは、広垯域ノむズに䜎むンピヌダンス・パスを䞎えるのに圹立ちたす。図21は、バむパスず出力ロヌパスフィルタを備えた代衚的な差動アンプの回路図です。ロヌパスフィルタは、ADCぞの信号の垯域幅ずノむズを制限したす。電源バむパス・コンデンサ・リタヌンは、負荷リタヌンの近くに配眮するのが理想的です。こうすれば、グラりンド・プレヌン内の電流の埪環を最小限に抑えお、ADCドラむバの性胜を改善できたす図22a、図22b。

Figure 21
図21. 電源バむパスず出力ロヌパスフィルタを備えたADCドラむバ

グラりンド・プレヌンの䜿甚䞀般的にいうずグラりンディングは、倚岐にわたる耇雑な䞻題であり、本皿の範囲を越えおいたす。ただし、図22aず図22bには重芁な点だけをいく぀か瀺しおいたす。たず、アナログ・グラりンドずデゞタル・グラりンドの接続は1か所だけで行いたす。こうするこずで、グラりンド・プレヌンを流れるアナログ電流ずデゞタル電流の盞互䜜甚結果的にシステム内で「ノむズ」が生じるを最小限に抑えるこずができたす。たた、アナログ電源はアナログ電源プレヌンに、デゞタル電源はデゞタル・電源プレヌンに終端させたす。ミックスド・シグナルICの堎合は、アナログ・リタヌンをアナログ・グラりンド・プレヌンに、デゞタル・グラりンド・リタヌンをデゞタル・グラりンド・プレヌンに終端させたす。

Figure 22
図22(a). 郚品偎、(b). 回路偎
Figure 23
図23. ミックスド・シグナル・グラりンディング

高速PCBレむアりトの詳现に぀いおは、「A Practical Guide to High-Speed Printed-Circuit-Board Layout4」を参照しおください。

ADCドラむバ関連の蚭蚈では考慮すべき点が数倚くありたすが、ここで提䟛した資料が皆様のお圹に立぀ものず期埅しおいたす。差動ドラむバ・アンプを理解し、プロゞェクト初期の段階でADCドラむバの詳现蚭蚈に泚意を払えば、将来の問題を最小限に抑え、「安党なドラむブ」を続けるこずができるでしょう。

参考資料

1アナログ・デバむセズの党補品に぀いおは、www.analog.com/jpをご芧ください。

2www.analog.com/jp/design-center/interactive-design-tools/adi-diffampcalc.html

3www.analog.com/jp/analog-dialogue/articles/high-speed-printed-circuit-board-layout.html

著者

John Ardizzoni

John Ardizzoni

John Ardizzoniは、アナログ・デバむセズの高速リニア・グルヌプの䞊玚アプリケヌション・゚ンゞニアです。 マサチュヌセッツ州ノヌスアンドヌバヌのメリマック・カレッゞでBSEE電子工孊士を取埗し、2002幎にアナログ・デバむセズに入瀟したした。゚レクトロニクス業界で30幎以䞊のキャリアがありたす。

Jonathan-Pearson

Jonathan Pearson

Jonathan Pearsonは、2002幎8月から圓瀟の高速アンプ・グルヌプのシニア・アプリケヌション・゚ンゞニアずしお働いおいたす。入瀟前は、テレコム業界でアナログ回路システムの蚭蚈者をしおいたした。ノヌスむヌスタン倧孊でBSEE電気工孊理孊士、りヌスタヌ・ポリテクニック倧孊WPIでMSEE電気電子工孊修士の孊䜍を取埗しおおり、4぀の特蚱の著者共著者でもありたす。䜙暇には家族ずの団らんや、さたざたなギタヌの挔奏、音楜の録音、真空管ギタヌ・アンプやアンティヌク・ラゞオの収集などを楜しんでいたす。