質問:
高速コンバータの設計にとって、 アナログ入力位相のバランスは、 なぜそんなに重要なのですか?
回答:
シグナル・チェーンの全体を通じてアナログ入力位相のバランスが不可欠な理由は、適切なバランスが失われると2次高調波やその他の偶数次の歪みが生じるからです。設計プロセスにおいて、部品の許容誤差やPCボードのレイアウトの対称性が無視されると、一般にアナログ入力位相のアンバランスが生じます。
位相アンバランスは、A/Dコンバータ(ADC)によってサンプリングされる2つの差動アナログ入力信号の位相差が正しく180°になっていないときに発生します。最も単純な例として、2つのサイン波からなる信号で考えてみましょう。この2つのサイン波の位相が、「完全な180°差」状態からずれはじめると歪みが生じます。この歪みはシステム周波数の増加とともに増加し、偶数次歪みはさらに急速に悪化します。
パッシブ・アンバランスは、トランスまたはバランを使用して信号をコンバータのアナログ入力に結合することによって発生し、標準のフェライトの場合、一般的には約100~150MHz近辺で起こります。2個のトランスまたはバランを使用すれば、結合の 差異を減らして位相バランスを改善することができます。残念ながら、トランスはサイズが大きく高価であるため、2個も使用するとボード・スペースとシステム・コストが増大します。もうひとつのソリューションは、高性能なトランスを使用することです。
アクティブ・アンバランスは、アンプを使用してコンバータのアナログ入力を駆動することによって引き起こされ、一般に部品の許容誤差が十分でない場合に発生します。ベータ変動を最小限に抑えるには、1%またはそれ以下の許容誤差を持つ抵抗を使 用してゲインを設定します。ミスマッチがあると、サミング・ノード上の電圧に若干の差異が生じ、アンプの差動出力に誤差が生じ、2次歪みを引き起こします。
レイアウト・アンバランスは、シグナル・チェーンにおけるパターンの非対称性が原因であり、ずさんなレイアウトによってシステム性能が低下します。コンバータの差動入力ピンに対する非対称接続によって、2次歪みが生じることがあります。これは、低周波数では現れないかもしれませんが、100MHzを超える周波数では往々にして非直線性が生じてしまいます。そんなことでせっかくの努力の積み重ねを台無しにするのはもったいない話です。フロントエンド設計の対称性を維持し、バランスが保たれるように、CAD技術者を指導してください。
ADCアンバランスは、位相の不整合(ミスマッチ)が原因です。位相の不整合が度を過ぎなければ(駄洒落ですが)、コンバータは正常動作を維持でき、位相差が4°またはそれ以下であれば、最適な性能を発揮することができます。コンバータには若干の固有のアンバランスがあります。しかし設計者であれば、ICを内部的にバランスさせるために懸命の努力を払うのが普通です。