オペアンプの専用帰還ピンで高性能レベルの実現を助ける

質問:

御社の高速オペアンプには 新しいピン配置を持った 製品がありますね。ずいぶん 久しぶりにピン配置を 変更したのはなぜですか?

RAQ:  Issue 65

回答:

ご指摘のとおり、数年前に当社は高速、高性能アンプの一部に新しいピン配置を採用しました。この新しいピン配置には「専用帰還」ピンがあります。イラストでエルビスが指しているピンです(FBピン)。長年使われてきた従来のSOICパッケージのピン配置は昔なら優れた性能を発揮しましたが、デバイスの処理速度が上がるにつれ限界も出てきました。

従来のSOICピン配置の場合、2番ピンが反転入力、3番ピンが非反転入力、4番ピンが負電源、6番ピンが出力、7番ピンが正電源、そして1、5、8番ピンは一般に無接続になっています。これには問題があります;3番ピンと4番ピンの間で相互インダクタンスが発生すると、アンプ出力の2次高調波歪の性能が劣化してしまうのです。この問題を解決するために、当社はピン配置をLFCSPパッケージ上で1ピンずつ反時計回りにずらして、非反転入力と負電源間でカップリングが生じないようにしました。この変更のおかげで、2次高調波歪を最大14dB、なんと500%も改善することができました。

当社のSOICパッケージの一部に1番ピンを専用の帰還ピンにしているものもあります。このようにしても2次高調波歪の改善にはなりませんが、回路レイアウトを大幅に簡素化でき、高速アプリケーションに有害な寄生効果を低減することができます。高速回路では、レイアウトの良否が回路性能を大きく左右するのです。従来のオペアンプのピン配置では、帰還信号を反転入力に帰還させるために配線をアンプの周りに迂回させたり、アンプの下を通したりするルーティングが必要です。どちらにしても、寄生要素が増えます。これに対し、専用帰還ピンを備えたピン配置の場合は、帰還ピンが反転入力のすぐそばにあるので、2ピン間を接続するために抵抗器かパターンを使えばよいだけになります。この専用帰還ピンの配置によって非常にコンパクトなレイアウトが可能になり、必要な基板面積を低減することができます。さらに、寄生要素を減らすことができることから高速性能が向上するだけでなく、合理的なレイアウトが可能となるために信号ルーティングを改善することができます。

アナログ・デバイセズの専用帰還ピンの採用は小さな変更ですが、非常に画期的なものです。今度、新しい高速アンプを設計されるときはこのピン配置によって大きな性能アップを期待できるはずです。

 



著者

John Ardizzoni

John Ardizzoni

John Ardizzoniは、アナログ・デバイセズの高速リニア・グループの上級アプリケーション・エンジニアです。 マサチューセッツ州ノースアンドーバーのメリマック・カレッジでBSEE(電子工学士)を取得し、2002年にアナログ・デバイセズに入社しました。エレクトロニクス業界で30年以上のキャリアがあります。