AN-2061: 0402 SMD 部品を使った広帯域バイアス・ティーの設計

はじめに

RF アンプにバイアス電流を供給する代表的な回路を図 1 に示します。一般に、RF アンプの RF 出力端子は、メイン・パワー・トランジスタのドレインまたはコレクタです。このノードは RF出力ですが、バイアス電流も供給してやる必要があります。通常、この電流はインダクタ(図 1 の L1)を通じて供給されます。RF 出力は、AC カップリング・コンデンサ(図 1 の C2)によって、この DC バイアスから分離されています。このようなインダクタと AC カップリング・コンデンサの配置は、一般にバイアス・ティーと呼ばれます。

図 1. バイアス・ティーを使用した代表的な RF バイアス
図 1. バイアス・ティーを使用した代表的な RF バイアス

広帯域バイアス・ティーの設計には様々な課題が伴います。インダクタと AC カップリング・コンデンサの選択も重要ですが、慎重なプリント回路基板(PCB)設計が欠かせません。寄生効果は性能に大きな影響をもたらし、これはゲインの周波数応答特性悪化として現れてきます。

広帯域アプリケーションでは、多くの場合、コニカル・チョークがバイアス・インダクタとして使われます。これは、コニカル・チョークが比較的共振を起こし難いことによります。しかし、コニカル・チョークは比較的高価で取り付けが難しく、脆弱で物理的なサイズも大きいという欠点があります(図 2 の L1と C2 の相対的サイズを比較してみてください)。

図 2. コニカル・チョークを使用した評価用ボード設計とコニカル・チョークの標準的寸法
図 2. コニカル・チョークを使用した評価用ボード設計とコニカル・チョークの標準的寸法

このアプリケーション・ノートでは、0402 サイズの表面実装インダクタとコンデンサ(およびオプションの 0805 サイズの部品)を使用して HMC994APM5E に広帯域ドレイン・バイアスを印加する、広帯域バイアス・ティーの設計を紹介します。HMC994APM5E は、DC~28GHz で動作する GaAs(ガリウム・ヒ素) pHEMT(擬似格子整合高電子移動度トランジスタ)MMIC(モノリシック・マイクロ波集積回路)パワー・アンプです。この設計では HMC994APM5E に焦点を当てていますが、その部品と設計方法は他の広帯域アンプにも応用できます。

バイアス・ティーを内蔵した HMC994APM5E 評価用ボード設計

HMC994APM5E のデフォルトのカスタマ評価用ボード(EV1HMC994APM5)には、ドレイン・バイアス機能は実装されていません。ドレイン電流の供給と RF 出力の AC カップリングには、コネクタ付き外部バイアス・ティーが必要です。HMC994APM5E の特性評価には、Marki Microwave BT2-0040 を使用しました。HMC994APM5 評価用ボードの変更後の回路図を図 4 に示します。このボードには、表面実装型の広帯域バイアス・ティー回路が含まれています。この 2 層ボードは、10 ミルの Rogers 4350B を使用しています。ボード上層のレイアウトを図 11 に示します(ガーバーファイルはご要望に応じてアナログ・デバイセズから入手できます)。

この回路のデフォルト動作条件は以下の通りです。

  • VDD = 10V
  • VGG1 ≈ −0.5V
  • VGG2 = 3.5V
  • 静止ドレイン電流(IDQ) = 250mA

ドレイン・バイアス回路を設計する場合は、RF が存在する状態で回路に流れると予想される、最大ドレイン電流(IDD)を考慮することが重要です。この IDDの値は、最大電流定格に基づくインダクタの選択に直接影響します。様々な周波数におけるHMC994APM5E の IDDと RF 出力電力の関係を図 3 に示します。

 3. 様々な周波数における HMC994APM5E の IDDと出力電力の関係
3. 様々な周波数における HMC994APM5E の IDDと出力電力の関係

この例では、目標とする動作範囲は 22GHz までで、最大出力電力は 29dBm です。これに基づき、回路がサポートすべき IDD の目標最大値は 310mA となります。

ボードの回路図を図 4 に、その周波数応答を図 5 に示します。

図 4. 表面実装型バイアス・ティーと 10MHz~22GHz の動作に推奨される部品を使用した HMC994APM5E 評価用ボードの回路図
図 4. 表面実装型バイアス・ティーと 10MHz~22GHz の動作に推奨される部品を使用した HMC994APM5E 評価用ボードの回路図
図 5. HMC994APM5E のゲインおよび出力リターン損失と周波数の関係(図 4 に示すアプリケーション回路)
図 5. HMC994APM5E のゲインおよび出力リターン損失と周波数の関係(図 4 に示すアプリケーション回路)

HMC994APM5E は 28GHz まで動作するように仕様規定されていますが、図 5 に見られる 22GHz 以上でのゲインのロールオフから分かるように、図 4 に示す表面実装型バイアス・ティー回路では、約 22GHz までの動作に制限されます。

この広帯域バイアス回路は、表面実装インダクタ 3 個、出力 ACカップリング・コンデンサ 1 個、RF および電源デカップリング回路 1 つで構成されています。

インダクタ L1 は高周波動作を実現する上で極めて重要です。様々なレイアウトを試みた結果、L1 を RF パターンに直に接触させると、最大限の性能を実現できることが確認されました(図 11 に示すレイアウトを参照)。

インダクタ L2 も非常に重要な部品で、パターンが長くなるとインダクタンスと容量が増大するので、L1 にできるだけ近付けて配置する必要があります。インダクタ L2 は、インダクタ L1 とPCB の相互作用によって生じる共振を軽減します。

インダクタ L3 は 100MHz 以下での動作が必要とされる場合のみ必要で、それ以外の場合は省略できます。

これら 3 つのインダクタの選択は、すべて、必要とされる動作周波数範囲、自己共振周波数、および最大電流定格に基づいて行います。

フェライト・ビーズはセラミック・インダクタより寄生容量が小さく、特に高周波数ではその傾向が顕著になります。以上に基づき、L1とL2は共振周波数が高いフェライト・ビーズとし、なおかつ L1 と L2 には最大電流定格に関して十分なマージンを持たせるようにします。

出力 AC カップリング・コンデンサ COUTも高周波動作を実現する上で極めて重要であり、その最大電圧定格も同様に非常に重要な検討事項です。このコンデンサは基本的に DC ブロック・コンデンサなので、コンデンサ両端の電圧は、加えられる DCバイアス電圧と大体同じになります。この場合は VDD = 10V なので、最大電圧定格が 16V のコンデンサを選択するのが妥当です。

バイパス・コンデンサ C12 と C13、および電荷放出抵抗 R2 とR3 は PCB からの RF カップリングを軽減し、電源ノイズを除去します。通常、小さいコンデンサはアンプに近付けて配置します。

電荷放出抵抗は、RF および電源デカップリング・コンデンサとPCB レイアウトによって生じる共振をなくすために使用できる場合があります。一般に、電荷放出抵抗の値は実験的に決定します。場合によっては、電荷放出抵抗が性能を低下させることもあります。したがって、PCB 設計には予備的なパッドをいくつか含めることを推奨します。電荷放出抵抗が不要あるいは有害であると判断される場合は、このパッド上に 0Ω抵抗を置くことができます。

RF出力パターンは 50Ωの特性インピーダンスを維持する必要があるため、グランデッド・コプレーナ導波路(GPWG)を適切なパターン寸法と距離を確保して形成し、複数のグラウンド・ビアを使って隣接するグランド・プレーン間を接続します。

以下のセクションでは、この広帯域バイアス・ティー回路を構成する各要素の設計と部品選択に焦点を当てます。

RF および電源デカップリング回路の設計

このセクションでは、電荷放出抵抗(R2 と R3)およびバイパス・コンデンサ(C12 と C13)の影響について検討します。

デカップリング部品(R2、R3、C12、C13)は、RF カップリングを軽減して電源ノイズを除去します。R2 と R3 は電荷放出抵抗で、PCB とデカップリング・コンデンサの相互作用によって生じる周波数グリッチを減らします。

広帯域表面実装バイアス・ティーの回路詳細を図 6 に示します。この図では R2、R3、C12、C13 に焦点を当てています。

図 6.広帯域バイアス・ティー回路の詳細(R2、R3、C12、C13 に焦点) − ケース 3
図 6.広帯域バイアス・ティー回路の詳細(R2、R3、C12、C13 に焦点) − ケース 3

このアプリケーション・ノートでは、表 1 に詳細を示す 3 つのケースを検討しました。以下に示すように、回路内の他の部品の値を一定に維持しながら、バイパス・コンデンサ(C12 および C13)と電荷放出抵抗(R1および R2)の値を変化させています。

  • COUT = 0.1µF(ATC 560L104YTT)
  • L1 = L2 = 56nH(0402DF-560XJR)
  • L3 = 1µH(0805LS-102XJLB)

以上のデータから得られた低周波数応答を図 7 に、高周波数応答を図 8 に示します。

図 7. バイパス・コンデンサと電荷放出抵抗の影響(低周波数応答)
図 7. バイパス・コンデンサと電荷放出抵抗の影響(低周波数応答)
図 8. バイパス・コンデンサと電荷放出抵抗の影響(高周波数応答)
図 8. バイパス・コンデンサと電荷放出抵抗の影響(高周波数応答)

R3 = 340Ω、R2 = 0Ω、C12 = 100pF、C13 = 10nF としたケース 3は、22GHz まで全体として最良の周波数応答を示しています(図 8 を参照)。この応答は周波数が高くなるにつれてゲイン勾配がわずかに上向きになっており、この部分はその有効性を示唆しています。ケース 3 は、次のような事実を示しています。すなわち、R3 を 340Ω に設定すると低周波数時の性能が向上すること(図 7 を参照)、そして、R3 = 0Ω のケース 2 に見られる12MHz での周波数応答の顕著な低下がなくなるということです。結果として、その後のすべての実験では、これらの電荷放出抵抗値(R3 = 340Ω、R2 = 0Ω)が使われています。

電源デカップリング・コンデンサを使っていないケース 1 は、24GHz まで周波数帯域を広げた場合でも良好な性能を示しています。しかし、ゲイン応答は 500MHz 付近で落ち込んでいます。加えて、この回路に RFおよび電源デカップリング・コンデンサを使用しないのは現実的でなく、リスクを伴います。したがって、この実装は推奨できません。

インダクタが周波数応答に与える影響


低周波数バイアス・インダクタ(L3)


広帯域表面実装バイアス・ティーの回路詳細を図 9 に示します。この図では L3に焦点を当てています。L3は100MHz以下での動作が必要とされる場合のみ必要で、それ以外の場合は省略できます。

図 9. 広帯域内蔵バイアス・ティーの回路詳細(L3 に焦点) − ケース 1
図 9. 広帯域内蔵バイアス・ティーの回路詳細(L3 に焦点) − ケース 1

L3 の選択は、必要な周波数応答(10MHz~22GHz)と最大電流条件(IDD = 310mA)に基づいて行います。この場合は、周波数定格と電流定格の目標仕様を満たすために、0805 サイズの部品を選択しています。

表 2 に詳細を示す要領で、4 つのケースについて比較を行いました。L3 だけを変化させ、他のすべての部品は以下に示す値で一定に保たれています。

  • COUT = 0.1µF(ATC 560L104YTT)
  • L1 = L2 = 56nH(0402DF-560XJR)
  • C12 = 100pF(CC0402JRN-PO9BN101)
  • R3 = 340Ω(ERA-2AEB3400X)
  • C13 = 10nF(TDK_C1005X7S2-A103K050BB)
  • R2 = 0Ω(ERJ-2GE0R00X)

これら 4 つのケースについて得られた低周波数応答を図 10 に示します。

図 10. L3 インダクタの影響(低周波数応答)
図 10. L3 インダクタの影響(低周波数応答)

部品の選択は、必要とされる最小動作周波数と、サポートすべき最大電流によって異なります。使用可能な最小周波数に関しては、ケース 1(L3 = 1µH)で最良の結果が得られます。しかし、このようにインダクタを 1µH とした場合、最大電流定格は、評価した 4 つのデバイスのうちで最も小さくなります(メーカーの推奨最大値に 30%のマージンを見込んだ推奨最大電流は350mA)。

これに対し、最小動作周波数が最も高いのは L3 を使用しないケース 4 で、その値は約 100MHz となります。

ケース 2 とケース 3 は、これら両方の値の間の妥協値を提供します。L3 = 0.47µH とした場合、動作可能な最小周波数は 20MHzで、最大電流は504mAです。L3 = 0.11µHとした場合、動作可能な最小周波数は 60MHz、最大電流は 1400mA です。L1 と L2 をデフォルト値にすると、インダクタの最大仕様値に 30%のマージンを見込んだ最大電流は 840mA となります。

これら 4 つのケースすべてと各部品の値、製品番号、およびこれらの部品の値に対応する最大電流定格を、表 2 に示します。いずれのケースにおいても、推奨最大電流はメーカーが仕様規定する最大電流より 30%低くなっています。

高周波バイアス・インダクタ(L1 と L2)

このセクションでは、2 つ目のインダクタL2を L1インダクタに直列に追加した場合の効果について検討し、10MHz~20GHz、10MHz~22GHz、および 12GHz~28GHz での動作用のソリューションを示します。

L1 と直列に L2 を追加すると、L1 と PCB の相互作用によって生じる共振が軽減されます。L1 は RFOUT パターンに接触させる必要があり、L2 の存在を効果的なものとするには、L2 をできるだけ L1 に近付けて配置する必要があります。表面実装バイアス・ティーを実装して改良を行った HMC994APM5E 評価用ボードの上層のレイアウトを図 11 に、写真を図 12 に示します。

図 11. バイアス・ティーを実装して改良を行ったHMC994APM5E 評価用ボードの上層のレイアウト
図 11. バイアス・ティーを実装して改良を行ったHMC994APM5E 評価用ボードの上層のレイアウト
図 12. バイアス・ティーを実装して改良を行ったHMC994APM5E 評価用ボードの上層の写真
図 12. バイアス・ティーを実装して改良を行ったHMC994APM5E 評価用ボードの上層の写真

このセクションでは、2 つのケースを比較します。最初に L2 を56nH(0402DF-560XJR)に設定して性能を比較し、次に L2 を0Ω に設定します。他のすべての部品は、以下に示す値で一定に保ちます。

  • COUT = 0.1µF(ATC 560L104YTT)
  • L1 = 56nH(0402DF-560XJR)
  • L3 = 1µH(0805LS-102XJLB)
  • C12 = 100pF(CC0402JRN-PO9BN101)
  • R3 = 340Ω(ERA-2AEB3400X)
  • C13 = 10nF(TDK_C1005X7S2-A103K050BB)
  • R2 = 0Ω(ERJ-2GE0R00X)

以上のデータから得られた低周波数応答を図 13 に、高周波数応答を図 14 に示します。L2 を 56nH(0402DF-560XJR)に設定した場合は、高周波数応答に大きく影響します。L1 と同じ値に設定した場合も同様です(図14を参照)。9.5GHz付近に見られた小さいゲインのピークはなくなり、大きな共振の位置が19.5GHz 付近から 24.5GHz 付近へ移動しています。

図 13. 2 つ目のインダクタ L2 をインダクタ L1 と直列に追加した場合の影響(低周波数応答)
図 13. 2 つ目のインダクタ L2 をインダクタ L1 と直列に追加した場合の影響(低周波数応答)
図 14. 2 つ目のインダクタ L2 をインダクタ L1 と直列に追加した場合の影響(高周波数応答)
図 14. 2 つ目のインダクタ L2 をインダクタ L1 と直列に追加した場合の影響(高周波数応答)

L1 = L2 = 56nH に設定し、他の部品については図 15 に示す値を使用することによって、10MHz~22GHz の広帯域応答が実現されています。

図 15. 広帯域内蔵バイアス・ティーの回路詳細(L1 と L2 に焦点)
図 15. 広帯域内蔵バイアス・ティーの回路詳細(L1 と L2 に焦点)

56nH のインダクタの推奨最大電流定格は 840mA です(メーカー推奨値に 30%のマージンを見込んだ値)。ところが、1µH のL3インダクタの推奨最大電流は350mAになっています。したがって、L3 が回路に流せる最大電流を制限する要素となります。既に述べたように、10MHz 以下での動作が求められない場合はL3 を省略できるので、より大きい電流を流すことができます。

より大きなバイアス電流が必要な場合は L3 の値を変更できますが(表 2 を参照)、代償として低周波でゲインのロールオフが生じます(図 10 を参照)。

L1 を 56nH(0402DF-560XJR)から 20nH(0402DF-200XJR)に変更すると、帯域幅を 28GHz まで広げることができますが、代償として 11GHz 以下でゲインのロールオフが生じてしまいます(図 16 と図 17 を参照)。

図 16. 10MHz~22GHz ソリューションと12GHz~28GHz ソリューションのゲイン比較(L1 を 56nH から 20nH に変更した場合)
図 16. 10MHz~22GHz ソリューションと12GHz~28GHz ソリューションのゲイン比較(L1 を 56nH から 20nH に変更した場合)
図 17. 10MHz~22GHz ソリューションと12GHz~28GHz ソリューションのゲインと出力リターン損失の比較(L1 を 56nH から 20nH に変更した場合)
図 17. 10MHz~22GHz ソリューションと12GHz~28GHz ソリューションのゲインと出力リターン損失の比較(L1 を 56nH から 20nH に変更した場合)

図 18 に示す回路は、12GHz~28GHz 用の広帯域バイアス・ティー・ソリューションです。推奨最大電流限界は 840mA で、これには 30%のマージンが含まれています。ここでは低周波数応答はあまり重要ではないので、L3 は省略する(もしくは 0Ω 抵抗に置き換える)ことができます。

図 18. 12GHz~28GHz の動作に推奨される回路
図 18. 12GHz~28GHz の動作に推奨される回路

出力 AC カップリング・コンデンサが周波数応答に与える影響

このセクションでは、COUT コンデンサの値を変化させた場合の影響について検討します。COUT は、広帯域周波数応答を維持する上で極めて重要です。また、このコンデンサは、アプリケーションのバイアス電圧に対応できる電圧定格を備えている必要があります。この場合の HMC994APM5E の VDDバイアス電圧は10V です。ある程度のマージンを見込むと、COUT の電圧定格は少なくとも 16V とするのが妥当です。

このコンデンサの挿入損失も重要です。挿入損失は、回路全体としてのゲインに直接影響するためです。

COUT に焦点を当てた広帯域表面実装バイアス・ティーの回路詳細を、図 19 に示します。

図 19. 広帯域内蔵バイアス・ティーの回路詳細(COUTに焦点)
図 19. 広帯域内蔵バイアス・ティーの回路詳細(COUTに焦点)

ここでは 2つのケースを検討します。2つの異なる 0.1µF 出力カップリング・コンデンサ、つまり、American Technical Ceramics( ATC ) の560L104YTT と 、 Passive Plus, Inc. ( PPI )の0402BB103を使って、周波数応答を測定します。これらのコンデンサは、それぞれ16Vと50Vの最大電圧定格を備えています。

他のすべての部品値は、以下に示す内容でデフォルト値に設定します。

  • L1 = L2 = 56nH(0402DF-560XJR)
  • L3 = 1µH(0805LS-102XJLB)
  • C12 = 100pF(CC0402JRNPO9BN101)
  • R3 = 340Ω(ERA-2AEB3400X)
  • C13 = 10nF(C1005X7S2A103K050BB)
  • R2 = 0Ω(ERJ-2GE0R00X)

これら2つのケースにおけるゲインと出力リターン損失の応答の比較を、図 20と図 21に示します。

ATC のコンデンサを使用した回路の方が、わずかながらよりフラットな周波数応答を示しており、ゲインもすべての周波数で同じか、わずかに大きくなっています。

図 20. COUT = ATC 560L104YTT の場合とCOUT = PPI 0402BB103 の場合のゲインと周波数の関係
図 20. COUT = ATC 560L104YTT の場合とCOUT = PPI 0402BB103 の場合のゲインと周波数の関係
図 21. COUT = ATC 560L104YTT の場合とCOUT = PPI 0402BB103 の場合のゲインおよび出力リターン損失と周波数の関係
図 21. COUT = ATC 560L104YTT の場合とCOUT = PPI 0402BB103 の場合のゲインおよび出力リターン損失と周波数の関係

ディスクリート表面実装バイアス・ティー回路とコネクタ付き外部バイアス・ティーの性能比較

このセクションでは、デフォルトの表面実装バイアス回路の性能と、コネクタ付きの外部バイアス・ティー(Marki Microwave BT2-0040)を使用した場合に実現される性能を比較します。

10MHz~22GHz の範囲でフラットな周波数応答が得られるように構成された表面実装バイアス・ティー回路の回路図を、図 22に示します。

図 22. 広帯域内蔵バイアス・ティーの回路詳細
図 22. 広帯域内蔵バイアス・ティーの回路詳細

以下に示す2つのケースについて、ゲイン、出力リターン損失応答、および入力リターン損失の比較を、それぞれ図 23、図 24、図 25に示します。

  • ディスクリート表面実装バイアス・ティー
  • 挿入損失を差し引いたコネクタ付き外部バイアス・ティー
図 23. ゲインと周波数の関係の比較(ディスクリート表面実装バイアス・ティーとコネクタ付き外部バイアス・ティー)
図 23. ゲインと周波数の関係の比較(ディスクリート表面実装バイアス・ティーとコネクタ付き外部バイアス・ティー)
図 24. ゲインおよび出力リターン損失と周波数の関係の比較(ディスクリート表面実装バイアス・ティーとコネクタ付き外部バイアス・ティー)
図 24. ゲインおよび出力リターン損失と周波数の関係の比較(ディスクリート表面実装バイアス・ティーとコネクタ付き外部バイアス・ティー)
図 25. 入力リターン損失と周波数の関係の比較(ディスクリート表面実装バイアス・ティーとコネクタ付き外部バイアス・ティー)
図 25. 入力リターン損失と周波数の関係の比較(ディスクリート表面実装バイアス・ティーとコネクタ付き外部バイアス・ティー)

まとめ

表面実装部品を使用したディスクリート広帯域バイアス・ティー回路の設計においては、良好な PCB 設計と適切な部品の選択が極めて重要であり、そのために多くの課題が生じます。部品の選択時には、デバイスの帯域幅や最大電圧定格、最大電流定格など、複数の事項を並行して検討する必要があります。

このアプリケーション・ノートで述べてきたように、低周波数応答や高周波数応答には様々な部品が影響します。例えば L1 インダクタおよび L2 インダクタと、COUTによる AC カップリングは共に高周波数応答に影響し、L3 インダクタは低周波数応答に影響します。また、C12 および C13 のバイパス・コンデンサと、R2 および R3 の電荷放出抵抗は、RF カップリングを制限したり、電源ノイズを除去したりするために必要です。電源デカップリング・コンデンサは常に必要ですが、電荷放出抵抗は性能を向上させることもあれば低下させることもあります。したがってトライ・アンド・エラーが必要であり、これらの部品用に予備の PCB パッドを組み込んでおくことは有効な方法です。

フェライト・ビーズは高周波数時の寄生容量が小さいので、L1と L2 にはフェライト・ビーズを使用します。

AC カップリング・コンデンサ COUT には広帯域周波数応答のものを使用する必要があり、電圧定格もバイアス電圧 VDD より高くなければなりません。一般に、最大電流定格や最大電圧定格に基づいて部品を選ぶ際には、30%のマージンを見込む必要があります。つまり、その部品に加わる最大電流や最大電圧が、メーカーの最大推奨値より 30%小さくなるようにします。

コニカル・チョークをベースとするバイアス・インダクタと比較して、ディスクリート表面実装回路はより安価であり、物理的な堅牢性も向上します。

L1、L2、L3 を変化させた場合の回路の概要と、それぞれに対応して実現される周波数範囲および最大電流定格を表 4 に示します。これらすべてのケースにおいて、電源デカップリング回路は同じものが使われています(つまり、R2 = 0Ω、R3 = 340Ω、C12 = 100pF、C13 = 10nF)。使用したすべての部品のメーカー製品番号を表 5 に示します。

Ivan Soc

Ivan Soc

Ivan Soc is an RF amplifier application engineer at ADI and is focused on RF amplifiers for satellite communications and radar. He holds a BSEE in electronics from the University of Montenegro, Montenegro.

Eamon Nash

Eamon Nash

Eamon Nashは、アナログ・デバイセズのアプリケーション・エンジニアリング・ディレクタです。28年間にわたり、ミックスド・シグナル/高精度/RF製品に関する業務や工場での業務に従事してきました。現在はRF製品グループに所属しており、RF電力の測定、フェーズド・アレイ・レーダー、ミリ波のイメージングを専門としています。アイルランドのリムリック大学で電子工学の学士号を取得しています。