質問:
今回はコンバータ・ノイズについて!― 第1部
回答:
コンバータの観点からは、ノイズ指数(NF)とS/N比(SNR)は同じ意味合いで用いられ、お互い計算式を使って換算できます。NFはノイズ密度を理解するのに最適ですが、SNRは対象帯域内におけるノイズの総量を示します。NFについて、もっと詳しく見てみましょう。トレードオフの判断を誤る場合が往々にしてあり、NFが低くても、コンバータから見たフロントエンド・ノイズが必ずしも低いとは限らないのです。カスケード接続されたシグナル・チェーンを設計する際にダイナミック特性を把握するには、NFが 便利です。ソース抵抗が4倍になるとNFは6dBだけ改善されますが、抵抗の増大は同時にコンバータから見たジョンソン・ノイズ(抵抗熱ノイズ)の増大をもたらします。ソース抵抗がさらに増大し、コンバータのアナログ・フロントエンド(トランスやアンプなど)に入力される信号がフルスケール入力信号の半分ほどになると、対象帯域内の全域でのノイズ管理はさらに難しくなり、その結果、コンバータの性能が低下します。
これはなぜでしょう? トランスまたはアンプへのフルスケール入力が低い場合、ゲインを高める必要があります。理論上はこれで良さそうに見えます。トランスの場合は、アンプよりもゲイン帯域幅への依存性が高くなります。したがって、たとえば、高インピーダンス比のトランスを用いてNFができるだけ低くなるよう最適化すると、100MHz以上の一般的な高IFアプリケーションを実現することは困難になります。
アンプでの問題も同様です。アンプのゲインを高くすると、アンプは信号を増幅するだけでなく、自らの内在ノイズも増幅します。したがって、コンバータの性能は急激に低下します。性能を保持するには、より複雑な(高次の)アンチエリアシング・フィルタが必要となり、抵抗や「ロス」の多い部品をふんだんに使う羽目になります。
フロントエンドの設計時には、代わりにノイズ・スペクトル密度(NSD)に注目してください。これは一般にnV/rt-Hzの単位で表記され、コンバータにとっては特に重要な値です。なぜなら、デジタル領域においてこのNSDが伝達され処理され、帯域内でこの値が「抽出」されてしまうからです。
要するに、必要に応じてゲインを設定することにより、シグナル・チェーン全体を通して、すべての入力および出力フルスケール信号を最大限にすることを忘れないでください、ということです。どんなシグナル・チェーンにおいても、減衰器や抵抗器の追加はNFとの良いトレードオフとはいえません。なぜなら、電力を浪費し、抵抗に起因するノイズを増やすことになるからです。第2部では、抵抗ノイズとコンバータ・ノイズの比較を取り上げます。
ADCのノイズ指数の式は、NF=Pfs(dBm)+174dBm-SNR-10×log(BW) となります。ここで、Pfs=使用した入力ネットワークのフルスケール電力です。