DC/DCステップアップ(昇圧)レギュレータを活用する方法」をダウンロードする(pdf, 805KB)
スマートフォン、GPSナビゲーション・システム、タブレット などの携帯機器では、電源に低電圧ソーラー・パネルやバッテリ またはAC/DC電源を利用することができます。バッテリ駆動の システムは、高電圧を実現するために電池を直列に積み重ねたり しますが、スペース不足のためにこれがつねに可能とは限りませ ん。スイッチング・コンバータは、インダクタの磁場を利用して エネルギーを蓄積したり、異なる電圧で負荷に放出したりします。 損失が少ないため、高効率が求められる場合に適しています。コ ンバータの出力に接続されたコンデンサは、出力電圧リップルを 減少させます。ここで論じる昇圧(ステップアップ)コンバータ は、高い電圧に変換して出力します。前稿1で論じた降圧(ステッ プダウン)コンバータは、低い電圧に変換して出力します。スイッ チとして内部FETを搭載したスイッチング・コンバータはス イッチング・レギュレータ2と呼ばれ、外付けFETを必要とす るデバイスはスイッチング・レギュレータ・コントローラ3と呼 ばれています。
図1は、2本の直列接続された単3電池で動作する代表的な低消 費電力システムです。バッテリの出力可能な電圧範囲は約1.8V~ 3.4Vですが、ICの方は1.8Vと5.0Vが必要です。電池の数を 増やすことなく電圧をステップアップできる昇圧コンバータは、 WLEDバックライト、マイクロ・ハードディスク・ドライブ、 オーディオ、USBペリフェラルを駆動します。一方、降圧コン バータは、マイクロプロセッサ、メモリ、ディスプレイを駆動し ます。

図1. 代表的な低消費ポータブル機器の簡易ブロック図
インダクタには電流の変化に抵抗する性質があるため、昇圧機能 が可能になります。インダクタは、充電時には負荷となってエネ ルギーを蓄積し、放電時にはエネルギー源となります。放電段階 で生成される電圧は、元の充電電圧ではなく、電流の変化率に関 係するため、さまざまな入出力電圧レベルを使用できます。
図2に示すように、昇圧スイッチング・レギュレータは、2個の スイッチ、2個のコンデンサ、1個のインダクタで構成されます。 入力とグラウンドの貫通電流、いわゆる「シュートスルー」を避 けるため、非重複スイッチ・ドライブを使用して、一度にオンに できるスイッチを1つだけにします。フェーズ1(tON)では、ス イッチBが開き、スイッチAが閉じます。インダクタはグラウン ドに接続するため、電流はVINからグラウンドに流れます。イン ダクタに掛かる正電圧によって電流が増大し、エネルギーがイン ダクタに蓄積します。フェーズ2(tOFF)では、スイッチAが開き、 スイッチBが閉じます。インダクタは負荷に接続するため、電流 はVINから負荷に流れます。インダクタに掛かる負電圧(出力に 対して入力側)によって電流が減少し、インダクタに蓄積された エネルギーが放電して負荷に流れます。

図2. 昇圧コンバータのトポロジと動作波形
なお、スイッチング・レギュレータの動作は、連続または不連続 とすることができます。電流連続モード(CCM)ではインダク タ電流はゼロに降下することはありませんが、電流不連続モード (DCM)ではゼロになることがあります。図2に示す電流リップ ルΔIL は、式ΔIL = (VIN × tON)/Lを用いて計算します。平均イ ンダクタ電流は負荷に流れますが、リップル電流は出力コンデン サに流れます。

図3. 発振器、PWM制御ループ、スイッチングFETを集積した
昇圧レギュレータ
スイッチBの代わりにショットキー・ダイオードを使用するレ ギュレータは非同期式といわれ、スイッチBにFETを使用する レギュレータは同期式といわれます。図3では、スイッチAとB にそれぞれ内部NFETと外付けショットキー・ダイオードを実 装し、非同期式昇圧レギュレータを構成しています。負荷絶縁と 低いシャットダウン電流を必要とする低消費電力アプリケーショ ンの場合、図4に示すように、外付けFETを追加することがで きます。デバイスのENピンを0.3V未満に駆動すると、レギュ レータがシャットダウンされ、入力と出力が完全に切断されます。 (このFETがない場合は入力電圧がインダクタ、ダイオードを通 じて出力に出てしまいます。)

図4. ADP1612/ADP1613の代表的なアプリケーション回路
最新の低消費電力同期降圧レギュレータは、主な動作モードとし てパルス幅変調方式(PWM)を使用します。PWMは、周波数 を一定に保持し、パルス幅(tON)を変動させて出力電圧を調整 します。供給される平均電力はデューティサイクル(D)に比例 するため、効率的に負荷に電力を供給できます。

たとえば、必要な出力電圧が15V、使用可能な入力電圧が5Vの
場合、次のようになります。
D = (15 – 5)/15 = 0.67 or 67%
エネルギーが保存されるため、「負荷に供給される電力」は「入力 電力」-「損失」とする必要があります。変換が非常に効率的で あれば、わずかな電力の損失は基本的な消費電力の計算から省く ことができます。したがって、おおよその入力電流を次の式で表 すことができます。

たとえば、負荷電流が15Vで300mAの場合、5VでIIN=900mA となり、出力電流の3倍になります。したがって、ブースト電圧 の増大につれて、使用可能な負荷電流が減少します。
昇圧コンバータは、選択された出力電圧を調整するために、電 圧または電流帰還を使用します。制御ループによって、負荷変動 に応じて出力のレギュレーションを維持できます。低消費電力昇 圧レギュレータは、一般に600kHz~ 2MHz で動作します。高 いスイッチング周波数であれば小さなインダクタを使用できま すが、スイッチング周波数が倍増するたびにスイッチング・ロ スの影響などにより効率がおよそ2%低下します。ADP1612お よびADP1613昇圧コンバータ(付録を参照)では、スイッチン グ周波数はピンで選択することができ、650kHz の動作で最高の 効率を発揮し、1.3MHzの動作で外付け部品数を最小にするこ とができます。650kHz動作の場合はFREQをGNDに接続し、 1.3MHz 動作の場合はVINに接続します。
昇圧レギュレータの重要な部品であるインダクタは、パワー・ スイッチのオン時にエネルギーを蓄積し、オフ時に出力整流 器を介してエネルギーを出力に送ります。インダクタの低い電 流リップルと高効率とのトレードオフをバランスさせるため、 ADP1612 / ADP1613のデータシートでは4.7μH~ 22μHのイ ンダクタンス値を推奨しています。一般に、低い値のインダクタ では、任意の物理サイズに対して飽和電流が高くなり、直列抵抗 が低くなります。しかし、インダクタンスを低くするとピーク電 流が高くなり、効率の低下、リップルの増大、ノイズの増加を招 くことがあります。多くの場合、昇圧レギュレータを電流不連続 モードで動作させれば、インダクタのサイズを低減し、安定性を 改善することができます。ピーク・インダクタ電流(「最大入力 電流」+「インダクタのリップル電流の半分」)はインダクタの定 格飽和電流を下回る必要があり、レギュレータへの最大DC入力 電流はインダクタのRMS電流定格値を下回る必要があります。
参考文献
(アナログ・デバイセズの全製品に関する情報は、アナログ・デバイセズ ホームページをご覧ください。)
1Analog Dialogue 45-06 DC/DCステップダウン(降圧)レギュレータを活用する方法
2
スイッチング・レギュレータ
3
スイッチング・レギュレータ・コントローラ
4
ADIsimPower

図A. ADP1612/ADP1613の機能ブロック図
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