DC/DCステップアップ(昇圧)レギュレータを活用する方法

   Ken Marasco著 (コメントは英語でお願いいたします
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  1. はじめに
  2. 昇圧レギュレータの主な仕様と定義
  3. 結論
  4. 付録

はじめに

スマートフォン、GPSナビゲーション・システム、タブレット などの携帯機器では、電源に低電圧ソーラー・パネルやバッテリ またはAC/DC電源を利用することができます。バッテリ駆動の システムは、高電圧を実現するために電池を直列に積み重ねたり しますが、スペース不足のためにこれがつねに可能とは限りませ ん。スイッチング・コンバータは、インダクタの磁場を利用して エネルギーを蓄積したり、異なる電圧で負荷に放出したりします。 損失が少ないため、高効率が求められる場合に適しています。コ ンバータの出力に接続されたコンデンサは、出力電圧リップルを 減少させます。ここで論じる昇圧(ステップアップ)コンバータ は、高い電圧に変換して出力します。前稿1で論じた降圧(ステッ プダウン)コンバータは、低い電圧に変換して出力します。スイッ チとして内部FETを搭載したスイッチング・コンバータはス イッチング・レギュレータ2と呼ばれ、外付けFETを必要とす るデバイスはスイッチング・レギュレータ・コントローラ3と呼 ばれています。

図1は、2本の直列接続された単3電池で動作する代表的な低消 費電力システムです。バッテリの出力可能な電圧範囲は約1.8V~ 3.4Vですが、ICの方は1.8Vと5.0Vが必要です。電池の数を 増やすことなく電圧をステップアップできる昇圧コンバータは、 WLEDバックライト、マイクロ・ハードディスク・ドライブ、 オーディオ、USBペリフェラルを駆動します。一方、降圧コン バータは、マイクロプロセッサ、メモリ、ディスプレイを駆動し ます。

図1
図1. 代表的な低消費ポータブル機器の簡易ブロック図

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インダクタには電流の変化に抵抗する性質があるため、昇圧機能 が可能になります。インダクタは、充電時には負荷となってエネ ルギーを蓄積し、放電時にはエネルギー源となります。放電段階 で生成される電圧は、元の充電電圧ではなく、電流の変化率に関 係するため、さまざまな入出力電圧レベルを使用できます。

図2に示すように、昇圧スイッチング・レギュレータは、2個の スイッチ、2個のコンデンサ、1個のインダクタで構成されます。 入力とグラウンドの貫通電流、いわゆる「シュートスルー」を避 けるため、非重複スイッチ・ドライブを使用して、一度にオンに できるスイッチを1つだけにします。フェーズ1(tON)では、ス イッチBが開き、スイッチAが閉じます。インダクタはグラウン ドに接続するため、電流はVINからグラウンドに流れます。イン ダクタに掛かる正電圧によって電流が増大し、エネルギーがイン ダクタに蓄積します。フェーズ2(tOFF)では、スイッチAが開き、 スイッチBが閉じます。インダクタは負荷に接続するため、電流 はVINから負荷に流れます。インダクタに掛かる負電圧(出力に 対して入力側)によって電流が減少し、インダクタに蓄積された エネルギーが放電して負荷に流れます。

図2
図2. 昇圧コンバータのトポロジと動作波形

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なお、スイッチング・レギュレータの動作は、連続または不連続 とすることができます。電流連続モード(CCM)ではインダク タ電流はゼロに降下することはありませんが、電流不連続モード (DCM)ではゼロになることがあります。図2に示す電流リップ ルΔIL は、式ΔIL = (VIN × tON)/Lを用いて計算します。平均イ ンダクタ電流は負荷に流れますが、リップル電流は出力コンデン サに流れます。

図3
図3. 発振器、PWM制御ループ、スイッチングFETを集積した 昇圧レギュレータ

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スイッチBの代わりにショットキー・ダイオードを使用するレ ギュレータは非同期式といわれ、スイッチBにFETを使用する レギュレータは同期式といわれます。図3では、スイッチAとB にそれぞれ内部NFETと外付けショットキー・ダイオードを実 装し、非同期式昇圧レギュレータを構成しています。負荷絶縁と 低いシャットダウン電流を必要とする低消費電力アプリケーショ ンの場合、図4に示すように、外付けFETを追加することがで きます。デバイスのENピンを0.3V未満に駆動すると、レギュ レータがシャットダウンされ、入力と出力が完全に切断されます。 (このFETがない場合は入力電圧がインダクタ、ダイオードを通 じて出力に出てしまいます。)

図4
図4. ADP1612/ADP1613の代表的なアプリケーション回路

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最新の低消費電力同期降圧レギュレータは、主な動作モードとし てパルス幅変調方式(PWM)を使用します。PWMは、周波数 を一定に保持し、パルス幅(tON)を変動させて出力電圧を調整 します。供給される平均電力はデューティサイクル(D)に比例 するため、効率的に負荷に電力を供給できます。


たとえば、必要な出力電圧が15V、使用可能な入力電圧が5Vの 場合、次のようになります。
D = (15 – 5)/15 = 0.67 or 67%

エネルギーが保存されるため、「負荷に供給される電力」は「入力 電力」-「損失」とする必要があります。変換が非常に効率的で あれば、わずかな電力の損失は基本的な消費電力の計算から省く ことができます。したがって、おおよその入力電流を次の式で表 すことができます。


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たとえば、負荷電流が15Vで300mAの場合、5VでIIN=900mA となり、出力電流の3倍になります。したがって、ブースト電圧 の増大につれて、使用可能な負荷電流が減少します。

昇圧コンバータは、選択された出力電圧を調整するために、電 圧または電流帰還を使用します。制御ループによって、負荷変動 に応じて出力のレギュレーションを維持できます。低消費電力昇 圧レギュレータは、一般に600kHz~ 2MHz で動作します。高 いスイッチング周波数であれば小さなインダクタを使用できま すが、スイッチング周波数が倍増するたびにスイッチング・ロ スの影響などにより効率がおよそ2%低下します。ADP1612お よびADP1613昇圧コンバータ(付録を参照)では、スイッチン グ周波数はピンで選択することができ、650kHz の動作で最高の 効率を発揮し、1.3MHzの動作で外付け部品数を最小にするこ とができます。650kHz動作の場合はFREQをGNDに接続し、 1.3MHz 動作の場合はVINに接続します。

昇圧レギュレータの重要な部品であるインダクタは、パワー・ スイッチのオン時にエネルギーを蓄積し、オフ時に出力整流 器を介してエネルギーを出力に送ります。インダクタの低い電 流リップルと高効率とのトレードオフをバランスさせるため、 ADP1612 / ADP1613のデータシートでは4.7μH~ 22μHのイ ンダクタンス値を推奨しています。一般に、低い値のインダクタ では、任意の物理サイズに対して飽和電流が高くなり、直列抵抗 が低くなります。しかし、インダクタンスを低くするとピーク電 流が高くなり、効率の低下、リップルの増大、ノイズの増加を招 くことがあります。多くの場合、昇圧レギュレータを電流不連続 モードで動作させれば、インダクタのサイズを低減し、安定性を 改善することができます。ピーク・インダクタ電流(「最大入力 電流」+「インダクタのリップル電流の半分」)はインダクタの定 格飽和電流を下回る必要があり、レギュレータへの最大DC入力 電流はインダクタのRMS電流定格値を下回る必要があります。

昇圧レギュレータの主な仕様と定義

入力電圧範囲:昇圧コンバータの入力電圧範囲は、使用可能な最 低の入力電源電圧を決定します。仕様に記載された入力電圧範囲 の幅が広くても、効率的な動作のためには入力電圧がVOUTを下 回る必要があります。

グラウンドまたは無信号時消費電流:負荷に供給されないDCバ イアス電流(Iq)です。Iqが低いほど効率は高くなります。しか し、Iqは、スイッチ・オフ、ゼロ負荷、PFM動作、PWM動作 など、多くの条件に対して仕様規定できるため、アプリケーショ ンに最適な昇圧レギュレータを決定するには、特定の動作電圧と 負荷電流における動作効率を調べることがベストです。

シャットダウン電流:イネーブル・ピンがOFFに設定されたと きに消費される入力電流。バッテリ駆動のデバイスがスリープ・ モードにあるとき、長いスタンバイ時間を実現するには低いIq が 重要です。

スイッチのデューティサイクル:動作デューティサイクルは、最 大デューティサイクルを下回る必要があります。さもなければ、 出力電圧が安定化しません。たとえば、D = (VOUT - VIN)/VOUT で、VIN=5V、VOUT=15Vの場合、D=67%になります。 ADP1612とADP1613の最大デューティサイクルは90%です。

出力電圧範囲:デバイスが対応する出力電圧の範囲。昇圧コン バータの出力電圧は固定または調整可能とすることができます。 必要な出力電圧を設定するには抵抗を使用します。

電流制限:昇圧コンバータでは、一般に負荷電流ではなくピー ク電流制限を指定します。なお、VINとVOUTの差が大きいほど、 使用可能な負荷電流は小さくなります。使用可能な最大出力電流 は、ピーク電流制限、入力電圧、出力電圧、スイッチング周波数、 インダクタ値によって決まります。

ライン・レギュレーション:入力電圧の変化に起因する出力電圧 の変化です。

負荷レギュレーション:出力電流の変化に対する出力電圧の変化 です

ソフト・スタート:昇圧レギュレータでは、ソフト・スタート機 能を備えて、スタートアップ時の出力電圧を管理された方法で変 化させ、過剰な出力電圧オーバーシュートを防止することが重要 です。昇圧コンバータによっては、外付けコンデンサでソフト・ スタート機能を調整できます。ソフト・スタート用コンデンサが 充電することにより、デバイスの許容ピーク電流が制限されます。 調整可能なソフト・スタート機能を使用すれば、システム条件に 合わせてスタートアップ時間を変更できます。

サーマル・シャットダウン(TSD):ジャンクション温度が規定 の範囲を超えて上昇した場合、サーマル・シャットダウン回路が レギュレータをターン・オフします。大電流動作、回路基板の冷 却不足、または高い周囲温度のために、つねにジャンクション温 度が高くなることがあります。保護回路にはヒステリシスが組み 込まれているため、サーマル・シャットダウンが発生した後、オ ンチップ温度がプリセットされた限度を下回るまでデバイスは通 常の動作に戻りません。

低電圧ロックアウト(UVLO):入力電圧がUVLO閾値を下回 ると、ICがパワー・スイッチを自動的にオフにして低消費電力 モードに入ります。この動作は、低入力電圧で発生する不安定な 動作を防止し、回路による制御が失われたままパワー・デバイス がオンにならないようにします。

結論

低消費電力昇圧レギュレータの実証済みの設計を利用すること で、スイッチングDC/DCコンバータの設計にまつわる不安が なくなります。設計上の計算については、データシートの「アプ リケーション」を参照してください。また、ADIsimPower4設 計ツールでエンド・ユーザの作業が簡単になります。詳細につ いては、アナログ・デバイセズのアプリケーション・エンジニ アにご連絡いただくか、フォーラムサイトEngineerZoneをご覧ください。アナログ・デバイセズの昇圧レ ギュレータのセレクション・ガイド、データシート、アプリケー ション・ノートについては、パワーマネジメントのページ をご 覧ください。

参考文献 (アナログ・デバイセズの全製品に関する情報は、アナログ・デバイセズ ホームページをご覧ください。)
1Analog Dialogue 45-06 DC/DCステップダウン(降圧)レギュレータを活用する方法
2 スイッチング・レギュレータ
3 スイッチング・レギュレータ・コントローラ
4 ADIsimPower

付録

650kHz/1300kHzで動作するステップアップDC/DCスイッチング・コンバータ
ステップアップ・コンバータのADP1612およびADP1613 は、それぞれ1.8V~ 5.5Vおよび2.5V~ 5.5Vの単電源で動作 し、20Vという高電圧で150mAを超える電流を供給します。 1.4A/2.0A、0.13Ωのパワー・スイッチと電流モードのパルス幅 変調レギュレータを統合し、入力電圧、負荷電流、温度の変化に 対して出力変動を1%未満にします。動作周波数はピンで選択で き、高効率もしくは最小の外付け部品サイズのいずれかに最適 化できます。650kHz で90%の効率を実現し、1.3MHz では回 路実装スペースが最小化し、携帯機器や液晶ディスプレイのス ペースに制約のある環境に最適になります。調整可能なソフト・ スタート回路で突入電流を防止することによって、安全で予測可 能なスタートアップ条件を保証します。ADP1612とADP1613 の消費電流は、スイッチング状態で2.2mA、非スイッチング 状態で700μA、シャットダウン・モードで10nAです。8ピ ンMSOPパッケージのADP1612とADP1613は、-40℃~ +85℃で仕様規定されており、1000個受注時の単価が1.50ド ル/1.20ドルです(米国における販売価格)。

図A
図A. ADP1612/ADP1613の機能ブロック図

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