安全性に関するアプリケーション・ノートの使用を通じた安全設計の支援 -パート2:FMEDAの実践方法
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主なポイント
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概要
機能安全(FS:Functional Safety)に関連するコンポーネントの故障率を算出したり、故障モード分布(FMD:Failure Mode Distribution)を導出したり、ピンの故障モード影響解析(FMEA:Failure Mode and Effect Analysis)を実施したりする際には、まず前提条件が妥当かどうかを確認するためにいくつかの健全性チェック(Sanity Check)を実施します。その次に行うべきは、それらのデータをシステムの故障モード影響診断分析(FMEDA:Failure Modes, Effects, and Diagnostic Analysis)に反映させることです。アナログ・デバイセズの安全性に関するアプリケーション・ノートは、故障率の算出、ダイのFMDの導出、ピンのFMEAに関する情報を得るための様々な手法を提供しています。それらの情報の活用方法については、安全関連システム(SRS:Safety-related System)を設計した経験や、FMEDAによる技術的な安全解析を実施した経験に応じて、いくつか考えられます。本稿(本連載のパート2)では、ダイのFMDとピンのFMEAを考慮してFSに対応する部品の故障率分布を導出する方法の1つを示します。
はじめに
本稿では、電源回路を例にとり、コンポーネントのFMEDAを実施する例を紹介します。アナログ・デバイセズの安全性に関するアプリケーション・ノートには、図1のFMEDAの項目(緑色の線で囲んだ部分)に転記可能な安全に関連する情報が記載されています。以下では、同アプリケーション・ノートに記載された情報を活用し、それをシステム・レベルのFMEDAに適用する方法について解説します1~3。
信頼度予測の方法を選択する
上述したように、アナログ・デバイセズはFSに対応する製品については安全性に関する アプリケーション・ノートを用意しています。同アプリケーション・ノートには安全に関する情報が記載されています。その前提条件については健全性チェックを実施する必要があります。その次にやるべきは、アプリケーションに適した信頼度予測の方法を選定することです(図2)。その際には、技術的な安全解析の手法と整合させるようにしなければなりません。例えば、信頼度予測において一貫した情報源を使用するといった具合です。

| コンポーネント | 機能 | 故障率〔FIT〕 | 故障モード | FMD |
| LDO(低ドロップアウト) レギュレータ | イネーブルに設定した後、 1.2ミリ秒以内に、3.3V±1.5%に レギュレートされた 低ノイズの電圧を出力 | 7.15 | ||
| 0.39 |
安全性に関するアプリケーション・ノートは、信頼度予測について、SN 29500で定められた方法、IEC 62380で定められた方法、アレニウスHTOLの3種類に対応しています。ここで言うアレニウスHTOLとは、実験室での測定に基づいた高温動作寿命(HTOL:High Temperature Operating Life)のデータを使用し、アレニウスの式によって故障率を算出する方法のことです。各方法については、「安全性に関するアプリケーション・ノート」という連載記事のPart 1で解説しているのでそちらも参照してください。ここで、SN 29500、アレニウスHTOLに基づく方法を使用するとIC全体の故障率が得られます。それに対し、IEC 62380で定められた方法ではダイとパッケージの各故障率が算出されます1,4。
SN 29500で定められた方法またはアレニウスHTOLを選択した場合、専門家の判断に基づいて、IC全体の故障率をダイとパッケージの故障率に配分することも可能です。例えば、自動車を対象とした安全規格であるISO 26262:2018-11のセクション4.6.2.1.2.4にはSN 29500の基本故障率が示されています。この故障率については、IEC 62380で定められた方法で決定されたのと同じ比率を用いて、ダイとパッケージの故障率に配分することができます5。
表1は、図1の緑色の線で囲んだ個所の情報をリニア・レギュレータ「ADP7156」に適用した結果です。故障率の欄には、IEC 62380に基づくダイの故障率(7.15FIT)とパッケージの故障率(0.39FIT)を記入しています。
ダイのFMDの導出
安全性に関するアプリケーション・ノートにはFMDの値が記載されています。それらはダイのFMDに相当し、コンポーネントのダイの面積比や複雑さ、技術的な専門知識に基づいて導出されています。したがって、それらの値は当該コンポーネントにおけるシステム・レベルのFMEDAの故障モードとFMDのセクションにそのまま流用できます。つまり、表2のような結果が得られます。安全性に関するアプリケーション・ノートが存在しない場合、IEC 61508-2:2010の表A.1に基づいて各故障モードに故障率を均等に配分しなければならないかもしれません。それに対し、安全性に関するアプリケーション・ノートを利用すれば、実際のICの解析に基づいた故障モード分布を取得できます。
| コンポーネント | 機能 | 故障率〔FIT〕 | 故障モード | FMD |
| LDOレギュレータ | イネーブルに設定した後、 1.2ミリ秒以内に、3.3V±1.5%に レギュレートされた 低ノイズの電圧を出力 | 7.15 | VOUTがオフ、または0V付近で ローの状態のままになる | 29% |
| VOUTが目標値より高い値に レギュレートされる | 12% | |||
| VOUTが目標値より低い値に レギュレートされる | 9% | |||
| VOUTがレギュレーションの 範囲内で発振 | 6% | |||
| VOUTがVIN付近の 値のままになる | 24% | |||
| VOUTのセトリング時間が 1.2ミリ秒を超える | 3% | |||
| VOUTがレギュレーションの 範囲外で発振 | 1% | |||
| システム機能への影響なし | 16% | |||
| 0.39 |
表1については、ピンの故障モードに関連する0.39FITをそれぞれの故障モードに配分する必要があります。
ピンのFMDの導出
ピンのFMEAを使用すれば、安全性に関するアプリケーション・ノートに記載されているピンのFMEAの表に基づいてピンのFMDを導出することができます。一般に、ダイのFMDに含まれる故障モードは、ピンのFMDに含まれる故障モードと類似したものになります。それらの故障モードは、ICのシステム機能に関連しているからです。そうでない場合、表3のFMDの一部が0%となっているように、いくつかの欠落が生じるだけです。ピンのFMEAの表において、影響の欄に記載されたシステム・レベルの故障モードに対応する値の合計が100%になるようにすれば、表3に示すようにピンのFMDが得られます。
表3に示したFMEDAの作成が完了したら、特定の安全機能に対するICの各故障モードの影響について定義します。また、各故障モードの故障を分類(安全、危険、影響なし、該当なし)します。その上で、目標とする安全度水準(SIL:Safety Integrity Level)を想定した場合に、検出されない危険側故障率の値が十分に低いかどうかを確認する必要があります。
| コンポーネント | 機能 | 故障率〔FIT〕 | F故障モード | FMD |
| LDOレギュレータ | イネーブルに設定した後、 1.2ミリ秒以内に、3.3V±1.5%に レギュレートされた 低ノイズの電圧を出力 | 7.15 | VOUTがオフ、または0V付近で ローの状態のままになる | 29% |
| VOUTが目標値より高い値に レギュレートされる | 12% | |||
| VOUTが目標値より低い値に レギュレートされる | 9% | |||
| VOUTがレギュレーションの 範囲内で発振 | 6% | |||
| VOUTがVIN付近の値のままになる | 24% | |||
| VOUTのセトリング時間が 1.2ミリ秒を超える | 3% | |||
| VOUTがレギュレーションの 範囲外で発振 | 1% | |||
| システム機能への影響なし | 16% | |||
| 0.39 | VOUTがオフ、または0V付近で ローの状態のままになる | 32.2% | ||
| VOUTが目標値より高い値に レギュレートされる | 6.8% | |||
| VOUTが目標値より低い値に レギュレートされる | 6.8% | |||
| VOUTがレギュレーションの 範囲内で発振 | 3.4% | |||
| VOUTがVIN付近の値のままになる | 20.5% | |||
| VOUTのセトリング時間が 1.2ミリ秒を超える | 0% | |||
| VOUTがレギュレーションの 範囲外で発振 | 0% | |||
| システム機能への影響なし | 30.3% |
まとめ
アナログ・デバイセズは、安全性に関するアプリケーション・ノートを提供しています。これを活用すれば、コンポーネント・レベルのFMEDAに必要な重要なデータが得られます。そのため、安全解析を効率良く実施できます。解析に当たっては、SN 29500で定められた方法、IEC 62380で定められた方法、アレニウスHTOLなど、一貫性のある信頼度予測の方法を選択します。そして、得られたダイのFMDとピンのFMEAを解析に直接反映させます。それにより、様々な機能的故障モードに対して故障率を正確に配分できます。この体系的な手法により、ワークフローは、最初の健全性チェックが完了した状態からFMEDAの入力項目がすべて記入された状態へと移行します。これは、安全分析の最終段階に向けた必要不可欠な基盤になります。その基盤を利用すれば、故障の分類や安全側故障率/危険側故障率の特定を実施できます。最終的には、システム全体がSILに適合しているか否かを検証することが可能になります。
参考資料
1Bryan Angelo Borres「安全性に関するアプリケーション・ノート 【Part 1】故障率」Analog Devices、2025年
2Bryan Angelo Borres「安全性に関するアプリケーション・ノート 【Part 2】故障モード分布」Analog Devices、2025年10月
3Bryan Angelo Borres「安全性に関するアプリケーション・ノート 【Part 3】ピンのFMEA」Analog Devices、2025年11月
4Tom Meany「Reliability Predictions for Integrated Circuits(ICの信頼度予測)」Analog Devices、2021年12月
5「ISO 26262 Part 11, Road Vehicles - Functional Safety: Guidelines on Application of ISO 26262 to Semiconductors(ISO 26262 第11部、自動車 - 機能安全:半導体へのISO 26262の適用の指針)」International Organization for Standardization、2018年
著者について
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製品
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