安全性に関するアプリケーション・ノートの使用を通じた安全設計の支援 - パート1:開始にあたって
要約
アナログ・デバイセズの工業用機能安全(FS)ポートフォリオにはFS対応デバイスが含まれており、その安全性に関するアプリケーション・ノートがそれぞれの製品ページで公開されています。これらの安全性に関するアプリケーション・ノートは、故障率、故障モード分布(FMD)、ピンの故障モード影響解析(FMEA)といったコンポーネントのFS情報を提供します。システム・インテグレータは、これらのノートを利用することによって、安全関連システム設計の助けとなる、重要な情報にアクセスすることもできます。このような理由から、このシリーズの最初のパートでは、システム・インテグレータがコンポーネントの安全性に関するアプリケーション・ノートを使用する前に行う必要のある、推奨健全性チェックについて述べます。
はじめに
アナログ・デバイセズの「安全性に関するアプリケーション・ノート」シリーズ1, 2, 3には、アナログ・デバイセズの機能安全(FS)集積回路(IC) - その機能、特性、および広範なユーザ経験によってFSアプリケーションに推奨されるFS未対応デバイスまたは標準製品 - の安全性に関するアプリケーション・ノートの概要が示されています。図1に示すように、アナログ・デバイセズの安全性に関するアプリケーション・ノートには、コンポーネントの開発プロセス、3つの信頼度予測法から計算されたその予想故障率、ICのシステム機能に関する故障モード分布(FMD)、そして電源短絡、グラウンド短絡、ピン断線による故障に関するピンの故障モード影響解析(FMEA)に関する詳細が示されています。
アナログ・デバイセズの安全性に関するアプリケーション・ノートについて述べたこの2番目の記事シリーズは、システム・インテグレータがそれらのノートを使用する際のガイドとして使用し、技術的な安全性解析を行う助けとすることを目的としています。更に、このパート1では、システム・インテグレータがアナログ・デバイセズコンポーネントの安全性に関するアプリケーション・ノートを使用する際に取るべき次のステップに焦点を当てています。
信頼度予測に使用する条件のチェック
アナログ・デバイセズの安全性に関するアプリケーション・ノートには、3つの方法に基づく信頼度予測が示されています。すなわち、SN29500、IEC 62380、および高温動作寿命(HTOL)のデータを使用するアレニウスの式によって計算する故障率です。図2に示すそれぞれの信頼度予測法については、計算故障率の概要を示す表内に、使用した条件を示すための注記が記載されています。これには、ミッション・プロファイル、動作電圧、消費電力、使用パッケージに基づく熱仕様、アレニウスHTOLの場合の信頼水準、および他の信頼度予測法が必要な入力で製品のデータシートならびに集積密度や技術構造などの設計関連データから求められるものなどの情報が含まれます。この情報を使用することができるため、信頼度予測に慣れたシステム・インテグレータであれば、最初の計算時に仮定した動作条件が異なる場合でも、インテグレータの都合に合わせてICの故障率を計算し直すことができます。安全性に関するアプリケーション・ノートのパート1には、アナログ・デバイセズの信頼度データベースの場所が示されているほか、信頼度予測の信頼水準を変更する方法についての考察も含まれています。同様の条件を使用して仮定条件を直接適用できる場合、システム・インテグレータは、安全性に関するアプリケーション・ノートの信頼度予測データをそのまま使用することができます。
FMDに使用する条件のチェック
システム機能とは別に、アナログ・デバイセズの安全性に関するアプリケーション・ノートのFMDのセクションには、想定したアプリケーション回路も示されています。これを図3に示します。システム・インテグレータにとって、そのアプリケーションに使われるICが想定アプリケーション回路と同様のものかどうかをチェックすることは重要です。想定と異なる場合は、解析時にある程度の変更が必要になることがあります。例えば図3の場合で考えると、6つあるLTC2933のチャンネルのうち4つしか使わない場合があるかもしれません。
ピンのFMEAに使用する条件のチェック
安全性に関するアプリケーション・ノートのピンのFMEAのセクションには、図4に示すように、使用したコンポーネントのパッケージ、想定デバイス構成とデバイス構成、および解析の表が示されています。システム・インテグレータは、想定したアプリケーション回路と同様のピン配置とデバイス構成とする必要があります。そうすることで、インテグレータは実際の設計にそれらの解析を使用することができます。
場合によっては、アナログ・デバイセズにおける解析では想定していなかった追加的な診断情報やその他の安全策を、システム・レベルで使用できることがあります。
健全性チェック後の作業
安全性に関するアプリケーション・ノートの健全性チェックを実行した後は、システム・インテグレータが実際のアプリケーションにそのまま情報を適用できる場合もあれば、ある程度の変更が必要な場合もあります。変更が必要な場合は、ADIサポート・チャンネルを通じてアナログ・デバイセズの支援を得ることができます。
まとめ
以上をまとめると、アナログ・デバイセズのFS対応ICの安全性に関するアプリケーション・ノートはシステム・インテグレータに不可欠なリソースとしての役割を果たし、信頼性に関するきめ細かいデータと、FS設計の支援に必要な故障分析を提供します。しかし、これらの文書の有効性は入念な健全性チェックのプロセスに依存しており、このプロセスにおいてインテグレータは、アプリケーション・ノートが想定するミッション・プロファイル、アプリケーション回路、およびピン配置が、実際のシステム要件に合致しているかどうかを検証する必要があります。これらの条件を確認することによって、あるいは何らかの相違が生じた場合はアナログ・デバイセズに技術的サポートを求めることによって、エンジニアは安全解析に組み込んだ故障率とFMDデータを正確かつ信頼できるものとし、最終的に工業用安全関連システムの信頼性を向上させることができます。
参考資料
1 Bryan Borres. 安全性に関するアプリケーション・ノート【Part1】故障率.アナログ・デバイセズ、2025年8月
2 Bryan Borres.安全性に関するアプリケーション・ノート【Part2】故障モード分布.アナログ・ダイアログ、Vol. 59、2025年10月
3 Bryan Borres.安全性に関するアプリケーション・ノート【Part3】ピンのFMEA.アナログ・デバイセズ、2025年11月
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