適切なスイッチング電源制御方式
要約
本稿では、スイッチング電源に使用する各種制御方式の利点と欠点について説明します。取り上げる制御方式は、電流モード制御、電圧モード制御、ヒステリシス・モード制御です。スイッチング電源ICの選択方法に関する推奨事項も示します。
はじめに
電源は、電子回路に適した電源電圧を生成します。電源を選択するときは、回路内で問題なく使用できるように、最大電流能力と許容入力電圧範囲に注意する必要があります。選択時に考慮すべき電源の特性は他にも数多くあります。スイッチング電源にとって非常に重要な側面は、制御のタイプです(例えば制御ループ)。どのタイプのレギュレーションがどのような利点をもたらし、選択過程においては何を考慮すべきかを考える必要があります。
電流モード制御
現代のスイッチング電源のほとんどは、電流モード制御アーキテクチャを使用しています。このアーキテクチャは、出力電圧の設定点からの偏差を鋸波電圧ランプと比較します。鋸波電圧ランプはインダクタ電流によって変化します。この電圧をスイッチング・レギュレータICに組み込まれたオペアンプ(エラー・アンプとも呼ばれます)と比較することによって、1つのクロック・サイクルが終了します。つまり、インダクタ電流の値と出力電圧の設定点からの偏差に基づいて、デューティサイクルが調整されます。これは、ユーザにいくつかの利点をもたらします。制御システムはインダクタ電流の変化に対して直接反応することができ(例えば入力電圧が変化した場合など)、出力電圧が設定点から外れるのを待つ必要がありません。このタイプの制御を使用すれば、容易に過電流制限を実装できます。恐らく、電流モード制御の最も重要な利点は補償の調整が容易なことです。この補償では、基本的に、補償ピン(VC)に2つのコンデンサと1つの抵抗を接続することによって制御ループの安定性と速度が決まります。
図1では降圧コントローラの制御ループを赤で、補償コンポーネントは青で示しています。一部のパワー・コンバータICは、これらのコンポーネントを外付けではなく内蔵しています。これは設計プロセスを単純化しますが、パワー・レベル、インダクタンス、出力容量の選択という面で制約が生じます。
電圧モード制御
電流モード制御に対して、電圧モードの考え方に従った制御方式もあります。この場合も同様の方法で出力電圧のレギュレーションを行いますが、インダクタ電流はレギュレーションに含まれません。これにより、いくつかの欠点が生じます。入力電圧が変化した場合、制御ループは、入力電圧の変化によって出力電圧が設定点を外れた後に、初めて反応します。これは、制御動作の遅延につながる可能性があります。電圧モード・レギュレータでは、電源に負荷電流制限が必要な場合は電流制限を追加する必要があります。しかし、恐らくこのタイプのレギュレーションにおいて最も深刻な欠点は、補償の設定がはるかに複雑になることです。通常は、タイプ3の補償が必要となります。これは、補償ピンに接続する2つの抵抗と3つのコンデンサを適切に選択する必要があることを意味します。このタイプの制御では、全負荷動作(定電流導通モード - Constant current Conduction Mode: CCM)と部分負荷動作(不連続電流導通モード - Discontinuous current Conduction Mode: DCM)が切り替わる際の安定性に関わる挙動も変化します。このため、アプリケーションによっては補償設定が更に複雑になることがあります。
現在、新しい電圧モード・コントローラが市場に現れることがほとんどないのは、これらが主な理由です。タイプ3補償を使用した電圧モード・レギュレータを図2に示します。補償コンポーネントは青で示しています。
ヒステリシス・モード制御
電流モード制御と電圧モード制御に加えて、3番目の制御タイプがあります。これらのレギュレータは、帰還パスのヒステリシス・コンパレータを使用し、出力電圧の状態に従ってそのスイッチング時間とデューティサイクルを調整します。これらのレギュレータは本質的に不安定です。したがって、制御ループの補償が不要です。ただし、この利点はいくつかの欠点によって相殺されます。ヒステリシス・モード制御のスイッチング周波数は固定されておらず、入力電圧、負荷電流、その他の条件に応じて変化します。また、通常は電流モードや電圧モードのレギュレータより出力電圧リップルが大きくなります。これらのトポロジの簡略回路図を図3に示します。
このタイプの制御には数多くのバリエーションがあり、それぞれが異なる名前で呼ばれるので、ヒステリシス・レギュレータは誤解されることが少なくありません。ヒステリシス制御の欠点を最小限に抑えるために、これまで、固定オン時間制御などの様々な改善が設計されてきました。
まとめ
電源の制御には複数のタイプがあり、それぞれ基本的な違いがあります。スイッチング電源ICのメーカーは、それぞれのタイプのレギュレーション方式が持つ欠点を最小限に抑えるために、様々な回路手法を用いています。ほとんどのアプリケーションでは、それぞれの制御タイプを考慮に入れることなく、データシートに仕様規定された性能データと実行済みの回路シミュレーション(例えばLTspice®によるもの)に基づいて、最新のスイッチング・レギュレータICを使用することができます。