中間電圧を高い効率で低電圧に変換する方法
要約
スイッチング電源(Switch-mode Power Supply)のトポロジには様々な種類が存在します。本稿では、アプリケーションで使用される中間電圧をより低い電圧に変換し、多様な負荷に対して給電するためのトポロジに注目します。例えば、中間電圧が48Vといった比較的高い値で、出力電圧が12Vや5Vといった比較的低い値であるとします。その場合に使用するスイッチング電源は、新たなトポロジであるハイブリッド・コンバータによって実現するとよいでしょう。ハイブリッド・コンバータを採用すれば、単純な降圧コンバータを使用する場合と比べて高い電力変換効率が得られるからです。本稿では、まずハイブリッド・コンバータの革新性について説明します。その上で、このトポロジに対応するμModule®レギュレータの使用方法を簡単に紹介します。
はじめに
多くのシステムでは、DCリンク電圧が中間電圧として使用されています。例えば、産業分野では24V、車載分野では48Vが使われるといった具合です。サーバやデータ・センターの最新のアプリケーションでは48Vが使われますが、場合によっては52Vが使用されることもあります。こうしたDCリンク電圧を12Vや5Vといった低い電圧に変換するためには、様々なトポロジの電圧コンバータを使用できます(図1)。特にガルバニック絶縁が不要な用途では、降圧制御の概念に基づく変換方法が広く使われています。しかし、一般的な降圧コンバータを使用して48Vのような高いDCリンク電圧から5Vといった低い出力電圧を生成する場合には、1つの問題に直面することになります。それは、中程度の変換効率しか得られないというものです。例えば、48Vから5Vへの変換では、9.6%という低いデューティ・サイクルを使用しなければなりません。このことが原因で高い効率を得ることができないのです。
ハイブリッド・コンバータの活用
プッシュプル・コンバータやフォワード・コンバータなどのアーキテクチャではトランスを使用します。その場合、トランスの巻線比によってデューティ・サイクルを調整できます。仮にトランスによって損失が生じることがないのであれば、より効率的な変換を実現できるはずです。しかし、特にガルバニック絶縁を必要としないアプリケーションでは、トランスを使用しなくて済む方が望ましいでしょう。
そこで有力な選択肢になるのがハイブリッド・コンバータです。ハイブリッド・コンバータは、電力変換のための革新的なトポロジによって実現されます。具体的には、チャージ・ポンプと降圧コンバータを組み合わせる形で構成します(図2)。また、それらの機能のために計4つのスイッチを使用します。まず、チャージ・ポンプは電源電圧(中間電圧)を1/2に降圧する役割を果たします。そして、2つ(図2の下側)のスイッチをインダクタと共に使用することで、1/2に降圧された電圧を所望の出力電圧に変換します。
図2に対応する回路は、「LTC7821」などのハイブリッド・コントローラICを使用することで構成できます。
また、非常にコンパクトなソリューションを構成したい場合には、集積度の高い「LTM4654」が最適な選択肢になるでしょう。この製品は、アナログ・デバイセズのμModuleファミリに含まれるハイブリッド・コンバータICです。これを使用すれば、最大55VのDCリンク電圧を5Vや12Vといったより低い電圧に変換できます。また、最大300Wの電力を連続的に供給することが可能です。同製品を採用した場合、図3のような形のソリューションを構成できます。LTM4654のサイズはわずか16mm×16mm×8.96mmです。また、ご覧のように外付け部品はほとんど必要ありません。例えば、入力電圧が48V、出力電圧が9V、負荷電流が15Aの場合、96.7%の効率が得られます。
図3の回路は、300Wの電力のソース/シンクに対応できます。
つまり、単に電圧変換を実行するだけでなく、電流のソースとシンクも行えるということです。双方向の動作が可能であることから、システム内でエネルギーを効率的に利用できます。また、LTM4654は負の電圧範囲でも使用可能です。例えば、30Vの入力電圧を基に-7Vの出力電圧を生成するといった具合です。その場合の変換は、反転昇降圧モードの降圧コンバータと同様の方法で実行されます。
更に、このハイブリッド・コンバータは複数並列に接続して使用することも可能です。例えば、同コンバータを2つ使用すれば、2倍の電流/電力を供給できます。
まとめ
中間電圧を基にする電圧変換には、降圧コンバータやトランスをベースとするコンバータなど、既存のトポロジが広く使われてきました。しかし、より高い効率を得たい場合には、ハイブリッド・コンバータのような革新的なソリューションの採用を検討するとよいでしょう。そうすれば、特に各種アプリケーションのバス・コンバータにおいてより高い効率を実現できます。それだけでなく、プリント回路基板上の実装スペースも小さく抑えられます。