一般的なシングルチャンネルのダイレクト・デジタル・シンセサイザ(DDS)の場合、図1に示すような位相連続周波数遷移が生じますが、コヒーレント・パルス・ドップラー・レーダーや医用および材料分析用のNMR/MRI 分光法などのアプリケーションにおいては位相コヒーレント遷移の方がよいとされています。この記事では、DDSの出力を加算してAD9958/AD9959マルチチャンネルDDSを堅牢な位相コヒーレントFSK(周波数偏移キー)モジュレータとして構成する方法を紹介します。
マルチチャンネルDDSは、複数のシングルチャンネル・デバイスを同期化するときに生じるチャンネル間の温度やタイミングの問題をほぼ解消することができます。マルチチャンネルDDSの出力はそれぞれ独立していますが、共通のシステム・クロックを使用するため、複数のシングルチャンネル・デバイスの出力に比べて、温度/電源変動に対してより優れたトラッキング動作が可能となります。したがって、加算出力で位相コヒーレント周波数遷移を生成するには、マルチチャンネルDDSの方が適しています。

図1. 位相連続/位相コヒーレント周波数遷移

図2. 位相コヒーレントFSKモジュレータのセットアップ
4チャンネルDDSのAD9959による生成結果を図3に示しま
す。このデバイスの2つの追加チャンネルが、加算出力の2つの
切り替えられた周波数に対する位相リファレンスになるため、
位相コヒーレント・スイッチングを簡単に示すことができます。
一番上のトレースの加算出力は、位相コヒーレント・スイッチ
ングです。中央の2つのトレースはリファレンス信号F1とF2
です。一番下のトレースは、2つのいずれかの周波数を選択す
る疑似ランダム・シーケンス(PRS)データ・ストリームです。
デバイスではパイプライン遅延が発生するため、PRSデータ・
ストリームのエッジと加算出力の周波数遷移が正確に揃うこと
はありません。

図3. 測定した位相コヒーレントFSK遷移
図4 は、AD9959 でも示された位相連続FSKスイッチングの
例を示しています。このタイプの動作では必要な帯域幅が減少
しますが、遷移間の位相履歴は保持されません。
アナログ・デバイセズは、DDS ベースのクロック・ジェネ
レータの作製に必要な各種のダイレクト・デジタル・シンセサ
イザ、クロック分配チップ、クロック・バッファを提供してい
ます。詳細については、
www.analog.com/jp/ddsおよび
www.analog.com/jp/clockをご覧ください。

図4. 測定した位相連続FSK遷移

図5. AD9958の機能ブロック図
AD9520-xクロック・ジェネレータ(図6)は、単一リファレンス周波数から最大12回路のLVPECLまたは24回路のCMOSクロックを駆動できます。VCO内蔵の完全なPLL、プログラマブル・デバイダ、設定可能な出力バッファを集積しており、ピコ秒以下のジッタ性能を有しています。4つのオプションでセンター周波数が1.45 ~ 2.95GHzのオンチップVCOが使用でき、5番目のオプションは最大周波数2.4GHzの外部VCOとして動作します。デバイスは最大250MHz の1つの差動リファレンスまたは2つのシングルエンド・リファレンスを受信し、最大周波数1.6GHz の3つのLVPECLクロックからなるグループを4つ提供します。分周比が1 ~ 32のプログラマブル・デバイダは、各グループの出力周波数と粗遅延を設定します。各LVPECL出 力は再設定して、2つの250MHz CMOS出力にすることができます。AD9520-xは3.3V単電源で動作し、消費電力は最大1.5Wです。別途出力ドライバとチャージ・ポンプ電源を用意すれば、ロジック互換性に対応でき、拡張チューニング範囲を持つVCOをサポートすることができます。-40 ~+85℃の温度範囲で仕様規定されており、64ピンLFCSPパッケージで提供されています。 1000個受注時の米国での単価は12.65ドルです。

図6. AD9520の機能ブロック図
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