coronavirus under a microscope
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ナノセンサー技術による感染症の迅速な診断


現在は、感染症(COVID-19)が世界中で猛威を振るっている状況にあります。そのため、感染症の検出/診断/監視を行うための革新的な方法が求められています。高い精度で信頼性に優れる結果が迅速に得られるようにするには、どのような診断装置が必要なのでしょうか。また、そうした製品を開発するためには、何が必要なのでしょうか

新型コロナウイルスの脅威をめぐる最近の状況から、病原微生物の拡散を封じ込めるには、第一線でマス・スクリーニングを行うためのより良い手法の導入が急務であることが明らかになっています。従来は、額をスキャンして発熱していないかどうかを調べる方法が広く使われてきました。しかし、この方法では無症状/発症前の感染者を検出することができません。また、死に至る可能性のある新型コロナウイルスと、それよりも危険性が低い呼吸器系の疾患の区別を行うことも困難です。それ以外にもいくつかの検査方法が使われていますが、いずれも不正確であったり、結果が出るまでに時間がかかりすぎたりといった問題を抱えています。

このような状況下で、ある先駆的なバイオテック企業が大胆な解決策を考案しました。ナノセンサー技術を採用した携帯型の診断装置を使用することにより、1分以内に病原体の種類を特定するという画期的なコンセプトです。その企業は、この技術に関する特許を取得しました。しかし、それを実用化し、人命を救うことに貢献するプラットフォームを市場に投入するには、高度な専門知識と多くの製造経験を有する戦略的なパートナーが必要でした。その条件を満たすパートナーとして選ばれたのがアナログ・デバイセズです。その企業は、当社のイノベーション・センターであるAnalog Garageと、Hillviewを拠点とするファブ・プロセス・エンジニアリング・チームと提携することにしました。

Pinpoint Scienceの概要

事業内容

医療技術を扱うアーリー・ステージのスタートアップ企業。感染症の検出/診断/監視方法に革新をもたらし、多くの人命を救えるようにすることを目指す。具体的には、医療に関する高精度の検査結果を迅速に提供することを目的とし、ナノセンサーを用いた新時代のポイントオブケア診断装置を提供する。

アプリケーション

特許を取得済みの技術とナノポア(nanopore)をベースとするセンサーを利用したアプリケーション。人体を対象とした感染症の診断のほか、農業/牧畜業/獣医学/野生生物管理の分野における病原体の監視や、食品加工業における微生物汚染の検出などに使用する。

課題

安価で使いやすい携帯型リーダーと使い捨てカートリッジを使用し、病原体の検出結果を1分以内に提供する。その際、特殊な設備、増幅、サンプルの前処理は不要とする。また、センサー機能の実現や概念実証のための生化学基盤を開発する。

目標

人命を救うために、ナノセンサー技術を利用した高精度の診断プラットフォームを迅速に市場に投入する。一連の病原微生物を対象とした世界規模のマス・スクリーニングに向けて、より効率的/効果的な技術を開発する。

人命を脅かす侵入者

ウイルスや細菌などの病原微生物は、年に数百万人もの命を奪っています。ここ100年の間に、天然痘は根絶され、麻疹/おたふく風邪/破傷風もほぼ根絶されるなど、感染症を制御するための取り組みはある程度の成功を収めてきました。しかし、ウイルス性の伝染病やそのパンデミックがこの世から消えてなくなることはなく、世界各地で人々の命と経済を脅かし続けています。

woman with mask on phone in train car

侵入者との闘

人命にかかわる伝染病を制御して根絶するために、これまで飽くなき闘いが行われてきました。果たして、どのような方法を使えば人々の安全を守ることが可能になるのでしょうか。1つの解決策は、感染の最前線でマス・スクリーニングを実施することです。しかし、現場で感染症を検出するための現行の方法は、15分から4時間もの時間を要します。つまり、感染の拡大を抑制したり、急速に拡大するパンデミックを封じ込めたりするには時間がかかりすぎるのです。また、現行の検査方法は、精度が低く高額な費用がかかるという問題を抱えています。更に、特殊な設備、トレーニングを受けた技師、サンプルに対する複雑な前処理を必要とします。

scientist pipetting solution into eppi tube

現行の診断方法

  • 15分~4時間
  • マス・スクリーニング向けとしては非実用的
nurses with PPE conduct drive-up testing

現行のマス・スクリーニング

  • 発熱の検査と咳の有無の確認のみ
  • 無症状者の検出は行えない
  • 他の呼吸器系疾患との区別ができない

例えば、全米国民の規模で新型コロナウイルスのスクリーニングを実施するには、従来とは異なる種類の検査方法が必要です。求められるのは抗原検査ですが、それにはかなりの技術的進化を待たなければなりません。

革新を目指すPinpoint Science

Pinpoint Science(以下、Pinpoint)はカリフォルニア州北部を拠点とし、医療技術に取り組むスタートアップ企業です。同社は、ポイントオブケア検査/診断のための効果的なソリューションとして、簡単に使用できる携帯型リーダーとプラグイン・カートリッジを考案しました。それらのデバイスは先進的なナノセンサーを備えており、感染症の検査方法に革新をもたらします。すなわち、抗原や抗体などの生体指標を迅速に検出し、疾病の原因となる特定の病原微生物を迅速に特定することが可能です。対象とする病原体を検出するための使い捨てカートリッジをリーダーに装着することより、現場で直ちに正確な検査結果を得ることができます。特殊な設備、医療技師、サンプルの前処理は必要ありません。

pinpoint testing cartridge

Pinpointが開発した新たな検査技術

ナノセンサー技術を利用した診断装置の基礎となる仕組みを開発したのは、Pinpointのチーフ・サイエンティストであるNader Pourmand氏(博士)です。同氏は、カリフォルニア大学サンタクルーズ校 生体分子工学部の教授も務めています。

Pinpointの最高経営責任者(CEO)を務めるLisa Diamond氏は、「この技術の開発を始めたのは、新型コロナウイルスが出現する数年前です。人体内のインフルエンザ・ウイルスと、動物の体内にいるブルータング・ウイルスを対象とし、ナノセンサーをベースとする検査方法の実現を目指していました。抗体や合成分子を用いた診断によって特定のタンパク質を検出/測定することで、感染しているか否かを判定するというものです。当社のプラットフォームは、COVID-19のパンデミックが終息した後も、人類に対して大きな価値を提供し続けるはずです」と説明します。この技術の起源は、Pinpointのチーフ・サイエンティストであるNader Pourmand氏(博士)が開発した機能的なナノピペットにあります。現在、Pinpointはこの技術の商用化に取り組んでいます。

Pinpointとアナログ・デバイセズの提携

Pinpointはその目標を達成すべく、2019年の初頭にアナログ・デバイセズとそのイノベーション・センターであるAnalog Garageに支援を求めました。それを受けて、Analog GarageとHillviewのファブ・プロセス・エンジニアリング・チームは、Pinpointと提携を結びました。Pinpointとアナログ・デバイセズは、病原体の迅速な検出を実現すべく、このポイントオブケア技術を熟成させ、市場投入を目指すことになりました

では、Pinpointはなぜアナログ・デバイセズをパートナーとして選択したのでしょうか。それは、当社がMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)製品の製造技術、センサー製品の開発に関する比類ない能力、新興技術に進んで投資する意欲を併せ持っていたからです。また、当社が提供する高精度のデータ・コンバータ(A/DコンバータやD/Aコンバータ)も、Pinpointの電気化学プラットフォームのような用途に最適な製品でした。実際、Pinpointの携帯型リーダーは、当社の化学センシング・プラットフォーム「ADuCM355」をベースとして開発されることになりました

両社共同での初期評価

アナログ・デバイセズは、Pinpointの設計に基づくセンサーをカスタムで製造するために、自社のプロセスに変更を加えました。一方、Pinpointは、センサーの性能を評価するための試験を実施します。良好な結果が得られたら、それを基にして機能的なナノポアをベースとするバイオセンサーを製造します。

アナログ・デバイセズで新興事業担当ディレクタを務めるNimrode Moreshetは、「Pinpointのナノセンサー技術を適用した新たな診断装置は、大きな可能性を秘めていると確信しています。おそらく、迅速で安価な病原体検出をはじめとする広範なアプリケーションに適用できるようになるでしょう。Pinpointと協力し、この画期的な技術を市場に投入することを楽しみにしています」と述べています。

未知の領域に挑む新興企業を後押し

アナログ・デバイセズは、カリフォルニア大学バークレー校のアーリー・ステージ・インキュベータであるSkyDeckを通じてPinpointと出会いました。Pinpointは、学術アクセラレータとして名高いSkyDeckから成長に向けた助言と支援を受けていました。SkyDeckは、起業家のためのグローバル・ハブとして、数多くの新興企業を世界に送り出してきた実績を持ちます。そのSkyDeckに対し、アナログ・デバイセズは以前から投資を行っていました。

PinpointのDiamond氏は、「当社の画期的な技術は大きな可能性を秘めています。アナログ・デバイセズとの提携により、それを具現化する作業に着手することができました。この取り組みはまだ初期の段階にあります。現在、新型コロナウイルスのパンデミックが続いていますが、当社のビジョンが検証試験で確認されれば、このプラットフォームが世界中から強く求められるようになることは間違いありません。このプラットフォームは、新型コロナウイルスに対処するための普遍的な検査手法となる可能性を秘めているのです」と語ります

Pinpointのビジョン――シンプル/柔軟/迅速な病原体の検出方法

pinpoint testing cartridge reader

ステップ 1

リーダーにカートリッジを差し込みます。

pinpoint testing swab into cartridge

ステップ 2

カートリッジに綿棒を挿入します。

pinpoint testing displaying results

ステップ 3

ボタンを押します。青いランプが点灯すれば陽性、白いランプが点灯すれば陰性です。結果はタブレット端末にも表示されます。

Pinpoint のテストプロセス


Pinpointのビジョンは、交換可能なカートリッジをリーダーに差し込むことによって、血液、唾液、鼻汁の中の特定の病原体を検出する汎用的なプラットフォームを構築するというものです。カートリッジが備えるナノセンサーを使えば、ウイルス/細菌のタンパク質や抗体など、感染症の特定の指標を検出することができます。その結果は1分もかからず表示されます

Pinpointの新たなバイオセンサー技術は、特定の生体分子を、ラベルフリーかつ電気的な手法で検出することを可能にします。ポイントオブケア診断、パンデミックのスクリーニング、動物の健康管理、食品の安全性管理といったアプリケーションに対し、高精度かつ低コストの検査方法を提供します。

「当社は、安価かつ高速な携帯型デバイスを使用したスクリーニング手法を開発しています。このデバイスは、世界中に迅速に配備することが可能です。新たな感染症という世界的な脅威との闘いに不可欠な武器として、人類に貢献してくれるでしょう。」

Lisa Diamond

CEO, Pinpoint Science

ナノセンサー技術を適用したPinpointの診断装置が人類にもたらすメリット

新型コロナウイルスのパンデミックを受けて、Pinpointは同ウイルスの検出方法の開発に全力を注いでいます。まだ、眼前には大きな技術的リスクと設計上の課題が立ちはだかっています。しかし、Pinpointとアナログ・デバイセズは互いの信頼によって強く結びついています。両社の連携により、パーソナライズされた新たなヘルスケア手法が確立されることは間違いありません。世界規模で感染症の検出時間とコストを削減するという目標は必ず達成されるはずです。