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Autonomous warehouse robots transporting packages with digital navigation overlays in smart logistics system
Autonomous warehouse robots transporting packages with digital navigation overlays in smart logistics system

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産業アプリケーションの自律化を推進するConnect Tech、GMSLによる先進的な接続技術を活用


現在の製造業界は、エネルギーの使用効率に関する規制の強化という課題に直面しています。それだけでなく、労働力の確保も同業界が抱える大きな課題になっています。実際、倉庫の約40%は人員不足に陥っていると推定されています1。その対策として自動化を進める上では、安全性についての懸念を払拭することにも努めなければなりません。このように、製造業界はかつてないほどの重圧にさらされています。そうした課題に対応するために、多くの製造企業はロボット、コボット、AMR(Autonomous Mobile Robot)などの導入に取り組んでいます。様々な種類のロボットを組み合わせることにより、柔軟性の向上、コストの削減、安全で効率的な運用の維持を実現しようとしているのです。

しかし、そうしたインテリジェントなマシンには固有の課題があります。それらは、極端な温度、粉塵、衝撃/振動に見舞われる環境においても確実に動作するものでなければなりません。それだけでなく、ビジョン・データを高精度かつリアルタイムに処理する能力を備えている必要があります。加えて現在では、より高い解像度への対応、複数のカメラの装備、ナビゲーション用のビジョン技術の適用が一層求められるようになりました。それに伴い、データの伝送速度がマシン全体の性能を制限する要因になることが懸念されています。

上述したようなビジョン・システムが対応しなければならないアプリケーションやロボットの種類は多岐にわたります。そのため、アプリケーションの要件に応じてカスタマイズできるスケーラブルなモジュール式のプラットフォームを構築するのは容易ではありません。

Connect Techは、産業分野の用途に向けてエッジに組み込むことが可能なAI対応のハードウェアを提供しています。そうした分野のリーディング企業である同社も、データ伝送などに関する課題に直面していました。ただ、幸いにも同社には、長年にわたりアナログ・デバイセズとの間で築いてきた、信頼できるパートナーシップがありました。そのため、アナログ・デバイセズが開発した次世代の接続ソリューションであるギガビット・マルチメディア・シリアル・リンク(GMSL) 技術がもたらすメリットを享受することができたのです。

Picture of Rob Callaghan, Chief Product Officer Connect Tech
「Connect Techは、先進的な自律システム向けにGMSLを活用した高性能の接続ソリューションを提供しています。アナログ・デバイセズとのパートナーシップによって、このソリューションを支える知識や技術は強化されました。両社の連携により、当社のお客様は、信頼性とスケーラビリティに優れるソリューションを活用することで、新たなレベルの自律性を実現することができます。」

Rob Callaghan氏

最高製品責任者 | Connect Tech

本事例の概要

顧客企業の概要

Connect Techは、産業分野の用途に向けて、エッジに組み込むことが可能で堅牢性に優れるAI対応のハードウェアを提供するリーディング企業。小型で耐久性の高いソリューションを専門とするアジャイルなエンジニアリング・チームを擁しており、既製品では対応できないレベルのカスタム設計を提供している。イノベーションの実現とお客様の成功にコミットすると共に、お客様の期待を超えて卓越性の限界を押し広げることを目指している。

課題

Connect Techは、プロセッサから離れた場所に設置された複数の高解像度カメラをサポートするデタミニスティック/高速/低レイテンシのビデオ・リンクを必要としていた。特に、プロセッサにデータを伝送するためには帯域幅の広いビデオ・リンクが不可欠だった。また、スケーラビリティの観点からは標準的なインターコネクト技術を使用することが理想だった。対象とするアプリケーションは、ロボット・アームなどスペース上の制約を抱えるものが多いので、かさばる配線の量を最小限に抑えることも必須だった。

目標

カメラ・ビジョン技術と高解像度の複数のカメラで取得したデータの処理を担うカメラ・ビジョン用のサブシステム/プラットフォームを開発する。それにより、スマート・ファクトリ、農業、鉱業などの分野のセンサーを多用するアプリケーションにおいて、デジタル化、自律化、マシン間のシームレスな相互運用性を実現する。

ソリューション

GMSLは、コスト効率が高く、シンプルでスケーラブルなSERDES(Serializer/Deserializer)技術。高速なビデオ・リンクの性能を新たな次元に引き上げるために設計された。このGMSLを使用すれば、カメラやディスプレイをベースとするアプリケーションにおいて、高解像度のデジタル・ビデオ・データを高い信頼性で伝送できる。またGMSLはPoC(Power over Coax)をサポートしているので、スペース、重量、サイズの面で制約のあるアプリケーションにも適している。
210万人

2030年までに製造分野で不足すると推定される熟練労働者の数2

移動型ロボットや固定型ロボットは、労働力の不足を補い、コストを削減し、効率を高めることに役立ちます。ただ、工場内にロボットを配置する計画を策定する際には、モータ・ドライブ、ビジョン技術、接続性、電源などを慎重に選択する必要があります。

長期的な関係、持続的な効果

2016年以来、アナログ・デバイセズはConnect Techの信頼できるパートナーとして、同社がカメラ・ビジョン・ソリューションを実現できるよう、性能が高く信頼性に優れるDC/DC電源やビデオ・リンク(GMSL)のソリューションを提供してきました。

Connect TechはGMSLを採用したことで、競合他社のソリューションに対して2つの明確な優位性を得ることができました。1つは、GMSL3(第3世代のGMSL技術)によって得られる、12Gbpsという高速なデータ伝送速度です。競合他社のシリアル・リンクの場合、フォワード・チャンネルのデータ伝送速度は約7Gbpsにとどまっています。もう1つは、信号品質を維持するために適応型のイコライゼーション機能を利用できることです。これにより、長い距離、過酷な環境、ケーブルの経年劣化/屈曲にも耐えられる堅牢性の高い動作を実現できます。またGMSLでは、ビデオ/オーディオのデータ、制御用のデータ、電力のすべてを単一のチャンネルで伝送することが可能です。そのため、コストを抑えたソリューションが得られます。

更に、アナログ・デバイセズはGMSLのロードマップを管理しています。そのため、Connect Techは、イノベーションの実現を支えたり、設計を合理化したりするための機能をアナログ・デバイセズと共同で開発することができます。それにより、Connect Techは、コストを削減したり、製品を市場に投入するまでの時間を短縮したりすることが可能になります。それだけでなく、市場の需要の変化に応じてポートフォリオを迅速に拡大したり、調整したりすることもできます。

「コネクティビティ・ハイウェイ」による自律化の加速

GMSL3は第3世代のGMSL技術です。これを利用すれば、長距離にわたって高速なデータ伝送を実現できます。そのため、Connect Techにとっては、性能が高く堅牢性に優れる産業分野向けの自律型アプリケーションを実現するための最適なソリューションになります。

Connect TechのGMSL3対応型のカメラ用プラットフォームは、NVIDIAのSoM(System on Module)である「Jetson AGX Orin」に最大8台のカメラを接続できるようにするための拡張ボードです。このプラットフォームでは、ユーザが選択可能なオプションにより、異なる動作周波数を使用してGMSL3のプロトコルに対応するインターフェースを確立できます。そのため、GMSLに対応する様々な種類のカメラを接続することが可能です。

また、Connect Techの「Anvil-RX Rugged System」と組み合わせた統合ソリューションを利用すれば、過酷な環境で稼働するミッション・クリティカルで信頼性が高く帯域幅の広いビジョン処理を実現できます。このソリューションは、GMSL3を利用する複数のカメラに対応可能なので、農業/鉱業/産業といった分野で用いられるオートメーション機器やAMRに最適です。

Rugged industrial computer with multiple I/O ports for edge AI and real-time data processing
Connect TechのAnvil-RX Rugged System。GMSLを活用したソリューションです。
Picture of Preyksha Rajan Senior Engineer, Field Applications Analog Devices
「Connect Techは、カメラ、GMSL、NVIDIAのSoMを堅牢性の高いビジョン・システムとして統合しました。このシステムにおいて、GMSLは『コネクティビティ・ハイウェイ』としての役割を果たします。そして、このシステムではGMSLによって伝送されるすべてのデータを処理することが可能です。このシステムにおいて、GMSLは魅力的で強力な物理層として機能します。それにより、AMRをはじめとするビジョン・ベースの自律型システムの実現に貢献します。」

Preyksha Rajan

アナログ・デバイセズ フィールド・アプリケーション担当シニア・エンジニア

GMSLを活用したConnect Techの自律型アプリケーション

Connect Techは、GMSLを活用することにより様々な自律型アプリケーションを実現しています。その例を表にまとめます。

アプリケーション 説明 Connect Techとアナログ・デバイセズのGMSLソリューション
鉱業 自律型の採掘車両。多くの粉塵、振動、極端な温度を伴う過酷な遠隔環境で稼働します。
  • 高解像度の複数のカメラ向けに、帯域幅が広く長距離に対応可能なデータ伝送機能を提供します。
  • レイテンシの小さい通信により、障害物をリアルタイムに検出する機能やナビゲーション機能を実現できます。
  • 優れた機械設計を適用した堅牢性の高いハードウェアを提供します。そのハードウェアは過酷な環境に耐えられるものであり、高い信頼性で性能を維持することができます。
農業 自律型の農業用機器(ドローンや地上車両)。これらの機器には、解像度が高くリアルタイムの処理に対応できるイメージング機能が必要です。それにより、広大な農地において、作物の健康状態を監視したり、害虫を検出したり、リソースの利用を最適化したりすることが可能になります。
  • リアルタイムの画像解析によって問題を早期に発見し、的を絞って効率的に介入できるようになります。
  • 水、肥料、農薬を最適かつ正確な量で散布できるようになり、それらの使用量を減らせます。また、環境への影響も最小限に抑えられます。
  • 人件費を削減しつつ、天候や耕作地の条件が厳しい場合でも継続的に作業を実施できます。
倉庫/物流 現代の倉庫には、複雑な環境におけるナビゲートを実現し、障害物を回避し、在庫の移動をリアルタイムで最適化することが可能なAMRが求められます。
  • 複数のカメラの統合。解像度が高い複数のカメラをサポートし、360°にわたる状況の認識を実現します。
  • レイテンシの小さい処理。動的な経路計画や物体の認識に向けたリアルタイムの意思決定を行うことを可能にします。
  • 堅牢性の高い設計。産業グレード(工業グレード)のハードウェアを使用することにより、多くの振動が急激に生じる環境でも信頼性の高い動作を確保します。
  • スケーラブルなプラットフォーム。様々なサイズ/ユースケースのAMRに応じてカスタマイズすることが可能です。

単一のチャンネルでセンサー/知覚データを含む各種データをリアルタイムに伝送するGMSL

Real-time sensor interface with data visualizations for smart warehouse automation and inventory tracking

アナログ・デバイセズのGMSL3は、マイクロ秒単位のレイテンシでデータ伝送を実現するSERDESソリューションです。超高解像度のビデオ・データ、オーディオ・データ、制御用データ、電力を1本のケーブルによって伝送することができます。最高伝送レートはレーン当たり12Gbpsです。これを活用すれば、システムの設計を簡素化できます。また、オートメーション、ロボティクス、農業、製造業といった分野に向けて、リアルタイム対応のAI駆動型ビジョン・システムを提供することが可能になります。GMSLを採用したICは、すべてAEC-Q100に準拠する車載グレードの製品です。

カメラ/センサーからプロセッサへ

Diagram of camera sensor system transmitting visual data to processor for AI-powered warehouse analysis

プロセッサからディスプレイへ

Visual flowchart showing data transfer from processor to display in smart warehouse monitoring system

GMSL3は、ビデオ・データ用の複雑なルーティング、ASIL-Bに対応する機能安全、診断機能をサポートします。また、厳格なEMI/EMC(電磁干渉/電磁両立性)規格に準拠することで安全性が強化されています。レイテンシが小さく高い精度の同期が得られるので、自律型の走行、欠陥の検出、高精度のピック&プレースなどを実現できます。GMSL3は、既に数百万もの車載リンクに導入されています。スケーラビリティが得られるので、産業、ヘルスケア、航空宇宙、民生といった分野のアプリケーションにも適しています。GMSL3を活用することで、よりスマートな意思決定の促進、ダウンタイムの削減、安全性と持続可能性の向上を図ることが可能になります。

GMSLによって得られるメリット

ケーブル用のインフラの削減

  • 1本のワイヤで最高12Gbpsの伝送が可能
  • ビデオ/オーディオ/制御のデータの同時伝送を実現
  • センサーからのデータの集約(ビデオ、オーディオ、LIDAR、レーダーなど)
  • ビデオの分割
  • 同軸ケーブルによる電力伝送
  • レイテンシが小さい、ビット・エラーが少ない

スケーラブルなシステムの設計

  • 相互運用性と高い構成可能性が得られる
  • 3Gbps/6Gbps/12Gbpsの速度オプションに対するピン互換性
  • 旧世代のGMSLに対する後方互換性

最高の解像度をサポート

  • 最大15メガ・ピクセルのカメラ、4K+のディスプレイに対応

安全性、セキュリティ、持続可能性

  • リアルタイムのリンク診断、データの完全性の確認
  • リアルタイム対応の適応型イコライゼーション
  • EMI/EMCの厳格な要件に対応
  • ASIL-Bの機能安全に対応するオプション

GMSLの価値

• 広帯域幅のデータ伝送、双方向の制御、電力伝送
•  ワイヤを1本だけ使用するソリューションなので、ケーブル用インフラを削減できる
•  複数のセンサーを容易に統合することが可能
•  ビット・エラーが少ない、デタミニスティックなレイテンシが小さい(マイクロ秒単位)
•  ASIL-Bに準拠する信頼性の高いソリューション。堅牢性の高いエラー監視用のツールを数多く備える
•  リアルタイム対応の適応型イコライゼーション

産業分野の先進的な自律型システムのためのビジョン技術/コネクティビティ技術

Person using tablet to monitor automated warehouse robots sorting packages via smart vision system

製造業界は、人員不足、規制の強化、生産性の向上に対する要求、急速なAIの進化といった変化に直面し続けています。Connect Techとアナログ・デバイセズは、それらに関連する課題の解決に向けて尽力してきました。特に製造現場のような過酷な環境においては、複雑さを増すビジョン技術と、信頼性/性能/適応性に優れたAMRに対するニーズの間のギャップが問題になります。GMSL3をベースとする接続ソリューションの活用は、そのギャップを埋めるためのConnect Techの取り組みを支えています。

参考資料

1 「2024 State of Warehouse Labor Report(倉庫における2024年の労働状況に関するレポート)」Instawork

2 「Creating Pathways for Tomorrow’s Workforce Today: Beyond Reskilling in Manufacturing(明日の労働力のための道を今日造る:製造業におけるリスキリングを超えて)」Deloitte Insights、Manufacturing  Institute、2021年5月