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閉じる糖尿病の患者の生活を一変させる持続血糖測定器、指先の穿刺が不要に
主なポイント
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持続血糖測定器(CGM:Continuous Glucose Monitor)は、血糖値を測定するための新たな手法です。CGMを使用すれば、血液を採取することなく、リアルタイムに血糖値をモニタリングすることが可能になります。また、インスリン・ポンプを統合して自動投与の機能を実現すれば、糖尿病の患者に対して真の希望がもたらされます。例えば、年老いた患者が試験紙の使用をはじめとする作業に困惑してしまうということがなくなります。また、1型糖尿病に罹患した十代の患者が毎日何度も指を穿刺する負担から解放されます。
但し、CGMのメーカーは現時点では様々な課題に直面している状況にあります。例えば、CGMのSWaP(サイズ、重量、消費電力)には厳しい制約があります。また、より環境に優しいバッテリへの移行も進めなければなりません。何よりも重要なのは、臨床グレードの品質を確保した高度な技術ソリューションを実現することです。
上記のような理由から、多くのメーカーは競争力を確保するために先進的な半導体技術に目を向けるようになりました。ウェアラブル技術は大きな潮流になりましたが、CGMについては乗り越えなければならない障壁がまだたくさんあります。CGMをより広く普及させるためには、手ごろな価格の実現、偏見の排除、政府の規制への対応などを図らなければなりません。
糖尿病の真実を語る数値情報
- 糖尿病を患っている成人(20~79歳)の数は5億8900万人に上る。つまり、世界全体で見ると約9人のうち1人が糖尿病にかかっていることになる。しかも、その数は2050年までに8億5300万人に達するとの予測が示されている1
- 2024年における糖尿病関連の医療費(薬剤費、入院費など)は1兆米ドル(約154兆円)を上回る1
- 米国では、4ドルの医療費のうち1ドルが糖尿病に関連して費やされている2
- 米国の青少年のうち約3人に1人が前糖尿病の状態にある3
CGMの機能
CGMに搭載されたマイクロセンサーは、通常は腕に装着して使用され、血液ではなく、間質液(皮膚直下の組織の細胞を取り囲む薄い体液層)の血糖値のレベルを継続的にモニタリングします。それにより、24時間365日にわたる血糖値の全体的な傾向とパターンを表示します。得られたデータをアプリケーション・ソフトに送信することにより、健康を維持するための改善を図ったり、危険な状況を回避したりすることが可能になります。
実用的な知見を提供する臨床グレードのCGM
従来、糖尿病の治療には、指先穿刺方式の血糖測定器(BGM:Blood Glucose Monitor)、試験紙、かさばるインスリン・ポンプが使われていました。それに対し、CGMを導入すれば、血液の検査を実施することなく血糖値のデータをリアルタイムに取得し、ユーザに警告を発することができます。また、CGMにインスリン・ポンプを統合すれば、自動インスリン投与(AID:Artificial Insulin Delivery)の機能を備えるシステムを構築することも可能です。
上述した糖尿病用の管理システムは、クローズド・ループのシステムとして実現されます。その基盤としては、高度な臨床グレードの技術が用いられます。ここでは、CGMとインスリン・ポンプを統合したシステムを考えます。そのウェアラブルな機器は、アナログ・フロント・エンド(AFE:Analog Front End)、Bluetooth®に対応するマイクロコントローラ・ユニット(MCU)、加速度センサーなどで構成されます。インスリン・ポンプは、電源、Bluetoothに対応するMCU、加速度センサー、モータ制御回路、シグナル・チェーンなどから成ります。CGMにもインスリン・ポンプにも、継続的に活動計測を実行するためのソフトウェアが必要です。なお、アナログ・デバイセズはBluetoothに対応する機能を備えるMCU製品を提供しています。
CGMのソリューション
CGMについては1つの懸念があります。それは、リチウム・イオン・バッテリを搭載したCGMが毎年2億台以上も廃棄されているというものです。この問題に対処するために、一部のCGMメーカーは3Vのバッテリから1.5Vの酸化銀電池への移行を進めています。それらのメーカーは、1.5Vの酸化銀電池で直接駆動されるMCUやAFEなどの電力バジェットを最小限に抑えることを目指しています。
CGMがもたらすWin-Win:有用なデータを提供し、糖尿病関連の費用を直接的に削減
従来の指先穿刺では、血糖値のデータを1度に1つしか取得できませんでした。そのことも理由となり、現在はCGMの利便性と精度の高さに注目が集まっています。CGMに移行すれば、患者が負担しなければならない針や試験紙の費用を大幅に削減できます。それだけでなく、合併症の発生や多くの費用を要する入院を回避するために役立つ継続的な知見が得られます。CGMを利用する患者は、自身の症状を追跡し、食事を調整し、服薬時間を設定できるようになります。それだけでなく、生活の質を全般的に改善することが可能になります。これは多くの人にとって非常に貴重なことです。
シンプル、効果的、予測型の管理手法
CGMへの移行が進むか否かは、患者に関して継続的に生成される知見の質にかかっています。つまり、血糖値が低すぎるのは炭水化物の量の計算値に誤りがあるからなのか、それとも激しい運動が原因なのかといったことを明らかにできるようにすることが重要です。それらの知見について長期的に高い精度でモニタリングを実施し、適切な判断を下せる能力を実現しなければなりません。
糖尿病の患者には、高い精度で取得された臨床グレードの血糖値のデータに基づいて適切な量のインスリンを投与する必要があります。その結果、血管の損傷、心臓病、脳卒中、腎臓病、糖尿病性昏睡といった合併症を予防することが可能になります。経時的な傾向を追跡したレポートがクラウド・ベースで提供されるようになれば、医療従事者はより適切な治療法を選択できるようになります。従来の指先穿刺の手法では、このレベルの精度、知見、予防的な管理に対応することはできません。
糖尿病管理の未来:より継続的でより便利なものに
CGMは1型糖尿病患者の日々の負担を軽減し、生活を一変させました。CGMを利用している1型糖尿病患者がモデルのバービー(Barbie®)人形が登場するなど、糖尿病の子供たちが「自分も受け入れられている」と感じられるような取り組みも始まっています。現在では大きさがビンのキャップほどで、ペーパークリップよりも軽いCGMが提供されています。それらはさほど目立たず、装着しても快適なものです。加えて、偏見も排除されつつあります。
CGMは非常に堅牢性の高い小型の機器です。リアルタイムのデータが得られることから、タイムリーな介入が促進されます。医療分野においては、後手の治療から予測型の治療への移行が大幅に進む可能性があります。CGMはそのことを示唆するものだとも言えます。一方、CGMのメーカーにとっては小さなフットプリントで求められる機能を提供するのは簡単なことではありません。例えば、CGMの開発には高度な信号処理に関する専門知識が必要になります。患者に必要なのは、糖尿病を管理するための真にパーソナライズされた臨床グレードの機器です。専門知識が不足している場合、そのような機器を具現化するために必要な精度と信頼性を実現するのは不可能だと言えます。
参考資料
1 The Diabetes Atlas(糖尿病アトラス)、国際糖尿病連合(IDF: International Diabetes Foundation)
2 Health and Economic Benefits of Diabetes Interventions(糖尿病への介入が患者の健康や経済性にもたらすメリット)、米国疾病管理予防センター(CDC:Centers for Disease Control and Prevention)
3 Spotlight on Diabetes Data(糖尿病に関するデータに注目する)、CDC