LDOレギュレータ向けのVIOC機能【Part 2】VIOC機能の詳細、設計/評価用のツール
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要約
本稿は、電圧入出力制御(VIOC:Voltage Input-to-Output Control)機能を備えるLDO(低ドロップアウト)レギュレータについて解説する記事の2回目(Part 2)です。今回は、Part 1で紹介した基本的な概念に基づき、VIOC機能を利用するシステムの構成方法について詳しく説明します。VIOC機能を備えるLDOレギュレータでは、入出力電圧の差が一定の値に保たれます。それにより、電源電圧変動除去比(PSRR:Power Supply Rejection Ratio)の向上、消費電力の最適化、障害が発生した際のシステムの保護などが実現されます。本稿では、この機能の動作原理について詳しく説明します。また、VIOCの機能を利用する際に役立つリファレンス設計、「LTspice®」、評価用ボードといったツールを紹介します。それらを利用すれば、回路の設計/評価を容易に実施できます。加えて、負電圧を生成するトポロジにVIOC機能を統合する方法についても解説します。更に、VIOC機能を備える旧世代のLDOレギュレータの使用方法や、ディスクリート部品によってVIOC機能を実現する方法にも触れることにします。VIOC機能を利用してスイッチング方式の降圧コンバータとLDOレギュレータを効率良く連携させれば、回路の性能が向上します。それだけでなく、最新のパワー・マネージメント・システムで利用可能な汎用的なソリューションが得られます。なお、本稿では、VIOC機能を備えるLDOレギュレータと同レギュレータに給電するDC/DCコンバータを組み合わせた電源回路をVIOCシステムと呼ぶことにします。
はじめに
前回(Part 1)は、VIOC機能を備える最新世代のLDOレギュレータについて簡単に説明しました。今回は、その機能についてより深く掘り下げます。また、すぐに利用可能なリファレンス設計や便利な評価用ツールなどを紹介します。それらを利用すれば、VIOCシステムの設計/評価の作業を効率良く進められます。加えて、VIOC機能の適用範囲を拡大する例として、負電圧のトポロジに同機能をシームレスに実装する方法を示します。更に、旧来の実装例を紹介することで、VIOCシステムがどのように進化してきたのかを示すことにします。
VIOC機能の詳細
まずは図1をご覧ください。右側に配置されている「LT3041」は、VIOC機能を備える最新世代のLDOレギュレータです。VIOC機能は、LDOレギュレータが内蔵するゲインが1の差電圧アンプを利用して実装されています。ご覧のとおり、差電圧アンプはオペアンプと抵抗によって構成されています。最も基本的なVIOCシステムでは、LDOレギュレータに給電する降圧コンバータのFBピン(フィードバック・ピン)に差電圧アンプの出力(VIOCピン)を直接接続します。この接続により、フィードバック・ループが閉じます。その結果、降圧コンバータの出力電圧は、LDOレギュレータの出力よりもVIOCピンに現れる電圧の分だけ高い値に設定されます。
FBピンは、降圧レギュレータが内蔵する誤差アンプの反転入力に接続されています。通常、誤差アンプはオペアンプを使用して実装されます。その用途は、2つの入力信号(通常はリファレンス電圧とシステムの出力からのフィードバック信号)の差を増幅することです。増幅された信号は誤差信号と呼ばれます。誤差信号は所望の出力が維持されるようシステムを調整するために使用されます。誤差アンプは、電圧レギュレータ、電源、サーボ機構といったフィードバックを利用する制御システムの重要な構成要素です1。
LDOレギュレータが備える差電圧アンプは、VIOC機能だけでなく、同レギュレータ内部の管理機能にも利用されます。例えば、同レギュレータの入力電圧が低くなりすぎるのを防止したり、同レギュレータの動作をオフにしたりといった具合です。VIOC機能の詳細については、LDOレギュレータ製品のデータシート(VIOCのセクション)も参考にしてください。
FBピンの電圧は、降圧コンバータICとしてどの製品を選択するのかによって異なります。通常、その値は0.4~1.2V程度です。LDOレギュレータにおける所望の入出力電圧の差と比べて、FBピンの電圧が低い場合、図1のようにFBピンとVIOCピンの間に抵抗を追加します。それらの抵抗により、差電圧アンプの出力であるVIOCの電圧がより高い値であっても、問題なく接続できることになります。図1で使用しているLT3041やそれと類似するLDOレギュレータを使用してVIOCシステムを構成するとします。その場合、LDOレギュレータの入出力電圧の差を、降圧コンバータのFBピンの電圧よりも低い値に抑えるのは容易ではありません。そのため、FBピンとVIOCピンの間に抵抗を配置する方法が一般的に用いられます。
VIOC機能における差電圧アンプの役割を理解するために、同アンプの出力がVIOC機能の入力の1つであると考えてみましょう。ここでは、差電圧アンプの出力が特定の電圧であると仮定します。その場合、差電圧アンプの正入力側の電圧は、負入力側の電圧と比べて、同アンプの出力電圧の分だけ高くなければなりません。ここで、差電圧アンプの負入力側はLDOレギュレータの出力に接続されています。そのため、差電圧アンプは、LDOレギュレータの出力電圧と比べて差電圧アンプの出力電圧の分だけ高くなるように降圧コンバータの出力電圧を制御します。ここで、差電圧アンプの出力電圧は、降圧コンバータのFBピンの電圧によって決まります。
図2に示したのは、LDOレギュレータ「LT3073」を採用したVIOCシステムの例です。同レギュレータを使用すれば、その入出力電圧の差が降圧コンバータのFBピンの電圧よりも小さい場合に対応できます。具体的には、オフセット電圧を加えることにより、VIOCピンの電圧がLDOレギュレータの入出力電圧の差よりも800mV高くなります。この方法は、入出力電圧の差がより小さく、電流定格の値がより高いLDOレギュレータで一般的に用いられています。また、図2の回路では、降圧コンバータ「LT8610A」の出力電圧を制限することができます。降圧コンバータへのフィードバックに使用する抵抗分圧器は、LDOレギュレータがイネーブルではない場合や、VIOCシステムのフィードバック・ループを閉じることができない場合などに、降圧コンバータの出力電圧が高くなりすぎるのを防ぐように設計されています。図3に示した回路でも、図1の回路と同様にLDOレギュレータとしてLT3041を使用しています。この回路は、降圧コンバータ「LT8608」の出力電圧を制限できるように設計されています。

負電圧を生成するトポロジへの適用
ここまでに例にとったLDOレギュレータは、いずれも正の電圧を受け取り正の電圧を生成します。ただ、VIOC機能は負の電圧を生成するLDOレギュレータでも使用可能です。負の電圧に対応するLDOレギュレータを使用するVIOCシステムでは、負の電圧を生成するように設計されたDC/DCコンバータが使用されることがあります。その場合、フィードバック・ピンは、FBピンではなくFBXピンと呼ばれるケースが多いでしょう。図4に示した回路では、負の電圧に対応するLDOレギュレータ「LT3099」を用いてVIOCシステムを構成しています。DC/DCコンバータとしては「LT8364」をĆuk構成で使用し、負の電圧を生成しています。この出力電圧は、VIOCの機能によって制御されます。
図5に示した回路は、負の電圧を生成するためのものとしてより一般的になりつつあります。この回路では、通常は正の電圧を生成するために使用される降圧コンバータ「ADP2386」を反転昇降圧コンバータとして構成しています。それにより、負の電圧を生成します。標準的な降圧コンバータは、負の電圧に対応するように設計されたFBXピン(あるいはFBピン)を備えていません。そのため、このVIOCシステムにはレベル・シフタが必要になります。レベル・シフタの機能は、オペアンプ「LT1636」とその非反転入力に接続された回路で実現しています。
VIOC機能の利用に制限があるケース
VIOCシステムに限らず、DC/DCコンバータとLDOレギュレータを組み合わせる場合には、両者を接続するための配線が必要になります。VIOCシステムを構成したい場合、もう1本の配線を追加するだけで済みます。つまり、VIOC機能は非常に容易に利用できるということです。FBピンを備えるあらゆる降圧コンバータがVIOC機能を適用する対象になります。それに対し、Silent Switcher®(サイレント・スイッチャ) 3(SS3)技術を適用したDC/DCコンバータICにはFBピンが存在しません。そのため、通常はVIOC機能を利用できません。
また、μModule®レギュレータ製品についても、VIOC機能の利用に当たって注意が必要になることがあります。μModuleレギュレータは、高度な統合が図られたSiP(System in Package)のソリューションです。1つのコンパクトなパッケージ内に、DC/DCコントローラ、パワー・トランジスタ、入出力コンデンサ、補償用の部品、インダクタなどが統合されています2。そして、一部のμModuleレギュレータでは、その出力にも接続される内部の分圧抵抗にFBピンが接続されています。その場合、VIOC機能を使用する上でいくつかの制約が生じることになります。
図6に示したのは、μModuleレギュレータ「LTM4616」の1つのチャンネルとLDOレギュレータ「LT3078」を組み合わせたVIOCシステムです。このμModuleレギュレータは、同ICの出力(VOUT1)とFBピン(FB1)を接続する10kΩの抵抗を内蔵しています。つまり、この回路では、VIOCピンの電流/電圧が10kΩの抵抗の電流に依存することになります。その電流は、LDOレギュレータとμModuleレギュレータの出力電圧の増減に比例して変化します。VIOCピンの電圧がLDOレギュレータの出力電圧によって変化することから、LDOレギュレータの出力電圧の調整範囲が制限されます。
VIOCシステムの設計/評価に役立つツール
LTspiceを使用すれば、制御された環境においてVIOCシステムの動作を迅速にシミュレーションすることができます。それにより、現実のハードウェアを使用することなく、様々な状況やパラメータに対するVIOCシステムの動作を評価することが可能になります。LTspiceは、回路を実装する前にその動作を検証し、設計を最適化するために役立つ有用なツールです。
では、実際にハードウェアを使用してVIOC機能を評価する場合には、どのような方法が最も効率的なのでしょうか。それは、最小限の改変を施した降圧コンバータの評価用ボードにLDOレギュレータの評価用ボードを接続する方法です。具体的には、図7に示すように2枚の評価用ボードを用意します。図に示したような改変/接続を行えば、VIOCシステムの機能を迅速にテストできます。VIOCシステムを設計する場合、最終的には実際のハードウェアを使って負荷過渡応答の評価を実施することになります。それにより、回路の安定性を確認するということです。一般に、安定性を向上させるためには降圧コンバータの出力にコンデンサを追加します。その指針については、VIOCのリファレンス設計のデータシートを参照してください。

VIOCシステムの進化
ここまで、主にVIOC機能を備える最新世代のLDOレギュレータを例にとって解説を続けてきました。ただ、従来はVIOC機能を備える初期のLDOレギュレータを使用したり、ディスクリート部品を組み合わせたりすることでVIOCシステムが実現されていました。図8に示したのは、そのようなVIOCシステムの構成例です。この回路において、LDOレギュレータ「LT3070-1」のVIOCピンは、降圧コンバータ「LTC3415」のITHピン(製品によってはVCピン)に接続されています。LDOレギュレータが内蔵するVIOC用の回路は、同レギュレータの入出力電圧の差を自動的に約300mVに制御します。ITHピン(またはVCピン)は、降圧コンバータの内部で誤差アンプの出力に接続されています。5V/5Aに対応するLT3070-1、「LT3071」、「LT3072」といった初期のLDOレギュレータは、このようなVIOC方式を採用しています。
旧来のVIOCシステムの実現方法はもう1つあります。それは、ディスクリート部品を組み合わせてVIOC機能を実現するというものです。この方法を使用すれば、ほぼすべてのLDOレギュレータにVIOC機能を追加できます。「LT3080」をはじめ、電流源をリファレンスとする初期のLDOレギュレータを使用する場合、この方法がよく使われていました。このタイプのLDOレギュレータは、リファレンス電圧ではなく、抵抗を駆動する電流源を使用して出力電圧を決定します。その出力電圧は、外部の電圧信号またはデジタル・ポテンショメータを使用することで比較的容易に変化させられます。図9に、ディスクリート部品を使用して構成したVIOCシステムの例を示しました。この回路では、PMOSトランジスタ「IRF7342」のソース - ゲート間電圧によってLDOレギュレータの入出力電圧の差が決まります。このようなVIOCシステムのリファレンス設計については、LT308xのデータシートを参照してください。
まとめ
VIOC機能を備えるLDOレギュレータと降圧コンバータを組み合わせれば、最新のパワー・マネージメント・システムの設計に大きなメリットがもたらされます。VIOCシステムによって安定した入出力電圧の差が維持されることから、PSRRの向上による出力ノイズの低減、消費電力の削減、障害に対する保護、起動時の信頼性の向上を図ることができます。また、VIOCシステムにより、高性能のシステムに不可欠な、一貫性のある優れた負荷過渡応答が得られます。
VIOC機能を備えるLDOレギュレータを採用すれば、降圧コンバータとの間で行う電圧の調整を簡素化できます。そのため、設計プロセスの簡素化も図れます。また、回路全体の効率が向上します。VIOC機能を備える最新世代のLDOレギュレータは、今日の複雑な電子アプリケーションに適した柔軟性と性能の高いソリューションだと言えます。
設計作業を迅速に進めるためには、analog.com/jpで提供されているアプリケーション・ノート、リファレンス設計、LTspiceのシミュレーション用モデルなどをぜひご活用ください。例えば、LTspiceを使用することにより、ハードウェアを実装する前に回路の評価/最適化を実施できます。そうすれば、時間の節約とリスクの低減を図れます。結果として、よりスマートなイノベーションを実現できるようになるはずです。
参考資料
1 Error Amplifier(誤差アンプ) (Electronics)、Wikipedia.
2 μModuleレギュレータおよびDC/DCモジュール、Analog Devices






