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電源を体系的に理解する―― 優れた技術者はどのように設計を行っているのか?

概要

本稿では、電源の設計に関する基本的な事柄についてまとめます。その目的は、電源の設計技術の概要を理解し、再認識できるようにすることです。まずは、一般的に使用されている絶縁型/非絶縁型の電源トポロジを取り上げ、それぞれの長所と短所を明らかにします。その上で、フィルタ処理など、EMI(電磁干渉)を抑制するための技術について解説を加えます。

はじめに

一般に、電子システムでは、エネルギー源から供給される電圧と回路の動作に必要な電圧は異なる値になります。そのため、何らかの変換手段によって、回路の動作に必要な電圧を生成しなければなりません。また、電子システムの中には、バッテリを主電源として使用するものが数多く存在します。その場合、バッテリを使用し続けていると、その出力電圧が低下していきます。しかし、電圧の変換手段として適切なDC/DCコンバータを適用していれば、バッテリに蓄積されたエネルギーを使って、より長い時間にわたり多くの回路に電力を供給することができます。例えば、110VのAC電源から、マイクロコントローラなどのICに直接電力を供給することはできません。そのような場合に使用される電圧コンバータも電源と呼ばれています。あるいは、電源回路と呼ばれることもあるでしょう。ほぼすべての電子システムは、そうした電圧コンバータを必要とします。そのため、電圧コンバータは、長年にわたり各種の用途に適合するように最適化されてきました。最適化にあたっては、ソリューションのサイズ、変換効率、EMIの発生量、コストなどが指標として使われます。

最もシンプルな電源回路はLDOレギュレータ

最もシンプルな電圧コンバータ(電源回路)としては、LDO(低ドロップアウト)レギュレータが挙げられます。LDOレギュレータは、リニア・レギュレータの一種であり、スイッチング・レギュレータとは対照的なものとして扱われています。リニア・レギュレータは、入力電圧と出力電圧の間に、値を調整が可能な抵抗を挿入したものだと表現することができます(図1)。それにより、入力電圧の変化や、機器に流れる負荷電流の値にかかわらず、一定の電圧を出力します。

図1. リニア・レギュレータの基本原理。入力電圧を基に、値の異なる出力電圧を生成します。

図1. リニア・レギュレータの基本原理。入力電圧を基に、値の異なる出力電圧を生成します。

リニア・レギュレータは、AC電源に直接接続されることはありません。リニア・レギュレータとAC電源の間には、別の電圧コンバータが配置されます。その電圧コンバータとしては、50Hz/60Hzの送電網に接続されたトランスを使って構成されたものが長年にわたり使用されていました(図2)。この電圧コンバータは、トランスの巻数比に応じ、システムに必要な電圧よりも数V高く、レギュレートされていない出力電圧を生成します。その出力電圧をリニア・レギュレータに入力することにより、電子システムに必要なレギュレートされた電圧が生成されます。

図2. 電源回路の構成。トランスの後段にリニア・レギュレータを配置します。

図2. 電源回路の構成。トランスの後段にリニア・レギュレータを配置します。

図2の構成が抱える問題点は、50Hz/60Hzに対応するトランスの大きさと価格です。また、リニア・レギュレータは非常に多くの熱を生成するので、システム全体の効率が低下することも問題になります。実際、システムの電力が大きい場合には、リニア・レギュレータで発生する熱を排除するのは困難です。

スイッチング・レギュレータによる問題の解決

上述した問題を解決するために考案されたのがスイッチング・レギュレータ(スイッチング電源)です。同レギュレータは、50Hz/60HzのAC電圧には依存しません。AC電圧を整流し、はるかに周波数の高いAC電圧を生成することによって、はるかに小型のトランスを使用できるようにします(DC電圧を直接受け取ることもあります)。非絶縁型のシステムでは、入力電圧をLCフィルタで整流し、DC出力電圧を生成します。この方法の長所は、ソリューションを小型化できることと、コストを比較的低く抑えられることです。出力するAC電圧の波形は、正弦波である必要はありません。シンプルなPWM信号波形でも問題なく機能します。そのような信号は、PWM信号の発生器とスイッチによって容易に生成することができます。

2000年ごろまで、上記のスイッチとしては、バイポーラ・トランジスタが最も一般的に使用されていました。実用に耐えるものではありましたが、スイッチング時の遷移速度が遅いという欠点を抱えていました。そのため、あまり高い電力効率は得られず、スイッチング周波数は50kHz、100kHzといった値に制限されていました。現在では、バイポーラ・トランジスタの代わりに、スイッチング時の遷移がはるかに高速なMOSFET使われています。それによりスイッチング損失が少なくなり、スイッチング周波数としても最高で5MHzといった値を実現できるようになりました。スイッチング周波数がそのような値であれば、電力段では非常に小さなインダクタとコンデンサを使用することができます。

スイッチング・レギュレータには多くの長所があります。まず、電圧の変換において高い効率が得られます。また、昇圧と降圧のどちらにも対応できます。更に、比較的小型で低コストの設計を実現することが可能です。もちろん、短所も存在します。1つは、設計と最適化がそれほど簡単ではないということです。また、スイッチング時の遷移とスイッチング周波数に依存してEMIが発生することも欠点の1つです。アナログ・デバイセズの場合、レギュレータICだけでなく、LTpowerCAD®LTspice®といった設計ツールも提供しています。それらを利用すれば、複雑な設計プロセスを大幅に簡素化することが可能です。また、それらのツールをうまく活用すれば、スイッチング電源の設計プロセスを半自動化することもできます。

電源の絶縁

電源を設計する際、最初に考えるべきことは、ガルバニック絶縁が必要なのか否かということです。ガルバニック絶縁を使用する理由はいくつか考えられます。例えば、回路の安全性を高めるため、システムのフローティング動作を実現するため、ノイズの多いグラウンド電流が回路内の様々な電子デバイスに流れることを防ぐため、といった具合です。一般的な絶縁型のトポロジとしては、フライバック・コンバータとフォワード・コンバータの2つが挙げられます。また、より大きな電力を得たい場合には、プッシュプル、ハーフ・ブリッジ、フル・ブリッジといったトポロジも使用されます。

絶縁型のトポロジには必ずトランスが必要になります。そのため、電源のサイズが大きくなり、コストが上昇します。要件を厳密に満たす市販品を入手するのが難しく、カスタムの電源を設計しなければならないケースが少なくありません。

非絶縁型のトポロジ

ガルバニック絶縁が不要な場合には、非絶縁型のトポロジを選択することになります。非絶縁型のスイッチング電源で最も一般的に使われるトポロジは、降圧コンバータ(ステップダウン・コンバータ)です。降圧コンバータでは、正の入力電圧を基にそれよりも低い出力電圧を生成します。これは、スイッチング電源の最も基本的な3つのトポロジのうちの1つです。その回路では、主要なコンポーネントとして、2つのスイッチ、1つのインダクタ、2つのコンデンサを使用します(動作の制御を担うコントローラICも使用します)。図3は、このトポロジの基本構造を表したものです。ハイサイドのスイッチは、入力からの電流をパルス化すると共に、入力電圧とグラウンド電圧に交互に切り替わるスイッチング・ノードの電圧を生成します。インダクタとコンデンサで構成されるLCフィルタは、スイッチング・ノードに生じるパルス電圧を受け取り、DC電圧を出力します。ハイサイドのスイッチを制御するPWM信号のデューティ・サイクルに応じ、様々なレベルのDC電圧を出力できます。この種の降圧コンバータでは、非常に高い変換効率が得られます。また、わずかなコンポーネントしか使用しないので、比較的構築しやすいものだと言えます。

図3. 降圧コンバータの基本構造

図3. 降圧コンバータの基本構造

降圧コンバータでは、入力側の電流をパルス化します。しかし、出力側でインダクタから流れる電流は連続的です。つまり、入力側は非常にノイズが多く、出力側はそれほどノイズがない状態になります。低ノイズのシステムを設計したい場合には、このことを把握しておかなければなりません。

もう1つの基本的なトポロジは、昇圧コンバータ(ステップアップ・コンバータ)です。昇圧コンバータでは、降圧コンバータと同じ5つの基本的なコンポーネントを使用しつつ、異なる配置で回路を構成します。具体的には、図4に示すようにインダクタを入力側に配置し、ハイサイドのスイッチを出力側に配置します。昇圧コンバータは、入力電圧を基にそれより高い出力電圧を得たい場合に使用します。

図4. 昇圧コンバータの基本構造

図4. 昇圧コンバータの基本構造

昇圧コンバータ用のコントローラICを選択する際には、1つ注意すべきことがあります。それは、その種のICのデータシートでは、最大出力電流ではなく、スイッチの最大定格電流が規定されているということです。降圧コンバータの場合、最大スイッチ電流は、入力電圧と出力電圧の比とは関係なく、最大出力電流によって決まります。一方、昇圧コンバータでは、入出力電圧の比が、取りうる最大出力電流に直接影響を及ぼします。その値が、スイッチの最大電流(固定値)を超えないように注意しなければなりません。このような観点からも、昇圧コンバータ用のICを適切に選択するには、所望の出力電流だけでなく、設計で使われる入力電圧と出力電圧を正しく把握しておかなければなりません。

昇圧コンバータでは、入力側のノイズが非常に小さくなります。なぜなら、入力側のインダクタが電流の急激な変化を抑えるからです。但し、出力側ではノイズが非常に多くなります。出力側のスイッチにはパルス電流が流れるので、降圧コンバータと比べてより大きな出力リップルが生じる可能性があります。

3つ目のトポロジは反転昇降圧コンバータです。これも、5つの基本的なコンポーネントによって構成できます(図5)。反転昇降圧コンバータという名称は、正の入力電圧を基に負の出力電圧を生成することに由来しています。入力電圧は、反転出力電圧の絶対値より高くても低くても構いません。特に回路構成を変更することなく、5Vの入力電圧からでも24Vの入力電圧からでも、-12Vの出力電圧を生成するといったことが行えます。

図5. 反転昇降圧コンバータの基本構造

図5. 反転昇降圧コンバータの基本構造

反転昇降圧コンバータでは、スイッチング・ノードとグラウンドの間にインダクタを配置します。入力側にも出力側にも、パルス化された電流が流れます。そのため、入力側、出力側共にノイズが比較的多くなります。低ノイズであることが求められるアプリケーションでは、両側にフィルタを付加します。それにより、この問題を解消します。

反転昇降圧コンバータの長所の1つは、どのような降圧コンバータICでも使用できることです。降圧レギュレータ回路の出力を、単にシステムのグラウンドに接続するだけでよいからです。同回路のグラウンドは、調整された負電圧になります。市販の降圧コンバータICを使用できるので、数多くの選択肢の中から最適なものを選べばよいということになります。

特殊なトポロジ

上述した3つの非絶縁型トポロジの他にも、少し特殊なトポロジがいくつか存在します。但し、それらを使用する場合には、いくつかのコンポーネントを追加しなければなりません。そのため、コストが上昇します。また、高い変換効率も得られません。一部の例外はあるものの、電力パスにコンポーネントを追加すると損失が増加するからです。そうしたトポロジとしては、SEPIC、Zeta、Ćuk、4スイッチ昇降圧などが挙げられます。これらは、3つの基本的なトポロジでは実現できない機能を備えています。以下、各トポロジの最も重要な機能を紹介します。

  • SEPIC
    SEPIC コンバータでは、正の入力電圧を基に、それよりも高い出力電圧またはそれよりも低い正の出力電圧を生成することができます。この構成は、昇圧レギュレータ IC を使用することによって実現できます。SEPIC コンバータの欠点は、2 つ目のインダクタ(あるいは 1 つの結合インダクタ)、コンデンサが追加で必要になることです。
  • Zeta
    Zeta コンバータは SEPIC に似ていますが、正の出力電圧だけでなく負の出力電圧も生成できます。また、右半面ゼロ(RHPZ:Right Half Plane Zero)がないため、レギュレーション用のループを簡素化することが可能です。このトポロジには、降圧コンバータ IC を使用することができます。
  • Ćuk
    Ćuk コンバータは、正の入力電圧を基に負の出力電圧を生成します。入力側に 1 つ、出力側にも 1 つのインダクタを使用するので、入力側と出力側のノイズが非常に小さくなります。欠点は、このトポロジに対応しているスイッチング・レギュレータ IC 製品があまり多くないことです。その理由は、レギュレーション用のループに負電圧に対応するフィードバック・ピンが必要になるからです。
  • 4 スイッチ昇降圧
    4 スイッチ昇降圧コンバータは、急速に普及しつつあります。正の入力電圧を基に正の出力電圧を生成するものですが、入力電圧は出力電圧より高くても低くても構いません。しかも、SEPIC と比べて変換効率が高く、使用するインダクタも 1 個です。そのため、SEPIC からの移行が進んでいます。

最も一般的な絶縁型トポロジ

アプリケーションによっては、ガルバニック絶縁が適用された電力コンバータが必要になることがあります。その理由については、上でも触れました。すなわち、安全上の懸念がある、様々な回路が相互接続される大規模なシステムにおいてフローティング・グラウンドを設ける必要がある、ノイズの影響を受けやすいアプリケーションでグラウンド電流のループを回避する必要があるといったことです。最も一般的な絶縁型のトポロジとしては、フライバック・コンバータとフォワード・コンバータが挙げられます。図6(上)がフライバック・コンバータ、同(下)がフォワード・コンバータです。

フライバック・コンバータは、通常は電力レベルが60Wまでの用途で使用します。この回路では、スイッチがオンのとき、トランスにエネルギーが蓄積されます。スイッチがオフになると、そのエネルギーが2次側へ放出され、電力が出力されます。このコンバータでは、適切な動作に必要なすべてのエネルギーがトランスに蓄積されます。そのため、容易に構成できるものの、比較的大型のトランスが必要になるという欠点があります。このことが、電力レベルが低いアプリケーションで使用される理由です。

図6. フライバック・コンバータ(上)とフォワード・コンバータ(下)

図6. フライバック・コンバータ(上)とフォワード・コンバータ(下)

フォワード・コンバータもよく使われている絶縁型トポロジです。フォワード・コンバータは、フライバック・コンバータとは異なる方法でトランスを使用します。スイッチがオンになっている際には、1次側の巻線にも2次側の巻線にも電流が流れます。トランスのコアにはエネルギーは蓄積されません。スイッチング・サイクルが終わるたびに、コアの磁気エネルギーを確実に放出してゼロに戻します。そうすることで、スイッチング・サイクルを何回も経てもトランスが飽和しないようにします。コアからのエネルギーの放出は、様々な方法で実現できます。1つは、小さなスイッチとコンデンサを追加したアクティブ・クランプ回路を使用することです。

図7は、LTspice上でシミュレーション用に作成したフォワード・コンバータの回路図です。コントローラICとして「ADP1074」を使用し、アクティブ・クランプ機能を実現しています。図6に示したフライバック・コンバータと比較すると、出力パスにインダクタが追加されていることがわかります。この追加のコンポーネントにより、実装スペースとコストに影響が及びます。しかし、フライバック・コンバータと比べてノイズの少ない出力電圧を生成することができます。また、フライバック・コンバータと同じレベルの電力を供給する場合、フォワード・コンバータに必要なトランスのサイズは、はるかに小さく抑えられる可能性があります。

図7. LTspice上で作成したフォワード・コンバータの回路図。ADP1074を使用して、アクティブ・クランプ機能に対応する絶縁型の回路を構成しています。

図7. LTspice上で作成したフォワード・コンバータの回路図。ADP1074を使用して、アクティブ・クランプ機能に対応する絶縁型の回路を構成しています。

高度な絶縁型トポロジ

フライバック、フォワードの他にも、トランスを使用するガルバニック絶縁型コンバータには、非常に多くのトポロジが存在します。以下、いくつかのトポロジについてごく簡単に説明しておきます。

  • プッシュプル
    プッシュプル・コンバータは、フォワード・コンバータに似ています。但し、1 個のローサイドのスイッチではなく、2 つのアクティブなローサイドのスイッチを使用します。また、トランスとしてはセンター・タップ付きの 1 次巻線を備えるものが必要です。プッシュプル・コンバータの長所は、フォワード・コンバータと比べて低ノイズの動作が可能なことです。また、小型のトランスを使用できることも長所の 1 つです。トランスの BH 曲線において、ヒステリシスは第 1 象限だけでなく第2 象限にもまたがります。
  • ハーフ・ブリッジ/フル・ブリッジ
    ハーフ・ブリッジ、フル・ブリッジの 2 つのトポロジは、通常、数百 W から数 kW のレベルの大電力を必要とする場合に使用されます。ローサイドのスイッチに加えてハイサイドのスイッチも必要ですが、比較的小型のトランスを使って非常に多くの電力を伝送することが可能です。
  • ZVS
    ZVS(Zero Voltage Switching)という用語は、大電力の絶縁型コンバータについて説明する文脈でよく使用されます。この種の回路は、LLC(インダクタ‐インダクタ‐コンデンサ)コンバータとも呼ばれます。そのアーキテクチャは、非常に高い効率を得ることを目的としたものになっています。共振回路を形成し、スイッチに印加される電圧/電流がゼロに近くなったところで、スイッチの切り替えを実施します。それにより、スイッチング損失を最小限に抑えます。ただ、設計の難易度が高いというのが短所の 1 つです。また、スイッチング周波数が固定値ではないので、EMI の問題が顕在化する可能性があります。

スイッチド・キャパシタ・コンバータ

電力コンバータには、リニア・レギュレータとスイッチング・レギュレータの他にもう1つのカテゴリがあります。それは、スイッチド・キャパシタ・コンバータです。同コンバータはチャージ・ポンプとも呼ばれます。スイッチとコンデンサを組み合わせて、電圧を増幅したり反転したりする機能を実現します。その最大の長所は、インダクタが不要であることです。スイッチド・キャパシタ・コンバータは、供給が必要な電力が5W未満といった条件に合致する用途で使用されてきました。ただ、技術が大きく進化したことによって、最近ではそれよりもはるかに多くの電力を供給可能な製品が提供されています。図8は、コントローラICである「LTC7820」を使用して構成したスイッチド・キャパシタ・コンバータの回路図です。この回路では、48Vの入力電圧を基に24Vの出力電圧を生成します。120Wの電力を供給可能であり、変換効率は98.5%に達します。

図8. LTC7820を使用して構成したスイッチド・キャパシタ・コンバータ。LTC7820は、固定比率の変換に対応するコントローラICです。これを使えば、大電力を供給可能な回路を実現できます。

図8. LTC7820を使用して構成したスイッチド・キャパシタ・コンバータ。LTC7820は、固定比率の変換に対応するコントローラICです。これを使えば、大電力を供給可能な回路を実現できます。

デジタル電源

本稿で紹介したトポロジは、すべてアナログ電源としても、デジタル電源としても実装できます。ところで、デジタル電源とは実際にはどのようなものなのでしょうか。デジタル電源も、スイッチ、インダクタ、トランス、コンデンサなどから成るアナログ電力段を必ず備えています。デジタルの要素は、2つのビルディング・ブロックに集約されます。1つは、デジタル・インターフェースです。そのインターフェースは、電子システムと電源の間で会話を実現できるようにする役割を果たします。それにより、様々なパラメータをオンザフライで設定し、様々な動作条件に応じて電源全体を最適化します。また、メインのプロセッサとの通信が行えることから、電源から警告フラグや故障フラグの情報を提供することが可能です。例えば、負荷電流がプリセットされた閾値を超えたり、電源の温度が対応可能な範囲から逸脱したりしないかどうかをシステムで簡単に監視できます。

もう1つのビルディング・ブロックは、レギュレーション用のアナログ・ループを置き換えるデジタル・ループです。この考え方自体には合理性があり、実際、うまく機能します。ただ、その実装としては、ほとんどのアプリケーションにおいて、一部のパラメータに対して何らかのデジタル的な変更を加えられる標準的なアナログ帰還ループが使われます。例えば、エラー・アンプのゲインをオンザフライで調整したり、ループ補償用のパラメータを動的に設定し、安定かつ高速なループを実現したりするといった具合です。純粋なデジタル制御ループを備えた製品の例としては、アナログ・デバイセズの「ADP1046A」が挙げられます。デジタル機能によって最適化できるアナログ制御ループを備えると共に、デジタル・インターフェースによる制御が可能な降圧レギュレータとしては「LTC3883」があります。

EMIに関する考察

スイッチング電源を設計する際には、常にEMIに注意を払わなければなりません。スイッチング電源では、非常に短い時間でスイッチをオン/オフし、大きな電流の流れを切り替えることになるからです。スイッチング速度を高めれば、システム全体の効率が向上します。また、スイッチング時の遷移が高速になれば、スイッチがオンになりかけている時間が短くなります。ほとんどのスイッチング損失は、その期間中に発生します。図9は、スイッチング・ノードにおける電圧波形を表しています。降圧コンバータの場合、ハイサイドのスイッチに電流が流れることによって高い電圧に達し、ハイサイドのスイッチに電流が流れなくなることによって低い電圧に達します。

図9. スイッチングのサイクルと遷移時間

図9. スイッチングのサイクルと遷移時間

図9を見ると、スイッチング電源において、ノイズは、制御されたスイッチング周波数によって発生するだけでなく、周波数がはるかに高いスイッチング時の遷移によっても発生することがわかります。通常、スイッチング動作は500kHz~3MHzの周波数で行われます。しかし、遷移時間はわずか数ナノ秒しかない可能性があります。仮に遷移時間が1ナノ秒であるとしましょう。その場合、周波数軸で見ると、1GHzの位置に大きなスペクトルが現れることになります。この1GHzの周波数とスイッチング周波数は、放射性エミッションと伝導性エミッションの形でシステムの内外に影響を及ぼします。なお、レギュレーション用のループの発振や電源とフィルタの相互作用によって、その他の周波数成分が生じることもあります。

EMIを低減しなければならない理由は2つあります。1つは、電源から電力の供給を受ける電子システムの機能を保護する必要があるということです。例えば、システムの信号パスに分解能が16ビットのA/Dコンバータ(ADC)が使用されているとしましょう。そのADCが、電源からのスイッチング・ノイズの影響を受けるのは避けなければなりません。もう1つの理由は、周囲に存在する様々な電子システムの機能も保護する必要があるということです。そのような保護を実現するために、世界中の国/地域では、様々なEMI規格が定められています。それらの国/地域でシステムを運用するためには、それぞれのEMI規格を満たさなければなりません。

EMIには、放射性のEMIと伝導性のEMIがあります。放射性のEMIを低減する最も効果的な方法は、プリント基板のレイアウトを最適化することです。あるいは、アナログ・デバイセズのSilent Switcher®のような技術を活用してもよいでしょう。例えば、シールドを施した金属の箱の中に回路を入れれば、EMIは抑制できます。しかし、この方法はおそらく現実的/実用的ではないでしょう。しかも、ほとんどの場合、非常に大きなコストがかかることになります。

一方、伝導性のEMIは、通常はフィルタを追加することによって減衰させます。そこで、次節ではフィルタについて説明することにしましょう。

フィルタの適用

RCフィルタは、最も基本的なローパス・フィルタだと言えます。しかし、スイッチング電源の場合、基本設計のレベルでは必ずLCフィルタが使用されます。多くの場合、入力部、出力部に何らかのインダクタンスを直列に追加するだけで十分です。そうすれば、入力コンデンサ/出力コンデンサとの組み合わせによって、LCフィルタ(あるいはCLCフィルタ)が形成されるからです。フィルタとしてコンデンサだけを使用するケースもありますが、電源のケーブルやプリント基板のパターンに存在する寄生インダクタンスを考慮すると、実際にはLCフィルタが形成されていることになります。インダクタとしては、コアを備えるインダクタを使用しても構いませんし、フェライト・ビーズを使用しても構いません。LCフィルタの目的は、DC電力を通過させ、高周波の外乱を大幅に減衰させることです。つまり、ローパス・フィルタとして機能させます。LCフィルタには極が2つあるので、高い周波数領域において40dB/decの減衰が得られます。フィルタのドロップオフは比較的急峻ですが、その設計は特に難しくはありません。但し、プリント基板のパターンのインダクタンスなど、回路の寄生要素から影響を受けることには注意が必要です。例えば、フィルタのモデリングを行う場合にも、主な寄生要素を盛り込んでおく必要があります。その結果、フィルタのシミュレーションに非常に長い時間がかかることがあります。フィルタの設計経験を持つ設計者の多くは、どのフィルタがどのように役立ったのか把握しています。そのため、新たなシステムの設計に向けて、特定のフィルタを繰り返し最適化して使用するということも行われます。

フィルタを設計する際には、ボーデ線図によって伝達関数を確認する場合のように、小信号に対する挙動について考慮する必要があります。ただ、それだけでなく、大信号の影響にも注意を払わなければなりません。どのようなLCフィルタを使用する場合でも、電力はインダクタを通過します。急激な負荷トランジェントが発生し、その電力を出力する必要がなくなった場合にはどうなるでしょうか。インダクタに蓄積されたエネルギーは、どこかに放出しなければならないはずです。そこで、まずはそのエネルギーによってフィルタのコンデンサが充電されることになります。フィルタが最も厳しい条件に対応できるように設計されていない場合には、蓄積された電力によって電圧のオーバーシュートが発生する可能性があります。その結果、回路が損傷してしまうかもしれません。

フィルタには、特定のインピーダンスが存在します。そのインピーダンスは、フィルタの接続先となる電力コンバータのインピーダンスと相互に作用します。それによって、動作が不安定になったり発振が生じたりする可能性があります。こうした問題に対処するためには、アナログ・デバイセズのLTspiceやLTpowerCADといったシミュレーション・ツールを利用するとよいでしょう。これらのツールは、問題が生じないようにフィルタを設計する上で大いに役に立ちます。図10に、LTpowerCADが備えるフィルタ設計ツールの操作画面を示しました。このツールを使えば、フィルタの設計が非常に容易になります。

図10. LTpowerCADのフィルタ設計ツール。降圧レギュレータ用の入力フィルタを設計している様子を示しました。

図10. LTpowerCADのフィルタ設計ツール。降圧レギュレータ用の入力フィルタを設計している様子を示しました。

Silent Switcher

放射性エミッションを低減するのは容易ではありません。多くの場合、何らかの金属材料を使用した特別なシールドが必要になるでしょう。そうすると、大きなコストが発生してしまうかもしれません。スイッチング電源から発生する放射性エミッションを低減する方法は、長い間模索されてきました。アナログ・デバイセズがこの問題の解決に向けて開発したのがSilent Switcher技術です。同技術は、電源の設計に大きなブレークスルーをもたらしました。Silent Switcherでは、スイッチング電源のホット・ループにおける寄生インダクタンスを低減しつつ、ホット・ループを2つに分割して対称に配置することで、放射性エミッションを相殺します。現在では、同技術を採用した数多くの製品が提供されています。それらの製品では、従来の製品と比べて放射性エミッションがはるかに小さく抑えられています。放射性エミッションを低減すれば、EMIをそれほど増加させることなく、スイッチング時の遷移速度を高めることが可能です。そうすればスイッチング損失が減少するので、スイッチング周波数をはるかに高く設定することができます。このようなイノベーションを果たした製品の一例としては、「LTC3310S」が挙げられます。この製品は、5MHzのスイッチング周波数で動作します。そのため、非常に低コストの外付け部品を使って、極めてコンパクトな設計を実現することができます(図11)。

図11. LTC3310Sを使用して構成したスイッチング・レギュレータ。同ICはSilent Switcherを採用しているので、放射性エミッションを最小限に抑えることができます。

図11. LTC3310Sを使用して構成したスイッチング・レギュレータ。同ICはSilent Switcherを採用しているので、放射性エミッションを最小限に抑えることができます。

パワー・マネージメントは必要不可欠

本稿では、電源回路に適用される様々なトポロジを紹介し、それぞれの長所と短所を明らかにしました。併せて、様々な側面から電源の設計について解説を加えました。電源の設計経験を持つ技術者にとって、本稿で示した事柄は非常に基本的な情報であったかもしれません。しかし、そうした方にとっても、LTpowerCADやLTspiceといったツールは非常に役に立つはずです。もちろん、経験の浅い方にとっても、両ツールは非常に心強い存在になります。実際、両ツールを活用すれば、非常に短い時間で電力コンバータを設計し、最適化を図ることができます。本稿が、電源の設計を楽しむためのきっかけになれば幸いです。

Frederik Dostal

Frederik Dostal

Frederik Dostalは、ドイツのエアランゲン・ニュルンベルク大学でマイクロエレクトロニクスについて学びました。2001年にパワー・マネージメント事業の分野で働き始め、アリゾナ州フェニックスで4年間にわたってスイッチング電源を担当したほか、さまざまなアプリケーション分野の業務に携わってきました。2009年にADIに入社し、ミュンヘンのアナログ・デバイセズでパワー・マネージメントのフィールド・アプリケーション・エンジニアとして従事しています。