産業用ワイヤレス・コネクティビティ技術
産業用アプリケーション向けのワイヤレス・コネクティビティ
ワイヤレス通信は、クレーンなどの動きのある装置の基本的な制御を最初の展開例として、それ以降多年にわたり産業用アプリケーションで使われてきました。標準化が進んだワイヤレス・コネクティビティ技術がここ何十年の間で普及したことにより、より広い範囲のエンド機器に展開されるようになっています。
産業用アプリケーションにおいては、1つのワイヤレス技術ですべてに対応できるということはありません。狭帯域幅技術および低消費電力技術は、コネクティビティ・ニーズが断続的に生じる計測器の配備に最適です。これに対し、複数のセンサーが同時かつ継続的に通信を行う、稼働率の高い製造現場に配置された無人搬送車(AVG)では、より広帯域幅のオプションが必要です。
アナログ・デバイセズの広範なワイヤレス通信技術は、有線ネットワークを展開しなくても、リモートのセンサーやアクセスしにくい危険な場所にあるセンサーへのコネクティビティを確保できます。アナログ・デバイセズでは、設計の負担を軽減しより早く配備することに焦点を置いた、極めて先進的なワイヤレス・サブシステムとフル機能のシグナル・チェーン・ソリューションを取り揃えています。こうしたソリューションの例としては、SmartMesh®、5G、Bluetooth®低エネルギー(BLE)、60GHz無遅延ワイヤレス・データ・インターコネクトなどがあります。信頼できるワイヤレス・コネクティビティが必要な場合は、アナログ・デバイセズの実績のある技術をお試しください。
SmartMesh:過酷な工業用モノのインターネット(IIoT)環境向けのワイヤレス
アナログ・デバイセズのSmartMeshトランシーバーは、業界で最低の消費電力と最高の信頼度を備えた、規格に基づくワイヤレス・センサー・ネットワーク(WSN)ソリューションで、これによりバッテリ寿命を延ばすことができます。過酷なRF環境においても99.999%を超えるデータ信頼性を示すため、SmartMeshネットワークは、工業用モノのインターネット(IIoT)ソリューション・プロバイダからの信頼を受けて、リモートの危険な場所から重要な低帯域幅センサー測定データを送信しています。SmartMesh製品は、ネットワーク・スタックの開発が不要で、暗号化、認証、メッセージ整合性チェックなどの機能を備えています。

産業用接続型センサーの条件を満たす、実績のある堅牢なワイヤレス・ソリューションを見つけてください。SmartMeshおよびSmartMesh WirelessHARTは、低消費電力、信頼性、復元性、スケーラビリティが重要となるような過酷な工業環境向けに設計されたワイヤレス・ネットワークです。
5G:超高信頼低遅延ワイヤレス・コネクティビティ
超高信頼低遅延コネクティビティ(URLLC)を使用した5G技術は、製造やその他の産業用アプリケーションにおけるワイヤレス・コネクティビティの可能性を広げるものです。現在では、最も劣悪なRF環境でもほぼあらゆる場所でコネクティビティを増強し、マシン・データ・キャプチャの増加、ワークスペースの柔軟性向上、大きなケーブル・バンドルの削減などを実現できます。アナログ・デバイセズは、5G無線技術において市場をリードする存在であり、既存システムの刷新(ブラウンフィールド)による運用や将来の新規構築(グリーンフィールド)ファクトリに5Gのプライベート・ネットワークを展開する、パートナーの大きなエコシステムを発展させてきました。

市場をリードする低消費電力RadioVerseTM SOCを基盤とする、5G無線用の幅広いアナログ・デバイセズのリファレンス・ソリューションをご紹介します。設計上の障害をなくし市場投入までの時間を短縮するよう開発されたこれらの製品は、相互運用性テスト済み(O-RAN 7.2× split)のフル機能RU設計プラットフォーム(EVT)で、特定のアプリケーションに対し容易に最適化ができます。
60GHzの無遅延ワイヤレス・データ・リンク
Bluetooth、WLAN、および5Gはいずれもデータの送受信方法として効果的です。しかし、パケットベースのワイヤレス・コネクティビティの規格にはどれも共通した問題が1つあります。つまり、リンクを通じた遅延です。そのため、通信はリアルタイムではありません。これでは、命令が出されてからその命令が受信され実行されるまでの、1つの装置の応答時間を遅らせてしまうことになります。産業用オートメーションは、リアルタイム・プロトコル(EtherCATなど)を使用しています。これは、通信において遅延が無視できることを要求するもので、そのためにワイヤレス・リンクは無遅延の接続を提供しなくてはなりません。
ソリューションは、パケットベースの送信プロトコルを廃し、直接送信されるビット・ストリームに移行することです。この技術は、ロボット・アームの相互接続のための、最速の5G接続よりも数百倍も高速な、真のワイヤレス・データ・リンクの可能性を現実のものとします。

ロボティクス分野においてハーネス自動化工程への投資が増大しているのに伴い、アナログ・デバイセズは、産業効率を高め作業ミスを減らすためのソリューションを提供しています。時間と共に累積され製造現場にとって大きなコストとなる遅延は、リアルタイム・ワイヤレス・リンクを使用することで、もはや考慮対象にならなくなっています。
60GHzワイヤレス・データ・インターコネクトの概要
アナログ・デバイセズの60GHzソリューション、ADMV9611およびADMV9621は、真に有線と同様の性能を発揮します。ADMV9611およびADMV9621PCBサブシステムは、全二重動作を行うフル機能のミリ波(mmWave)ワイヤレス・リンクを形成します。この技術により、アナログ・デバイセズは、産業用オートメーション・アプリケーション向けのリアルタイム高信頼性コネクティビティを可能にしました。




アナログ・デバイセズの60GHzミリ波ショート・データ・リンクの詳細:
アナログ・デバイセズの60GHz技術の主な利点
超低遅延
ワイヤレスは遅延を内在したネットワークとして知られています。Wi-Fiはイーサネット伝送では20msの遅延を生じ、5Gでは1msを目標としています。60GHzリンクの遅延は2µsの範囲で、5Gより何桁も高速です。
プロトコル不問
アナログ・デバイセズの60GHzビットイン/ビットアウト・ソリューションを使用すると、一般的な有線プロトコルを使用した既存のシステムや機器をシームレスに統合し、システム適応させることができます。
オフセットとアライメントに対する高い許容度
T多方面でのアセンブリおよび操作環境に対応できるよう、アナログ・デバイセズの60GHzリンク技術は、ワイヤレス・コネクタに位置ずれが生じても性能は低下しません。オフセットとアライメントに対するこの高い許容度により、この技術はリンク性能に影響することなく回転機器で使用できるため、従来の有線接続システムをより多く置き換えることができます。
粉塵の多い環境に対する耐性
60GHzリンクは、コネクタ間の埃やごみには影響されません。つまり、この60GHzソリューションは、劣悪な環境でも性能を低下させることなく使用できます。

パートナーシップによりファクトリ4.0を加速
アナログ・デバイセズと産業ソリューション分野のトップ企業であるPhoenix Contactによる共同設計の成果をご覧ください。
非接触型スリップ・リングへの置換アプリケーション
60GHzのワイヤレス・リンク技術は、既存のスリップ・リング技術の置き換えに非常に適しています。スリップ・リングは、回転ジョイント(ロータリ・ジョイント)に用いられ、回転アセンブリからデータを転送する役割を果たすものです。これは従来、ローターに物理的に接触するブラシを使用して行われていました。しかし、ブラシは時間経過と共に破損し、修理や交換が必要となります。使用するアセンブリによって、特に、大きなアセンブリの修理や交換が必要な場合には、コストが大きくなりかねません。また、正常なアセンブリの回転を確保するために必要な定期メンテナンスは煩雑で費用もかかります。アナログ・デバイセズの60GHzリンク技術を使用することで、物理的な接触をなくしロータリ・ジョイントに非接触型の方法を使用できるため、定期的なメンテナンス、修理、交換が不要となります。
ロータリ・ジョイント—概略ブロック図と条件
パラメータ | 説明 |
回転速度 | 5000rpm~6000rpm |
データ・レート | 100Mbps、1Gbps以上 |
プロトコル | IEEE802.3、TSN、その他 |
BER | 1 × 10-12以下 |
位置ずれ、EMI、クロストーク、異物混入の影響を受けないこと、メンテナンスフリーであること、電力インターフェースと互換性があること |
BLE:超低消費電力で最先端のセキュリティを備えたワイヤレス・コネクティビティ
BLEは、よりスマートにより多く接続された世界を構築するための土台であることに変わりはありません。スマート・ビルディング、スマート・ホーム、スマート・ファクトリといった新しいアプリケーションで何百万という数のワイヤレス・デバイスが採用されているため、BLEは、これらのエッジ・デバイスの給電やセキュリティ確保の方法に伴う本質的な課題を提起しています。アナログ・デバイセズのマイクロコントローラ・ファミリであるDarwinは、超低消費電力のBLE 5.2無線が集積化されており、これらの固有の問題を解決するために構築されたものです。
無線
Bluetooth 5.2 SoCは、Bluetooth方向検知機能(Bluetooth Direction Finding)において受信角度(AoA)と放射角度(AoD)を検知する役割に対応しています。このデバイスはまた、LEオーディオ、長距離、高スループット(2Mbps)などの機能にも対応しています。Bluetooth MeshやZigbeeといったメッシュ・プロトコルもサポートされています。
低消費電力
アクティブモード時に27.3µA/MHzと低消費電力であるため、バッテリ寿命を延長できます。オンボードのSIMOにより動的な電圧スケーリングが行われるため、アクティブ・コアの消費電力を最小限に抑えることができます。起動時間が短い動作モードを複数備えているため、どのアプリケーションでも消費電力の最適化が可能です。
高セキュリティかつ高信頼性
- 30年におよぶ最先端のハードウェアベース・セキュリティ技術に基づき構築(AES、ECDSA、SHA-2/3、PUF)。
- すべての組み込みメモリに誤り訂正符号を採用し堅牢性を増強。
サイズ
豊富なパッケージ・オプション、小型(10.2mm²)