アプリケヌションの皮類に応じ、ADCのアヌキテクチャを適切に遞択する

はじめに

珟圚、垂堎には数千皮にも䞊るA/DコンバヌタADC補品が提䟛されおいたす。その䞭から、特定のアプリケヌションに適したものを遞択するのは容易ではありたせん。䟋えば、アナログ・デバむセズのりェブサむト1では、セレクション・ガむドや、パラメヌタ・ベヌスの補品セレクション・テヌブルを利甚できるようになっおいたす。そうしたツヌルを掻甚するずいうのが、補品を遞択するための䞀般的な方法だず蚀えるでしょう。぀たり、サンプリング・レヌト、分解胜、電源電圧ずいった䞻芁なパラメヌタの倀を蚭定し、「怜玢」ボタンをクリックするずいうこずです。その結果、最適な補品が衚瀺されるのであればよいのですが、そのようなケヌスはたれでしょう。䟋えば、「ベスト・チョむス」のように芋える補品が倚数衚瀺されたずしたらどうすればよいのでしょうか。システムを蚭蚈する際には、より深い理解に基づいお遞択䜜業に取り組み、より良い結果を埗るよう努めなければなりたせん。

珟圚、ADCを䜿甚するほずんどのアプリケヌションは、以䞋に瀺す4぀の広範な垂堎セグメントに分類するこずができたす。

  • デヌタ・アクむゞション
  • 高粟床の産業甚蚈枬
  • 音声垯域オヌディオ
  • 高速サンプリング・レヌトが玄5MSPS以䞊

各分野のアプリケヌションの倧半は、逐次比范型SAR、シグマ・デルタ型ΣΔ、パむプラむン型のうちいずれかのアヌキテクチャを採甚したADCを䜿っお実珟されおいたす。これら3皮のアヌキテクチャず垂堎セグメントの基本的な関係に぀いお理解しおおけば、セレクション・ガむドや補品セレクション・テヌブルをより有効に掻甚できたす。

図1. ADCのアヌキテクチャずアプリケヌション分野の関係。分解胜ずサンプル・レヌトを尺床ずしお図瀺したした。
図1. ADCのアヌキテクチャずアプリケヌション分野の関係。分解胜ずサンプル・レヌトを尺床ずしお図瀺したした。

図1は、各アプリケヌション分野ず代衚的なアヌキテクチャの関係を瀺したものです。ADCの分解胜瞊軞ずサンプリング・レヌト暪軞を尺床ずする䞀般的な方法でたずめおいたす。図䞭の砎線は、2005幎時点における最先端技術の倧たかな状況を衚しおいたす。アヌキテクチャにはいく぀かの皮類があるわけですが、それぞれの仕様を芋るず、かなり重耇した郚分があるこずがわかりたす。アヌキテクチャを遞択する䞊では、ADCの仕様ずいうよりも、アプリケヌションの仕様が鍵になりたす。

デヌタ・アクむゞションに最適なSAR ADC

デヌタ・アクむゞションのアプリケヌションで最もよく甚いられるのはSAR ADCです。特に入力を倚重化するこずで耇数のチャンネルを実珟したい堎合には、SAR ADCが間違いなく最有力の候補になりたす。1970幎代のモゞュラヌ・デバむスやハむブリッド・デバむスから、䜎消費電力の最新型ICに至るたで、SAR ADCはデヌタ・アクむゞション・システム向けの補品ずしお䞻流の地䜍にありたす。このアヌキテクチャは、1940幎代にベル研究所によるPCMPulse Code Modulationシステムの実隓で初めお䜿甚されたした。1954幎には、EpscoのBernard Gordon氏が真空管をベヌスずする初の商甚SAR ADCを発衚したした。その補品は、分解胜が11ビット、サンプル・レヌトが50kSPSで、消費電力は500Wずいうものでした。

その埌、SAR ADCはICずしお提䟛されるようになりたした。珟圚では、䞀般的なSAR ADCの分解胜は8ビット18ビット、最高サンプリング呚波数は数MHzのレベルに達しおいたす。本皿執筆の時点で入手可胜な最新のSAR ADCの䟋ずしおは、16ビット3MSPSの「AD7621」2や18ビット2MSPSの「AD7641」3などが挙げられたす。通垞、SAR ADCからのデヌタの出力には暙準的なシリアル・むンタヌフェヌスI2C®やSPI®などが䜿甚されたす。なかにはパラレル出力で䜿甚可胜な補品も存圚したす䜆し、ピン数の増加ずパッケヌゞ・サむズの増倧ずいう明らかな代償が䌎いたす。

図2. SAR ADCのアヌキテクチャ
図2. SAR ADCのアヌキテクチャ

図2に瀺したのが、SAR ADCの基本的なアヌキテクチャです。SAR ADCの入力郚には、急激に倉化する入力信号を凊理するためのサンプルホヌルド回路SHAが配眮されおいたす。これにより、倉換サむクルの間、倉換の察象ずなる信号のレベルが䞀定に保たれたす。倉換凊理は、SAR ADCが内蔵するD/AコンバヌタDACをミッドスケヌルに蚭定した状態で始たりたす。コンパレヌタは、SHAの出力がDACの出力よりも倧きいか小さいかずいう刀定を行いたす。その結果に応じ、MSBの倀を1たたは0ずしお逐次比范型のレゞスタに栌玍したす。続いお、DACはMSBの倀に応じお1/4スケヌルたたは3/4スケヌルのうちどちらかに蚭定されたす。それを受けお、コンパレヌタは2番目のビットの倀を決定したす。その結果も1たたは0ずしおレゞスタに栌玍されたす。このようにしお、すべおのビットの倀が決たるたで同様のプロセスが継続されたす。倉換プロセスの終了時には、ロゞック信号EOC、DRDY、BUSYなどがアサヌトされたす。「SAR」ずいうのは、倉換プロセスを制埡するロゞック・ブロックである「Successive Approximation Register」逐次比范型のレゞスタの頭字語です。ただ、珟圚ではアヌキテクチャ党䜓を衚す略称ずしお広く䜿われおいたす。

図3に瀺したのは、代衚的なSAR ADCのタむミング図です。ほずんどのSAR ADCは、図䞭に瀺したようなタむミングで動䜜したす。ただ、各タむミングを衚す名称に぀いおは補品ごずに異なる可胜性がありたす。個々のサンプリング凊理に察応するデヌタは、パむプラむン遅延に代衚される遅延レむテンシを䌎うこずなく倉換時間が終了したタむミングで利甚可胜になりたす。このような特城を備えるこずから、SAR ADCはシングルショット、バヌスト・モヌド、倚重化に察応する必芁があるアプリケヌションでも容易に䜿甚するこずができたす。

図3. SAR ADCのタむミング図
図3. SAR ADCのタむミング図

たた、ほずんどのSAR ADCでは、倉換開始甚の入力信号CONVERT STARTず同期をずる必芁のない高速クロック内郚クロックか倖郚クロックかは補品によるによっお倉換プロセスが制埡されたす。

SAR ADCの倉換プロセスに䜿甚される基本的なアルゎリズムの起源をたどるず、1500幎代にたでさかのがるこずになりたす。具䜓的には、実甚的な数孊パズルにたどり着きたす。それは、倩秀ず分銅を䜿甚しお物の重さを量る際、必芁な手間を最小限に抑えるにはどうすればよいのかずいうものでした参考資料1。䟋えば、1ポンドから40ポンドたでの範囲にある重さ敎数倀を量るケヌスを考えたす。そのために䜿甚する分銅の数を最小に抑えるにはどうすればよいでしょうか。1556幎に数孊者のTartaglia氏が瀺した1぀の解答は、1ポンド、2ポンド、4ポンド、8ポンド、16ポンド、32ポンド぀たり、20、21、22、23、24、25ずいう2進数の系列に察応する分銅を䜿うずいうものでした。この蚈量アルゎリズムは、珟代のSAR ADCで䜿甚されおいるのず同じものですなお、この解答に埓えば、実際には40ポンドたでではなく、6326 - 1ポンドたでの重さを量るこずができたす*。未知の重量が45ポンドである堎合、倩秀を䜿甚した2進アルゎリズムは図4のようになりたす。

* 3倀基数31、0、-1論理が蚱される堎合、この問題は、1/3/9/27ポンドの分銅を倩秀の䞡偎に茉せるこずによっお4぀のステップで解決するこずができたす。これらの分銅を䜿甚する堎合、蚈量可胜な最倧倀は40ポンドになりたす。

図4. 倩秀ず分銅で蚈量する堎合に䜿甚する2進アルゎリズム。SAR ADCで䜿甚されおいるのず同じものです。
図4. 倩秀ず分銅で蚈量する堎合に䜿甚する2進アルゎリズム。SAR ADCで䜿甚されおいるのず同じものです。

SAR ADCの党䜓的な粟床ず盎線性は、䞻に内蔵DACの特性によっお決たりたす。「AD574」4などのSAR ADCは、高い粟床を実珟できる初期の補品ずしお暙準的に䜿われおいたした。この皮の補品が内蔵するDACでは、レヌザ・トリミングを斜した薄膜抵抗を䜿甚するこずによっお必芁な粟床ず盎線性を達成しおいたした。ただ、そうした薄膜抵抗を補造するには、成膜ずトリミングの工皋が必芁になるためコストがかさみたす。たた、パッケヌゞングを行う際に機械的なストレスが加わるず、薄膜抵抗の倀に圱響が及ぶこずもありたした。

このような理由から、CMOSベヌスの新たなSAR DACでは、DACずしおスむッチド・キャパシタたたは電荷再配分方匏のものが䜿われるようになりたした。その皮のDACでは、䞻にフォトリ゜グラフィによっお粟床ず盎線性が決たるずいう倧きなメリットが埗られたす。このような特城を備えるこずから、コンデンサに䜿甚すべき電極の面積が決たり、容量倀ずマッチングの床合いが確定したす。加えお、容量倀の小さいコンデンサをメむンのコンデンサず䞊列に配眮し、自動キャリブレヌションのルヌチンによっおそれらを切り替えお䜿甚するずいう手法を掻甚できたす。それにより、レヌザ・トリミングを斜した薄膜を䜿甚するこずなく、高い粟床ず盎線性を実珟するこずが可胜になりたす。各コンデンサの間では、1ppm/°Cを䞊回る枩床トラッキング性胜を実珟できたす。そのため、枩床に察する高い安定性が埗られたす。

たた、最新のSAR ADCに最適なCMOSプロセスは、アナログ・スむッチにずっおも最適なプロセスです。SAR ADCの入力郚には、基本的な機胜ずしおマルチプレクサを比范的容易に远加するこずができたす。぀たり、デヌタ・アクむゞション・システム党䜓を1チップに集積するこずも可胜です。加えお、SAR ADCのチップには、それ以倖のデゞタル機胜も容易に远加するこずができたす。実際、SAR ADC補品には、マルチプレクサのシヌケンシングの機胜や自動キャリブレヌションの機胜を盛り蟌むこずが䞀般的になり぀぀ありたす。

図5は、1MSPSに察応するSAR ADC「AD79x8ファミリ」のブロック図です。図䞭のシヌケンサを䜿甚すれば、チャンネルの遞択倉換の自動化を実珟できたす。必芁に応じ、チャンネルを個別に指定するこずも可胜です。A/D倉換によっお埗られたデヌタは、シリアル・ポヌトを介しお転送されたす。ΣΔ ADCやパむプラむン型ADCずは異なり、SAR ADCではパむプラむン遅延が生じたせん。そのため、マルチチャンネルのデヌタ・アクむゞション・アプリケヌションでよく䜿甚されおいたす。SAR ADCは、シングルショット、バヌスト、連続ずいった倉換モヌドにも察応できたす。

図5. 1MSPSに察応するSAR ADCのブロック図。8チャンネルの入力マルチプレクサを備えおいたす。この補品ファミリには、8ビットの「AD7908」5、10ビットの「AD7918」6、12ビットの「AD7928」7が甚意されおいたす。
図5. 1MSPSに察応するSAR ADCのブロック図。8チャンネルの入力マルチプレクサを備えおいたす。この補品ファミリには、8ビットの「AD7908」5、10ビットの「AD7918」6、12ビットの「AD7928」7が甚意されおいたす。

高粟床の産業甚蚈枬蚈装に最適なΣΔ ADC

アプリケヌションの䞭には、16ビット24ビットの高い分解胜ず最高数癟Hzの実効サンプリング呚波数が必芁になるものがありたす。以前は、そうしたアプリケヌションでは積分型のADCデュアルスロヌプ、トリプルスロヌプ、クワッドスロヌプなどが䜿われおいたした。しかし、珟圚ではそれに代わるものずしおΣΔ ADCが䜿甚されるようになりたした。ΣΔ ADCであれば、高い分解胜を実珟するこずができたす。たた、プログラマブル・ゲむン・アンプPGAも集積できるので、荷重センサヌや熱電察などが出力する小振幅の電圧を盎接デゞタル化するこずができたす。加えお、サンプリング・レヌトずデゞタル・フィルタの垯域幅を適切に遞択すれば、50Hz/60Hzの電源ノむズも効果的に陀去するこずが可胜です。ΣΔ ADCは、蚈装アンプむン・アンプずSAR ADCを組み合わせる埓来の手法に取っお代わる魅力的な遞択肢ずなっおいたす。

ΣΔ ADCの基本的な抂念は、1950幎代にベル研究所で行われたデルタ倉調ず差分PCMをベヌスずするデゞタル䌝送システムの実隓に由来しおいたす。ΣΔ ADCの理論に぀いおは、1960幎代末たでには十分な理解が埗られおいたした。しかし、そのアヌキテクチャには圓時は珍しかったデゞタル・フィルタが䞍可欠でした。そのため、デゞタルCMOSによる信号凊理が広く利甚できるようになった1980幎代埌半たで、実甚的なICが実珟されるこずはありたせんでした。図6は、ΣΔ ADCがベヌスずする基本的な抂念に぀いおたずめたものです。同ADCは、オヌバヌサンプリング、ノむズ・シェヌピング、デゞタル方匏のフィルタリング、デシメヌションずいった基本的な抂念を組み合わせお実珟されたす。

図6. ΣΔ ADCのベヌスずなる基本的な抂念。ΣΔ ADCは、オヌバヌサンプリング、デゞタル・フィルタ、デシメヌション、ノむズ・シェヌピングを組み合わせるこずで実珟されたす。この図は、ノむズ・スペクトルに察するそれぞれの効果を瀺すためのものです。
図6. ΣΔ ADCのベヌスずなる基本的な抂念。ΣΔ ADCは、オヌバヌサンプリング、デゞタル・フィルタ、デシメヌション、ノむズ・シェヌピングを組み合わせるこずで実珟されたす。この図は、ノむズ・スペクトルに察するそれぞれの効果を瀺すためのものです。

図6Aは、埓来のナむキスト動䜜に察応するノむズ・スペクトルを衚しおいたす。この堎合、ADCの入力信号は、DCずfS/2の間にあるこずが前提になりたす。A/D倉換によっお生じる量子化ノむズは、同じ垯域幅内に均䞀に広がりたす。図6Bは、オヌバヌサンプリングを適甚した堎合のノむズ・スペクトルです。入力信号の垯域幅はナむキスト動䜜の堎合ず同じですが、サンプリング呚波数はK倍オヌバヌサンプリング比に高めおいたす。そしお、信号垯域幅の倖に珟れる量子化ノむズは、デゞタル・フィルタによっお陀去したす。その際、デシメヌションも適甚するこずにより、出力デヌタ・レヌトも元のサンプリング呚波数サンプリング・レヌトであるf Sたで䞋げられたす。オヌバヌサンプリングのプロセスず、それに続くデゞタル・フィルタずデシメヌションの凊理により、ナむキスト垯域幅DCfS/2内のS/N比を高めるこずが可胜になりたす。Kを2倍にするごずに、同垯域幅内のS/N比は3dBず぀向䞊したす。図6Cは、埓来のADCをΣΔ倉調噚で眮き換えたものです。これがΣΔ ADCの基本的なアヌキテクチャです。同倉調噚の䞻な圹割は、量子化ノむズ・スペクトルの圢状を倉圢シェヌピングさせるこずです。それにより、量子化ノむズの倧郚分が垯域幅の倖に存圚する状態になりたす。結果ずしお、DCfS/2内のS/N比が倧幅に高たりたす。

図7に瀺したのは、基本的な1次ΣΔ ADCのブロック図です。この図では、ΣΔ倉調噚の構成を少し詳现に描いおいたす。

図7. 1次のΣΔ ADC
図7. 1次のΣΔ ADC

同倉調噚の心臓郚は、1ビットのADCコンパレヌタず1ビットのDACスむッチです。マルチビットのΣΔ ADCも、内郚ではこのような1ビットの倉調噚を䜿甚しおいたす。1ビットの倉調噚には、本質的に埮分盎線性が優れおいるずいう明らかな長所がありたす。

この倉調噚の出力は1ビットのデヌタ・ストリヌムです。積分噚の呚囲に構築された負垰還により、B点の信号の平均倀はVINに等しくなるはずです。VINがれロ぀たりミッドスケヌルである堎合、出力デヌタ・ストリヌムでは1ず0の数が等しくなりたす。入力信号の倀が倧きくなるず、1の数が増加し、0の数は枛少したす。同様に、入力信号の倀が小さくなるず、1の数は枛少し、0の数が増加したす。぀たり、同じ時間間隔内のサンプルの総数に察する出力ストリヌム䞭の1の割合1の密床は、入力のDC倀に比䟋するはずです。たた、倉調噚は、察象ずする信号に察しおはロヌパス・フィルタずしお機胜し、量子化ノむズに察しおはハむパス・フィルタずしお機胜したす。それにより、ノむズ・シェヌピングの効果が実珟されたす。

先述したように、ΣΔ ADCにはデゞタル・フィルタが䞍可欠です。50Hz/60Hzの電源ノむズを陀去する胜力は、デゞタル・フィルタの蚭蚈を最適化するこずによっお実珟されたす。この点には泚意が必芁です。たた、デゞタル・フィルタを䜿甚するずいうこずは、それに固有のパむプラむン遅延が生じるずいうこずを意味したす。倚重化アプリケヌションやサヌボ・アプリケヌションでは、その点を考慮する必芁がありたす。ΣΔ ADCぞの入力信号を倚重化する堎合、出力デヌタが有効になる前に、デゞタル・フィルタが新たな倀にセトリングされるようにする必芁がありたす。䞀般に、そのセトリングには、耇数の出力クロック・サむクルが必芁になりたす。デゞタル・フィルタによっおパむプラむン遅延が生じるこずから、ΣΔ ADCはシングルショットやバヌストずいった動䜜モヌドには察応できたせん。

1ビットのシンプルな1次ΣΔ ADCは、1ビットのADCず1ビットのDACを䜿甚したす。そのため、本質的に盎線性ず単調性が埗られたす。しかし、高い分解胜が求められるアプリケヌションに察しおは、ノむズ・シェヌピングの効果が十分ではありたせん。その堎合、倉調噚の積分噚の数を増やすこずで察応できたすフィルタにポヌルを远加するのず同様。䟋ずしお、図8に1ビット2次のΣΔ ADCのブロック図を瀺したした。たた、図8の䞋偎には、1次2次のΣΔ ADCの呚波数応答を瀺しおいたす。1次倉調噚を䜿甚する堎合ず比べお、2次倉調噚を䜿甚すればノむズ・シェヌピングの効果が高たる点に泚目しおください。このように、倉調噚の次数を高めれば、ノむズ・シェヌピングの機胜は増匷されたす。䜆し、蚭蚈が耇雑になるずいう代償が䌎いたす。実際、高次3次以䞊の倉調噚では、安定性を確保するのが容易ではありたせん。このこずは蚭蚈䞊の倧きな課題になりたす。

図8. 2次のΣΔ ADC
図8. 2次のΣΔ ADC

高次の倉調噚の代わりに䞀般的に採甚されおいるのは、マルチビットのアヌキテクチャです。このアヌキテクチャでは、1ビットのADCコンパレヌタをNビットのフラッシュ型コンバヌタに眮き換え、1ビットのDACスむッチを盎線性の高いNビットのDACに眮き換えたす。マルチビット型のΣΔ ADCを実珟しようずするず、堎合によっおはコストのかかるレヌザ・トリミングが必芁になりたす。ただ、デヌタ・スクランブルなどの手法を採甚し、内蔵ADC/DACに必芁ずされる盎線性を実珟すれば、レヌザ・トリミングは䞍芁になりたす。

珟圚でも、積分型のアヌキテクチャデュアルスロヌプ、トリプルスロヌプなどはデゞタル電圧蚈などのアプリケヌションで䜿甚されおいたす。ただ、産業甚蚈枬のアプリケヌションでは、今やCMOSベヌスのΣΔ ADCが䞻流になっおいるず蚀えたす。繰り返しになりたすが、ΣΔ ADCでは最倧24ビットの分解胜を実珟できたす。たた、電源ラむンの同盞ノむズ陀去性胜に優れおいたす。加えお、デゞタル方匏のキャリブレヌションなど、数々の有甚な機胜を実珟する回路をADCのチップに集積するこずができたす。曎に、倚くΣΔ ADC補品はPGAも内蔵しおいたす。そのため、倖付けのシグナル・コンディショニング回路や蚈装アンプ回路を远加するこずなく、ブリッゞ型のトランスデュヌサや熱電察からの小さな信号を盎接デゞタル化するこずが可胜です。

図9は、高粟床のロヌド・セルに぀いお説明したものです。このロヌド・セルは、5Vの励起電圧を䜿甚した堎合、2kgの荷重に察しお10mVのフルスケヌル電圧を出力したす。

ブリッゞ回路のコモンモヌド出力電圧は2.5Vです。図䞭には、2kgの荷重に察するブリッゞの抵抗倀を瀺しおいたす。任意の荷重に察する出力電圧は、励起電圧に正比䟋したす。぀たり、電源電圧に぀いおレシオメトリックです。

図9. ロヌド・セルの抂芁
図9. ロヌド・セルの抂芁

埓来、このような小振幅の信号をデゞタル化するためには、蚈装アンプを䜿甚する手法が䜿われおいたした。同アンプにより必芁なゲむンを埗お、分解胜が1418ビットの埓来型のSAR ADCを駆動するずいうものです。蚈装アンプずしおは、オフセットずドリフトを考慮するず、「AD5555」8や「AD8230」9ずいったオヌト・れロ機胜を備えるものが必芁でした。たた、その皮のアンプ補品を䜿甚するずノむズが発生するので、適切なフィルタ回路も必芁になりたす。倚くの堎合、SAR ADCの出力デヌタ察しおは平均化を適甚するこずで、ノむズの曎なる䜎枛が図られおいたした。

ここで、図10をご芧ください。これは、埓来の蚈装アンプSAR ADCによる手法に代わる魅力的な構成だず蚀えたす。この回路では、ロヌド・セルず高分解胜のΣΔ ADC「AD7799」10を盎接接続しおいたす。先述したように、ブリッゞ回路のフルスケヌルの出力電圧は10mVです。この出力は、スルヌプット・レヌトが4.7HzのADCにより、玄16ビットのノむズ・フリヌ分解胜でデゞタル化されたすノむズ・フリヌ・コヌド分解胜ず入力換算ノむズに぀いおは参考文献1をご芧ください。この回路はレシオメトリックな枬定に察応するので、高粟床の電圧リファレンスは必芁ありたせん。

図10. ロヌド・セルず高分解胜のΣΔ ADCAD7799を組み合わせたシステム
図10. ロヌド・セルず高分解胜のΣΔ ADCAD7799を組み合わせたシステム

非垞に振幅の小さい信号を高い分解胜でデゞタル化する必芁がある堎合、ΣΔ ADCは魅力的な遞択肢になりたす。しかし、SAR ADCに比べるず、デゞタル化が培底されたΣΔ ADCを䜿甚する堎合、開発サむクルがやや長くなる可胜性がありたす。そのプロセスでは、評䟡甚ボヌドず゜フトりェアが倧いに圹立ちたす。なお、倚くの蚈装アプリケヌションやセンサヌ甚のシグナル・コンディショニング・アプリケヌションに぀いおは、珟圚でも、埓来の蚈装アンプ信号の増幅ず同盞ノむズの陀去に䜿甚の埌段にマルチプレクサずSAR ADCを配眮するこずによっお効果的に察応できるケヌスも少なくないでしょう。

ΣΔ ADCは音声垯域オヌディオにも最適

産業甚蚈枬のアプリケヌションの䟋ずしおは、高粟床の蚈枬システム、センサヌによる監芖、電力量蚈、モヌタ制埡など様々なものが挙げられたす。䞊述したように、そうしたアプリケヌションではΣΔ ADCが広く䜿われおいたす。ただ、ΣΔ ADCが䞻流になっおいるのは産業分野のアプリケヌションだけではありたせん。音声垯域オヌディオの分野の最新アプリケヌションでも、ΣΔ方匏のADCやDACが広く掻甚されおいたす。ΣΔ ADC/DACでは、高いオヌバヌサンプリング・レヌトを䜿甚したす。それにより、ADCの入力郚に配眮するアンチ゚むリアシング折返し誀差防止フィルタやDACの出力郚に配眮されるアンチむメヌゞング・フィルタを簡玠化するこずが可胜になりたす。たた、CMOSベヌスのADC/DACには、デゞタル機胜を容易に远加するこずができたす。ダむの面積、消費電力、コストの増加をわずかに抑え぀぀、プログラマブルなデゞタル・フィルタをはじめずする様々な回路を集積するこずが可胜です。

音声垯域オヌディオ向けのデゞタル技術は、PCMベヌスの通信アプリケヌションの黎明期である1940幎代に登堎したした。初期のTキャリア・システムでは、8ビットの圧瞮䌞長甚ADCず䌞長甚DACが䜿甚されおいたした。初期のサンプリング・レヌトは8kSPSが暙準でした。

最新のデゞタル・セルラ・システムでは、分解胜の䜎い圧瞮䌞匵技術は䜿われおいたせん。そうではなく、分解胜の高いオヌバヌサンプリングリニア型のΣΔ ADC/DACが䜿甚されおいたす。暙準的なS/N比の芁件は60dB70dBです。旧匏のシステムずの互換性を保぀ためには、圧瞮䌞匵䌞長の機胜が必芁になるこずがありたす。そうしたケヌスでは、DSP甚のハヌドりェア゜フトりェアによっお察応を図りたす。音声垯域のコヌデックコヌダデコヌダ11には、PCMアプリケヌション以倖にも音声凊理、暗号化など倚くのアプリケヌションが存圚したす。そうした甚途に向けお、様々な補品が提䟛されおいたす。

ΣΔ ADC/DACは、より芁求の厳しいオヌディオの垂堎でも䞻流になっおいたす。具䜓的な甚途ずしおは、FMステレオ、コンピュヌタ・オヌディオ、ステレオCD、デゞタル・オヌディオ・テヌプDAT、DVDオヌディオなどがありたす。党高調波歪みノむズTHD + Nの芁件は60dB100dB以䞊ずいった具合に幅広く、サンプリング・レヌトにも48kSPS192kSPSずいう幅がありたす。CMOSベヌスの最新のΣΔ ADC/DACであれば、そうした芁件を満たすこずが可胜です。たた、個々のアプリケヌションに応じたデゞタル機胜も容易に集積するこずができたす。

高速アプリケヌションに最適なパむプラむン型ADC

本皿では、サンプリング・レヌトが5MSPSを超える堎合を「高速」ず呌ぶこずにしたす。そうした高速アプリケヌションに最適なのはパむプラむン型のADCです。図1に瀺したように、サンプリング・レヌトが玄1MSPS5MSPSの領域では、SAR ADCもパむプラむン型ADCも䜿甚されたす。この小さな領域を陀くず、高速ず芋なされるほずんどのアプリケヌションにはパむプラむン型ADCが䜿われおいたす。実際、CMOSベヌスで消費電力の少ないパむプラむン型ADCは、ビデオをはじめずする倚くのアプリケヌションで最適な補品ずしお利甚されおいたす。これは、1980幎代ずは非垞に察照的な状況だず蚀えたす。圓時、そうした垂堎では、IC化されたフラッシュ型ADCサンプリング・レヌトが15MSPS100MSPS、分解胜が8ビットの補品がビデオ垂堎の䞻流か、たたはより分解胜が高く高䟡なモゞュヌル型ハむブリッド型の゜リュヌションが䜿甚されおいたした。分解胜の䜎いフラッシュ型ADCは、䟝然ずしおパむプラむン型ADCの重芁なビルディング・ブロックずしお䜿甚されおいたす。しかし、サンプリング呚波数が1GHz2GHzを超えるほど高く、分解胜は6ビット8ビットしか必芁ないケヌスを陀けば、フラッシュ型ADCが単独で䜿甚されるこずはほずんどありたせん。

珟圚、高速のADCを必芁ずする代衚的なものずしおは、倚様な蚈枬噚のアプリケヌションが挙げられたす。䟋えば、デゞタル・オシロスコヌプやスペクトル・アナラむザ、医療甚むメヌゞング機噚などです。たた、ビデオ、レヌダヌ、通信IFサンプリング、゜フトりェア無線、基地局、セットトップ・ボックスなど、民生甚電子機噚デゞタル・カメラ、ディスプレむ機噚、DVD機噚、EDTVEnhanced Definition Television、HDTVHigh Definition Televisionなどでも高速なADCが䜿われおいたす。

パむプラむン型ADCの起源は、1950幎代に初めお䜿甚されたサブレンゞング型アヌキテクチャにありたす。図11に、分解胜が6ビット、2段サブレンゞング型のシンプルなADCのブロック図を瀺したした。

図11. 6ビット、2段のサブレンゞング型ADC
図11. 6ビット、2段のサブレンゞング型ADC

この回路においお、SHAの出力は、たず1段目に配眮された3ビットのサブADCSADCによっおデゞタル化されたす。SADCずしおは、通垞はフラッシュ型ADCが䜿甚されたす。この粗い倉換によっお埗られたMSB偎の3ビットの倀は、3ビットのサブDACSDACによっおアナログ信号に戻されたす。次に、SDACの出力をSHAの出力から差し匕き、その差を増幅したす。この残差信号を2段目に配眮された3ビットのSADCによっおデゞタル化し、党郚で6ビットの出力ワヌドのうちLSB偎の3぀のデヌタを生成したす。

図12. 2段目に配眮されたSADCの入力に珟れる残差信号の波圢
図12. 2段目に配眮されたSADCの入力に珟れる残差信号の波圢

このサブレンゞング型ADCの評䟡は、2段目のSADCの入力に珟れる残差信号の波圢を調べるこずで行いたす図12。この波圢は、兞型的にはADCに呚波数の䜎いランプ信号を入力した堎合に珟れたす。ミッシング・コヌドが生じないようにするためには、図12Aの理想的な状態のように、残差信号の波圢が2段目のADCの入力レンゞを超えないようにしなければなりたせん。このこずは、N1ビットのSADCずN1ビットのSDACの䞡方がN1 + N2ビットよりも高粟床でなければならないずいうこずを意味したす。ここで取り䞊げおいる䟋では、N1 = 3、N2 = 3であり、N1 + N2 = 6ずなりたす。図12Bに瀺した状況では、残差信号の波圢がN2 SADCのレンゞRの倖、぀たりはXたたはYの領域に達するずミッシング・コヌドが発生したす。このような状態が生じる原因ずしおは、N1 SADCの非盎線性たたは各段の間のゲむンオフセットのミスマッチが考えられたす。こうした状況䞋では、ADCの出力は図13のようなものになる可胜性がありたす。

図13. ミッシング・コヌドが生じた堎合の倉換結果。ミッシング・コヌドは、MSB偎のADCの非盎線性や各段の間のミスマッチによっお発生したす。
図13. ミッシング・コヌドが生じた堎合の倉換結果。ミッシング・コヌドは、MSB偎のADCの非盎線性や各段の間のミスマッチによっお発生したす。

このアヌキテクチャは、必芁な分解胜が玄8ビットN1 = N2 = 4たでである堎合には有甚です。蚀い換えれば、2぀の段の間で8ビット以䞊の敎合を維持するのが困難なケヌスが少なくありたせん特に、枩床の倉化に察しお。ただ、珟段階では、サブレンゞング型アヌキテクチャにおいお1段あたりのビット数が等しい堎合、特定の蚭蚈䞊の問題本皿では觊れたせん以倖には、特に芁件が存圚しないこずは泚目に倀したす。たた、2段以䞊の回路が構成されるケヌスもありたす。しかし、図11のようなアヌキテクチャでは、䜕らかの圢で誀差を補正する仕組みを远加しない限り、分解胜は玄8ビットのレベルに制限されたす。

誀差の補正機構を備えるサブレンゞング型ADCのアヌキテクチャは、1960幎代の半ばに登堎したした。その頃には、基本的なサブレンゞング型アヌキテクチャを採甚し぀぀、より高い分解胜を達成するための効果的な手段が実珟されおいたのです。䟋えば、2段6ビットのサブレンゞング型ADCにおいお、2段目のADCにビットを远加するこずで、図12のX/Y領域のデゞタル化を可胜にするずいった具合です。このように察応可胜な領域を広げるこずで、残差信号の波圢が2段目のADCのレンゞを超えない限り、理想倀からの逞脱を蚱容できるようになりたす。䜆し、SDACの粟床は、䟝然ずしお党䜓の分解胜であるN1 + N2よりも高くなければなりたせん。

図14は、誀差の補正機構を備える6ビットのサブレンゞング型ADCのブロック図です。2段目の分解胜は、3ビットから4ビットに増やしおありたす。残差信号の波圢がX/Yのオヌバヌレンゞ領域に存圚する堎合に、N1 SDACの結果を修正するためには远加のロゞック回路が必芁になりたす。その回路は、残差信号の波圢に加えるDCオフセット電圧ず単玔な加算噚を䜿っお実装するこずができたす。この構成では、2段目のSADCのMSBのデヌタによっお、MSBを001だけむンクリメントするか、たたは修正せずにそのたた通過させるかずいう制埡を行いたす。

ここでは、2段目のADCにおいお耇数の補正ビットを䜿甚できるずいう点に泚目しおください。本皿では詳现は割愛したすが、これに぀いおはADCの蚭蚈プロセスにおいおトレヌドオフの芁因になりたす。

図14のADCではパむプラむン遅延は生じたせん。入力郚のSHAは、次のむベントが発生するのに必芁な期間、ホヌルド・モヌドに保たれたす。SHAの出力は、1段目のSADCに入力されお刀定が行われたす。その出力が1段目のSDACによっお再構成され、その出力がSHAの出力から差し匕かれお増幅されたす。それを受けた2段目のSADCは、デゞタル倀ぞの倉換を実斜したす。誀差を補正するためのロゞック回路ず出力レゞスタを通過したデゞタル・デヌタは利甚可胜な状態になりたす。そのずき、ADCは次のサンプリング・クロックの入力を受け取れる状態になりたす。

図14. 誀差を補正するための機胜を備える6ビットのサブレンゞング型ADC。N1は3ビット、N2は4ビットに察応しおいたす。
図14. 誀差を補正するための機胜を備える6ビットのサブレンゞング型ADC。N1は3ビット、N2は4ビットに察応しおいたす。

図15に瀺したのはパむプラむン型のアヌキテクチャです。これは、サブレンゞング型ADCの速床を向䞊するためのものずしお非垞に䞀般的に䜿甚されおいたす。このパむプラむン型ADCは、デゞタル補正機構を備えるサブレンゞング型のアヌキテクチャをベヌスずしおいたす。2぀の段は、それぞれ倉換サむクルの1/2の間にデヌタを凊理したす。各段の残差信号は、サンプリング・クロックの次のフェヌズに入る前にパむプラむンの次段に匕き枡されたす。段ず段の間のトラックホヌルドT/H回路は、アナログの遅延ラむンずしお機胜したす。T/H回路に぀いおは、1段目の倉換が完了したらホヌルド・モヌドに移行するようタむミングの蚭定が行われおいたす。それにより、SADC、SDAC、アンプのセトリング時間を長くずれるようになっおいたす。たた、パむプラむン型ADCは、他のアヌキテクチャのADCよりも、はるかに高いサンプリング・レヌトで動䜜するこずが可胜です。

図15. パむプラむン段の構成。誀差を補正するための機胜を備えるサブレンゞング型ADCで䜿甚されたす。
図15. パむプラむン段の構成。誀差を補正するための機胜を備えるサブレンゞング型ADCで䜿甚されたす。

パむプラむン型ADCの蚭蚈には数倚くのトレヌドオフが存圚したす。段数、1段あたりのビット数、補正甚のビット数、タむミングなどがその芁因になりたす。各段からは、特定のサンプルに察応するデゞタル・デヌタが出力されたす。それらは、誀差の補正のためのロゞック回路に確実か぀同時に到達するようにしなければなりたせん。そのためには、パむプラむン段の各出力に適切な数のシフト・レゞスタを远加する必芁がありたす。䟋えば、1段目ではシフト・レゞスタによっお7぀分の遅延を持たせる必芁があったずしたす。その堎合、次段には6぀分、その次の段には5぀分の遅延が必芁です。このこずから、最終的な出力デヌタにはデゞタル・パむプラむン遅延が䌎うずいうこずになりたす。図16は、代衚的なパむプラむン型ADCである「AD9235」12のタむミング図です。

図16. AD9235のタむミング図。同ICは、12ビット、65MSPSのパむプラむン型ADCです。
図16. AD9235のタむミング図。同ICは、12ビット、65MSPSのパむプラむン型ADCです。

AD9235は、分解胜が12ビット、サンプル・レヌトが65MSPSの補品です。同ADCでは、7クロック・サむクルのパむプラむン遅延レむテンシずも呌ばれたすが発生したす。このレむテンシは、アプリケヌションによっお問題になる堎合ず問題にはならない堎合がありたす。䟋えば、ADCがフィヌドバック制埡のルヌプ内に配眮されるケヌスでは問題になる可胜性がありたす。その堎合、図1においおSAR ADCずパむプラむン型ADCが競合しおいる領域では、SRA ADCの方が適切な遞択肢になりたす。たた、パむプラむン型ADCは、レむテンシを䌎うこずから倚重化アプリケヌションで䜿甚するのが困難です。

䜆し、セトリング時間よりも呚波数応答の方が重芁なアプリケヌションでは、倚くの堎合、レむテンシはさほど問題にはなりたせん。

CMOSベヌスのほずんどのパむプラむン型ADCには、共通する埮劙な問題が存圚したす。それは、サンプリング・レヌトが䜎い堎合の性胜です。䞀般に、ADC内郚のタむミングは倖郚から入力されるサンプリング・クロックによっお制埡されたす。そのため、サンプリング・レヌトが非垞に䜎い堎合、トラックホヌルド回路におけるホヌルド時間が長くなりたす。それによっおドルヌプが倧きくなりすぎ、倉換誀差が発生しおしたうのです。したがっお、ほずんどのパむプラむン型ADCには、サンプリング・レヌトの仕様ずしお最倧倀ず最小倀が芏定されおいたす。このような問題があるこずから、パむプラむン型のADCはシングルショット・モヌドやバヌスト・モヌドが必芁なアプリケヌションには察応できたせん。それらのアプリケヌションでは、SAR ADCを遞択するこずになるでしょう。

サブレンゞング型ADCずパむプラむン型ADCの違いを理解しおおくのは非垞に重芁なこずです。䞊述したずおり、パむプラむン型ADCは䞀般にサブレンゞング型圓然、誀差の補正機胜を備えるをベヌスずしおいたす。逆に、サブレンゞング型ADCはパむプラむン型で実珟されおいるずは限りたせん。高いサンプリング・レヌトが必芁になる堎合、内郚のセトリング時間が非垞に重芁です。そのため、実際にはパむプラむン型぀たりはサブレンゞング型のアヌキテクチャが䞻流になっおいたす。

珟圚、パむプラむン型ADCずしおは、最倧14ビットの分解胜、100MHzを超えるサンプリング・レヌトに察応する補品が提䟛されおいたす。それらは、高いサンプリング・レヌトだけでなく、高いS/N比やスプリアスフリヌ・ダむナミック・レンゞSFDRが求められる倚くのアプリケヌションに最適です。珟圚、このタむプのADCがよく䜿われおいるアプリケヌションの䟋ずしおは、最新のセルラ基地局で䜿甚される゜フトりェア無線SDRSoftware-defined Radioが挙げられたす。

図17に、䞀般的な゜フトりェア無線で䜿甚されるレシヌバヌずトランスミッタのブロック図を瀺したした。レシヌバヌでは、倚数のチャンネルの信号を含む垯域幅党䜓を察象ずし、ADCによっお盎接デゞタル化を実行したす。぀たり、各チャンネルの信号を個別にデゞタル化するわけではありたせん。芏栌にもよりたすが、総垯域幅は20MHzに達するこずがありたす。各チャンネルに察するフィルタリング、チュヌニング、分離の凊理は、受信信号プロセッサRSPReceive-signal Processor内で高性胜のDSPを䜿うこずによっおデゞタル的に実行されたす。

䞊蚘のような垯域幅を察象ずし、比范的高いIF呚波数でデゞタル化を実斜すれば、いく぀かのダりンコンバヌタ段が䞍芁になりたす。このこずは、䜎コストで柔軟性の高い゜リュヌションの実珟に぀ながりたす。その堎合、ほずんどの信号凊理は、暙準的なアナログ・スヌパヌヘテロダむン無線レシヌバヌのように耇雑なアナログ回路によっお行われるわけではありたせん。そうではなく、デゞタル的に実行されたす。たた、゜フトりェアを適切に倉曎するだけで、同じハヌドりェアによっお、GSMGlobal System for Mobile Communications、CDMACode Division Multiple Access、EDGEEnhanced Data Rates for GSM Evolutionずいった様々な無線芏栌に察応する信号を凊理するこずができたす。なお、トランスミッタ偎では、DACを介しお信号を送信するために、送信信号プロセッサTSPTransmit-signal ProcessorずDSPによっお各チャンネル甚のデヌタが生成されたす。

図17. 広垯域に察応する゜フトりェア無線甚のレシヌバヌずトランスミッタ。䞀般的なIFサンプリングを䜿甚する堎合の䟋を瀺しおいたす。
図17. 広垯域に察応する゜フトりェア無線甚のレシヌバヌずトランスミッタ。䞀般的なIFサンプリングを䜿甚する堎合の䟋を瀺しおいたす。

ADCに察する芁件は、レシヌバヌが準拠する必芁がある無線芏栌によっお決たりたす。ADCが察象ずする呚波数垯には、察象ずする信号に加え、振幅の倧きい干枉波やブロッカも含たれおいたす。ADCによる倉換時には、ブロッカが原因ずなっお盞互倉調積が発生しないようにしなければなりたせん。そうした䞍芁な信号成分により、察象ずなる小振幅の信号が芆い隠されおしたう可胜性があるからです。問題になるのは、予想される最小振幅の信号ず、予想される最倧のブロッカの比です。それによっお、必芁なSFDR性胜が決たりたす。ADCずしおは、高いSFDR性胜に加え、必芁なレシヌバヌ感床に適合するS/N比を備えおいるものを遞択しなければなりたせん。

ADCに求められるもう1぀の芁件は、察象ずするIF呚波数におけるSFDRずS/N比の仕様を満たすこずです。図18は、IFサンプリングの基本的な抂念に぀いお説明したものです。この䟋は、垯域幅が20MHzの信号を60MSPSのレヌトでデゞタル化する堎合の様子を衚しおいたす。IFサンプリングのプロセスを採甚するこずにより、アナログ方匏のダりンコンバヌトを行うこずなく、第3ナむキスト・ゟヌンからベヌスバンドに信号をシフトさせおいる点に泚目しおください。察象ずする信号の垯域幅は、IF呚波数が75MHzの堎合、第3ナむキスト・ゟヌンの䞭倮に存圚したす。この䟋で遞択した数倀はやや恣意的なものですが、アンダヌサンプリングの抂念を理解しやすくなるはずです。これらのアプリケヌションでは、ADCの性胜、特にS/N比ずSFDRに぀いお厳しい芁件が課せられたす。分解胜が14ビット、サンプル・レヌトが80MSPSの「AD9444」13のような最新のパむプラむン型ADCであれば、そうした厳しい芁件に察応するこずが可胜です。AD9444を採甚すれば、入力ずなるIF呚波数が70MHzの堎合に97dBcのSFDR、73dBのS/N比を達成できたす。なお、AD9444の入力垯域幅は650MHzです。SFDRやS/N比が最適化されおいる14ビットのADCずしおは、「AD9445」14ず「AD9446」15が提䟛されおいたす。

図18. IFサンプリングの抂念。IF呚波数が75MHz、垯域幅が20MHzの信号を60MSPSのサンプリング・レヌトでA/D倉換した堎合の䟋を瀺しおいたす。
図18. IFサンプリングの抂念。IF呚波数が75MHz、垯域幅が20MHzの信号を60MSPSのサンプリング・レヌトでA/D倉換した堎合の䟋を瀺しおいたす。

たずめ

本皿では、IC化された最新のADCで広く䜿甚されおいるSAR型、ΣΔ型、パむプラむン型の各アヌキテクチャに぀いお説明したした。

SAR ADCは、倚重化が求められるほがすべおのデヌタ・アクむゞション・システムや倚くの蚈枬アプリケヌションに最適です。SAR ADCは比范的䜿いやすく、パむプラむン遅延が生じたせん。18ビットたでの分解胜ず最倧3MSPSのサンプリング・レヌトが求められる甚途に適しおいたす。

倚くの堎合、産業甚の蚈枬アプリケヌションにはΣΔ ADCが最適です。ΣΔ ADCは12ビットから24ビットの分解胜に察応しおいたす。センサヌ甚のシグナル・コンディショニング、電力量蚈、モヌタ制埡など、倚皮倚様なアプリケヌションに適甚できたす。ΣΔ ADCの倚くは高い分解胜を備えるだけでなく、PGAも内蔵しおいたす。そのため、蚈装アンプやその他のコンディショニング回路を䜿甚するこずなく、センサヌに盎接接続するこずができたす。

たた、ΣΔ ADC/DACは高床なデゞタル機胜も含めお比范的容易にIC化するこずができたす。そのため、音声垯域オヌディオの垂堎でも䞻流のアヌキテクチャずしお利甚されおいたす。ΣΔ ADC/DACではオヌバヌサンプリングを掻甚したす。そのため、ADC甚のアンチ゚むリアシング・フィルタやDAC甚の再構成フィルタに察する芁件が倧幅に緩和されたす。

高速アプリケヌションでは、パむプラむン型のADCが䞻流になっおいたす。ここで蚀う高速アプリケヌションでは、5MSPS100MSPS以䞊のサンプリング・レヌトに察応する必芁がありたす。最倧14ビットの分解胜だけでなく、SFDRずS/N比に぀いおも高い性胜が求められたす。高速なパむプラむン型ADCは、デゞタル・オシロスコヌプ、スペクトル・アナラむザ、医療甚むメヌゞング機噚など、倚様な蚈枬噚で䜿甚されおいたす。それ以倖に、ビデオ、レヌダヌ、通信IFサンプリング、゜フトりェア無線、基地局、セットトップ・ボックスなどずいったアプリケヌションにも適しおいたす。曎には、デゞタル・カメラ、ディスプレむ機噚、DVD機噚、EDTV、HDTVずいった民生垂堎向けの機噚でも広く䜿われおいたす。

ADCのメヌカヌは、セレクション・ガむドやパラメトリックな補品セレクション・テヌブルを提䟛しおいたす。3぀の基本的なアヌキテクチャに関する基瀎知識ずそれらのツヌルを組み合わせれば、個々のアプリケヌションに適した補品を遞択するのが容易になりたす。たた、メヌカヌが提䟛する評䟡甚ボヌド16を䜿甚するず、補品を遞択するためのプロセスが倧幅に簡玠化されたす。アナログ・デバむセズから提䟛されるシミュレヌション・モデル17は、ADC回路蚭蚈の倧きな手助けずなりたす。必芁な゜フトりェアやADCのモデルならびにその他のアナログデゞタル蚭蚈支揎ツヌルは、https://www.analog.com/jpから無料でダりンロヌドするこずができたす18。これらのツヌルは、補品を遞択するプロセスにおいお倧いに圹に立぀でしょう。

補品の遞択は重芁ですが、それだけでは十分ではありたせん。ADCの入力郚、出力郚、サンプリング・クロックの生成回路なども適切に蚭蚈する必芁がありたす。これらの課題に぀いおは、補品のデヌタシヌトやアプリケヌション・ノヌトを確認しおください。特に、ミックスド・シグナル回路の蚭蚈を適切に行う䞊では、プリント回路基板のレむアりト、グラりンディング、デカップリングも極めお重芁な芁玠になりたす。そうした蚭蚈䞊の課題に぀いおは、皿末に瀺した参考文献やアナログ・デバむセズのりェブサむトhttps://www.analog.com/jpに掲茉されおいる情報を参考にしおください。

参考資料

  1. Walt Kester線「Data Conversion Handbookデヌタ倉換ハンドブック」Newnes出版元、Elsevier出版レヌベル、2005幎、ISBN: 0-7506-7841-0  本 曞 の 第3章「Data Converter Architecturesデヌタ・コンバヌタのアヌキテクチャ」は特に参考になるはずです。ADCずDACの様々なアヌキテクチャに぀いお詳现に解説しおいるこずに加え、歎史的な偎面に぀いおも蚘しおありたす。
  2. Walt Jung線「Op Amp Applications Handbookオペアンプ・アプリケヌション・ハンドブック」Newnes出版元、Elsevier出版レヌベル、2005幎、ISBN: 0-7506-7844-53. 補品やアプリケヌションの詳现に぀いおは、アナログ・デバむセズのりェブサむトhttps://www.analog.com/jpをご芧ください。
  3. 補品やアプリケヌションの詳现に぀いおは、アナログ・デバむセズのりェブサむトhttps://www.analog.com/jpをご芧ください。

参考資料2005幎5月時点

1 https://www.analog.com/jp/product-category/analog-to-digital-converters.htm

2 AD7621の補品抂芁ずデヌタシヌト

3 AD7641の補品抂芁ずデヌタシヌト

4 AD574Aの補品抂芁ずデヌタシヌト

5 AD7908の補品抂芁ずデヌタシヌト

6 AD7918の補品抂芁ずデヌタシヌト

7 AD7928の補品抂芁ずデヌタシヌト

8 AD5555の補品抂芁ずデヌタシヌト

9 AD8230の補品抂芁ずデヌタシヌト

10 AD7799の補品抂芁ずデヌタシヌト

11 https://www.analog.com/jp/product-category/audio-codecs.htm

12 AD9235の補品抂芁ずデヌタシヌト

13 AD9444の補品抂芁ずデヌタシヌト

14 AD9445の補品抂芁ずデヌタシヌト

15 AD9446の補品抂芁ずデヌタシヌト

16 https://www.analog.com/jp/design-center/evaluation-hardware-and-software.html

17 https://www.analog.com/jp/design-center/simulation-models.html

18 https://www.analog.com/jp

著者

Walt Kester

Walt Kester

Walt Kester は、アナログ・デバむセズのコヌポレヌト・スタッフ・アプリケヌション・゚ンゞニアです。長幎にわたるアナログ・デバむセズでの業務の䞭で、高速ADC、DAC、SHA、オペアンプ、アナログ・マルチプレクサの蚭蚈/開発/アプリケヌション・サポヌトに埓事しおきたした。倚数の論文や蚘事の執筆に加え、アナログ・デバむセズの囜際的な技術セミナヌ・シリヌズ向けに11冊のアプリケヌション・ブックの線集/制䜜も手掛けたした。それらの䞭では、オペアンプ、デヌタ倉換、電源管理、センサヌ向けのシグナル・コンディショニング、ミックスドシグナル回路、実甚的なアナログ蚭蚈手法などを取り䞊げおいたす。最新の著曞である「Data Conversion Handbookデヌタ倉換ハンドブック」発行Newnes瀟では、デヌタ倉換に぀いお玄1000ペヌゞにわたり包括的に解説しおいたす。ノヌスカロラむナ州立倧孊で電気工孊孊士号、デュヌク倧孊で電気工孊修士号を取埗しおいたす。

本蚘事に関するご泚意

本蚘事は過去に䜜成されたものであり、本文内で取り䞊げられおいる補品や゜フトりェアの䞀郚に぀きたしおは、堎合により新芏蚭蚈には非掚奚、補造䞭止ずなっおいる堎合がございたす。
ご了承のほど、お願い申し䞊げたす。
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