フォトカプラを使用しないフライバック・コンバータ:既存オプション

フライバック・コンバータは、多くの場合、電源電圧のガルバニック絶縁が必要なアプリケーションで使用されます。伝達される電力は比較的低く、出力電力は通常60W程度以下です。

ガルバニック絶縁型電源を使用する場合、どちら側のガルバニック絶縁でコントローラ、すなわち内蔵の制御回路をオンにするかを決定する必要があります。これが2次側にある場合、1次側のパワー・スイッチはガルバニック絶縁を介して制御する必要があります。

コントローラが1次側あるいは2次側のどちらにあるアーキテクチャでも、ガルバニック絶縁を越えて信号を伝達するパスが必要です。多くの場合、フォトカプラ、すなわち光アイソレータがこの目的で使用されますが、フォトカプラは、通常、85°Cの温度でしか仕様規定されておらず、電流伝達率(CTR)は経時的に変化するため、伝達特性は回路の耐用期間中に変動するという不都合な特性があります。また、フォトカプラを制御するには追加部品が必要となります。さらにフォトカプラを使用すると、絶縁型電源の帰還ループは非常に遅くなるのが一般的です。近年、この問題に対する優れたソリューションがいくつか開発されました。最初のソリューションはフライバック・コントローラです。これは出力電圧を直接、測定せず、トランスの1次側の巻き線に印加された電圧を調べることで、実際の出力電圧に関して十分に正確な結論を出すことができます。このレギュレーションの精度は、入出力電圧、負荷変動、電源変動など、アプリケーションの通常条件によって異なります。

しかし、多数のアプリケーションでは、レギュレーション精度は±10%~±15%で十分です。図1にLT8301を示します。パワー・スイッチを内蔵しているため、SOT23ハウジングに収められたこのICは、ごくわずかな外付け部品しか必要としません。回路の絶縁破壊電圧は、使用するトランスによってのみ決まります。そのため、特に絶縁電圧を高くする必要がある場合は、柔軟性が非常に高まります。

図1. 絶縁型帰還パスを使用しないLT8301フライバック・レギュレータ

図1. 絶縁型帰還パスを使用しないLT8301フライバック・レギュレータ

ただし、出力電圧制御に高い精度が求められるアプリケーションに関しては、ごく最近、もう1つ興味深いソリューションが開発されました。アナログ・デバイセズは、iCoupler®技術を採用し、帰還パスを完全に組み込んだフライバック・コントローラADP1071を市場に投入しました。

図2に、追加する受動部品が非常に少なくて済む回路を示します。ADP1071は、1次側コントローラの他に、変換効率を向上させるアクティブな2次側整流器を内蔵し、帰還パスを完全に統合することで非常に高速な帰還ループを実現しています。このため、出力電圧のレギュレーションが非常に高精度で、また何よりも、負荷過度応答が大きな場合でも極めて高速です。シリコン温度125°Cまで動作可能です。

図2. 非常に高精度のレギュレーションを実現するフィードバック・パス内蔵のADP1071帰還コントローラ

図2. 非常に高精度のレギュレーションを実現するフィードバック・パス内蔵のADP1071帰還コントローラ

ここで、最大絶縁電圧は、選択したトランスとスイッチング・レギュレータICの絶縁技術に依存します。このチップの最大絶縁電圧は5kVです。強化絶縁に関するVDE V 0884-10に準拠した分類が適用されます。

ガルバニック絶縁型電源を開発するために、興味深いソリューションが利用可能となっています。アプリケーション条件に応じて、帰還パスがないソリューションが適している場合もあれば、完全絶縁型の帰還パスを持つソリューションが適している場合もあります。フォトカプラに付随する85°Cという温度制限がなくなるため、非常に高い電力密度を持つ小型電源が設計可能となります。

Frederik Dostal

Frederik Dostal

Frederik Dostalは、ドイツのエアランゲン・ニュルンベルク大学でマイクロエレクトロニクスについて学びました。2001年にパワー・マネージメント事業の分野で働き始め、アリゾナ州フェニックスで4年間にわたってスイッチング電源を担当したほか、さまざまなアプリケーション分野の業務に携わってきました。2009年にADIに入社し、ミュンヘンのアナログ・デバイセズでパワー・マネージメントのフィールド・アプリケーション・エンジニアとして従事しています。