概要

設計リソース

設計/統合ファイル

  • Schematic
  • Bill of Materials
  • Gerber Files
  • PADS Files
  • Assembly Drawing
設計ファイルのダウンロード 1423 kB

評価用ボード

型番に"Z"が付いているものは、RoHS対応製品です。 本回路の評価には以下の評価用ボードが必要です。

  • ADL5801-EVALZ ($172.27) High IP3, 10 MHz to 6 GHz, Active Mixer
  • EVAL-ADF4351EB1Z ($224.70) Wideband Synthesizer with Integrated VCO
在庫確認と購入

デバイス・ドライバ

コンポーネントのデジタル・インターフェースとを介して通信するために使用されるCコードやFPGAコードなどのソフトウェアです。

ADF4350 IIO Wideband Synthesizer GitHub Linux Driver Source Code

機能と利点

  • 6GHzのアクティブ・ミキサー
  • グルーレスなLOインターフェース
  • 小さいフットプリント

回路機能とその特長

図1に示す回路は、周波数シンセサイザ搭載の低位相ノイズ・ローカル発振器(LO)へのダイレクト・インターフェースを備えた10MHz~6GHzの広帯域アクティブ・ミキサーです。

この回路は、周波数を高くまたは低く変換する必要のある広帯域アプリケーションにおいて魅力ある最適なソリューションを提供します。2個のチップを搭載した回路で、35MHz~4400MHzの広いLO周波数範囲をカバーします。LOインターフェースはシンプルでグルーレスな構造のため、バラン、マッチング・ネットワーク、およびLOバッファを必要としません。さらに、本ミキサーのバイアス調整機能では、アプリケーション条件または入力信号の大きさに基づいて、IP3、ノイズ指数、および電源電流を最適化することが可能です。

 


図1. VCOを内蔵したADF4351 PLL と ADL5801 広帯域アクティブ・ミキサー間の広帯域インターフェース
(簡易回路図:全接続の一部およびデカップリングは省略されています)


回路説明

ADF4351は、35MHz~4400MHzの周波数をカバーする広帯域なフラクショナルNおよびインテジャーNのフェーズ・ロック・ループ(PLL)です。本デバイスは基本周波数範囲が2200MHz~4400MHzの電圧制御発振器(VCO)を内蔵しています。マルチ・オクターブ動作は分周器バンクを用いることで実現できます。 

ADL5801は、10MHz~6000MHzのRF周波数をサポートするLOバッファ・アンプを内蔵した高直線性かつ二重平衡型のアクティブ・ミキサーです。本ミキサーには、入力直線性、ノイズ指数、およびDC動作電流を最適化するバイアス調整機能があります。図1に示す回路は、広帯域の上方または下方変換を必要とするアプリケーション用としてシンプルなLOインターフェースを備えています。本インターフェースは35MHz~4400MHzのRF周波数をカバーします。

ADF4351 PLLは差動LO出力インターフェースを備えており、ADL5801は差動LOの駆動用に最適化されています。差動インターフェースは偶数次高調波の同相ノイズ除去を実現します。

通常、ADF4351の出力ポートにはプルアップ・バイアス・インダクタを推奨します。この手段を使うと、供給される出力電力は大きくなりますが、デバイスの周波数範囲は制限されます。標準的な評価用ボードは7.5nHのプルアップ・インダクタを2個装着しており、500MHzを超える周波数に最適です。図1の回路では、出力インターフェースの周波数依存性を減らすために、バイアス・インダクタの代わりに50Ωのプルアップ低抗2個が使用されています。この変更の結果、出力側の供給電力は小さくなりますが、ADL5801はこの制限を許容できます。これは本デバイスが、−10dBmという低いLO駆動レベルで動作するよう規定されているからです。図2では、抵抗性および誘導性のプルアップ・ネットワーク付きデバイスによって供給された出力電力を比較しています。

 


図2. 抵抗性および誘導性のプルアップ・ネットワーク付きADF4351の
出力側における電力レベルの比較



抵抗性のプルアップ・ネットワークでは、公称差動インピーダンスは出力側で100Ωとなり、ADL5801のLOポートでの差動入力インピーダンスは50Ωとなります。本ミキサーのLOパスでのインピーダンス不整合によって回路の性能は低下しません。しかしながら、インピーダンス不整合の影響を最小限に抑えるために、デバイスを接続するパターンの長さをできる限り短くしておくことをお勧めします。

上述したPLLとミキサー間のインターフェースは、図3と図4に示すように広帯域性能が優れています。本回路は、3500MHz未満の周波数では25dBmを超え、また4400MHzまでは23dBmを超える入力IP3を維持します。本回路は動作周波数帯域全体にわたって、−0.7dBを超える変換利得と、12.2dB未満のノイズ指数を実現します。

 


図3. RF周波数 対 変換利得、入力IP2、入力IP3




図4. RF周波数 対 ノイズ指数



本回路が消費する電力は、動作周波数とミキサーのバイアス・ポイントによって決まります。ADF4351は分周器ネットワークの各セクションを組み合わせて作動させ、複数のオクターブにわたる出力周波数を発生させます。この組合わせでPLLの消費電力が決まります。たとえば、PLLが35MHzの周波数を出力するようプログラムされている場合、デバイスは全6個の分周器ネットワークを作動させて、132mAの電流を消費します。このポイントがデバイスにとって最悪の消費電力ポイントになります。同様に、IP3とノイズ指数の調整に使用できるADL5801のバイアス・レベルによって、ミキサーが消費する電力が決まります。VSETピンはデバイスのバイアス・レベルを調整するために使用されます。図5と図6は、ミキサーのDC電流、入力IP3、およびノイズ指数の性能をVSET電圧の関数として示しています。



図5. VSET 対 電力変換利得と電源電流




図6. VSET 対 入力IP3とノイズ指数

 


VSETレベルはDC動作電流と入力IP3に正比例しますが、ノイズ指数はVSET電圧に反比例します。本ミキサーは3.6VのVSET電圧で最高の直線性を実現します。ミキサーのバイアス・レベルが3.6Vで、また消費電力ポイントがPLLにとって最悪(すべての分周器がオン)の場合、回路はおよそ1.14Wを消費します。

バリエーション回路

上述のインターフェースは、ADF4350ADF4360の製品ファミリーなど、VCOと差動出力を内蔵した他のPLLに適用できます。135MHzから4.4GHzまで動作するADF4350はADF4351とピン互換で、やや高いノイズ指数を実現します。VCOを内蔵したインテジャーN PLLのADF4360ファミリーは、固定または狭い範囲のLO周波数を要するアプリケーションに最適です。これらのデバイスは、回路の消費電力を低減しますが、位相ノイズを大きくします。複数の出力ミキサーを要するアプリケーションでは、ADL5801の代わりにデュアル・チャンネル・アクティブ・ミキサーであるADL5802を使用できます。

回路の評価とテスト

上述の回路はADF4351の標準的な評価用ボード(EVAL-ADF4351EB1Z)とADL5801の標準的な評価用ボード(ADL5801-EVALZ)を使って実現されています。ADF4351の評価用ボード・キットには、基準水晶発振器、制御ソフトウェア、およびデバイスを動作させるために必要なプログラミング・インターフェース・ケーブルが入っています。制御ソフトウェアは、出力周波数、電力レベル、基準周波数の設定オプションや、その他さまざまな機能を提供します。

表1と表2では、このアプリケーション回路を実現するために評価用ボード上で変更された部品を一覧表示しています。

 

表1. EVAL-ADF4351EB1Z上での変更部品

 Placeholder  Default Value  New Value
 L2, L3  7.5 nH  50 Ω
 L1, L4  1.9 nH  0 Ω


表2. ADL5801-EVALZ上での変更部品

 Placeholder  Default Value  New Value
 T2/T4/T7  Mini-Circuits TCM1-1-13M+  0 Ω
 C4, C5  100 pF  1 nF



テスト

図8は、テスト・セットアップのブロック図を示しています。PLLの出力側とミキサーのLOポートは、評価用同軸貫通コネクタを使って接続しました。図7は、2個接続された評価用ボードの写真を示しています。次に示すのは回路を評価するために使用する装置の一覧です。



必要な装置


  • USBポート付きPCおよびWindows® XP、Windows Vista(32ビット)またはWindows® 7(32ビット)
  • ADF4351評価用ボード(EVAL-ADF4351EB1Z)
  • ADL5801評価用ボード(ADL5801-EVALZ)
  • RF信号発生器(Rohde & Schwarz社のSMT06または同等品)
  • スペクトル・アナライザ(Rohde & Schwarz社のFSEA30または同等品)
  • 電源: Agilent社の E3631または同等品
    EVAL-ADF4351EB1Z: +5.5 V
    ADL5801-EVALZ: +5 V (VPOS), +3.6V (VSET)



図7. ADF4351をADL5801にインターフェース接続するために使用するボード・セットアップ



図 9は、ADF4351を駆動するために使用するソフトウェア設定のサンプル画面です。ADF4351のセットアップに関する詳細は、UG-435ユーザ・ガイド「ADF4351フラクショナルN PLL周波数シンセサイザ用評価用ボード」(英語)およびUG-476ユーザ・ガイド「PLLソフトウェア・インストール・ガイド」を参照してください。


ADL5801には、外部電源を使って3.6VのVSET電圧でバイアスをかけました。この外部のバイアス接続は、抵抗分圧ネットワークを使って電源ピン経由のオンボード接続に置き換えできます。プレースホルダーR10を実装してR7とR8をオープンにしておくと、この抵抗分圧ネットワークが有効になります。表3では、望ましいミキサーのバイアス・レベルを実現するために必要なR10の値を定めています。さらに詳しい情報については、ADL5801データシートの「RF電圧電流(VI)コンバータ」のセクションを参照してください。

表3. 望ましいミキサーのバイアス・レベルを実現する
R10の推奨値(IPOSは対応するADL5801の電源電流)


 R10 (Ω)  VSET (V)  IPOS (mA)
 226  4.5  160
 562  4.01  146
 568  4  145
 659  3.9  142
 665  3.89  142
 694  3.85  142
 760  3.8  139
 768  3.79  139
 1000  3.6  133
 1100  3.53  131
 1150  3.5  130
 1200  3.47  129
 1300  3.4  127
 1400  3.35  126
 1500  3.3  124
 1600  3.26  122
 1700  3.21  121
 1800  3.17  120
 1900  3.14  119
 2000  3.1  118
 2300  3  114
 5900  2.5  98
 Open  2.03  82


回路の能力として35MHz~4400MHzのRF周波数をサポートすることを実証するために、IF周波数が153MHzのハイサイドLO構成でデバイスを動作させました。

 


図8. 回路評価用テスト・セットアップのブロック図




図9. ADF4351を駆動するために使用したソフトウェア設定の画面