概要

設計リソース

設計/統合ファイル

  • Schematic
  • Bill of Materials
  • Gerber Files
  • PADS Files
  • Assembly Drawing
設計ファイルのダウンロード 3266 kB

評価用ボード

型番に"Z"が付いているものは、RoHS対応製品です。 本回路の評価には以下の評価用ボードが必要です。

  • EVAL-CFTL-6V-PWRZ ($20.01) Universal Wall Power Supply
  • EVAL-CN0269-SDPZ ($117.70) 18-Bit, 1.33 MSPS, 16-Channel Data Acquisition System
  • EVAL-SDP-CB1Z ($116.52) Eval Control Board
在庫確認と購入

デバイス・ドライバ

コンポーネントのデジタル・インターフェースとを介して通信するために使用されるCコードやFPGAコードなどのソフトウェアです。

PulSAR ADC GitHub Linux Driver Source Code

機能と利点

  • 18ビット, 16チャンネルデータ・アクイジション
  • 16チャンネルのシングルエンド入力または、8チャンネルの差動入力
  • 1.33MSPSのサンプリング・レート
  • 250kHz のスイッチング・レート

回路機能とその特長

図1に示す回路は、高速チャンネル間の切替え用に最適化された高性能の工業用信号レベル・マルチチャンネル・データ・アクイジション回路です。この回路は、最大18ビットの分解能で16チャンネルのシングルエンド入力または8チャンネルの差動入力を処理できます。

1つのチャンネルは、18ビットの分解能で最大1.33MSPSのサンプリングを行うことができます。250kHzのスイッチング・レートですべての入力チャンネル間の切替えを行う場合は、16ビットの性能が得られます。

シンプルな4ビットのアップダウン・バイナリ・カウンタと組み合わされたこの信号処理回路は、FPGAやCPLDあるいは高速プロセッサなしでチャンネル間の切替えを実現する、シンプルでコスト効果の高い方法を提供します。カウンタは、複数チャンネルをシーケンシャルにサンプリングするためにカウントアップまたはカウントダウンするようにプログラムしたり、1つのチャンネルをサンプリングするために固定バイナリ・ワードをロードしたりすることができます。

この回路は、プロセス制御や電源ライン監視を含む数多くの工業用アプリケーションのマルチチャンネル・データ・アクイジション・カード用の最適なソリューションです。

Multichannel Data Acquisition Circuit
図 1. マルチチャンネル・データ・アクイジション回路(簡略回路図:全接続の一部およびデカップリングは省略されています)

回路説明

図1に示す回路は、マルチプレクサ、アンプ、ADCで構成された、標準的なマルチチャンネル非同期データ・アクイジション・シグナル・チェーンです。

このアーキテクチャでは1つのADCを使用して複数チャンネルの高速サンプリングを行うことができ、低コストで優れたチャンネル間マッチングが可能です。

マルチプレクサは後段のアンプとADCにフルスケールのステップ電圧を出力することができるので、チャンネル間の切替え速度は、シグナル・チェーン内のマルチプレクサの後に続くさまざまなコンポーネントのセトリング・タイムによって制限されます。この回路コンポーネントは、セトリング・タイムを最小限に抑え、チャンネル切替え速度を最大限まで高めるように選ばれたものです。


部品の選択

ADG5208マルチプレクサは、3ビット・バイナリ・アドレス・ラインの指定に従い、8つの入力のうちの1つを共通出力に接続します。ADG5236は、2つの独立した選択式単極/双投(SPDT)スイッチを内蔵しています。2個のADG5208スイッチを1個のADG5236と結合することで、4ビットのデジタル制御信号を使用して、16個のシングルエンド・チャンネルまたは8個の真の差動チャンネルを残りのシグナル・チェーンに接続することができます。

4ビットのデジタル信号は4ビットのアップダウン・カウンタによって生成されますが、このカウンタは、18ビット、1.33MSPSのAD7984 ADCへの変換(CNV)入力に使われる信号と同じ信号によってトリガされます。

AD8065 JFET入力オペアンプは、帯域幅が145MHzで、優れたセトリング・タイム性能と極めて高い入力インピーダンスを提供する、ユニティゲイン・バッファとして構成されています。AD8065は、AD8475ファンネル・アンプの減衰段を駆動するための極めて低インピーダンスの出力も供給します。

完全差動シグナル・チェーンの利点は、同相ノイズ除去に優れていることと、2次歪み成分が減少することです。最新の低電圧差動入力ADCによって±10Vの工業用レベル信号を処理するには、減衰およびレベル・シフトのための段が必要です。

高精度な利得設定抵抗を内蔵した完全差動型のAD8475減衰(ファンネル)アンプは、入力過電圧保護機能とともに、高精度の減衰機能(0.4×または0.8×)、同相レベル・シフト機能、シングルエンド/差動変換機能を備えています。セトリング・タイムが短く(0.001%で50ns)低ノイズ性能(10nV/√Hz)を実現するAD8475は、サンプリング・レート4MSPSまでの18ビット差動入力ADCの駆動に最適です。

この回路に使われているAD7984 18ビットPulSAR® ADCは、1つのチャンネルをサンプリングする場合、1.33MSPSで18ビットの分解能を実現します。しかし、シーケンシャルなチャンネル間切替えを行う場合は、シグナル・チェーン内のさまざまなコンポーネントのセトリング・タイムによって全体的な精度が制限されます。たとえば、250kHzのスイッチング・レートでチャンネル間の切替えを行う場合は、16ビットの性能が得られます。

回路のタイミング解析とノイズ解析の詳細はこちら>> CN0269 PDF


テスト結果のヒストグラム

図16は、16のシングルエンド・チャンネルをまとめて短絡し、それらをPCBのGNDに接続することによって得た10,000サンプルのヒストグラムです。入力バッファを含むピークtoピーク・ノイズは約12LSBです。

DC Histogram at 0 V Input, 1 MSPS Sampling Rate, 10,000 Samples
図16. 0V入力、1MSPSサンプリング・レート、10,000サンプルでのDCヒストグラム

 

ACテスト結果

AC性能は、AD7984を使用して、タイプ1051 B&K正弦波ジェネレータが供給する2.5Vp-p、10.675kHzの入力正弦波を300kSPSでサンプリングしながら、システム・レベルでテストしました。回路はチャンネル4で連続的にサンプリングを行い、入力バッファの影響は含まれていません。FFTはSNR = 91.33 dBFSを示しています。

FFT with a Kaiser Window
図17. カイザー窓(パラメータ = 20)を使用したFFT。2.5Vp-pの10.675kHz入力、チャンネル4で300kSPSのサンプリング・レート、入力バッファなし

 

スイッチング速度とセトリング・タイムの テスト結果

以下の図にセトリング性能を示します。また、実験室でのテスト・セットアップを図18に示します。

Switching Speed and Settling Time Lab Test Setup
図18. 実験室におけるスイッチング速度とセトリング・タイムのテスト・セットアップ

 

CN-0269評価ボードは16チャンネル・シングル入力モードに設定し、8つの奇数チャンネル同士と、8つの偶数チャンネル同士を短絡させました。 また、ノイズとインピーダンスを低く抑えるために、バッテリ・スタックを使用してさまざまなDC入力電圧を発生させています。

奇数チャンネルと偶数チャンネルは、それぞれ異なる電圧に接続しました。LabVIEWTMを用いてEVAL-SDP-CB1Zをチャンネルごとに制御し、入力チャンネル間の切替えを連続的に行います。スイッチング・レートは1kHzきざみで100Hzから1MHzまで変化させ、それぞれのスイッチング・レートで10個のサンプルを採取して結果を平均しました。また、得られた平均値のうちで最も低いスイッチング・レートの値を基準点として使用しています。異なるそれぞれのスイッチング・レートにおける誤差は、10サンプル値と基準値の差を取ることによって計算しました。このテスト結果を図19から図23に示します。

これらの図で2LSBの誤差は17ビットのセトリングに相当し、4LSBの誤差は16ビットのセトリングに相当します。

Errors vs. Switching Rate Without Front Buffer at 16-Channel Single-Ended, 14 V Step
図19. フロント・バッファなしでのスイッチングレート対誤差、16チャンネル、シングルエンド、14Vステップ

 

Errors vs. Switching Rate Without Input Buffer, 8-Channel Differential Mode, 14 V Step
図20. 入力バッファなしでのスイッチングレート対誤差、8チャンネル、差動モード、14Vステップ

 

Errors vs. Switching Rate with Input Buffer, 16-Channel Single-Ended Mode, 14 V Step
図21. 入力バッファありでのスイッチングレート対誤差、16チャンネル、シングルエンド・モード、14Vステップ

 

Errors vs. Switching Rate with Front Buffer, 8-Channel Differential Mode, 14 V Step
図22. フロント・バッファありでのスイッチングレート対誤差、8チャンネル、差動モード、14Vステップ

 

Errors vs. Switching Rate with Input Buffer, 8-Channel Differential Mode, 2 V Step
図23. 入力バッファありでのスイッチングレート対誤差、8チャンネル、差動モード、2Vステップ

 

以上の図から、1MHz未満のスイッチング・レートでは、入力バッファのある回路の方がフロント・バッファのない回路よりもセトリング性能に優れていることがわかります。

図21、図22、図23は、入力バッファを接続した回路が、250kHzまでのチャンネル間スイッチング・レートで16ビットにセトリングすることを示しています。

バリエーション回路

18ビットのAD7984は、10ピンのMSOPパッケージまたは10ピンのQFN(LFCSP)パッケージを選択できます。その他にも、同じパッケージで、14ビット、16ビット、18ビットの各分解能とさまざまなサンプリング・レートのPulSAR ADCを選ぶことができます。

バッファ・アンプには、この他にもAD8021を使用できます。プログラマブル・ゲインが必要な場合はAD8250、AD8251、AD8253を使用できます。0.001%へのセトリング・タイムは685nsです。また、より低い容量のものが必要な場合は、ADG12xxシリーズのマルチプレクサを使用できます。

回路の評価とテスト

この回路は、EVAL-CN0269-SDPZ回路ボードとEVAL-SDP-CB1Z SDP-B システム・デモンストレーション・プラットフォーム・コントローラ・ボードを使用しています。これら2つのボードは120ピンの嵌合コネクタを備えており、回路の迅速なセットアップと性能評価が可能です。EVAL-CN0269-SDPZボードにはこの回路ノートに示す評価対象回路が含まれており、SDP-Bコントローラ・ボードはCN-0269評価ソフトウェアとともに使用して、EVAL-CN0269-SDPZ回路ボードからのデータを取り込みます。


必要な装置

以下の装置が必要です。

  • USBポート付き、Windows® XP(32ビット)、Windows Vista®、またはWindows 7搭載のPC
  • EVAL-CN0269-SDPZ回路ボード
  • EVAL-SDP-CB1Z SDP-Bコントローラ・ボード
  • CN-0269 SDP評価ソフトウェア
  • 6V DC(500mA)、±12V(300mA)の電源
  • DC~1MHzの周波数で±10V出力を生成する低歪みのシグナル・ジェネレータ


評価開始にあたって

CN-0269評価ソフトウェアのCDをPCのCDドライブにセットして、評価ソフトウェアをインストールします。


機能ブロック図

回路ブロック図については図1を、詳細な回路図が必要な場合はEVAL-CN0269-SDPZ-SCH-RevX.pdfを参照してください。このファイルはCN-0269 Design Support Package に含まれています。テスト・セットアップの機能ブロック図を図24に示します。

Test Setup Block Diagram
図24. テスト・セットアップのブロック図

 

セットアップ

EVAL-CN0269-SDPZ回路ボードの120ピン・コネクタをEVAL-SDP-CB1Zコントローラ・ボード(SDP-B)のCON Aコネクタに接続します。120ピン・コネクタの端部にある穴を利用し、ナイロン製ハードウェアを使って2つのボードをしっかり固定します。次に、電源をオフにした状態で、6Vおよび±12VのDC電源をCN1とCN2のピンに接続します。これらのピンは、ボード上に+6V、±12V、GNDとマークされています。6VのACアダプタを使用できる場合は、ボード上のバレル・コネクタにアダプタを接続して6V電源の代わりに使用できます。さらに、SDP-Bボードに付属しているUSBケーブルをPCのUSBポートに接続します。この時点では、まだUSBケーブルをSDP-Bボード上のMiniUSBコネクタに接続しないでください。6V電源と±12V電源を同時にオンにし、それからUSBケーブルをMini-USBコネクタに接続します。


テスト

6V電源と±12V電源がオンの状態で、評価ソフトウェアを起動します。USB通信が確立したら、SDP-Bボードを使用してEVAL-CN0269-SDPZボードとの間のデータの送受信およびキャプチャが可能で、時間ドメインと周波数ドメインでデータ解析を行って回路全体の性能を評価することができます。

図25はEVAL-CN0269-SDPZ評価ボードです。SDP-Bボードについての詳細情報は、SDP-B User Guideに記載されています。

テスト・セットアップと校正についての詳細、およびデータ・キャプチャ用評価ソフトウェアの使用方法については、CN-0269 Software User Guideに記載されています。

EVAL-CN0269-SDPZ Evaluation Board
図25. EVAL-CN0269-SDPZ評価ボード

 

プロトタイプ開発における接続性

EVAL-CN0269-SDPZ評価ボードは、Black-Fin DSPをベースにしたEVAL-SDP-CB1Z SDP-BボードによりSPORTポートを通じて評価されるように設計されていますが、AD7984のシリアル・ポートとのインターフェースには、14ピンのPMODコネクタを通じて任意のマイクロプロセッサを使用できます。ただし、EVAL-CN0269-SDPZ評価ボードに他のコントローラを使用するには、サードパーティがソフトウェアを開発する必要があります。

アルテラ社とザイリンクス社のFPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)については、これらとインターフェースを取るために使用できる既存のインターポーザ・ボードがあります。アルテラのBeMicro SDKボードは、Nios Driverを使用してBeMicro SDK/SDPインターポーザとともに使用できます。FMCコネクタを備えたザイリンクスの評価ボードは、すべてFMC-SDPインターポーザ・ボードとともに使用できます。