はじめに
石油精製から自動販売機までの広範な産業アプリケーションにおいて、複雑または単純なプロセスを制御するために温度、圧力、流量などを高精度で測定することが求められています。たとえば食品産業においては、ビンや缶に中身を注入する際に流量を正確に制御することは利益に直接影響するものであり、測定誤差を最小限に抑える必要があります。同様に、石油産業において、タンクとタンカーの間で原油や精製油を移送する場合などの取引用計量アプリケーションでも高精度の測定が求められます。本稿では、液体の流量測定では最も高精度な電磁流量計を中心に流量計技術の概要について説明します。
図1に、流量計とアクチュエータを使用して液体の流量を制御する基本的なプロセス制御システムを示します。最も低いレベルでは、温度、流量、ガス濃度などのプロセス変数を入力モジュールによって監視しますが、通常、入力モジュールはプログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)に含まれています。情報は、比例 -積分 -微分(PID)ループによってローカルで処理されます。PLCはこの情報を使って出力を設定し、プロセスを定常状態に制御します。プロセス・データ、診断情報、その他の情報を上位の操作レベルに送り、コマンド、パラメータ、校正データを下位のセンサーやアクチュエータに送ることができます。
流量の測定には、差圧式、コリオリ式、超音波式、電磁式などさまざまな技術が使われています。差圧式は最も一般的ですが、システム内の圧力の変化に影響されやすい流量計です。コリオリ式流量計は最も精度が高く、最大 0.1%の精度を実現できますが、サイズが大きく高価です。超音波式流量計はサイズもコストも手頃ですが、精度に限界があります(標準 0.5%)。超音波式流量計は非接触式の測定技術であるため、信頼性が高く、検出素子の経年劣化がわずかですが、液体が汚濁していたり汚染していたりすると使用できません。
電磁式流量計でも非接触式の検出技術を用います。これらの流量計は伝導率10S/m~10-6S/mの酸性、アルカリ性、イオン化液体に使用でき、清浄な液体や汚染された液体、腐食性や浸食性の液体、粘性の高い液体やスラリーにも使用できますが、炭化水素やガスの流量測定には適していません。これらの流量計は、小流量や大流量でも比較的高いシステム精度(0.2%)を発揮し、測定可能な最小直径は0.125インチ、最大流量は約10立方フィートで、低速時でも高い再現性があります。また、上下どちらの方向の流れでも測定できます。一般的な流量計技術の比較を表1に示します。
表1. 産業用流量計技術電磁式 |
差圧式 |
超音波式 |
コリオリ式 |
|
測定原理 |
ファラデーの電磁誘導の法則 |
差圧:容量またはブリッジ・ベース |
トランスデューサ/センサーの相互相関、時間-デジタル変換、ドップラ |
微分位相 |
平均精度 |
0.2%~1% |
0.5%~2% |
0.3%~2% |
0.1% |
平均コスト |
$300~$1000 |
$300~$1000 |
$300~$1000 |
$3000~$10000 |
長所 |
可動部がない 腐食性液体に対応 双方向流量測定 |
可動部がない 汎用性が高く、液体/気体に使用できる |
可動部がない 汎用性が高い、設置後に変更が可能 |
汎用性が高く、ほぼあらゆる液体/気体に使用できる 圧力と温度に関係なく使用できる |
電磁式流量計はファラデーの電磁誘導の法則、すなわち、磁界を通る導線に電圧が生じるという法則を利用します。流量計の場合は液体が導体の役割を果たし、磁界は液体が通る管の外側にあるコイルを通電して生成します。生成される電圧の大きさは、図2に示すように導体の速度とタイプ、管の直径、磁界の強さに正比例します。
ファラデーの法則は数学的には E = kBLVと表されます。
ここで、Vは液体の導体の速度、Bは磁界の強さ、Lはピックアップ電極の間隔、Eは電極間の測定電圧、kは定数です。B、L、kは固定することも調整することも可能であり、式を簡略化してE∝Vとすることができます。
ソレノイドの界磁コイルを通過する電流は、制御された磁界を生成します。励磁波形は電磁式流量計において重要ですが、これには低周波数の矩形波、電源ライン周波数の正弦波、二周波、プログラマブル・パルス幅などがあります。さまざまなセンサー・コイル励磁用波形を表2に示します。
表2. センサーの励磁タイプ、波形、特徴励磁タイプ |
波形 |
特徴 |
直流励磁 |
1832年に登場。原子力産業の液状金属の流量測定に利用。極性はないが、渦電流がある。 |
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AC正弦波 |
1920年に登場。 1950年代に商業化。分極電圧、電磁波障害、ゼロ点ドリフトが小さい。 |
|
低周波DC矩形波 |
1975年に登場。周波数は電源ライン周波数の 1 ⁄16~1 ⁄2。ゼロ点ドリフトが小さい、スラリー・ノイズの耐性に劣る。 |
|
トライステート低周波DC |
1978年に登場。無励磁電流時にゼロ点を校正。低消費電力。デューティ・サイクルは矩形波の 1 ⁄2。 |
|
二周波 |
高い周波数で 1 ⁄8電源ライン周波数を変調。スラリー・ノイズを最小限に抑制。ゼロ点ドリフトが小さい。高速応答。操作が複雑。 |
|
プログラマブル・パルス幅 |
マイクロプロセッサを使用して励磁パルスの幅と周波数を制御。スラリー・ノイズの耐性が高い。 |
多くのアプリケーションで低周波の矩形波が使用され、電源周波数(50Hz/60Hz)の 1/25、1/16、1/10、1/8、1/4、1/2でセンサー・コイルを励磁します。低周波励磁では、一定振幅の正弦波交流や非正弦波交流を使用して、ゼロ・ドリフト値を小さくします。電流の方向は、トランジスタまたは MOSFETの Hブリッジで切り替えます。 SW1とSW4がオンのときはSW2と SW3がオフになり(図 3a)、センサー・コイルが正相で励磁されて、定電流が EXC+へ入って EXC-から出ていきます。 SW1と SW4がオフのときは SW2と SW3がオンになり(図 3b)、センサー・コイルが負相で励磁されて、定電流が EXC-へ入ってEXC+から出ていきます。
電磁流量計の励磁電流はその他の流量測定技術に比べて大きく、大部分のライン電源使用流量計で 125mA~ 250mAです。大直径パイプでは最大 500mAないし 1Aの電流が使われることがあります。高精度の 250mAセンサー・コイル励磁電流を生成する回路を図4に示します。ADR3412の 8ppm/°Cの電圧リファレンスは、1.2Vの設定点で電流をバイアスします。
リファレンス、アンプ、トランジスタ回路による従来からの電流励磁方法は、低ノイズで高性能ですが、電圧が大きく変化すると電流も線形に大きく減少し、大きな出力損失が発生します。したがってヒートシンクが必要であり、そのためにシステムのコストと面積が増加します。一般的には、スイッチモード電源を使用した定電流シンクがセンサー・コイルの励磁に広く利用されています。図5は、定電流を出力するように構成された ADP2441同期降圧 DC/DCレギュレータです。この方法は標準電流シンクの損失をなくして、システム性能を大幅に改善します。
高出力システムでは、電流検出診断機能を使用して負荷に対する電流変化、電源、時間、および温度を監視し、センサー・コイルの断線も検出することができます。また、 AD8219電流シャント・アンプを使用して、80Vの同相範囲において60V/Vのゲインと0.3%の精度で励磁電流を監視することができます。AD7400A絶縁型シグマ・デルタ・モジュレータとAD8646レールtoレール・オペアンプを使用した絶縁型電流アンプを図6に示します。AD7400の出力は4次ローパス・フィルタを通じて処理され、検出された出力を再構成します。
電極、あるいは検出素子も考慮すべき重要な要素です。主な測定方法は容量性の方式で、チューブの外側に電極を取り付ける方法と、電極をチューブ内に挿入して電極面を液体と同じ高さにする方法の2種類があり、後者の方が一般的です。
材質には多くの選択肢があり、温度ドリフト、腐食率、電極電位を含め、それぞれが固有の特性を備えています。低腐食率(1年あたり0.02インチ未満)の高温材料(100°C超)を使用するのが最良の選択です。いくつかの代表的なセンサー材料とその標準電位を表3に示します。
表3. センサー材料と電位材料 |
標準単位 (V) |
材料 | 標準単位 (V) |
マグネシウム |
–2.34 |
ニッケル | –0.25 |
ベリリウム | –1.70 |
鉛 | –0.126 |
アルミニウム | –1.67 |
銅 | +0.345 |
マンガン | –1.05 |
銀 | +0.800 |
亜鉛 | –0.762 |
白金 | +1.2 |
クロム | +0.71 |
金 | +1.42 |
白金は高品質の電極材料の好例です。腐食率は年0.002インチ未満で、最大120°Cの環境でも動作します。しかし、白金の1.2Vという電極電位は比較的高い値であり、除去が必要な同相電圧(CMV)となってセンサー出力に現れます。ステンレス鋼電極のCMVは数百mVにすぎず、簡単に同相電圧を除去できます。非腐食性の流体にはステンレス鋼材料が広く使われています。
2つの電極に同じ材料を使い、その表面状態が同じであれば、両電極の電位は等しくなります。しかし実際には、流体と電極の間の物理的摩擦や電気化学的効果のために、分極電圧が低周波 AC信号のようにゆっくりと変動します。何らかの不整合があれば、それも差動モード・ノイズとして現れます。バイアス電圧が電極電位と一緒になると、第1段のアンプ入力に数百mVから1V程度の同相電圧が生じるため、適切な同相除去能力をもつ電子回路が必要です。図7に、直径50mmの送水管にSUS316製の電極を取り付けた差動システム(バイアス 0.28VDC、ノイズ0.1VP-P)の単電極電位を示します。
標準的な流量は0.01m/s~15m/sの範囲で、ダイナミック・レンジにすると1500:1です。標準的なライン電源用電磁流量計の感度は150μV/(m/s)~200μV/(m/s)です。したがって、150μV/ (m/s)のセンサーの出力は、0.01m/sの双方向流で3μVP-Pになります。S/N比が2:1の場合、合計入力換算ノイズは1.5μVP-Pを超えないはずです。DCから低周波の範囲での流量変化はごくゆっくりとしたものなので、0.1Hz~10Hzのノイズ帯域幅は非常に重要です。加えて、センサーの出力抵抗が非常に大きくなります。これらの条件を満たすには、フロントエンドのアンプが低ノイズで高い同相除去能力をもち、なおかつ入力バイアス電流が小さくなければなりません。
センサーの同相出力電圧は、フロントエンド・アンプの同相除去機能によって減衰されます。CMRが120dBの場合、0.28VDCのバイアスは0.28μVDCまで減衰されます。このオフセットは、信号のACカップリングによって校正あるいは除去できます。AC成分はアンプ出力にノイズとして現れ、最小検出可能レベルを低下させます。CMRが120dBの場合は、0.1VP-Pが0.1μVP-Pまで低下します。
センサーの出力抵抗は、電極のタイプと流体の導電率に応じて数十 Ωから107Ωまで変化します。損失を最小にするには、フロントエンド・アンプの入力インピーダンスをセンサーの出力抵抗よりはるかに大きくする必要があります。JFETまたはCMOSの入力段は入力抵抗が大きいものでなければなりません。フロントエンド・アンプのバイアス電流とオフセット電流を小さくすることは、電流ノイズと同相電圧を最小限に抑えるうえで重要です。いくつかの推奨フロントエンド・アンプの仕様を表4に示します。
表4. 代表的な計装アンプの仕様モデル | ゲイン |
ZIN |
CMR (最少dB) DC~1kHz、 G = 10 |
1/f ノイズ (µVP-P) |
IBIAS (pA) |
電源(V) |
AD620 |
1~10,000 |
109 Ω || 2 pF |
100 | 0.55 | 500 | ±2.3~±18 |
AD8220 |
1~1000 |
1013 Ω || 5 pF |
100 | 0.94 | 10 | ±2.25~±18 |
AD8221 |
1~1000 |
1011 Ω || 2 pF |
110 | 0.5 | 200 | ±2.3~±18 |
AD8228 |
10, 100 |
1011 Ω || 2 pF |
100 | 0.5 | 400 | ±2.3~±18 |
AD8421 |
1~10,000 |
3×1010 Ω || 3 pF |
114 | 0.5 | 100 | ±2.5~±18 |
AD8228高精度計装アンプを使用した流量計を図8に示します。フロントエンド・アンプは、小さいセンサー信号を増幅しながら同相電圧を除去します。その整合済みのレイアウトとレーザー・トリム抵抗によって、ゲイン誤差、ゲイン・ドリフト、同相除去の仕様を保証することができます。リーク電流を最小限にするために、入力電圧をサンプリングして、入力信号経路周辺のマスクされていない配線にバッファ電圧を接続することによって、高インピーダンスのセンサー出力を保護することができます。
第1段のゲインは通常10~20で、これより高い値にはしません。これは、下流側の各段を飽和させないようにDCオフセットを小さい値に維持しながら、低レベルの信号をポスト処理のために増幅しなければならないためです。
入力段の後には、DC成分を除去するアクティブ・バンドパス・フィルタを接続して、下流側ADCのダイナミック・レンジを十分使用できるようにゲインを設定します。センサー励磁周波数の範囲は電源ライン周波数の1.25~1.2で、これによってバンドパスのカットオフ周波数が設定されます。流量計に使われるバンドパス・フィルタを図9に示します。
第1段はACカップリングされたユニティ・ゲインのハイパス・フィルタで、カットオフ周波数は0.16Hzです。伝達関数は次のとおりです。
以降の段とこの第1段で完全なバンドパス・フィルタが構成されます。その仕様は低周波カットオフ0.37Hz、高周波カットオフ37Hz、ピーク値は3.6Hzで35.5dB、ロールオフ-40dB/ディケード、等価ノイズ帯域幅49Hzです。この段に選択したアンプによってシステム・ノイズが増大しないようにしなければなりません。
1/fノイズの仕様値が0.2μVP-P、広帯域ノイズが11nV/√HzのAD8622低消費電力高精度オペアンプを使用した場合、フィルタ入力換算ノイズは15nVrmsです。アンプ入力に換算した場合、ノイズは1.5nVrmsで、流量0.01m/s時の±1.5μVP-Pのノイズと比較すると無視できるレベルです。同相電圧、フロントエンド・アンプ、バンドパス・フィルタによるノイズ源を加えると、AD8228の入力換算二乗和平方根ノイズは0.09μVrms、あるいは約0.6μVP-Pです。
フィルタ出力の振幅には流量が、位相には流れ方向が含まれています。バイポーラ信号は、図10に示すように、アナログ・スイッチ、ホールド・コンデンサ、差動アンプによって復調されます。アナログ・スイッチはオン抵抗が小さく、中程度のスイッチング速度のものにする必要があります。ADG5412は高電圧の耐ラッチアップ性をもつクワッドSPSTスイッチで、代表的RON値が9.8Ω、RON平坦性が1.2Ωで、ゲイン誤差や信号の歪みがほとんど生じません。
低消費電力低コストのAD8276ユニティ・ゲイン差動アンプは、5Vフルスケールの入力範囲でADCに接続できます。したがって、バイポーラ出力をユニポーラ範囲にレベルシフトする2.5VリファレンスにREFピンを接続します。2.5Vを超える出力は順方向の流れ、2.5V未満は逆方向の流れを表します。
ADCの選択
システム誤差を見積もる場合、誤差の大部分は一般にセンサーによるもので、これが合計誤差の80%~90%を占めます。電磁流量計の国際標準では、25°C、一定流量時における測定時の再現性誤差を最大システム偏差の1.3以下にすることが定められています。合計誤差が0.2%の場合は、再現性誤差を0.06%以下にする必要があります。センサー誤差が合計誤差の90%を占める場合は、トランスミッタ回路の最大誤差を60ppmにしなければなりません。
誤差を最小にするには、ADCサンプルを平均化します。たとえば、5個のサンプルごとに最大値と最小値を破棄し、残りの3個を平均します。ADCは応答が安定したインターバル時に5個のサンプルを取り込む必要があり、これは励磁区間の最後の10%にあたります。このためには、ADCのサンプリング・レートをセンサー励磁周波数の少なくとも50倍にしなければなりません。最も速い30Hzの励磁に対応するには、最小サンプリング・レートを1500Hzにする必要があります。サンプリング速度が高ければそれだけ多くのデータ・サンプルを平均でき、ノイズを抑えて高い精度を実現することができます。
ADCに関するこれらの条件は、中間的な速度域で優れたノイズ性能を実現するΣ-∆技術に最も適しています。AD7192超低ノイズΣ-∆ADCは、4800Hzの出力データレートで16.5ビットのノイズフリー分解能があり、電磁流量計に最適です。表5に、そのゲインおよび出力データレートに対する有効分解能を示します。
表5. AD7192のゲインおよび出力データ・レートに対する有効分解能フィルタ・ワード (10進) | 出力データレート(Hz) |
セトリング時間 (ms) |
ゲイン11 |
ゲイン81 |
ゲイン161 |
ゲイン321 |
ゲイン641 |
ゲイン1281 |
1023 | 4.7 | 852.5 | 24 (22) | 24 (22) | 24 (21.5) | 24 (21.5) | 23.5 (21) | 22.5 (20) |
640 | 7.5 | 533 | 24 (22) | 24 (21.5) | 24 (21.5) | 23.5 (21) | 23 (20.5) | 22.5 (20) |
480 | 10 | 400 | 24 (21.5) | 23.5 (21) | 23.5 (21) | 23.5 (21) | 23 (20.5) | 22 (19.5) |
96 | 50 | 80 | 22 (19.5) | 22 (19.5) | 22 (19.5) |
22 (19.5) | 21.5 (19) | 21.5 (18.5) |
80 | 60 | 66.7 | 22 (19.5) | 22 (19.5) | 22 (19.5) | 21.5 (19) | 21.5 (19) | 20.5 (18) |
40 | 120 | 33.3 | 22 (19.5) | 21.5 (19) | 21.5 (19) | 21.5 (19) | 21 (18.5) | 20.5 (18) |
32 | 150 | 26.7 | 21.5 (19) |
21.5 (19) |
21.5 (19) |
21 (18.5) |
21 (18.5) |
20 (17.5) |
16 | 300 | 13.3 | 21.5 (19) |
21.5 (19) |
21 (18.5) |
21 (18.5) |
20.5 (18) |
19.5 (17) |
5 | 960 | 4.17 | 20.5 (18) |
20.5 (18) |
20.5 (18) |
20 (17.5) |
19.5 (17) | 19 (16.5) |
2 | 2400 | 1.67 | 20 (17.5) |
20 (17.5) |
19.5 (17) |
19.5 (17) |
19 (16.5) |
18 (15.5) |
1 | 4800 | 0.83 | 19 (16.5) |
19 (16.5) |
19 (16.5) |
18.5 (16) |
18.5 (16) |
17.5 (15) |
1カッコ内は出力ピークtoピーク(p-p)分解能。 |
復調器出力とADR3425マイクロパワー高精度2.5Vリファレンスを含むADC回路の一部を、図11に示します。
飲料の容器充填といった一部のアプリケーションでは、もっと高い周波数のセンサー励磁が必要です。150Hzでセンサー・コイルを励磁すれば、充填プロセスは約1秒で完了します。ノイズに関する条件は変わりませんが、もっと高速のADCが必要になります。AD7176-2 ΣΔ ADCは、セトリング時間20μs、250kSPSでのノイズフリー分解能17ビット、50Hzおよび60Hz トーンの除去比は85dBです。
アナログ・シグナル・チェーンの試験
ここで述べるシステムブロック図は、校正ラボでの電磁流量計の励磁と試験に使用したものです。高CMRR入力段、バンドパス・フィルタ、ゲイン段を含むフロントエンド全体も、実際のフロー・システムで試験しました。2枚の試験ボードが、1m/s~5m/sの範囲で±0.2%の精度と0.055%の再現性を実現しました。これは各種工業規格に十分適合しています。電磁流量計のシグナル・チェーンを図12に示します。
電極で発生したミリボルト単位の信号が最終的な流れに変換されるため、センサーの励磁と測定によって全体的なシステム性能が決まります。流量は、RS-485や4mA~20mA電流ループを含むいくつかのプロトコルを介してシステム・コントローラに伝達されます。電流ループの主な長所は、配線による電圧低下に影響されないこと、長距離の伝送が可能なこと、電圧の伝送よりノイズの干渉を受けにくいことです。ファクトリー・オートメーション・アプリケーションではデジタル・バス・プロトコルがより一般的で、比較的短い距離であれば差動電圧モード信号を使用した高速通信が可能です。HART®通信を使用した4mA~ 20mA回路を図13に示します。図14は絶縁型RS-485ソリューションです。
ユーザー・インターフェースを安全な電圧に保ち、ソース側から過渡現象が伝わるのを防ぐために、通常は各通信チャンネルとシステム・コントローラの間をガルバニック絶縁する必要があります。これらの通信標準用に最も高いレベルの集積度を提供するコンポーネントのリストを表6に示します。
表6. 工業用データ・アクイジション用集積回路出力 |
ソリューション |
内容 |
長所 |
4mA~20mA |
AD5410/AD5420 |
シングル・チャンネル、16ビット、電流ソースDAC |
断線/短絡診断、過熱異常検出 出力スルーレート制御 電流/電圧範囲をソフトウェアで設定可能 |
4mA~20mA |
AD5412/AD5422 |
シングル・チャンネル、16ビット、電流ソースおよび電圧出力DAC、HART接続 |
断線/短絡診断、過熱異常検出 出力スルーレート制御 電流/電圧範囲をソフトウェアで設定可能 |
4mA~20mA |
AD5750 |
範囲の設定が可能な工業用電流/電圧出力ドライバ |
断線/短絡診断、過熱異常検出 出力スルーレート制御 CRCエラー・チェック 負の電流範囲 |
HART | AD5700 | 低消費電力HARTモデム |
受信モードの最大電源電流115μA 集積化バンドパス・フィルタ 最小限の外付けコンポーネント |
RS-232 | ADM3251E | 絶縁型シングル・チャンネルRS-232ライン・ドライバ/レシーバ |
RINピンとTOUTピンのESD保護 ±8kV: 接触放電 ±15kV:気中放電 |
CAN BUS |
ADM3053 |
2.5kV rms信号および電源絶縁型CANトランシーバ |
出力短絡保護用の電流制限機能とサーマル・シャットダウン機能 |
RS-485 |
ADM2582E |
2.5kV信号および電源絶縁型、±15kV ESD保護、全/半二重RS-485 |
断線および短絡、フェイルセーフ・レシーバ入力 サーマル・シャットダウン保護 |
結論
電磁流量計は、今日使われている流量計技術の中で最も一般的なタイプのものになります。電磁流量計は液体の流量測定で主流となっており、特に廃棄物管理システムに注目が集まるヨーロッパで広く使われています。主な傾向としては、使用する基板面積を低減しながら高い性能を実現する方向に向かっています。システム性能はアナログ入力ブロックによって決まり、高インピーダンス、低ノイズ、高CMRRの入力アンプと、低ノイズ、高分解の ΣΔADCが必要です。将来的には、さらに高速のADCが求められる傾向になるでしょう。AD719xファミリーのADCは現行のシステム・レベルの条件に適しており、AD7176ファミリーの場合は将来の条件にも対応できる性能があります。アナログ・デバイセズの高性能DC/DCレギュレータ、集積化通信ソリューション、高分解能ADC、高精度アンプ、高精度電圧リファレンスのポートフォリオを利用すれば、新たに設計するときにこうした条件にも余裕を持って対応することができます。