マーフィーの法則!

質問:

私のアンプとコンバータが文献に記載されている回路で正しく動作しないのはなぜですか?

RAQ:  Issue 117

回答:

「Analog ICs, Their Care and Feeding」1の基礎講座では、よくこのような質問を受けます。私が答えを与える前に詳細を質問者に尋ねると、彼らは驚いたような顔をします。まるで、「文献に記載された回路」には、必要とする情報がすべて入っていると考えているみたいです。

経験上、データシートやアプリケーション・ノートの回路が正しく動作しない場合、IC が原因であることはめったにありません。必ずと言っていいほど、問題は技術文書に記載されているとおりに回路を作ることができなかったことによるもので、この失敗は多くの場合マーフィーの法則によるものです。マーフィーの法則では簡潔な表現で、「失敗する可能性のあるものは失敗する」2と言われています。私は、これを「たとえ注意を払っていなくても、物理法則は常に作用している」と言い換えたいと思います。

文献に記載された回路にはさまざまな仮定があります:電源はノイズがなく、高周波数 と 低周波数で十分にデカプリングされ、低インピーダンスで、電圧は正確とする;信号源インピーダンスおよび負荷インピーダンスは対象のアプリケーションに対して妥当な値;受動部品はそれらの仕様を満たしている;そして回路に周辺からノイズが混入することはなく、試験装置は正常に動作する。

エンジニアは問題を解決したいと思っているにしても、往々にして、診断に必要な詳細を提供してもらえるように説得するのが難しい場合があります。信号源および負荷インピーダンスがどのくらいになるか;電源が理想的かどうか;作業環境に磁気、静電気、電磁気、さらには音響ノイズの影響がないか;使用部品は寄生リアクタンス、大きな熱電感度、圧電感度または光電感度を持ってないか、あるいは処理できる以上の電力を消費していないか;どの試験装置を使用するか、使用する試験装置の動作確認が行われているかなど、知らなければならないことがたくさんあります。実際に、ほとんどの場合、私がこれらの詳細について質問すると、それ以後問題は立ち消えになったり、あるいは「解決しました!」という返事が返ってきたりします。つまり、詳細を調べることにより問題の原因が判明したということになります。

これまで多くのRAQ欄3で電源のデカプリング、環境ノイズ、単純な部品の予期しない特性について論じてきましたが、予期しない回路の動作という問題に直面した場合は、これらのRAQのアドバイスを考慮してシステムを見直すことをお勧めします。

システムが正しく動作しない場合、回路が回路図どおりになっていることを確認したら、できるだけ多くの部品に簡単な機能テストを行うとよいでしょう。多くの場合、デジタル・マルチメーター(DMM)とオシロスコープを使用してその場でテストができます。各ノードの電圧が予想どおりで、システムが発振していないことを確認してください(発振していないことになっていれば、周波数、振幅、波形を確認します)。すべての部品に触れて、高温になっていないことを確かめてください。また、ハンダ不良(高インピーダンス)の接合部を確認してください。

問題が一つでもあるときは、すべてを確認してください。Ronald Reagan元米国大統領が流ちょうなロシア語で述べたように(俳優だったので、せりふを覚えるコツを知っていました)、「Доверяй, но проверяй」4 です。これには試験装置も含まれます;正しく機能していると思い込みやすいのですが、実際にはそうではないことがあります。私も、交流発電機が 20 A 以上ではなく、500 mA しか発電しない理由を突き止めるのに何時間もかかったことがあります。そこで、電流計のリード線のうちの 1 本の抵抗が接合不良により25 Ω を超えていることを発見しました。問題は、交流発電機ではなく、試験装置にあったのです。

マーフィーの法則の問題ではないことをまず確認したうえで、回路の分析を始めることをお勧めします。


1私のアナログの基礎講座の詳細については、http://www.jbryant.eu/courses.htmを参照してください。 

2Mrs. Murphyの法則「Murphyは楽観主義者です!」もお忘れなく。

3RAQs:

4「 ドヴェリャイ、ノ・プロヴェリャイ」 ロシアの古いことわざ。日本語では「信頼しなさい、されど確認しなさい」

著者

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James Bryant

James Bryantは、1982 年から2009 年までアナログ・デバイセズの欧州地区アプリケーション・マネージャを担当し、つねに面白いプロジェクトを探求しています。 リーズ大学で物理学と哲学の学位を取得し、さらにC.Eng.、Eur.Eng.、MIEE、FBISの資格があります。エンジニアリングに情熱を傾けるかたわら、アマチュア無線家でもあり、コールサインG4CLFを持っています。