そのノイズを捕まえろ‐逃がすな

質問:

スイッチングモード電源のノイズで 回路性能が台無しにされるのを 防ぐにはどうしたらいいでしょうか?

RAQ:  Issue 37

回答:

たいへん難しいですが、可能です。

スイッチングモード電源は、本来考えられる限り最もノイズが多い回路です。電源からの大電流が、dI/dtが非常に高い周波数でターンオン/ターンオフします。このため、必然的に大きくて速い過渡電圧や過渡電流が発生します。

システム内の影響を受けやすい回路への干渉を防ぐ唯一の方法は、トランジェントをコンバータ内にとどめることです。コンバータ内の大電流のスイッチングを止めることはできませんが、過渡電流/電圧がそこから出ないようにすることはできますし、そうする必要があります。まずは、コンバータのすべての端子をACで接地してください。

コンデンサは、DCをブロックしますが、ACでは低インピーダンスになるため、この目的には最適でしょう。理論的には、コンバータ入力とそのグランドの間に大きなコンデンサを置けば、入力がコンデンサを充電し続け、過渡電流はコンデンサに流れ込み、電源から流れ出すことはありません。同じような出力コンデンサも、トランジェントを吸収し、安定したDCを供給します。

ところが、このようなシステムを実際に構築してみると、入出力回路に許容できる範囲を超えたノイズが現れることがよくあります。一体何が間違っているのでしょうか?

コンデンサをコンバータから少し離れた所に配置すると、その接続部からコンバータまでのインピーダンス(抵抗性と誘導性)がかなり大きくなり、コンデンサが正常に動作できなくなります。また、誤ったコンデンサを選択した場合は、基本的な1/2πfCの式から予測される値より高いインピーダンスが生じます。さらに、グランド・パスをほかの回路と共有していれば、このようなコモン・グランド・インピーダンスのノイズは破壊的なレベルになってしまいます。

これらの影響に加えて、さほど重要ではなくても有害な影響を与えるものとして、急速に変化する磁界と静電界によって誘導される外部電流や、コンバータ内部からの電磁放射があります。結局、コンバータのノイズを防止するには、単にその入力と出力にいくつかランダムにコンデンサを置くことだけではすまないことは明らかです。

DC/DCコンバータを黙らせるには、ノイズの逃げ道となる可能性のあるパスをすべてつぶさに探し出し、それらを完全に封鎖することです。その方法については、リンク先の記事をご覧ください。

もちろん、まずは外部ノイズを最小限に抑えるコンバータそのものを選ぶか設計しなければなりません。これは別の問題になるため、またいつかRAQで取り上げることになるかもしれません。

著者

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James Bryant

James Bryantは、1982年から2009年に定年退職するまで、アナログ・デバイセズの欧州地区アプリケーション・マネージャを務めていました。現在も当社の顧問を務めると共に、様々な記事の執筆に携わっています。リーズ大学で物理学と哲学の学位を取得しただけでなく、C.Eng.、Eur.Eng.、MIEE、FBISの資格を有しています。エンジニアリングに情熱を傾けるかたわら、アマチュア無線家としても活動しています(コールサインはG4CLF)。