質問:
アナログ・エンジニアとして 成功する上で 最も重要な特性とは?
回答:
発明の才や創意工夫の能力(Ingenuity)です。最近「Make」という雑誌が送られてくるようになりました。この雑誌はガジェット(便利な小道具、ツール、装置、機器類)製作プロジェクトの専門誌であり、各プロジェクトでは主に安価な日常の材料を使って驚くほど洗練されたガジェットが製作されます。エンジニアであればこの雑誌をぜひ読むべきです1。
エンジン(engine)やエンジニア(engineer)という用語は、利口さや巧みさを意味する ingenium というラテン語からきています。最高のエンジニアは、思いもよらない材料を活用して、より速く、より上手に、しかもより少ない費用でプロジェクトを完成させます2。最近の話ですが、私はある少年が網を使って小魚を捕まえようと苦労しているのを目にしました。学校の宿題だと言うのです。そこで、私はその子と一緒に2本のプラスチック・ボトルと粘着テープを使って10分間で罠をしかけ、1時間で20匹以上の魚を捕まえました。
ほんの少しのシンプルなCMOSロジックを基本的なオペアンプや計装アンプ回路と組み合わせるだけで、大抵の高精度アナログ機能を非常に効率的に実行することが可能です。アナログASICや、FPGA、マイクロコントローラを用いても同じことが達成できるでしょうが、その開発には多くの時間や費用がかかるため、プロジェクトが緊急を要する場合や製品の個数が少ない場合には、適正な方法とはいえません。
こうしたことは、特に試験回路の場合に当てはまります。私は、ハードウェア・プロトタイプの動作がソフトウェアのシミュレーション結果と整合するかを確かめてからシミュレーションを認証する必要があると、常に声を大にして叫んできました。これに対しては、シンプルなテスト・ギアでそれをテストするのは容易なことではないという反対意見も聞きます。しかし、ハードウェア・チェックは精度ではなく機能面に主眼が置かれているのが普通です。レベルとタイミングについてさほど正確さが求められないのであれば、少数のデバイスの組み合わせでかなり複雑な信号源を作成することが十分可能です。
1個か2個のオペアンプでバッファ、アンプ、インバータ、加算回路、サイン波発振器などを作成することは簡単です。また、4000シリーズのCMOSは、3 ~ 18Vの電源で動作するので、この種のアプリケーションのロジック関数を実行する上で特に便利です。これは、ほとんどのロジックに比べてノイズがかなり少なく(超高速ではないため)、そのシュミット入力デバイスは発振器や遅延回路内で使用でき、さらにはデュアル・インライン・パッケージで提供されるので、試験回路の構成や調整を簡素化できます。
アプリケーション・エンジニアと面接するときに私が応募者に必ず聞くことは、最近仕事以外ではどんな場面で電子工学を活用したことがあるか、ということです。さきほど本稿で紹介したような技法を駆使して、何かの機材の部品の機能を強化し、ちょっとした改良を加えるというような話はよく耳にします3。
1 www.makezine.com
2 エンジニアは愚か者が1ドルでやることを5セントでできる(ヘンリー・フォード)
3 仕事は仕事であり、プライベートな時間に技術のことは考えない、といった答を聞くと、その応募者の価値観は成功するエンジニアの
ものとはやや異なるのではないかと思ってしまいます。