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電源設計用の半自動化ツール群、5つの作業ステップの効率を大きく高める

はじめに

「標準的なアプリケーション」というものは存在しません。どのようなアプリケーションでも電源の設計は必須であり、その作業は常に複雑なものになります。そのため、電源の設計の全自動化はいまだ実現されていません。しかし、包括的な半自動設計ツールであれば既に利用できます。本稿では、電源の設計プロセスを5つのステップとして示します。その上で、各ステップではどのような半自動設計ツールを利用できるのか詳しく説明します。そうしたツールは、電源設計の初心者にも熟練者にも大きな価値をもたらします。

【ステップ1】電源のアーキテクチャを決定する

電源のアーキテクチャを適切に構築するのは、電源の出来不出来を決定づける重要なステップです。ここでのいちばんの問題は、電源レールの数を増やすにつれて複雑さが増すということです。この段階で、中間電圧を生成する回路は必要なのか、またその種の回路をいくつ用意しなければならないのかということを検討します。図1に示したのは、電源の典型的なアーキテクチャの例です。入力電圧としては、産業用アプリケーションでよく使われる24Vが供給されます。この電圧を基に、必要な電流量に対応できる5V、3.3V、1.8V、1.2V、0.9Vの電圧を生成する必要があります。では、各電圧の生成方法としてはどのようなものが適切なのでしょうか。まず、24Vから5Vへの変換には、スイッチング方式の降圧コンバータを使用するのが最も理にかなっています。それでは、他の電圧はどのようにして生成するべきなのでしょう。スイッチング・レギュレータで生成した5Vから3.3Vを生成するのが合理的なのでしょうか。それとも、24Vから直接3.3Vを生成するべきなのでしょうか。こうした疑問に答えるためには、詳細な分析を行う必要があります。例えば、電源における重要な特性としては変換効率が挙げられます。したがって、アーキテクチャを決定する際には、できるだけ高い効率が得られるようにすることが重要です。

図1. 電源のアーキテクチャ
図1. 電源のアーキテクチャ

図1の例では、5Vの中間電圧を使用して3.3Vの電圧を生成しています。つまり、3.3Vの電圧は2つの変換段を通過して生成されています。ここで問題になるのは、各変換段の効率には限界があるということです。例として、各変換段の効率は90%だと仮定しましょう。すると、2つの変換段を介して3.3Vを生成すると、効率は81%(0.9×0.9 = 0.81)まで低下してしまいます。果たして、システムではこのような低い効率を許容できるのでしょうか。この疑問に対する答えは、3.3Vの電源で供給しなければならない電流量に依存します。数mAの電流しか必要なければ、効率が低くても全く問題はないかもしれません。しかし、多くの電流が必要である場合には、このような低い効率は許容できないでしょう。システム全体の効率に大きな影響が及び、結果的に重大な欠点になる可能性があるからです。

ただ、上記の考察だけで一般的な結論を導き出すことはできません。言い換えると、高い供給電圧から1ステップで低い出力電圧を生成するのが常に適切であるとは言えないのです。通常、より高い入力電圧に対応できるレギュレータは高価であるはずです。また、高い入力電圧に対応できるといっても、出力電圧との差が大きければ効率は低下します。

最適なアーキテクチャを見出すためには、「LTpowerPlanner®」のようなツールを使用するとよいでしょう。同ツールは、アナログ・デバイセズが無償で提供している電源用の開発環境「LTpowerCAD®」に含まれています。LTpowerPlannerを使用すれば、様々なアーキテクチャの評価を迅速かつ容易に行うことができます。同ツールはPCにインストールして使用します。

仕様の確定

電源に限った話ではありませんが、設計を行う上では仕様を確定させることが極めて重要です。どのような開発ステップが必要になるかは仕様に応じて決まります。特に、電源に対する要件はシステムの他の部分の設計が完了するまで不確定であることが少なくありません。そのため、電源の設計/開発に許される時間は圧迫されることになります。また、開発後期の段階になって仕様が変更されることも少なくありません。例えば、最終的なプログラミングの段階で、FPGA向けにより多くの電力を供給しなければならなくなるといったことが起こり得るのです。その場合、電力を節減するためにDSPの電源電圧を下げるといった対応が図られることがあります。あるいは、当初の設計ではスイッチング周波数を1MHzに設定していたのに、信号パスへのカップリングが発覚してスイッチング周波数を変更しなければならなくなるといったことも起こります。このような理由によって、電源のアーキテクチャが変更されたり、回路設計に非常に深刻な影響が及んだりする可能性があります。

通常、仕様は開発初期の段階で策定されます。その際には、比較的簡単に変更を受け入れられるように、可能な限りの柔軟性を持たせておく必要があります。このような考え方を具現化するためには、汎用性の高いICを選択するべきです。これは、開発ツールを用いて作業を進めていれば特に有効な策になります。その場合、電源に関する再計算を短時間で実施できるからです。このようにすれば、仕様の変更をより容易に、より迅速に行うことができます。

電源の仕様としては、利用可能な電力量、入力電圧、最大入力電流、生成する電圧/電流の値などが定められます。その他にも、サイズ、予算(コスト)、放熱方法、EMC(Electromagnetic Compatibility:電磁両立性)に関する要件(伝導性ノイズと放射性ノイズの両方を含む)、負荷過渡応答、供給電圧の変動量、安全性などの項目について検討が行われます。

最適化支援ツールとしてのLTpowerPlanner

LTpowerPlannerは、電源システムのアーキテクチャを構築するために必要なすべての機能を備えています。操作は非常に簡単で、コンセプト・レベルの検討を迅速に実施できます。

同ツールでは、まず入力電力源について定義します。次に、個々の負荷、つまりは電力を消費するデバイスを追加します。続いて、個々のDC/DCコンバータを追加します。これにはスイッチング・レギュレータまたはLDO(低ドロップアウト)レギュレータが該当します。また、すべてのコンポーネントには、独自の名称を割り当てることができます。更に、効率を計算するために、期待する効率の値を保存します。

LTpowerPlannerを使用すると、2つの大きなメリットが得られます。1つは、アーキテクチャに関する単純な計算により、全体の効率に対して最も有利な変換段の構成を割り出すことができるというものです。図2に、必要な電圧レールを実現する2種類のアーキテクチャを示しました。下側のアーキテクチャ全体の効率は、上側のアーキテクチャ全体の効率よりも若干高くなっています。このような結果は、詳細な計算を行わなければ得ることができません。LTpowerPlannerを使用すれば、このような違いを即座に明らかにすることができます。

LTpowerPlannerが提供するもう1つのメリットは、よく整理された技術ドキュメントが用意されていることです。同ツールのGUI(グラフィカル・ユーザ・インターフェース)を利用すれば、アーキテクチャの整然とした略図を得ることができます。それにより、非常に有益な視覚的補助が得られます。特に、同僚と議論したり開発作業のドキュメント化を行ったりする際には大いに役立ちます。技術ドキュメントは、紙のハード・コピーまたはデータ・ファイルとして保存することが可能です。

図2. 必要な電圧レールを実現する2種類のアーキテクチャ。それぞれの効率を計算した結果が示されます。
図2. 必要な電圧レールを実現する2種類のアーキテクチャ。それぞれの効率を計算した結果が示されます。

【ステップ2】各DC/DCコンバータで使用するICを選択する

通常、電源回路は多数のディスクリート部品を組み合わせるのではなく、ICを使用して構成します。市場には、様々なスイッチング・レギュレータICやリニア・レギュレータICが投入されています。それらの製品は、いずれも何らかの特性に対して最適化されているはずです。すべてのICには違いがあり、交換/置き換えが可能なケースはほとんどありません。したがって、ICの選択は非常に重要なステップになります。ICを選択すると、残りの設計プロセスにおいて回路の特性は固定された状態になります。後になって別のICの方が適していることが判明し、そのICに変更することになったとします。その場合、新たなICを使用するために、それまでに行ったのと同じ作業を繰り返すことになります。おそらく、その作業には多くの時間がかかるでしょう。しかし、設計ツールを使えばその負荷を容易に軽減することができます。

ICを効率良く選択するためには、ツールをうまく活用することが非常に重要になります。アナログ・デバイセズの製品を使用する場合であれば、analog.com/jpで提供されているパラメトリック検索機能が役に立ちます。また、LTpowerCAD上で製品を検索することで、更に生産性を高めることができます。図3に、LTpowerCADの検索ウィンドウを示しました。

図3. LTpowerCADの検索ウィンドウ。適切なスイッチング・レギュレータICを検索することができます。
図3. LTpowerCADの検索ウィンドウ。適切なスイッチング・レギュレータICを検索することができます。
図4. LTpowerCADの実行画面。電源に関する各種の計算を実施できます。
図4. LTpowerCADの実行画面。電源に関する各種の計算を実施できます。

検索ツールは、わずか数個の仕様値を入力するだけで使用できます。例えば、入力電圧、出力電圧、必要な負荷電流の値を入力するといった具合です。それらに基づいて、LTpowerCADは推奨されるソリューションのリストを生成します。条件を追加で入力すれば、更に検索結果を絞り込むことが可能です。例えば、「Features」のカテゴリで、イネーブル・ピンやガルバニック絶縁といった機能について選択を行えば、より適切なDC/DCコンバータICを探し出すことができます。

【ステップ3】個々のDC/DCコンバータの回路を設計する

次のステップでは回路の設計を行います。具体的には、選択したスイッチング・レギュレータICと組み合わせる外付け受動部品を決定するといった作業が必要になります。このステップにおいて、回路の最適化を図ることになります。通常、そのためにはデータシートを徹底的に読み込み、必要なすべての計算を実施しなければなりません。ただ、このステップは、包括的な設計ツールであるLTpowerCADを使用すれば大幅に簡素化できます。しかも、更なる最適化を図った結果を得ることが可能です。

強力な計算ツールとしてのLTpowerCAD

LTpowerCADは、回路設計の作業を大幅に簡素化するためにアナログ・デバイセズが開発したツールです。これは、シミュレーション・ツールというよりも計算ツールと呼ぶ方が適切でしょう。仕様の値を入力すると、それに基づいて非常に短い時間で最適な外付け部品が提示されます。また、変換効率を最適化することも可能です。更に、制御ループの伝達関数を計算することもできます。そのため、最適な制御帯域幅と安定性を簡単に得ることが可能です。

図4に示したのは、「LTC3310S」を選択した場合に表示される画面です。このように、LTpowerCADでスイッチング・レギュレータICを選択すると、メインの画面に必要な外付け部品をすべて備えた標準的な回路が表示されます。この例の場合、降圧型のスイッチング・レギュレータが構成されています。この回路により、最高5MHzのスイッチング周波数で最大10Aの出力電流を得ることができます。

画面上の黄色のフィールドには、仕様の値または計算の結果得られた値が表示されています。青色のフィールドを使うことで、各種の設定が行えます。

外付け部品の選択

LTpowerCADでは、理想的な値だけを使うのではなく、外付け部品の詳細なモデルに基づいて計算が行われます。つまり、実際の回路の動作を確実にシミュレーションすることができます。LTpowerCADでは、他社製ICのモデルの情報も格納した大規模なデータベースを使用します。また、コンデンサの等価直列抵抗(ESR)やコイルのコアにおける損失なども考慮されます。外付け部品を選択するには、図4の画面上で青色の外付け部品をクリックします。すると、新たにウィンドウが開き、使用できる可能性のある部品のリストが表示されます。図5のリストはその一例であり、出力コンデンサとして推奨される製品が一覧表示されています。この例では、様々なメーカーの88種のコンデンサがピックアップされています。なお、「Show All」を選択すれば、4660種以上のコンデンサ製品の中から任意のものを選ぶことが可能になります。

データベースは継続的に拡張/更新されています。LTpowerCADはオフライン・ツールなので、その機能を使用する際にインターネットにアクセスする必要はありません。ただ、アップデート機能を使用することで、スイッチング・レギュレータICと外付け部品の情報を格納したデータベースを最新の状態に更新することができます。

図5. 様々なコンデンサのリスト。LTC3310Sに付加する出力コンデンサの候補が一覧表示されています。
図5. 様々なコンデンサのリスト。LTC3310Sに付加する出力コンデンサの候補が一覧表示されています。

変換効率の確認

最適な外付け部品を選択したら、「Loss Estimate & Break Down」ボタンをクリックしてスイッチング・レギュレータの変換効率を確認します。

図6に、変換効率と熱に対する特性変動を確認するためのページを示しました。ご覧のように、効率と損失を示す正確な図が表示されます。ハウジングの熱抵抗に基づいてICの接合温度を計算することも可能です。

回路の応答が満足できるものになったら、次の一連の計算に進みます。十分な効率が得られない場合には、スイッチング・レギュレータのスイッチング周波数を変更するか(図6の左側を参照)、外付けのコイルを別のものに変更するとよいでしょう。そのようにして、満足できる結果が得られるまで効率を再計算します。

制御帯域幅の最適化、安定性の確認

外付け部品を選択して効率を計算したら、制御ループの最適化を実施します。制御ループは、回路が確実に安定し、発振や不安定性が発生しないように構成しなければなりません。同時に、広い帯域幅に対応できるようにする必要もあります。つまり、入力電圧の変化、特に負荷過渡応答に対応できるように構成しなければならないということです。LTpowerCADでは、安定性に関連して考慮すべき事柄は「Loop Comp. & Load Transient」タブで確認することができます。負荷過渡応答に依存した出力電圧のプロットやボード線図などが得られるだけでなく、多くの設定オプションを適用することが可能です。

図6. 回路の効率と熱応答の計算
図6. 回路の効率と熱応答の計算
図7. LTpowerCADによる制御ループの設定
図7. LTpowerCADによる制御ループの設定

ここで、非常に重要な機能として「Use Suggested Compensation」を紹介します。これを使用すれば、最適な補償方法についての検討が行えます。同機能を利用すれば、制御工学に習熟していなくてもパラメータを調整することができます。図7に示したLTpowerCADの画面によって制御ループの設定を行います。

LTpowerCADを使えば、安定性に関する計算を実施できます。得られた結果は、そのアーキテクチャにおいて非常に重要なポイントになります。その計算は周波数領域で実行され、時間領域でのシミュレーションよりもはるかに高速に結果が得られます。そのため、試行的にパラメータの値を変更することが可能であり、ボード線図を数秒で更新することができます。時間領域でシミュレーションを行った場合、結果が出るまでに数分から数時間もかかることがあります。

EMC性能の確認、フィルタの追加

スイッチング・レギュレータの仕様によっては、その入力部/出力部にフィルタを追加しなければならないことがあります。電源の開発経験が少ない場合には、この部分が大きな課題になることが少なくないでしょう。例えば、次のような疑問が生じるはずです。出力の電圧リップルを一定のレベルに抑えるには、フィルタ部品としてどのようなものを選択する必要があるのでしょうか。また、入力フィルタは必要なものなのでしょうか。必要であるとしたら、伝導性エミッションを一定の規格値未満に抑えるために、そのフィルタをどのように設計する必要があるのでしょうか。いずれにせよ、スイッチング・レギュレータとフィルタの相互作用によって、何らかの状況下で動作が不安定になってしまうことも許されないはずです。

図8に示したのは、LTpowerCADのサブツールの操作画面です。同サブツールは、EMI(電磁干渉)対策として適用する入力フィルタの設計に使用します。このツールには、外付け部品の最適化を行う際に使用する最初のページからアクセスすることができます。このツールを使用すると、受動部品を使ったフィルタの設計が行えます。また、そのフィルタを適用した場合のEMC性能を表すグラフを確認できます。グラフとしては、入力フィルタを付加した場合と付加していない場合の伝導性エミッションのプロットが得られます。それらのグラフを見れば、CISPR 25、CISPR 22、MIL-STD-461Gなど、様々なEMC規格で定められた規格値との関係を確認することができます。

入力側の伝導性エミッションに対する応答だけでなく、周波数領域におけるフィルタの特性やインピーダンスをグラフ表示することも可能です。フィルタについては、全高調波歪みが高くなりすぎないようにする必要があります。また、フィルタのインピーダンスがスイッチング・レギュレータのインピーダンスにマッチするようにしなければなりません。各グラフは、これらについて確認する際に役立ちます。インピーダンス・マッチングに問題があると、レギュレータとフィルタの間で不安定な状態が生じる可能性があります。

LTpowerCADを使えば、高度な専門知識がなくても、上記のような詳細な検討が行えます。なお、「Use Suggested Values」ボタンを使えば、フィルタの設計が自動的に行われます。

LTpowerCADは、スイッチング・レギュレータの出力フィルタの設計機能も提供しています。この種のフィルタは、出力電圧のリップルを非常に小さく抑えなければならない場合に使用します。出力電圧のパスにフィルタを追加するには、「Loop Comp. & Load Transient」のページでLCフィルタのアイコンをクリックします。すると、図9のような新たなウィンドウにフィルタ回路が表示されます。フィルタのパラメータは、このウィンドウ上で簡単に選択することができます。追加したフィルタの前または後ろには、帰還ループを接続できるようになっています。このような手順により、出力電圧について非常に良好なDC精度を実現しつつ、あらゆる動作モードにおいて安定した応答を得ることが可能になります。

図8. LTpowerCADのフィルタ設計ツール。このフィルタにより、スイッチング・レギュレータの入力部における伝導性エミッションの影響を最小限に抑えます。
図8. LTpowerCADのフィルタ設計ツール。このフィルタにより、スイッチング・レギュレータの入力部における伝導性エミッションの影響を最小限に抑えます。
図9. スイッチング・レギュレータの出力フィルタの設計。電圧リップルを低減するためのLCフィルタを構築します。
図9. スイッチング・レギュレータの出力フィルタの設計。電圧リップルを低減するためのLCフィルタを構築します。

【ステップ4】時間領域で回路シミュレーションを実施する

LTpowerCADによる設計が完了したら、その回路のシミュレーションを実施します。通常は、時間領域のシミュレーションによって個々の信号の確認を行うことになるでしょう。また、プリント回路基板上における様々な回路との相互作用を確認することもできます。つまり、寄生素子による効果もシミュレーションに組み込めるということです。そうすると、シミュレーション時間は長くなりますが、非常に正確な結果が得られます。

一般に、シミュレーションは、ハードウェアを実装する前に情報を収集することを目的として実施されます。ただ、回路シミュレーションについては、その可能性と限界を把握しておくことが重要です。例えば、シミュレーションだけで最適な回路を見いだすのは難しいことがあります。シミュレーションでは、その実行中にパラメータの値を変更して再開するといったことが行えます。しかし、回路設計の専門家でなければ、パラメータの適切な値を決定して回路の最適化を図るのは容易ではないでしょう。例えば、回路設計に習熟していない場合、シミュレーションにおいて回路が既に最適な状態に達しているのかどうかがわからないといったことが起こり得るのです。このような場合には、LTpowerCADのような計算ツールを利用する方が適しています。

LTspiceによる電源のシミュレーション

アナログ・デバイセズの「LTspice®」は、電気/電子回路向けの強力なシミュレーション・ツールです。同ツールは、使いやすさ、広範なユーザ・サポート・ネットワーク、最適化用のオプション、高精度で信頼性の高いシミュレーション性能といった特徴を備えています。そのため、世界中のハードウェア開発者に使われています。また、LTspiceは無償のツールであり、PCに簡単にインストールして使用することができます。

LTspiceは、SPICE(Simulation Program with Integrated Circuit Emphasis)をベースとしています。SPICEは、カリフォルニア大学バークレー校の電気工学/コンピュータ科学部で開発されたプログラムです。これをベースとする多くの商用ソフトウェアが提供されています。LTspiceはバークレー版のSPICEに基づいたものですが、収束性とシミュレーション速度が大幅に高められています。また、LTspiceには、回路図エディタと波形ビューワの機能が追加されています。これらの機能は、初心者でも直感的に操作することが可能です。もちろん、経験豊富な技術者にも多大な柔軟性を提供してくれます。

LTspiceは、シンプルさと使いやすさを提供できるように設計されています。analog.com/jpでダウンロードすることが可能であり、非常に大規模なデータベースと関連づけられています。このデータベースには、アナログ・デバイセズのほぼすべての電源ICと外付け受動部品のシミュレーション・モデルが含まれています。先述したように、LTspiceは、PCにインストールすればオフラインで動作します。ただ、アップデートを実施することで、スイッチング・レギュレータと外付け部品の最新のモデルを読み込むことができます。

シミュレーションを開始するには、analog.com/jpにアクセスし、電源製品の製品フォルダ(例えば、評価用ボード「LT8650S」)でLTspice用の回路データを選択します。通常、その回路データは、評価用ボードの回路を対象として作成されています。analog.com/jpの特定の製品フォルダにおいて、LTspiceに関連するリンクをダブルクリックすると、PC上でLTspiceが起動し、回路の情報が表示されます。その情報には、シミュレーションを実行するために必要なすべての外付け回路と事前の設定が盛り込まれています。図10で赤色の矢印で示したランナーのアイコンをクリックすると、シミュレーションが実行されます。

LTspiceでは、波形ビューワを使用することにより、回路のすべての電圧と電流を確認することができます。図11に示したシミュレーション結果は、図10の電源回路における入出力電圧を表しています。

SPICEシミュレーションを利用すれば、電源回路の詳細を把握することができます。また、ハードウェアを構築する際に予期せぬ事態が起きないように事前に確認が行えます。加えて、LTspiceを使用すれば、回路の変更/最適化を実施することも可能です。更に、スイッチング・レギュレータとプリント回路基板上の回路との相互作用をシミュレーションすることもできます。例えば、複数のスイッチング・レギュレータを同時に動作させた状況のシミュレーションを実施することも可能です。そうすれば、シミュレーション時間は長くなるものの、それらの相互作用について確認することができます。

LTspiceは、ICの開発者が使用している極めて強力で信頼性の高いツールです。アナログ・デバイセズの多くのIC製品は、このツールを使用して開発されています。

図10. LTspiceによるシミュレーションの対象となる回路。LTC3310Sを使って電源を構成しています。
図10. LTspiceによるシミュレーションの対象となる回路。LTC3310Sを使って電源を構成しています。
図11. 図10の回路のシミュレーション結果
図11. 図10の回路のシミュレーション結果

【ステップ5】ハードウェアのテストを実施する

ここまでに説明したように、自動化ツールは電源の設計において重要な役割を果たします。次のステップで行うべきことは、ハードウェアの基本的な評価です。スイッチング・レギュレータでは、非常に速いレートで電流のスイッチングが行われます。特にプリント回路基板のレイアウトに依存する寄生成分の効果により、電流のスイッチングに伴う電圧オフセットが生じ、放射性エミッションが発生します。このような効果も、LTspiceを使用すればシミュレーションで確認できます。但し、そのためには寄生成分に関する正確な情報が必要になります。ほとんどの場合、そのような情報を入手することはできません。結果として、多くの仮定が必要になり、シミュレーション結果の価値が低下してしまいます。そのような意味からも、現実のハードウェアに対する徹底的な評価は必須です。

プリント回路基板のレイアウトは、回路の重要な要素

プリント回路基板のレイアウトは回路の構成要素の1つとして知られています。例えば、回路の動作確認を行うために、ブレッドボードでジャンパ線を使用して回路を構成することがあります。しかし、スイッチング・レギュレータについては、そのような回路でテストを実施することに意味はありません。これは非常に重要な事実です。例えば、スイッチング電流のパスに存在する寄生インダクタンスは電圧オフセットの原因になります。そのオフセットが原因でレギュレータは動作しなくなるかもしれません。また、回路によっては、過電圧によって損傷が生じてしまうこともあります。

アナログ・デバイセズは、プリント回路基板のレイアウトを最適化できるよう支援しています。通常、スイッチング・レギュレータICのデータシートには、プリント回路基板のレイアウトのリファレンスとなる情報が記載されています。ほとんどのアプリケーションでは、その推奨レイアウトを使用することができます。

動作温度範囲におけるハードウェアの評価

電源の設計プロセスでは、スイッチング・レギュレータICの動作温度の全範囲における変換効率がどのようになるかということが考慮されます。ハードウェアのテストは、想定される限界の温度を対象として実施することが重要です。スイッチング・レギュレータICや外付け部品の特性値は、動作温度の範囲内で変化します。LTspiceによるシミュレーションでも、そうした温度の影響を加味するのは難しくありません。しかし、そのようなシミュレーション結果の価値は使用するパラメータの質に応じて決まります。現実的な値のパラメータを使用できる場合には、LTspiceにおいてモンテ・カルロ解析を実行し、必要な結果を得ることができます。ただ、物理的なテストによってハードウェアを評価する方がより実用的であることがほとんどです。

EMI/EMCについての検討

システムを構築する場合、最終的にはEMI/EMCのテストに合格する必要があります。それらのテストは現実のハードウェアを対象として実施されますが、知見を集める上ではシミュレーション・ツールや計算ツールが非常に役立ちます。ハードウェアのテストに先立ち、様々なシナリオで評価を実施することができるからです。シミュレーションによって正確な結果を得るためには、通常はモデル化されていない寄生成分を反映させる必要があります。そこまではできない場合でも、各種のパラメータに対する一般的な性能の傾向は見てとれます。また、EMI/EMCのテストに合格しなかった場合、シミュレーションによって得られたデータを利用することで、ハードウェアを迅速に修正するために必要な知見が得られる可能性があります。EMI/EMCのテストには多くのコストと時間がかかります。それに対し、設計の初期段階でLTspiceやLTpowerCADを利用すれば、実際のテストに先立って有意義な結果を得ることができます。それらを利用することにより、電源の設計プロセス全体を効率化し、コストを削減することが可能になります。

まとめ

電源設計用のツールは非常に高機能になりました。現在では、複雑な要求を満たすために役立つ十分に強力な存在になっています。なかでも、LTpowerCADとLTspiceは高い性能を備えるだけでなく、使いやすいインターフェースも備えています。そのため、これらのツールは、あらゆる熟練度の設計者に対して大きなメリットをもたらします。設計経験が豊富であるか否かにかかわらず、これらのツールを使用して日常的に電源の開発に携わることができます。

シミュレータがこれほどまでに進化していることに驚かれる方もいるでしょう。適切なツールを使用すれば、信頼性が高く高機能な電源をより迅速に構築することが可能になります。

アナログ・デバイセズが提供する無償の設計ツール

本稿では、以下に示す3つのツールを紹介しました。

ぜひ、これらのツールをご活用ください。

Frederik Dostal

Frederik Dostal

Frederik Dostalは、ドイツのエアランゲン・ニュルンベルク大学でマイクロエレクトロニクスについて学びました。2001年にパワー・マネージメント事業の分野で働き始め、アリゾナ州フェニックスで4年間にわたってスイッチング電源を担当したほか、さまざまなアプリケーション分野の業務に携わってきました。2009年にADIに入社し、ミュンヘンのアナログ・デバイセズでパワー・マネージメントのフィールド・アプリケーション・エンジニアとして従事しています。