高温環境でデータ・アクイジションや制御を行うためのプラットフォーム、高い精度と堅牢性も併せて実現

はじめに

過酷な環境での運用を前提とした多くのシステムでは、高い温度にさらされる場所であっても、構うことなく高精度の電子回路を配置する傾向が高まっています。実際、エネルギー探査、航空宇宙、自動車、重工業といった分野のアプリケーションで、このような状況を目にする機会が増えているのです。このような傾向が生まれた理由はいくつかあります1。例えば、エネルギー探査では、深度とともに周囲温度が上昇します。しかも、サイズや電力の面に制約があるので、能動的な冷却は事実上行えず、熱の対流も非常に限られます。そうなると、高温環境の下でも問題なく動作する装置を開発するしかなくなります。そのため、175 ℃以上の温度でも動作可能な電子回路が一般的に設計されるようになってきているのです。他の分野のシステムでも、エンジンやブレーキ・システム、大電力を扱うエネルギー変換用の回路といった高温領域の近くに、センサー・ノードやシグナル・コンディショニング用のノードを配置できるようにすることが望ましいと言えます。それにより、システム全体の信頼性を高めたり、コストを抑えたりすることが可能になるからです。

従来、このようなアプリケーション向けに信頼性と性能に優れた電子回路を設計するのは非常に難しいことでした。そもそも、部品メーカーがそうした動作条件を前提として仕様を規定した製品を提供していなかったからです。最近になって、I Cと受動部品については 175 ℃以上の高温環境を対象として仕様を規定した製品が増えつつあります。また、高精度のデータ・アクイジションに使用するシグナル・チェーンのサブシステムとそうした部品を組み合わせた場合の性能に着目したリファレンス・デザインも提供されるようになりました。これを利用することにより、システム設計者は高温環境に対応できる製品や技術を迅速に導入できるようになります。アナログ・デバイセズが提供する CN-0365 は、そうしたリファレンス・デザインの一例です。これは、設計上のリスクを緩和したり、製品を市場に投入するまでの期間を短縮したりすることに役立ちます。これまで、高温動作に対応可能な理想的なデータ・アクイジション用プラットフォームというものは提供されていませんでした。ここで理想的と表現しているのは、精度が高く、あらゆる機能を備え、十分に特性の評価が行われていて、広範な用途で利用できるという意味です。

本稿では、200 °Cで動作するように設計された「EV-HT-200CDAQ1」を紹介します。これは、データ・アクイジションや制御処理を実現するための高精度のプラットフォームです。リファレンス・デザインとして設計されたこのプラットフォームは、高温に対応可能なデータ・アクイジション用フロント・エンドとマイクロコントローラを備えています。また、最適化されたファームウェア、データの取得/ 解析用ソフトウェア、ソース・コード、設計情報のファイル、部品表、テスト結果のレポートも併せて提供されます。高温環境で稼働する計測システムのリファレンス・デザインとして利用するだけでなく、ラピッド・プロトタイピングや実験室での試験などにも活用できます。回路アセンブリのサイズと構造は、石油やガスの計測に使用される機器のフォーム・ファクタに合わせて設計されています。高温環境で運用されるそれ以外のアプリケーションの基盤として使用することも可能です。

ハードウェア・アーキテクチャの概要

石油やガスの探査に用いられる計測器は、ダウンホール・ツールとも呼ばれます。それらの計測器は、多くの高精度データ・アクイジション/制御用プラットフォームと似たものだと言うことができます。ただ、性能と信頼性に関して特殊な要件があることから、リファレンス・プラットフォームの用途として想定した場合に、調査対象として非常に興味深いものになります。このアプリケーションでは、さまざまなセンサーからの信号をサンプリングすることにより、周囲の地質学的構造に関する情報を収集します。それらのセンサーは、電極やコイル、圧電型の変換器などを備えています。加速度センサーや、磁力計、ジャイロスコープによって、ドリル・ストリングの傾きや回転速度に関する情報を得ることができます。そうしたセンサーの中には、帯域幅が非常に狭いものもあれば、可聴帯域やそれよりも高い帯域の情報を取得できるものもあります。複数のアクイジション・チャンネルにおいて、175 °C以上といった高温環境で高い精度を維持できるようにする必要があります。また、そうした計測器の多くは、バッテリや能力に限界のある発電機能を使って駆動されます。そのため、消費電力が少ないことが求められます。また、消費電力を最適化するための手段として複数の動作モードが必要とされます。

ダウンホールのアプリケーションには、電子システムに対する要件に加えて機械的な制約もあります。それにより、電子回路のアセンブリのフォーム・ファクタが左右されます。また、パッケージなどの面で部品の選定にも影響が及ぶ可能性があります。これについては後述しますが、この分野で使われる回路アセンブリについては、基板の幅に対して制約が課される傾向があります。その点には注意が必要です。電子回路のアセンブリは、掘削時に使われる管状の耐圧容器の中に配置する必要があります。そのため、細長い形状であることが求められるのです。そのような形状であることから、使用する部品のサイズと密度に制約が生じます。加えて、部品の配置や信号のルーティング、パーティショニングにも制約が生じる可能性があります。さらに、電子システム全体の性能に多大な影響を及ぼす可能性があるので、レイアウトやパッケージの設計には、細心の注意を払う必要があります。図 2 は、この用途における標準的なフォーム・ファクタを示したものです。上の図は、管状の耐圧容器に回路アセンブリを取り付けた様子を表しています(容器を透明にして内部を示しています) 。下の図は、基板が取り付けられた管状耐圧容器の断面図です。

本稿では、CN-0365 のデータ・アクイジション・システムをベースとする堅牢性の高いプラットフォームを紹介します。このプラットフォームはリファレンス・デザインとしての役割を担うので、ダウンホールのアプリケーションで使用される多くの計測器や、高温環境で稼働する電子機器に求められる要件を満たします。マイクロコントローラをベースとし、消費電力が少なく精度の高いデータ・アクイジションと制御に使用するソリューションとして設計されました。このリファレンス・デザインでは、逐次比較型 A/D コンバータ(SAR ADC)である「AD7981」を使用しています。高速の同時サンプリングが可能な 2 つのチャンネルに加え、多重化された 8 つのチャンネルも追加されています(計 10 チャンネル)。あらゆる機能を内蔵するシステムを目指したものであり、多様な種類のダウンホール・ツールに求められるアクイジションの要件に対応可能です。このアナログ・フロントエンドは、SPI(Serial Peripheral Interface)ポートを介して、「ARM® Cortex®-M0」ベースのマイクロコントローラ「VA10800」に接続されています。VA10800 は、アナログ・デバイセズのアライアンス・パートナーである VORAGO Technologies とPetroMar Technologies が提供しています。アナログ・デバイセズは、高温環境で運用されるアプリケーション向けの製品/ソリューションのエコシステムを拡充しています。このリファレンス・デザインもその流れを汲むものです。

Figure 1
図 1 . 高温環境に対応可能なリファレンス・プラットフォーム

取得したデータは、ローカルで処理するか、UART(UniversalAsynchronous Receiver/Transmitter)またはオプションの通信用インターフェースである RS-485 を介して転送することができます。メモリ、クロック、電源、受動部品など、基板上のすべての部品も高温環境での使用に対応可能なものです。それぞれのサプライヤが、200 °C以上の温度でも確実に動作することを検証済みです。図 1 は、この高温対応のリファレンス・プラットフォームで実際に使用している基板の外観を示したものです。図 2 は、ダウンホール用回路アセンブリのフォーム・ファクタを示したものです。長さは約 11.4 インチ(約 29 cm) 、幅は 1.1 インチ(約 2.8 cm)となっています。また、図 3 にはそのブロック図を示しました。

Figure 2
図 2 . ダウンホール用回路アセンブリのフォーム・ファクタ

このプラットフォームが備える高精度のデータ・アクイジション・チャンネルの設計については、CN-0365 のアプリケーション・ノート3 に詳しく記載されています。このプラットフォームが備える 3 つの ADC の入力部は、それを基にして設計されています。ただし、フォーム・ファクタの要件に対応し、確実に動作する温度範囲を 200 °Cまで拡大するために、主に受動部品の選定に関して変更と最適化が行われています。図 3 に示したのは、アクイジション・チャンネルの回路です。このプラットフォームには、多重化されたデジタル・チャンネルが 2 つあります。それぞれ、CN-0365 と同様の完全なデータ・アクイジション・チャンネルであり、高いサンプル・レートで動作することが可能です。入力の前にマルチプレクサ「ADG798」を追加することで多重化したアナログ・チャンネルも備えています。このアナログ・チャンネルは、スループットの低い入力向けに最適化されています。図 4 の R1 と R3 は、U1B の非反転入力に 1.25 Vのバイアス電圧を供給します。それにより、オープンの状態のままであったり、マルチプレクサが選択されていなかったりする場合に、アナログ入力のレール電圧にフロートすることを防ぎます。R8 と R9 の値を変更すれば、U1B のゲインを高めることができます。R4、R7、C2 で構成される回路はアンチエイリアシング( 折返し誤差防止) フィルタとして機能します。この部分は、アッテネータや別のフィルタとして再構成することが可能です。R5、R6、C4 は、ADC 用のドライバと ADC の入力部の間に配置する RC フィルタを形成しています。このフィルタは、ADC の入力部に到達する帯域外ノイズの量を制限するとともに、ADC の入力部に内蔵されているスイッチド・キャパシタからのキックバック電圧を減衰する役割を果たします4

Figure 3
図 3 . 高温環境に対応可能なリファレンス・プラットフォームのブロック図
Figure 4
図 4 . ADC 用ドライバの構成

このプラットフォームは、AD7981 が備えるいくつかの主要な特徴を活かして設計されています。AD7981 は分解能が 16ビットで、サンプリング・レートが 600 kSPS の ADC です。2.5Vのリファレンス電圧を使用した場合、ミッシング・コードを生じさせることなく、85 dB(代表値)の SINAD と ±0.6 LSB(代表値)の積分非直線性(INL)を達成することができます。リファレンス電圧を 5 V にすると、SINAD は 90 dB 以上に達します。ただ、低電圧のシステムとの相互運用性を維持するために、このプラットフォームではリファレンス電圧を 5 V には設定しませんでした。ADC のコア部は、変換サイクルの間に自動的にパワーダウンするように設計されています。そのことから、ADC の消費電力はスループットに比例して自動的に増減します。つまり、ADC のサンプル・レートを低く設定すれば、消費電力を効果的に抑えることが可能です。

ソフトウェアの概要

ファームウェア

このプラットフォームのファームウェアは、FreeRTOS をベースとしています。通信やデータ処理などのタスクを簡単に組み込めるようになっています。多重化されていないチャンネル 0 と同 1 については、高速な ADC による変換を効率良く完了できるようにコードが最適化されています。また、多重化されているチャンネル 2 ~ 9 については、変換時間が 10 µs に抑えられるようにコードの最適化が図られています。変換結果はローカルで処理するか、UART に対応するチャンネルを介して 2Mbps のデータ・ストリームとして出力することができます。変換結果を格納するためのバッファの容量は 16 kB(8 k サンプル分)で、複数のチャンネル間で共有するか、単一のチャンネル専用に使用することができます。ファームウェアはオープンソースとして提供されています。そのため、ユーザーが自由にカスタマイズしたり、最終的なアプリケーションの基盤として使用したりすることが可能です。

データの取得/解析用ソフトウェア

図 5 に、データの取得/解析用ソフトウェアの実行画面を示しました。Microsoft .NET Framework の環境で設計されており、USB‐UART‐TTL のトランスレータを介して回路アセンブリとの通信を行います。適切に定義されたプロトコルにより、制御やデータ送信などを行うためにハードウェアと通信することが可能です。データはバースト・モードで取得することもできますし、連続的な取得も可能です。また、S/N 比、THD、SINAD を時間領域、周波数領域で解析/検証するためのデータ解析機能(FFT など)も搭載しています。データは、ファイルに記録することもできますし(Excel へのエクスポートなど)、他のアプリケーションで保存/処理することも可能です。ファームウェアと同様に、このソフトウェアのソース・コードも無償で提供されています。ユーザーがカスタマイズすることもできます。

Figure 5
図 5 . データの取得/解析用ソフトウェア

高温に対応するための構造

このリファレンス・プラットフォームは、200 °Cでの動作に対応可能な部品や材料を使って構成されています。アセンブリに使用されているすべての部品については(特に記載のない限り) 、それぞれのメーカーが高温の条件下における仕様を規定しています。また、世界中の代理店により、すぐに入手可能な製品として販売されています。部品表、プリント基板の回路図、組み立て図のすべてが、リファレンス・デザインのパッケージとして無料で提供されています。

コンデンサ

低い周波数成分のフィルタリングとデカップリングには、C0G または NP0 の誘電コンデンサが使われています。これらのコンデンサの誘電体は、温度係数が非常に平坦です。また、一般に基板の屈曲応力に対して高い耐性を備えます5。C0G/NP0のコンデンサは、Q 値が高く、温度係数が小さく、電圧が変動しても安定した電気的特性を示す RC フィルタに適しています。0805 サイズより小さなセラミック・コンデンサは、部品とプリント基板の間の CTE(Coefficient of Thermal Expansion)ミスマッチを抑えるために使われています。さらに、実装面積と等価直列抵抗(ESR) のトレードオフについて考慮したうえで、大量のエネルギーを保存するために耐熱性の高いタンタル・コンデンサを使用しています。

抵抗

このリファレンス・プラットフォームでは、基本的に薄膜 SMT 抵抗を使用しています。具体的には、車載グレードの「PATT」シリーズの製品を採用しました。このシリーズの製品は入手も容易です。設計上の特定の値やサイズに対応するために、一部、厚膜 SMT 抵抗も使用しています。

コネクタ

プラットフォームの基板の接続には、200 °Cに対する仕様が規定された Micro-D コネクタを使用しています。Micro-D コネクタは、高い信頼性が求められる業界で一般的に使われています。信号のクロストークを抑えるために、コネクタのシェルは、組み立て時にプリント基板のグラウンドに接続されます。アプリケーションによっては、シグナル・インテグリティを最大限に高め、クロストークを最小限に抑えることが求められます。クロストークを最小限に抑えるためには、同軸またはシールド付きのバランス入力を採用し、耐熱性の高い特殊なコネクタを使用する(またはコネクタは使用しない)必要があります。

プリント基板の設計とレイアウト

ダウンホールのアプリケーションでは、掘削孔や耐圧筐体の制約に対応して回路基板を設計する必要があります。この点を考慮して、プラットフォームのプリント基板は細長い形状にしました。基板の材料としては、耐熱性が高くハロゲン・フリーのポリイミドを選択しています。標準的な基板の厚さは 0.062 インチ(約 1.6 mm)ですが、それよりも剛性と平面性が高くするために 0.093 インチ(約 2.4 mm) としました。

基板の表面は金‐ニッケル合金でめっきされています。ニッケルは金属間成長を抑えるバリアとなり、金にはハンダ接合部の表面を滑らかにする効果があります。

厚さが 0.093 インチの基板において、標準的な 4 層積層構造を使用するには、約 13 mil(0.33 mm) の銅層間隔と 60mil(1.5 mm)という大きな内部コアが必要です。6 層であれば、層間隔は一般的に 9.5mil(0.24 mm) と 28 mil(0.71mm)になります。そこで、このプラットフォームでは 6 層構造を採用しました。そのうえで、グラウンド・プレーンを各信号層の横に配置できるようにしてノイズ性能を高めました。

一方のコネクタには、電力とデジタル信号が供給され、他方のコネクタにはアナログ信号が入力されます。このようにすることで、デジタル領域とアナログ領域の間の分離と信号の流れを適切に実現しています。プレーンの分割部は基板の中央にあります。その分割部の近くで電力に対するフィルタリングを行います。分割プレーンを横切るデジタル制御ラインの数は最小限に抑えており、デジタル・ノイズの結合を抑制するために直列終端を行っています。デジタル、アナログのグラウンド・プレーンは、駆動源へのリターン・パスのインピーダンスを下げるために銅ネット・タイを使って 1 点で結合しています。

マルチプレクサの制御信号は、アナログ・セクションの全長を通ることになります。ただ、アナログ信号のクリティカル・パスは避けるように工夫してルーティングしています。この多重化用の制御ラインは、データ・アクイジションに向けた測定と同期して変化します。そのため、クロストークの影響は最小限に抑えられます。

ハンダ

200 °Cの動作温度に対して十分に融点が高く(230 °C以上)、加工性に優れ、組み立てを請け負う業者にとっても扱いやすい Sn95/Sb05 のハンダを選択しました。

基板の取り付け

基板上のポスト・マウントは便宜上用意されているだけです。実験室やテスト・ベンチでの取り付けには役立つかもしれませんが、衝撃や振動が激しい環境での取り付けには適していません。衝撃や振動が激しい環境で使用する場合は、最初にエポキシで基板に部品を接着しておきます。IDC ヘッダーのような敏感な部品は封止するか、またはアセンブリから取り除いた方がよいでしょう。一般に、ダウンホールやその他の過酷な環境での取り付けには、レール・マウント・システムが使われます。つまり、柔軟性と緩衝性に優れるマウント・ガスケットで基板の外周を保護するということです。あるいは、取り付け先となるハードウェアの内部にアセンブリを完全に封入し、そのハードウェアをシャーシや筐体に固定するという方法も有効です。

適切な部品に関する情報については、「高温対応、低消費電力のデータ・アクイジション・ソリューション」を参照してください2

性能テストの結果

複数の基板を対象として徹底的なテストを行い、温度に対してどのような性能を示すのか評価しました。200 時間にわたって周囲温度が 200 °Cの環境下に置き、組み立て工程と基板の信頼性を確認しました。

SAR ADC を用いた高精度のデータ・アクイジション・システムにおいては、AC/DC シグナル・チェーンの性能が、精度に関する主要な測定基準になります。レシオメトリックで堅牢なプラットフォームにするには、ADC が 600 kSPS で動作する場合に、200 °Cの条件下でクロストークが -100 dB 以下、オフセット・ドリフトが最大で ±60 mV という性能を達成する必要があります。AC テストでは、アナログ電源として 5 VDC、-2.5VDC を使用します。また入力信号としては、歪みの少ない 1kHz のトーンを使います。このトーンを 400 kSPS で A/D 変換し、FFT を施した結果とスペクトル解析用の演算を行った結果を図 6 に示しました。200 °Cの条件下で、S/N比が 84 dB以上、THD が -96 dB 以下という結果が得られています。図7 は、多重化されていないチャンネルに同じトーンを入力した場合の S/N 比と SINAD の温度依存性を示したものです。図 8 に示したのは、THD の温度依存性です。

Figure 6
図 6 . 200 °C の条件下における測定結果。F F T 結果のプロットとスペクトル解析の結果を示しています。

Figure 7
図 7. S/N 比と SINAD の温度依存性

Figure 8
図 8 . THD の温度依存性

図 9 に示したのは、アナログ、デジタルそれぞれの電源電流の温度依存性です。総消費電力は室温で 155 mW、200 °Cでは 225 mW まで増加します。3.3 V の電源で消費される電力の大部分は、最大のクロック・レートで動作するマイクロコントローラと高精度の発振器によるものです。ADC については、1秒当たり 8192 サンプルのデータをバースト・モードで得られるように設定しました。

Figure 9
図 9. 2.5 V/3 V/5 V の各電源レールにおける消費電流

このリファレンス・プラットフォームについては、200 °Cの環境で運用するために必要な特性や品質を備えていることを十分に評価しています。本稿では取り上げていないパラメータの評価結果も参照できるようになっています。

アプリケーションの例

石油/ガスの探査、航空宇宙、重工業といった分野のアプリケーションでは、方向と振動を検出するための手段として加速度センサーがよく使用されます。アナログ出力を備える加速度センサーは、最大限の精度を達成しつつ、アプリケーションに応じてセンサーからの出力を調整するだけの柔軟性を備えています。

ADXL206」は、高温環境に対応可能な 2 軸加速度センサーです。iMEMS® 技術を適用した製品であり、高い精度、少ない消費電力、豊富な機能を特徴とします。計測範囲は ±5g、帯域幅は 0.5 Hz ~ 2.5 kHz です。ADXL206 の出力では、中心電圧が VCC の約 ½ になります。つまり、VCC に対してレシオメトリックです。ADXL206 とリファレンス・プラットフォームで、(コネクタから得られる)VCC を共有する場合には、DCオフセットと電源ドリフトをゼロにするために、マルチプレクサのチャンネル S7 上の VCC のリファレンスを使用することができます。図 10 に、加速度センサーとプラットフォームのインターフェース部分の回路図を示しました。ADXL206 の 0 V ~ 5 Vの信号範囲は、プラットフォーム側の信号範囲である 0 V ~2.5 V に合わせて半分にスケーリングする必要があります。まず出力をバッファリングし、データ・アクイジション・システム内部のアッテネータを使用することによってスケーリングを行います。ADXL206 の帯域幅は C2 と C3 によって設定されます。図 9 に示した結果は、帯域幅を 33 Hz に設定した場合のものです。帯域幅の狭いアプリケーションでは、入力部にマルチプレクサを使用することができます。広い帯域幅と高い精度が必要な場合には、多重化されていない 2 つの入力チャンネルを使用するべきです。

Figure 10
図 10 . 高温対応の加速度センサーとプラットフォームのインターフェース

まとめ

本稿では、データ・アクイジション用のリファレンス・プラットフォームである EV-HT-200CDAQ1 を紹介しました。集積度、堅牢性、精度が高いことを特徴とし、200 °Cという高温環境で動作できるだけの特性と品質を備えていることを評価によって確認済みです。このプラットフォームにより、最先端の部品を使用して高温に対応可能な電子システムのラピッド・プロトタイピングや評価を実施することができます。その結果、開発期間や市場投入までの期間を短縮することが可能になります。このプラットフォームには、多様な設計情報やソフトウェアなども付属しています。詳細については、こちらをご覧ください。

参考資料

1 Jeff Watson、Gustavo Castro 「高温電子機器の設計と信頼性の課題」 Analog Dialogue 46-04

2 Jeff Watson、Maithil Pachchigar「高温対応、低消費電力のデータ・アクイジション・ソリューション」Analog Dialogue49-08

3 CN-0365: 高温環境用の 16 ビット、600kSPS、低消費電力 データ・アクイジション・システム、Analog Devices2015年6月

4 Alan Walsh「高精度SAR A/Dコンバータ(ADC) のフロントエンド・アンプとRCフィルタの設計」Analog Dialogue46-12

5 John L. Evans、James R. Thompson、Mark Christopher、Peter Jacobsen、R. Wayne Johnson「The ChangingAutomotive Environment: High Temperature Electronics(変化する車載環境: 高温対応のエレクトロニクス)」IEEE Transactions on Electronics Packaging Manufacturing,Vol. 27, No. 3, 2004年7月

Jeff Watson

Jeff Watson

Jeff Watsonは、計測機器グループのストラテジック・マーケティング・マネージャで、主に高精度機器テスト/計測/高温アプリケーションを専門としています。アナログ・デバイセズに入社する前は、ダウンホール石油ガス計測業界とオフ・ハイウェイ自動車計測/制御業界で設計技術者として活躍していました。ペン州立大学で電気工学の学士号と修士号を取得しました。

Maithil Pachchigar

Maithil Pachchigar

Maithil Pachchigar はアナログ・デバイセズの計装/高精度テクノロジー部門のアプリケーション・エンジニアです。2010 年にアナログ・デバイセズに入社して以来、高精度 ADC の製品ポートフォリオを担当し、産業分野、計測分野、医療分野、エネルギー分野のお客様を支援しています。2005 年から半導体業界に携わっており、数件の技術資料を発表しています。2006年にサンノゼ州立大学で電気電子工学の修士号を取得し、2010 年にシリコン・バレー大学で経営学の修士号を取得しています。