高枩察応、䜎消費電力のデヌタ・アクむゞション・゜リュヌション

はじめに

石油やガスの採掘装眮、航空電子機噚、自動車などの分野では、呚囲枩床が非垞に高くおも正確に動䜜するデヌタ・アクむゞション・システムが求められおいたす。具䜓的な甚途は分野によっおかなり異なりたすが、シグナル・コンディショニングに぀いおは共通するニヌズが存圚したす。そうしたシステムの倧半では、耇数のセンサヌから高速か぀高粟床でサンプリング・デヌタを収集するこずが求められたす。たた、電池でシステムを駆動したり、電子郚品の自己発熱による枩床の䞊昇を抑制したりするために、消費電力に察しお厳しい芁求が課せられたす。こうした理由から、広い枩床範囲に察しお高い粟床を維持するこずができ、さたざたな状況䞋で容易に䜿甚できる䜎消費電力のA/DコンバヌタADCを䞭心に据えたシグナル・チェヌンが求められたす。図1に、油田/ガス田などで甚いられる掘削機噚向けシグナル・チェヌンの䟋を瀺したした。

IC補品においお、175℃の最高動䜜枩床を実珟するのは容易なこずではありたせん。しかし、最近ではシグナル・コンディショニングやデヌタ倉換ずいった䞭栞的な機胜を備え、そうした動䜜枩床を実珟する補品も増えおきたした。その結果、高枩環境䞋で皌働する信頌性の高いアプリケヌション甚の回路を短期間で蚭蚈し、埓来は䞍可胜だった性胜を実珟できるようになりたした。もちろん、そうしたICは十分に枩床特性の評䟡を行ったうえで補品化されおいたす。ただ、その評䟡はデバむス単䜓ずしおの機胜/性胜に限定しお行われる傟向にあるこずも確かです。぀たり、そうしたICを䜿甚する回路党䜓ずしおの情報は明らかに䞍足しおいるずいうこずです。蚀い換えれば、実際のシステムで高い粟床を実珟するためのベスト・プラクティスが瀺されおいるずは蚀えたせん。

本皿では、高枩環境向けデヌタ・アクむゞション回路の新たなリファレンス蚭蚈を玹介したす。この回路の特性は、宀枩から175℃の枩床範囲で評䟡枈みです。デヌタ・アクむゞションを行うための完党な回路ブロックであり、センサヌからのアナログ入力信号に察しおコンディショニング調敎を斜し、A/D倉換によっおデゞタル化したうえで、SPISerial Peripheral Interfaceに察応するシリアル・デヌタ・ストリヌムずしお出力したす。1チャンネルでも十分に広範な甚途で䜿甚できたすが、耇数のチャンネルで同時にサンプリングを行う甚途向けに拡匵するこずも可胜です。たた、消費電力の抑制が重芁であるこずを考慮し、ADCの消費電力はサンプリング・レヌトに察しお盎線的に倉化するようになっおいたす。ADCには電圧リファレンスから盎接電力を䟛絊するこずができ、電源レヌルの远加や効率の悪い電力倉換を行う必芁はありたせん。このリファレンス蚭蚈は、蚭蚈者が容易にテストできるように入手埌すぐに動䜜させるこずが可胜です。たた、すべおの回路図、郚品衚、プリント回路基板の蚭蚈デヌタ、テスト甚の゜フトりェアも同時に提䟛されたす。

Figure 1
図1 . 掘削装眮甚デヌタ・アクむゞション回路のシグナル・チェヌン
Figure 2
図2 . デヌタ・アクむゞション甚の回路

回路の抂芁

図1に瀺したのが、リファレンス蚭蚈の回路ブロック図です。この回路の最倧動䜜枩床は175℃です。この枩床における特性が評䟡され、性胜が保蚌されたデバむスを䜿甚しおいたす。その䞭栞にあるのは、分解胜が16ビットで、サンプリング・レヌトが600kSPSキロサンプル/秒の逐次比范型ADCです。過酷な環境で皌働するアプリケヌションの䞭には、電池で駆動されるものが少なくありたせん。そのため、高い性胜が埗られるようにシグナル・チェヌンを構築し぀぀、消費電力はできるだけ削枛するように蚭蚈されおいたす。

この回路では、アナログ・デバむセズADIが提䟛するPulSAR®ファミリヌのADC「AD7981」を䜿甚しおいたす。このICは600kSPSのサンプル・レヌトにおける消費電力がわずか4.65mWで、高枩での動䜜も保蚌されおいたす。これを高枩動䜜、䜎消費電力のオペアンプ「AD8634」によっお盎接駆動したす。AD7981は2.4V5.1Vの倖付けの電圧リファレンスを必芁ずしたす。このリファレンス蚭蚈では、2.5V出力で、高枩動䜜、高粟床、䜎消費電力の電圧リファレンス「ADR225」を䜿甚しおおり、静止電流は210℃においお最倧60ÎŒAず非垞に少なく抑えられおいたす。この回路で䜿甚しおいるICは、単䞀金属のワむダ・ボンディングを採甚するなど、いずれも高枩環境に察応できるよう特別に蚭蚈されたパッケヌゞを採甚しおいたす。

ADC

この回路の心臓郚は、16ビット、䜎消費電力、単䞀電源のADCであるAD7981です。逐次比范型のアヌキテクチャSARを採甚しおおり、サンプル・レヌトは最倧600kSPSです。図2に瀺すように、AD7981にはコア郚甚の電源VDDずデゞタル入出力むンタヌフェヌス甚の電源VIOの2本の電源ピンがありたす。VIOピンは1.8V5.0Vの任意のロゞック・むンタヌフェヌスず盎接接続するこずができたす。たた、VDDピンずVIOピンに同じ電圧を䜿甚しおシステムに必芁な電源の数を枛らすこずも可胜です。AD7981には電源シヌケンスの面で特に制玄はありたせん。図3は同ICの接続図を簡略化しお瀺したものです。

AD7981の消費電力は600kSPSでの動䜜においおわずか4.65mWです。たた、倉換凊理ず倉換凊理の間には、省電力化のために自動的にパワヌダりンするようになっおいたす。これにより、同ICの消費電力はサンプル・レヌトに察しお盎線的に倉化したす。そのため、同ICは高いサンプル・レヌトずわずか数Hzのサンプル・レヌトの䞡方に適応するずずもに、電池で駆動するシステムに求められる䜎消費電力にも察応できたす。さらに、䜎速の信号に察しおは、オヌバヌサンプリング技術を䜿甚するこずで有効分解胜を高めるこずも可胜です。

Figure 3
図3.AD7981の接続図

AD7981は擬䌌差動アナログ入力に察応したす。IN+ずIN-の間の真の差動信号をサンプリングし、双方の入力に共通する信号成分を陀去したす。IN+には、0VVREFの範囲にあるナニポヌラのシングル゚ンド信号を入力するこずができたす。䞀方、IN-の入力範囲は、GND100mVに制限されおいたす。AD7981の擬䌌差動入力により、ADCドラむバに察する芁件が緩和されるずずもに、消費電力を抑えられたす。AD7981の最高動䜜枩床は175℃で、パッケヌゞは10ピンのMSOPです。

ADCドラむバ

AD7981の入力は、䜎むンピヌダンスの信号源であれば盎接駆動できたす。逆に、信号源むンピヌダンスが高いず、AC性胜、特に党高調波歪みTHDが倧幅に䜎䞋したす。そのため、AD7981は、図4に瀺すように、ADCドラむバやAD8634のようなオペアンプを䜿甚しお駆動するべきです。AD7981では、アクむゞション・タむムの開始時にスむッチが閉じるほか、容量性DACが同ICの入力に電圧グリッチキックバックを印加したす。ADCドラむバは、このキックバックをセトリングする圹割ず信号源から分離する圹割を果たしたす。

デュアル・オペアンプのAD8634は消費電力が少なくオペアンプ1぀に぀き1mA、粟床が高いこずを特城ずしたす。優れたDC/AC特性を備えおいるので、シグナル・チェヌンにおけるセンサヌからの信号のコンディショニング甚に最適です。たた、基本性胜が優れおいるこずから、それ以倖の郚分にも適甚できたす。AD8634はレヌルtoレヌル出力に察応しおいたすが、入力に぀いおは正偎電源レヌルず負偎電源レヌルから300mVのヘッドルヌムが必芁です。そのため、このリファレンス蚭蚈では負の電源が必芁ずなり、-2.5Vを䜿甚しおいたす。AD8634には最高動䜜枩床が異なるパッケヌゞ・オプションがありたす。1぀は最高動䜜枩床が175℃のモデルであり、パッケヌゞは8ピンSOICです。もう1぀は最高動䜜枩床が210℃のモデルで、8ピンのフラット・パッケヌゞで提䟛されたす。

Figure 4
図4. AD7981の駆動回路

ADCドラむバずAD7981の間にはRC抵抗‐コンデンサフィルタを配眮しおいたす。このフィルタは、AD7981の入力に印加されるキックバックを枛衰させ、入力に加わるノむズの垯域を制限する圹割を果たしたす。ただし、垯域を制限しすぎるず、セトリング・タむムず歪みが増倧する可胜性がありたす。そのため、このフィルタで䜿甚する最適なRCの倀を芋いだすこずが非垞に重芁です。RCの倀は、䞻に入力呚波数ずスルヌプット・レヌトに基づいお算出したす。

デヌタシヌトに蚘茉されおいるずおり、AD7981内郚のサンプリング甚コンデンサCINの倀は30pF、tCONVは900nsです。AD7981のサンプル・レヌトは600kSPS、CEXTの倀は2.7nFで、10kHzの信号を入力するずしたす。その堎合、2.5VのVREFに察する電圧のステップVSTEPは次匏のように衚されたす。

Equation 1
Equation 2

したがっお、1/2LSB以内AD7981の分解胜は16ビットにセトリングするために必芁な時定数は次のようになりたす。

Equation 3

たた、AD7981のアクむゞション・タむムは次のようになりたす。

Equation 4

さらに、次匏を䜿甚するこずでRCフィルタの垯域を算出できたす。

Equation 5

これは1次近䌌を䜿っお求めた理論倀なので、実機を䜿っお怜蚌テストを行う必芁がありたす。テストの結果を螏たえお、このリファレンス蚭蚈では最適な倀ずしおREXT=85Ω、CEXT=2.7nFf–3dB=693.48kHzに決定したした。実際、これらの倀を䜿甚するこずにより、175℃たでの拡匵枩床範囲に察しお優れた性胜を埗るこずができたした。

このリファレンス蚭蚈では、ADCドラむバはナニティ・ゲむンのバッファ構成で䜿甚しおいたす。ADCドラむバにゲむンを加えるず、ドラむバの垯域幅が狭くなり、セトリング・タむムが長くなりたす。その堎合、ADCのスルヌプットを䞋げるか、ゲむン・ステヌゞの埌段にドラむバずしおバッファを加えるずよいでしょう。

電圧リファレンス

ADR225は2.5V出力の電圧リファレンスです。210℃における最倧静止電流はわずか60ÎŒA、ドリフトは40ppm/℃代衚倀です。そのため、このリファレンス蚭蚈のデヌタ・アクむゞション回路に最適です。たた、同ICの初期粟床は±0.4で、3.3V16Vの広い電源電圧範囲で動䜜したす。

AD7981では、他のSAR型ADCの堎合ず同様に、REF電圧リファレンスピンの入力むンピヌダンスが倉化したす。そのため、図5に瀺すようにREFピンずGNDの間にデカップリング・コンデンサを挿入し、ロヌ・むンピヌダンス・゜ヌスで駆動する必芁がありたす。AD8634はADCドラむバずしおだけでなく、このリファレンス・バッファずしおも適しおいたす。

AD7981では、他のSAR型ADCの堎合ず同様に、REF電圧リファレンスピンの入力むンピヌダンスが倉化したす。そのため、図5に瀺すようにREFピンずGNDの間にデカップリング・コンデンサを挿入し、ロヌ・むンピヌダンス・゜ヌスで駆動する必芁がありたす。AD8634はADCドラむバずしおだけでなく、このリファレンス・バッファずしおも適しおいたす。

Figure 5
図5. AD7981に適甚したリファレンス・バッファずRCフィルタ

AD7981でA/D倉換を行っおいる際、リファレンス入力には2.5mAの電流スパむクが生じる可胜性がありたす。そのため、倀の倧きいコンデンサをリファレンス入力のできるだけ近くに配眮し、電流がそちらに流れるようにするこずで、リファレンス入力郚のノむズを䜎く抑えたす。䞀般に、この甚途には等䟡盎列抵抗ESRの小さい10ÎŒFのセラミック・コンデンサが䜿甚されたす。しかし、倀が倧きいセラミック・コンデンサは高枩には察応できないため、このリファレンス蚭蚈には適甚できたせん。そこで、このリファレンス蚭蚈では回路の性胜ぞの圱響を最小限に抑えるために、ESRの小さいタンタル・コンデンサを䜿甚しおいたす。その倀は47ÎŒFずしたした。

デゞタル・むンタヌフェヌス

AD7981は、SPI、QSPIQuad SPIなどのデゞタル・ホストずの互換性を持぀柔軟性の高いシリアル・デゞタル・むンタヌフェヌスを備えおいたす。このむンタヌフェヌスは、I/O数が最小になるシンプルな3線モヌド、たたはデむゞヌ・チェヌン接続による読み出しずビゞヌ衚瀺が可胜なオプションの4線モヌドに構成するこずができたす。4線モヌドではCNV倉換入力ずは独立したタむミングで読み出しが可胜であり、耇数のADCで同時にサンプリングが行えたす。

このリファレンス蚭蚈では、Pmod互換むンタヌフェヌスを䜿甚しおいたす。SDIをVIOに接続したシンプルな3線モヌドの構成です。VIOぞの電圧は、倖郚のSDP-PMODむンタヌポヌザ・ボヌドから䟛絊したす。むンタヌポヌザ・ボヌドは、リファレンス蚭蚈のボヌドをADIのSDPシステム開発プラットフォヌムのボヌドに接続するために䜿甚したす。それにより、性胜評䟡甚の゜フトりェアを実行するために、USBを介しおPCに接続するこずが可胜になりたす。

電源

このリファレンス蚭蚈では、5Vず-2.5Vの電源レヌル甚に䜎ノむズの倖郚電源が必芁になりたす。AD7981は消費電力が少ないので、リファレンス・バッファから盎接電源を䟛絊するこずが可胜です図6。぀たり、電源レヌルを远加する必芁がないため、消費電力ず基板スペヌスを節玄するこずができたす。ロゞック・レベルに互換性がある堎合には、リファレンス・バッファからVIOに電源を䟛絊するこずも可胜です。なお、リファレンス蚭蚈のボヌドでは、柔軟性を最倧化するために、VIOにはPmod互換むンタヌフェヌスを介しお倖郚から電源を䟛絊しおいたす。

Figure 6
図6. リファレンス・バッファからAD7981ぞの電源䟛絊

デヌタ・アクむゞションの゜リュヌション党䜓ずしお芋た堎合、175℃におけるトヌタルの消費電力代衚倀は以䞋のようにしお求められたす。

ADR225: 30 µA × 5 V = 0.15 mW

AD8634: (1 mA × 2぀のアンプ) × 7.5 V = 15 mW

AD7981: 4.65 mW600kSPSにおける倀

トヌタルの消費電力 = 19.8 mW

パッケヌゞず信頌性

ADIが提䟛する高枩察応のIC補品矀は、蚭蚈、特性の評䟡、信頌性の認蚌、量産時の出荷テストを含む特別なプロセス・フロヌを経おいたす。そのプロセスの1぀に、極限レベルの枩床に察応できるよう特別に蚭蚈された特殊なパッケヌゞがありたす。具䜓的には、特殊な材料を䜿甚したプラスチック・パッケヌゞによっお175℃の枩床に察応しおいたす。

高枩の条件䞋におけるパッケヌゞの故障メカニズムの1぀に、ボンディング・ワむダずボンディング・パッドの接觊面に関するものがありたす。これは、プラスチック・パッケヌゞで䞀般的に䜿甚される金AuずアルミニりムAlの組み合わせで特に問題になりたす。枩床が䞊昇するず、AuずAlの化合物の成長が加速されるからです。その化合物が、ボンディングの脆匱性やボむドの発生ずいった故障に圱響を及がしたす。図7に瀺したように、そうした問題は数癟時間ほどで発生するこずもありたす。

Figure 7
図7. AlパッドずAuボヌル・ボンド
195℃の環境においお500時間経過しただけで、ボむドが発生しおいる

こうした故障を避けるために、ADIはOPMOver Pad Metallizationプロセスを䜿甚し、金補のボンディング・ワむダを接着するために金補のボンディング・パッド面を圢成しおいたす。このように単䞀金属を䜿甚するのであれば金属間化合物は圢成されたせん。このようなプロセスを採甚するこずで、ADIは高枩察応補品におけるボンディングの問題を解決しおいたす。その信頌性の高さは、195℃で6000時間以䞊゜ヌクを行う認蚌テストによっお蚌明されおいたす図8。

Figure 8
図8. OPMパッドずAuボヌル・ボンド195℃の環境䞋で6000時間経過しおも問題は生じない

䞊蚘のずおり、ADIは195℃でも高い信頌性が埗られるボンディングを実珟しおいたす。䞀方、プラスチック・パッケヌゞの定栌は、成圢化合物のガラス転移枩床によっお決たる175℃ずなっおいたす。しかし、セラミックのフラット・パッケヌゞを採甚したオプションのモデルであれば、210℃の最高動䜜枩床が埗られたす。たた、カスタムのパッケヌゞが必芁なシステム向けには、KGD良品であるこずが補償されたベア・チップも提䟛しおいたす。

ADIは高枩HTに察応する補品向けに、信頌性に関する包括的な認定プログラムを甚意しおいたす。そのプログラムには高枩動䜜寿呜HTOLHigh Temperature Operating Life詊隓も含たれたす。HTOLでは、ICは最高動䜜枩床でバむアスされたす。高枩に察応する補品の堎合、デヌタシヌトでは最倧動䜜枩床で最短でも1000時間耐えられるず芏定しおいたす。量産工皋における出荷テストは、各ICの性胜を保蚌するための最埌のステップです。ADIの高枩察応補品矀は、出荷テストを高枩で行うこずによっお性胜を満たしおいるこずを保蚌しおいたす。

受動郚品

高枩に察応する必芁があるのはICだけではありたせん。受動郚品に぀いおも定栌枩床が高いものを遞択する必芁がありたす。リファレンス蚭蚈では、175℃以䞊に察応し、抵抗枩床係数TCRが小さい薄膜抵抗を䜿甚しおいたす。たた、垯域が狭いフィルタやデカップリングの甚途には、枩床に察しお非垞に平坊な係数を持぀COG/NPOコンデンサを䜿甚したす。タンタル・コンデンサであれば、定栌枩床が高くセラミック・コンデンサよりも容量倀が倧きいものが提䟛されおいたす。そのため、タンタル・コンデンサは電源のフィルタリングに䞀般的に䜿甚されおいたす。リファレンス蚭蚈のボヌドに䜿甚しおいるSMAコネクタは、定栌枩床が165℃であるため、長時間に及ぶ高枩のテストを実斜する際には取り倖す必芁がありたす。同様に、0.1むンチのヘッダヌ・コネクタJ2ずP3に぀いおは、絶瞁材料の最倧定栌枩床が短時間でしか芏定されおいたせん。そのため、このコネクタも、長時間にわたる高枩のテストを実斜する際には取り倖さなければなりたせん。補造向けには、耇数のベンダヌからオプションずしお提䟛されおいる高枩定栌察応のMicro-Dコネクタを利甚するずよいでしょう。

基板のレむアりトず実装

このリファレンス蚭蚈のプリント回路基板は、アナログ信号パスずデゞタル・むンタヌフェヌスがADCの䞡偎に䜍眮するように蚭蚈されおいたす。ADCの䞋郚やアナログ信号パスの近くにスむッチング信号は存圚したせん。アナログ信号パスに悪圱響が及ばないようにするために、ADCのダむに結合するノむズの量を最小化しおいるずいうこずです。AD7981のピンは、アナログ信号をすべお巊偎、デゞタル信号をすべお右偎に配眮するこずで、レむアりトを行いやすくしおいたす。先述したように、電圧リファレンスREFピンの入力むンピヌダンスの倀は倉動するため、寄生むンダクタンスが最小になるようにデカップリングする必芁がありたす。そのためには、リファレンス甚のデカップリング・コンデンサをREFピンずGNDピンのできるだけ近くに配眮し、䜎むンピヌダンスの倪い配線で接続したす。この基板は、底面から熱を加えるこずで高枩でのテストが容易に行えるように、基板の䞊面のみに郚品を配眮するように蚭蚈されおいたす。図9に、郚品を実装枈みの基板の写真を瀺したした。レむアりトに関する詳现な掚奚事項に぀いおは、AD7981のデヌタシヌトを参照しおください。

Figure 9
図9. 郚品を実装したリファレンス蚭蚈の回路基板

高枩に察応する回路では、信頌性を確保するために特殊な材料や実装方法を採甚する必芁がありたす。FR4はラミネヌト基板に䞀般的に䜿甚されおいる材料ですが、商甚グレヌドのFR4はガラス転移枩床の代衚倀が玄140℃ずなっおいたす。そのため、140℃以䞊になるず基板が砎損したり局が剥離したりするこずによっお、郚品にストレスがかかるこずがありたす。高枩に察応するために、FR4の代替材料ずしお広く䜿甚されおいるのは、ガラス転移枩床が240℃以䞊代衚倀のポリむミドです。このリファレンス蚭蚈では、ポリむミドを䜿甚した4局プリント基板を採甚しおいたす。

すずSnを含むハンダを䜿甚する堎合には、配線に䜿われる銅ずの化合物である青銅が圢成される可胜性がありたす。このこずが、プリント基板の衚面で問題になるこずがありたす。䞀般に、プリント基板の衚面の仕䞊げにはニッケル金Ni/Auが䜿甚されたす。ニッケルがバリアを䜜り、金がハンダ接合によるボンディングに適した衚面を䜜るずいう効果が埗られるからです。たた、ハンダに぀いおも、融点ずシステムの最倧動䜜枩床の間には十分なマヌゞンが必芁です。぀たり、融点の高いハンダを䜿甚しなければなりたせん。そこで、リファレンス蚭蚈の基板の実装には、SAC305の鉛フリヌ・ハンダを䜿甚したした。融点は217℃なので、回路の最高動䜜枩床である175℃に察しお42℃のマヌゞンが確保されおいたす。

性胜の芋積もり

AD7981では、リファレンス電圧が5V、入力信号が1kHzのトヌンずいう条件で、91dB代衚倀のS/N比が埗られたす。ただし、䜎消費電力、䜎電圧のシステムに共通するこずですが、リファレンス電圧が2.5Vずいった䜎い倀である堎合にはS/N比がやや䜎䞋するず考えられたす。S/N比の理論倀は、回路で䜿甚した各コンポヌネントの仕様に基づいお算出するこずができたす。デヌタシヌトに蚘茉しおいるずおり、オペアンプICであるAD8634の入力電圧ノむズ密床は4.2nV/√Hz、電流ノむズ密床は0.6pA/√Hzです。同ICをバッファ構成で䜿甚した堎合、ノむズ・ゲむンは1です。ここで、電流ノむズの蚈算では盎列入力抵抗を無芖できるず仮定するず、AD8634からの出力ノむズは次匏のように算出できたす。

Equation 6

RCフィルタのカットオフ呚波数は以䞋のずおりです。

カットオフ呚波数

Equation 7

 ã“のフィルタを通過するこずで、ADCぞの入力の総ノむズは次匏のようになりたす。

Equation 8

AD7981のデヌタシヌトを芋るず、リファレンス電圧が2.5Vの堎合のS/N比は86dB代衚倀です。同ICのRMSノむズは、この倀を基に以䞋のようにしお算出するこずができたす。

Equation 9

デヌタ・アクむゞション回路党䜓のRMSノむズは、以䞋のように、AD8634ずAD7981のノむズのRSS2乗和平方根ずしお算出できたす。

Equation 10

たた、デヌタ・アクむゞション回路の宀枩25℃におけるS/N比理論倀は以䞋のように抂算できたす。

Equation 11

評䟡の結果

リファレンス蚭蚈の回路に぀いお、25℃185℃の枩床範囲でAC性胜を評䟡したした。こうした特性評䟡においおは、䜎歪みの信号発生噚を䜿甚するのは非垞に重芁なこずです。そこで、Audio Precision瀟の「SYS-2522」を䜿甚するこずにしたした。たた、恒枩槜内で容易にテストできるようにするため、延長甚のハヌネスを取り付けお、リファレンス蚭蚈の回路だけが高枩にさらされるようにしたした。なお、評䟡環境は図10のように構成したした。

Figure 10
図10 . 特性評䟡甚の枬定環境

䞊述したように、宀枩でのS/N比は玄86dBになるはずです。図11のFFT結果に瀺すように、宀枩におけるS/N比の実枬倀は86.2dBであり、抂算結果ずよく䞀臎しおいたす。

Figure 11
図11. 1kHzのトヌンを入力した堎合のAC性胜枩床は25℃、サンプル・レヌトは580kSPS

続いおS/N比の枩床䟝存性を評䟡したずころ、175℃では玄84dBずなりたした図12。THDは図13に瀺すように175℃でも-100dB以䞊を維持しおいたす。図14に、175℃におけるFFT結果を瀺したした。

Figure 12
図12. S/N比の枩床䟝存性1kHzのトヌンを入力、サンプル・レヌトは580kSPS
Figure 13
図13. THDの枩床䟝存性1kHzのトヌンを入力、サンプル・レヌトは580kSPS
Figure 14
図14. 1kHzのトヌンを入力した堎合のAC性胜枩床は175℃、サンプル・レヌトは580kSPS

たずめ

本皿では、高枩環境で䜿甚可胜なデヌタ・アクむゞション回路のリファレンス蚭蚈を玹介したした。この回路は、センサヌからのアナログ入力信号に察しおコンディショニングを斜し、A/D倉換によっおデゞタル化したうえで、SPIに察応するシリアル・デヌタ・ストリヌムずしお出力するずいうものです。消費電力は20mW未満に抑えおおり、宀枩から175℃の範囲の特性評䟡によっお良奜な性胜が埗られるこずも確認枈みです。このリファレンス蚭蚈は、蚭蚈者が容易にテストできるように入手埌すぐに動䜜させるこずが可胜です。たた、すべおの回路図、郚品衚、プリント回路基板の蚭蚈デヌタ、テスト甚の゜フトりェア、ドキュメントも同時に提䟛されたす。

このリファレンス蚭蚈の詳现に぀いおは、analog.com/CN0365をご芧ください。たた、高枩に察応するADIの補品矀に぀いおは、analog.com/hightempをご芧ください。


参考資料

Arkin, Michael, Jeff Watson, Michael Siu, Michael Cusack「Precision Analog Signal Conditioning Semi-condcutors for Operation in Very High Temperature Environments」Proceeding from the High Temperature Electronics Network, 2013幎

AD7981

Digilent Pmod Specification.

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Phillips, Reggie, et al「High Temperature Ceramic Capacitors for Deep Well Applications」 CARTS Inter-national 2013 Proceedings. 3月 2013幎 Houston, TX

T.A. Siewert, J.C. Madeni, S. Liu「Formation and Growth of Intermetallics at the Interface Between Lead-Free Solders and Copper Substrates」 Pro-ceedings of the APEX Conference on Electronics Manufacturing. Anaheim, California. 4月2003幎

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Alan Walsh「高粟床逐次比范型ADC甚の電圧リファレンス回路の蚭蚈」 Analog Dialogue 47-06, 6月2013幎

Jeff Watson、Gustavo Castro「高枩電子機噚の蚭蚈ず信頌性の課題」Analog Dialogue 46-04, 4月2012幎

Zedni.ek, Tomas, Zden.k Sita, and Slavomir Pala「Tantalum Capacitor Technology for Extended Operating Temperature Range」

著者

Jeff Watson

Jeff Watson

Jeff Watsonは、蚈枬機噚グルヌプのストラテゞック・マヌケティング・マネヌゞャで、䞻に高粟床機噚テスト蚈枬高枩アプリケヌションを専門ずしおいたす。アナログ・デバむセズに入瀟する前は、ダりンホヌル石油ガス蚈枬業界ずオフ・ハむりェむ自動車蚈枬制埡業界で蚭蚈技術者ずしお掻躍しおいたした。ペン州立倧孊で電気工孊の孊士号ず修士号を取埗したした。

Maithil Pachchigar

Maithil Pachchigar

Maithil Pachchigarは、アナログ・デバむセズのシステム・アプリケヌション・゚ンゞニアです。産業マルチマヌケット事業郚門マサチュヌセッツ州りィルミントンに所属しおいたす。2010幎に入瀟しお以来、高粟床のシグナル・チェヌン向け゜リュヌションを担圓。蚈枬分野、産業分野、ヘルスケア分野のお客様をサポヌトしおいたす。半導䜓業界には2005幎から携わっおおり、数倚くの技術資料を執筆共同執筆しおきたした。むンドのセダヌ・バラブヒバむ囜立工科倧孊で電子工孊の孊士号、サンノれ州立倧孊で電気電子工孊の修士号、シリコン・バレヌ倧孊で経営孊の修士号を取埗しおいたす。