電源電圧の正負を反転させる方法

2026年02月11日

Figure 1

   

要約

回路内の既存の電源電圧を基に、正負の符号が逆の電源電圧を生成したいケースがあります。本稿では、そのような場合に利用可能な反転回路の例を紹介します。具体的には、2つの電源回路の構成例を示します。1つは、降圧(バック)コンバータ回路に簡単な変更を加えることで、正の電圧を負の電圧に変換するというものです。もう1つの回路では、昇圧(ブースト)コンバータ回路を利用して負の電圧を基に正の電圧を生成します。パワー・マネージメント技術に習熟するためのヒントとして、ぜひ本稿の内容を活用してください。

はじめに

DC/DCコンバータは、大本の電源を基にして、各種の回路の仕様に応じた電源電圧を生成するために広く使用されています。ほとんどのアプリケーションでは、降圧型のスイッチング・レギュレータ(降圧コンバータ)が使われることが多いでしょう。ただ、より低い電圧を基により高い電圧を得るために、昇圧コンバータが使用されることもあります。降圧型と昇圧型の2つのトポロジは、非常に多くのアプリケーションで使用されています。

電源電圧を反転させる方法

アプリケーションにおいて、既存の電源電圧とは正負の符号が逆の電源電圧が必要になることがあります。具体的には、正の電源電圧を負の電源電圧に変換する方法が必要になるケースが多いはずです。例えば、信号経路上に配置されたセンサーによって、値が正にも負にも振れる電圧信号を処理したい場合、正の電源電圧だけでなく負の電源電圧も必要になります。オペアンプの電源として5Vと-5Vを使用し、正負に値が振れる電圧信号を処理するといった具合です。また、一部のアプリケーションでは、MOSFETのゲートを安全にオフにするために負の電圧が必要になることがあります。ここでは、まず既存の正の電源電圧から負の電源電圧を生成したいケースを考えます。その場合、図1に示すような反転トポロジを利用するとよいでしょう。このような構成の回路を使用すれば、正の電圧を負の電圧に変換できます。ご覧のとおり、この回路はトランスを必要としない非常にシンプルなものです。スイッチング方式の標準的な降圧コントローラICを使用することで容易に実現できます。この例では、通常であれば降圧コンバータ回路の出力電圧に相当するノードをシステムのグラウンドに接続しています。そして、降圧コントローラICのGNDピンから負の電圧が出力されることになります。その電圧の値は、抵抗Rfb1と同Rfb2から成る分圧器によって調整できます。

図1. 正の電圧から負の電圧を生成する回路。スイッチング方式の降圧コントローラICを利用しています。
図1. 正の電圧から負の電圧を生成する回路。スイッチング方式の降圧コントローラICを利用しています。

一方で、負の電源電圧を基に正の電源電圧を生成しなければならないこともあるでしょう。例えば、通信分野の多くのアプリケーションでは-48Vを48Vに変換する必要があります。産業分野にもそのようなアプリケーションが存在します。この種の要件にも、トランスを必要としない優れたソリューションで対応できます。図2に示したのは、負の電源電圧を基に正の電源電圧を生成するコンバータ回路です。この回路で使用するのは降圧コントローラICではなく、昇圧コントローラICです。入出力電圧のレベルについては、各スイッチのボディ・ダイオードが正しい方向に導通するように配慮する必要があります。

図2. 負の電圧から正の電圧を生成する回路。スイッチング方式の昇圧コントローラICを利用しています。
図2. 負の電圧から正の電圧を生成する回路。スイッチング方式の昇圧コントローラICを利用しています。

負の電圧を正の電圧に高い効率で変換するだけでなく、他の機能がいくつか必要になることもあるでしょう。そのような場合にはコンポーネントを追加しなければなりません。例えば、ソフトスタート機能やクロックの同期機能などを利用するために、設定用のピンを制御しなければならないとします。そのような場合には、ピンの入力電圧の仕様に適合させるためにレベル変換の機能を使用する必要があるかもしれません。そうしたピンの許容電圧範囲は、昇圧コントローラICのGNDピンのレベルに依存することになります。この例におけるGNDピンは、コンバータ回路に負の電圧を入力するためのピンとして使われています。その点には注意が必要です。

図3. LTC7899を使用して構成した反転回路。この回路図はLTspice上で作成しました。
図3. LTC7899を使用して構成した反転回路。この回路図はLTspice上で作成しました。

負の電圧から正の電圧への変換を実現するコンバータ回路において、より高い電圧を扱わなければならないこともあるでしょう。そのような場合にも安全なスイッチングを実現できるようにするためには、そうしたアプリケーションに対して最適化された専用のICを使用すべきです。そのような製品の例としては、スイッチング方式の昇圧コントローラIC「LTC7899」が挙げられます。この製品は、負の電圧から正の電圧への変換に特化した専用のICとして設計されています。外付けのスイッチを使用した同期整流方式の動作によって昇圧機能を実現します。このICは、入出力電圧の差が最大135Vに達しても耐えられます。図3に、「LTspice®」上で作成したシミュレーション用の回路例を示しました。ご覧のように、LTC7899を使用して反転回路を構成しています。LTspiceを使用すれば、この回路のシミュレーションを実施できます。

まとめ

本稿で説明したように、多くのアプリケーションでは符号を反転した電源電圧が必要になります。そのための処理は、シンプルなソリューションによって実現可能です。降圧/昇圧コントローラを利用すれば、トランスを使用することなく電源電圧の符号を簡単に反転させられます。また、必要なコントローラICは数多くの候補の中から選択することが可能です。但し、高性能で使いやすい回路を設計したい場合には、LTC7899のような専用のコントローラICを利用するとよいでしょう。


著者について

Frederik Dostal
Frederik Dostalは、アナログ・デバイセズ(ドイツ ミュンヘン)のパワー・マネージメント担当エキスパートです。20年以上にわたって蓄積した設計/アプリケーションに関する知識を活かし、パワー・マネージメント分野のエキスパートとして活躍しています。ドイツのエアランゲン大学でマイクロエレクトロニクスについて学んだ後、2001年にNational
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