感電を防げ! 医療用機器の安全性を確保するための保護手段
質問
IEC 60601では、医療用機器の正常時の動作だけでなく、単一故障の発生時の動作も重視しています。これはなぜですか?
回答
医療の現場で、医療用電気機器に関連する安全性を確保するにはどうすればよいのでしょう。例えば、すべての機器が完璧に動作すれば、安全性を確保できるのでしょうか。現実的には、その考え方は適切ではありません。そうではなく、使用する機器には何らかの故障が生じる可能性があると想定すべきです。実際、IEC60601では、機器の故障が発生することを前提として様々な要件が定義されています。この規格に準拠するためには、絶縁破壊や接地故障といった単一故障が発生した場合でも、患者や医療従事者の安全性を確保できることを証明しなければなりません。それに向けて、同規格で定義されたのがMOPです。MOPでは、人体に直接接触するタイプの医療用機器に単一故障が発生した場合でも、感電事故につながらないようにするための手段を定めています。具体的には、絶縁/分離のための適切な手段を適用すると共に、コンポーネント間の間隔を確保することを求めています。

はじめに
医療用機器は、その動作環境において独特な特徴を備える存在だと言えます。民生用の電子機器とは異なり、医療用機器はしばしば人体と直接接触します。そして、時には重篤な状態の患者に対処するために使われます。あるいは、患者の生命の維持にかかわる重要な役割を担うこともあります。除細動器、患者のモニタリング機器、輸液ポンプなどはいずれも重要性の高い機器です。その分、抱えるリスクも大きくなります。それらの機器に電気的な絶縁や分離の面で不具合が発生すると、患者または医療従事者を深刻な危機に直面させてしまう可能性があります。このようなリスクに対処するために、いくつもの国際規格が策定されました。その代表的な例がIEC 60601です。この規格の目的は、各種の医療用機器に必要な性能などについて定義し、厳格な安全基準を満たすことを保証できるようにすることです。それに向けて、患者と医療従事者を電気的、機械的、熱的な危険性から保護するための要件が定義されています。多くの場合、医療用機器は、世界中の病院や診療所で使用しても問題がないという承認が得られるように設計しなければなりません。そのためには、IEC 60601に準拠することが必須になります。なかでも、IEC 60601-1はこの分野で最も重要な規格の1つです。この規格は、医療用機器の安全性と必須の性能について定めています。その中でMOPの概念が定義されています。加えて、同規格では、機器のオペレータと患者のそれぞれを対象とした場合に必要な保護手段を個別に定義しています。それが、オペレータ保護手段(MOOP:Means of Operator Protection)と患者保護手段(MOPP:Means of Patient Protection)という2つの規格です。医療用機器を設計/製造する設計者や技術者は、MOOPとMOPPのそれぞれについて正しく理解しておかなければなりません。その上で、部品の選定、プリント回路基板のレイアウト、絶縁についての戦略の策定、システム全体のアーキテクチャについての検討を実施する必要があります。
MOPについて理解する
ここでは、MOPの概要について解説します。MOPについて理解するには、MOOPとMOPPとはそれぞれどのようなものなのかを把握する必要があります。
MOOP/MOPPとは何か?
MOOPとMOPPは、医療用機器における電気的な保護のレベルを表します。これらは、感電を防ぐためには各機器に対してどの程度の絶縁/分離を適用する必要があるのかを判断するために使用されます。MOOPは、機器を使用するものの、それに物理的に接続されるわけではない医療従事者(オペレータ)を想定して定義されています。一方のMOPPは、電極、プローブ、その他の導電経路を介して機器に直接接続される可能性がある患者を想定して定められています。多くの場合、患者は体調に問題があり、機器に物理的に接続されることから、より脆弱性の高い状態にあるということになります。そのため、MOPPで規定されている内容はMOOPと比べてはるかに厳格です。機器のオペレータは訓練を受けた専門家であることに加え、内部の回路に直接接続されるわけではありません。そのため、オペレータのリスクは比較的低いと言えます。このような理由から、MOOPの要件はMOPPと比べればそれほど厳格ではありません。
主要な技術的要件
IEC 60601-1は、絶縁耐圧、分離、動作電圧、沿面距離、空間距離、漏れ電流に関する具体的な要件を規定しています。それぞれの規格値は、機器がMOOPとMOPPのうちどちらを満たす必要があるのかによって異なります(表1)。通常、MOOPでは基礎絶縁で1500 VAC、二重絶縁で3000 VACの絶縁耐圧が求められます。MOPPの沿面距離については、基礎絶縁で4mm、二重絶縁で8mmが要求されます。
| 分類 | 絶縁耐圧 | 沿面距離 | 空間距離 | 絶縁 |
| 1× MOOP | 1500 VAC | 2.5 mm | 2.0 mm | 基礎 |
| 2× MOOP | 3000 VAC | 5.0 mm | 4.0 mm | 二重/強化 |
| 1× MOPP | 1500 VAC | 4.0 mm | 2.5 mm | 基礎 |
| 2× MOPP | 4000 VAC | 8.0 mm | 5.0 mm | 二重/強化 |
基礎絶縁は、電気部品との直接の接触を防ぎ、感電のリスクを軽減するための第1層です。二重絶縁では、その基礎絶縁層と強化絶縁層を組み合わせます。第1層に障害が発生した場合でも安全性を確保できるように第2層を用意するということです。これは、グラウンディングによる保護に頼らない機器において特に重要です。医療用機器では、故障が発生した際の漏れ電流を安全なレベルに制限する必要があります。特に、患者に接続する機器では漏れ電流を極めて少なく抑えなければなりません(多くの場合、100μA未満)。これらの絶縁手法を組み合わせることにより、患者と医療従事者の両方にとって安全な機器であることを保証します。
医療用機器への適用
患者に接続するタイプの医療用機器はMOPPの規格に準拠する必要があります。電気的な危険から患者を保護するためには堅牢性の高い分離が不可欠です。そうした保護が必要な機器の例としては、心臓の活動を測定するための心電図(ECG:Electrocardiogram)モニタが挙げられます。正確な量で薬剤を投与するための輸液ポンプもその種の機器の1つです。また、診断用の画像を取得するために使用される超音波プローブや、心拍のリズムを回復させるために高電圧のショックを与える除細動器なども、このタイプの機器に該当します。
オペレータによって操作され、患者にも直接接触することなく使用される機器は、通常、MOOP規格への準拠が求められます。分離の要件はそれほど厳格ではないものの、それらの機器にも高い性能と信頼性が求められることは言うまでもありません。そうした機器の例としては、血液や組織などの分析装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像)装置やCT(Computed Tomography:コンピュータ断層撮影)スキャナなどの診断画像システム、画像の表示や制御に使用される医療用ワークステーションなどが挙げられます。
MOPに準拠するための設計戦略
ここまで、MOPの概要について説明してきました。では、MOPの要件を満たす設計を実現するにはどうすればよいのでしょうか。以下、これについて詳しく説明していきます。
リスクに基づく設計
医療用機器を開発する際には、基本的なアプローチとしてリスク分析を実施することになるでしょう。それにより、安全性を確保すると共に規格に準拠することが可能になります。そのプロセスは、包括的なリスク評価から始まります。その評価は、ISO14971で定められたリスク・マネージメントのプロセスやIEC60601-1などの規格に基づいて実施されます。具体的には、機器の用途、動作環境、医療従事者/介護者/患者といった機器の使用者の特性を評価することになります。
重要な検討事項の例としては、機器の使用場所が挙げられます。つまり、臨床現場、家庭、移動環境のうちどこで使用するのかということです。また、機器を操作するのは訓練を受けた人員なのか、一般的な使用者なのかということも検討事項の1つになります。機器と患者の相互作用の性質を判断することもリスク評価の重要な要素です。血液や組織の分析装置や遠隔操作される画像診断装置など、患者と直接接触しない機器の場合、MOOPに準拠すれば十分な可能性があります。それに対し、患者と接触する機器の場合、MOPPへの準拠が必須です。カテーテルやプローブのように侵襲的なものも、ECGの電極のような非侵襲的なものも、患者と接触する機器に含まれます。また、設計においては単一故障が生じている状態について考慮する必要があります。例えば1つの保護手段が故障した場合でも、機器の安全性が維持されるようにしなければなりません。これはIEC 60601-1の中核的な要件です。同規格は、正常時と故障の発生時の両方を対象とした試験を義務づけています。加えて、危険性の特定、リスクの推定、管理用の措置、安全機能の検証など、リスク・マネージメントに関するすべての活動については完全にドキュメント化する必要があります。それらのドキュメントは承認の申請や規制に関する審査の際に役立ちます。それだけでなく、リスク分析に基づく設計上の決定の正当性を示したり、その決定に対するトレーサビリティを確保したりするための術にもなります。
絶縁技術
MOOP/MOPPへの準拠を目指す目的は、医療用機器のオペレータと患者の安全性を確保することです。それに向けた機器設計については基盤になる戦略が存在します。それが絶縁です。つまり、敏感な回路や患者と接触する部分に危険な電圧が到達することがないように機器を設計するということです。各規格では、高電圧の領域と低電圧の領域の間を絶縁することが義務づけられています。図1は、医療用機器のAC/DC電源に適用すべき保護手段についてまとめたものです。オペレータと患者の保護を実現するためには適切に絶縁を施す必要があります。
適切な絶縁を実現するには、そのための様々なコンポーネントや手法を採用しなければなりません。それらには、明確な長所やトレードオフが存在します。以下、代表的なコンポーネント/手法について説明します。
1. 絶縁トランス
絶縁トランスは、電源で一般的に使用されるコンポーネントです。これを使用すれば、入力と出力の間にガルバニック絶縁を施すことができます。医療グレードの絶縁トランス製品は、求められる仕様を満たせるよう特別に設計されます。具体的には、患者の安全を確保する上で極めて重要な高い絶縁耐圧を実現します(多くの場合、数kV)。それだけでなく、漏れ電流を非常に少なく抑えられるようになっています。高い信頼性と堅牢性が得られることから、確実かつ連続的な給電が必要とされる用途に最適です。
2. オプト・カプラ
オプト・カプラ(オプト・アイソレータ)は、LEDと光検出器を備えるデバイスです。これを使用すれば、絶縁バリアを越えて信号を伝送することができます。より詳しく言えば、まずオプト・カプラに入力された電気信号をLEDによって光に変換します。その光は非導電性のギャップを越えて伝送され、光検出器によって再び電気信号に変換されます。オプト・カプラは有用なデバイスであり、広く活用されています。但し、いくつかの欠点があることには注意が必要です。例えば、信号の伝送速度が遅い、帯域幅が限られている、LEDの経年劣化によって性能が低下する可能性があるといった具合です。これらの短所は、高い性能が求められるシステムの長期信頼性に影響を及ぼす可能性があります。
3. デジタル・アイソレータ
「iCoupler®」に代表されるデジタル・アイソレータ製品は、オプト・カプラを代替する最新のデバイスです。容量カップリング、磁気カップリング、またはRFカップリングを利用することで、絶縁バリアを越えるデジタル信号の伝送を実現します。デジタル・アイソレータを採用すれば、オプト・カプラと比べて、速度、データの完全性、寿命が大幅に向上します。これらのうち寿命については、オプト・カプラとは異なりLEDの劣化メカニズムの影響を受けないからです。医療用機器では、SPI(Serial Peripheral Interface)、I2C、UART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)などの高速通信インターフェースが広く使用されています。デジタル・アイソレータは、それらの信号線の絶縁に適しています。また、多くのデジタル・アイソレータは強化絶縁規格を満たすように設計されています。そのため、MOOPとMOPPの両方の要件に対応可能です。
4. 通信インターフェースの絶縁
USBやイーサネットによる外部接続を備える医療用機器では、グラウンド・ループや故障の伝播を防ぐためにも絶縁が活用されます。外部のサージや障害に対するシステムの保護を実現しつつ信号の完全性を維持するために、絶縁型のトランシーバーをはじめとする絶縁ICが使用されるということです。その場合、絶縁側に配置されたコンポーネントに対する給電方法が主な課題になります。
5. 基板レイアウトについて考慮すべき事柄
IEC 60601-1に準拠する安全性の高い医療用機器を実現するためには、プリント回路基板のレイアウトが重要な要素になります。特に沿面距離と空間距離に対しては、基板レイアウトが大きな影響を及ぼす可能性があります。感電を防止し、患者とオペレータの安全を確保するためには、沿面距離/空間距離を適切に確保しなければなりません。沿面距離とは、絶縁材料の表面に沿った2つの導電要素の間の最短経路のことです(図2)。一方、空間距離とは空気中を通る最短経路のことを指します。IEC 60601-1に準拠するには、動作電圧と材料のグループに基づく具体的なガイドラインに従う必要があります。その上で、高電圧領域の配線パターンと低電圧領域の配線パターンの間隔を慎重に設定しなければなりません。なお、スロット(溝)や絶縁バリアを戦略的に使用すれば、基板全体のサイズを増大させることなく沿面距離を効果的に延ばすことができます。この手法は、小型の医療用機器を設計する場合、特に有用です。また、比較トラッキング指数(CTI:Comparative Tracking Index)の値が適切な材料を選択することも重要になります。正確な間隔を確保する上では、標高(気圧)や汚染度といった環境的な要因を考慮することも不可欠です。正常時と故障の発生時の両方について規格を満たすには、機器に関するより広範なリスク・マネージメントの戦略に、レイアウトに関するすべての決定事項を反映させる必要があります。そのことが、医療用機器の最終的な安全性と信頼性につながります。
漏れ電流の管理
IEC 60601-1の要件を満たして医療用機器の安全性と信頼性を確保するためには、漏れ電流の制御が不可欠です。図3に示すように、医療用機器内では様々な漏れ電流が生じる可能性があります。IEC 60601-1では、絶縁不良や容量カップリングに起因する様々な漏れ電流を定義しています。具体的には、接地漏れ電流、接触漏れ電流、患者漏れ電流、患者補助電流が定義されています。漏れ電流とは、異常な経路や望ましくない経路を意図せず流れる電流のことです。多くの場合、漏れ電流は機器の電源がオフになっているときや絶縁不良が生じているときに流れます。この現象は、あらゆる電気システムで発生する可能性があります。漏れ電流は、エネルギーの浪費、サーキット・ブレーカの作動、電気的ノイズ、過電圧、火災などの原因になり得ます。また、人体を介してグラウンドに電流が流れる経路が存在する場合には感電が生じてしまう可能性があります。漏れ電流が発生する一般的な原因としては、絶縁不良、接地の問題、温度などの環境的な要因、電子部品の欠陥などが挙げられます。
IEC 60601-1では、現実的なインピーダンスと周波数応答をシミュレートするために、正常時と単一故障の発生時を対象とする人体モデルを使用した試験が義務づけられています。特に心臓に関連するアプリケーションについては、漏れ電流の厳格な制限値が設定されています。IEC 60601-1の文脈において、タイプB、同BF、同CFという用語は、適用されるコンポーネントの分類に使われます。つまり、対象になるのは、患者と物理的に接触する医療用機器の構成要素であるコンポーネントです。これらの分類は、主に感電に対する保護に関連しています。以下に示すように、患者との接触の性質と部位によって分類が行われています。
- タイプB(身体):基本的な保護、接地あり、患者との直接の接触なし(例:病院のベッド)
- タイプBF(身体に装着、フローティング):皮膚との導電性の接触に対する強化絶縁(例:超音波プローブ)
- タイプCF(心臓に装着、フローティング):心臓との直接的な接触に対する最高レベルの保護(例:ペースメーカーのリード線)
漏れ電流を低減するための方法としては、漏れ電流の少ないコンポーネントの採用、グラウンディングの最適化、シールドの適用、フィルタの適用などが挙げられます。適合性については、IEC62353に基づく医療用機器の運用試験(定期点検や故障のシミュレーションを含む)といった厳格な試験によって検証されます。それにより、患者とオペレータにとって安全な運用が保証されます。
試験と検証
医療用機器の設計が完了したら、IEC 60601-1への準拠を保証するために徹底的な試験を実施する必要があります。その際には、主要な電気的試験によって正常時と故障の発生時の安全性を検証します。例えば、絶縁耐圧の試験では高電圧を印加して絶縁の完全性を確認します。分離抵抗の試験は、絶縁されたコンポーネントによって意図せず流れる電流を防止できることを保証するために実施します。一方、漏れ電流の試験では、故障の発生時をシミュレートし、安全を確保するための制限値内に漏れ電流が収まっていることを確認します。沿面距離と空間距離については、より厳格な条件で患者と接触するコンポーネントを評価します。また、絶縁体は特定の厚さと強度の基準を満たさなければなりません。多くの場合、保護の能力を高めるためには強化絶縁が必要です。医療用機器については、短絡やオープン・サーキット、環境からのストレスによる単一故障などが生じた状態の試験も実施されます。それにより、継続的な安全性を確保するということです。更に、医療用機器のライフサイクル全体を通して規格に準拠した状態を維持するために、定期試験や修理後の試験なども実施されます。それにより、安全で信頼性の高い動作を実現するための包括的な枠組みが構築されます。
MOPに対応するアナログ・デバイセズのソリューション
最後に、MOPに準拠するために利用可能なアナログ・デバイセズの各種製品を紹介しておきます。
絶縁型の電源
アナログ・デバイセズは、様々な絶縁型パワー・コンバータを提供しています。それらの製品は、オプト・カプラではなく、トランス・ベースの絶縁手法を採用しています。それにより、高い性能、長い寿命、高い信頼性が実現されます。また、それらの製品の多くは強化絶縁に対応しています。そのため、2×MOPPを必要とするアプリケーションに適しています。「ADuM5020」は、絶縁型のDC/DCコンバータの代表的な例です。完全集積型の製品であり、EMI(電磁干渉)性能に優れることを特徴とします。高い動作電圧に対応可能であり、医療用機器のアプリケーションに適しています。
絶縁型ゲート・ドライバ
「ADuM4120」は、スイッチング・アプリケーション向けに設計された絶縁型のゲート・ドライバです。強化絶縁と高速なスイッチング速度に対応しているので、絶縁型電源のパワー・トランジスタを駆動する用途に最適です。ゲート・ドライバは、低電圧の領域から、高電圧を使用するスイッチング・デバイスを制御する必要があるシステムに不可欠です。アナログ・デバイセズのゲート・ドライバは、そのような制御を高い安全性/信頼性で実現します。
標準的なデータ・アイソレータ
RS-232は、医療用機器に適した信頼性の高い通信規格として長年にわたり活用されてきました。特に、高い絶縁耐圧を備え、2×MOPPなどの規格を満たす「ADuM2201」のような絶縁ICと組み合わせることにより、RS-232の性能を最大限に活かすことが可能になります。
ただ、高い性能が求められる機器や民生用の機器では、RS-232を代替するソリューションとしてUSBが利用されるようになりました。そのため、アナログ・デバイセズはUSBに対応する絶縁ICも提供しています。「ADuM4160」や「LTM2884」といった絶縁型アイソレータを採用すれば、MOOP/MOPPの要件を満たすことが可能なUSBのリンクを構成できます。これらの絶縁型アイソレータICは、輸液ポンプ、モニタリング機器、診断用装置など、患者に接続するタイプの医療用機器に適しています。患者を電気的なリスクから保護しつつ、医療用以外のシステムとの安全なデータ交換に寄与します。
ワイヤレスの医療用機器の多くは、充電やファームウェアのアップデートに対応するためにUSBポートを備えています。それらのポートがどのような条件下で使われるのかはわかりません。したがって、絶縁の適用が不可欠です。USBは物理的なケーブル接続を必要としますが、最新の医療用機器にとって有用な技術だと言えます。なぜなら、安全性と汎用性に優れるからです。適切な絶縁が実現されるなら、RS-232と並ぶ有力な選択肢になります。
まとめ
MOOP/MOPPは、医療用機器の安全性を確保するために不可欠な規格です。これらは、オペレータと患者を電気的な危険から保護することが可能なシステムを設計するための指針になります。IEC 60601-1は、絶縁、分離、漏れ電流についての明確なガイドラインを提供します。しかし、それらの要件に対応する機器を実装するには、慎重な計画と適切な部品の選定が必要になります。アナログ・デバイセズは、MOPに準拠する多種多様な絶縁ICやパワー・マネージメントICを提供しています。代表的な製品としては、デジタル・アイソレータ、ゲート・ドライバ、絶縁型インターフェースなどが挙げられます。それらを採用すれば、安全性と信頼性に優れる高性能の医療用機器を設計することが可能になります。重要なのは、MOOPとMOPPの違いを理解し、適切な設計戦略を策定することです。それにより、世界的な安全規格を満たす医療用機器を設計できるようになります。また、規制当局からの承認を得るのも容易になります。その結果、医療用機器を日々必要とする人々の安全を確保することが可能になります。
著者について
Hermogenes Escalaは、アナログ・デバイセズのアプリケーション・エンジニアです。EMEAセントラル・アプリケーション・センター(CAC)に所属しています。専門はスイッチング電源(SMPS)とパワー・マネージメント技術。豊富な実務経験と技術的な知見を職務に活かしています。アナログ・デバイセズに入社する前は、自動車のダッシュボード、オーディオ・システム、医療用機器といった多様なアプリケーションで使用される電源の設計/サポート...