リモートキーレスエントリ(RKE:Remote Keyless Entry)システムの設計

2003年12月29日
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要約

このアプリケーションノートでは、RKEシステムの機能、および主要な設計課題(消費電力の低減、RKEの送受信距離、および信頼性)への対処方法について述べています。これらの課題に対応するために設計されたマキシムの製品についても紹介します。

追加情報:

リモートキーレスエントリ(RKE)システムにより、ユーザはキーチェーンのトランスミッタを使用して、車の開錠/施錠を行うことができます。トランスミッタは車両に取り付けたレシーバにデータを送信します(「リモートキーレスエントリシステムの概要」も参照してください)。

このアプリケーションノートでは、RKEシステムの機能、および主要な設計課題(消費電力の低減、RKEの送受信距離、信頼性)への対処方法について述べています。

図1. リモートキーレスエントリ(RKE)システムのブロック図

図1. リモートキーレスエントリ(RKE)システムのブロック図

上記のRKEブロック図でわかるように、ユーザはキーフォブの押しボタンスイッチを押すことで、操作を開始します。これにより、RKEのキーフォブ内のCPUが起動し、データストリームをRFトランスミッタに送ります。データストリームは通常64~128ビット長で、プリアンブル、コマンドコード、ローリングコードが含まれています。データストリームは通常、2kHz~20kHzのレートで送られます。変調方式は振幅シフトキーイング(ASK:Amplitude Shift Keying)であり、これは主にキーフォブのバッテリ寿命を延長するために使用しています。

車両に取り付けられたRKEのRFレシーバは、RF信号を取り込んで復調し、データストリームをCPUに送ります。CPUはデータストリームをデコードして、コマンドモジュールに命令を伝えます。

リモートキーレスエントリ設計の課題

リモートキーレスエントリのシステム設計における課題では、頑丈で、信頼性があり、かつ消費電流の少ない低コストなシステムが実現されつつあります。バッテリ寿命はトランスミッタとレシーバの両方にとって重要です。

電力に関する検討事項

トランスミッタのバッテリ寿命は3~5年が理想的です。レシーバにとってもバッテリ寿命は同様に重要です。なぜなら、ユーザからの送信をいつでも受信できるようにレシーバの電源は常にオンでなければならないからです。標準的な仕様で要求される平均電流は1mA以下です。システム設計者がこの問題を解決するための方法の1つは、レシーバを短時間だけ(有効な送信があるかどうかを判断できるだけの時間)オンにしておくというものです。それ以外の時間、レシーバは「スリープ状態」になります。エネルギをできるだけ節約するため、レシーバは極めて高速に起動できることが必要となります。

性能:距離と信頼性

リモートキーレスエントリのアプリケーションには、良好な送受信距離と信頼性のある伝送が必要です。レシーバ感度を上げて、送信電力を高くすれば(消費電流を著しく増大させずに)、距離と信頼性を直接的に向上できます。これらのシステムが数百万台設置されることを考えれば、低価格化が必須の要件となることは明らかです。

製品の選択

マキシムはこれらの課題を認識し、リモートキーレスエントリのシステム設計者のニーズに応えた製品群を用意しています。MAX1472トランスミッタ、およびMAX1470MAX1473レシーバは、これらの要件を考慮に入れて、特別に設計したものです。

MAX1473は、業界初の300MHz~450MHzスーパーヘテロダインASKレシーバであり、-114dBmの高感度、ユーザが選択可能な50dB以上の中心周波数のイメージ除去、および3Vまたは5V電源のいずれかで駆動できるオプションを特徴として備えています。この製品は、シャットダウンモードで1.5mA未満、レシーバモードでも5.2mAしか電流を消費しません。MAX1473は最高100kbpsのレートでデータを受信でき、シャットダウン状態から有効データ受信状態へ250µs未満で移行できます。MAX1473はワンステップのAGC回路を内蔵しており、RF入力信号が-57dBmより大きくなると、LNAの利得が35dBまで低減します。レシーバは、受信信号強度インジケータ(RSSI:Received-Signal-Strength-Indicator)を備えた10.7MHzのIFフィルタを使用しています。また、チップ内の位相ロックループ、VCO、およびアナログベースバンドのデータ復旧回路も搭載されています。MAX1473は28ピンSSOPパッケージに収められており、1.95ドル(10,000個単位)で提供しています。

MAX1470は、MAX1473と非常によく似た製品ですが、AGCは搭載されておらず、3V電源でのみ動作します。したがって、MAX1470はMAX1473より低価格で、1.65ドル(10,000個単位)です。

MAX1472は業界最小のVHF/UHF PLLベースのASKトランスミッタで、3mm x 3mmの小型8ピンSOT-23パッケージに収められています。トランスミッタは、低コストな量産アプリケーション、つまり300MHz~450MHz帯域で動作するリモートキーレスエントリなど、スペースが極めて重要なアプリケーションにとって最適です。MAX1472はリチウム電池で直接駆動するよう設計されています。スタンバイモードでは2.1Vの低電圧で動作し、わずか100nAの電流しか消費しません。送信中、MAX1472は50Ωの負荷に対して、−10dBm~+10dBmの電力を出力できます。+10dBmの電力レベルの場合、MAX1472は、50%のデューティサイクルのエンコード方式(たとえば、マンチェスタ)を使用するときに、315MHzにて5.5mAの電流を消費します。0dBmの出力では、消費電流は3mAに低減します。この製品は、最高100kbpsのレートでデータを受け入れることができます。

MAX1472のイネーブルピンを有効にすると、わずか250µsでPLLと水晶振動子が安定して送信可能となります。MAX1472は、小型のポータブルアプリケーションを目標にしているので、低価格の表面実装パッケージに広く利用されている10MHz~15MHzの水晶周波数を受け入れることができます。

MAX1472は、水晶ベースのPLLを使用しているため、LCやSAWベースのトランスミッタによくある問題を解消することができます。水晶周波数に備わる特有の精度により、より狭いIF帯域幅をレシーバで利用でき、システムの感度が向上します。マキシムのMAX1470やMAX1473レシーバを使用すれば、IF帯域幅を600kHzから50kHzへと狭くするだけで、9dBの感度向上が可能です。感度の向上は、お客様の製品の距離の延長や、伝送の信頼性の向上に直接的につながります。MAX1472の価格は1.39ドルです(1,000個単位)。



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