1ステップで高電圧をコア電圧に変換する方法

2024年09月03日
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要約

48Vや54Vといった高電圧から、大規模なデジタルIC用のコア電圧(通常は1V未満)を1ステップで直接生成するというのは現実的なことなのでしょうか。本稿では、そのような電圧変換の可能性について検討します。これを実現できれば、実装スペースを節約しつつ、効率を高められます。それだけでなく、入力電源レールの設計に関連するコストを削減可能です。更に、同等の給電を行うために12Vの中間バスを使用する場合と比較すると、高電圧バスのルーティングに必要な銅線の量も抑えられます。

はじめに

データ・センターで使用されるデジタル・プロセッサや、ハイエンドのFPGA、大規模なAI用プロセッサ、スーパーコンピュータ用のプロセッサには共通点があります。それは、コア電圧を供給するための電源回路が非常に重要な存在になるというものです。通常、コア電圧の値は1V未満ですが、100Aをやや下回るレベルから、場合によっては1kA以上の電流を供給する必要があります。

このような低電圧/大電流に対応可能な電源回路を構成するためには、いくつかの課題を解決しなければなりません。まず、冷却用の条件を最低限に抑えるために、高い変換効率を実現することが不可欠です。また、給電用の回路は、負荷(プロセッサ)に接続するための配線の寄生容量を最小化するようコンパクトに構成する必要があります。更に高速な負荷過渡応答を実現し、優れたレベルで電圧をレギュレートできるようにしなければなりません。

ここで図1をご覧ください。これは、一般的な2段構成の電圧変換アーキテクチャを示したものです。このアーキテクチャでは、まず48Vの電源電圧を12VのDCリンク電圧(中間電圧)に変換します。そして、その12Vの電圧から1V未満のコア電圧を生成します。

図1. 2段構成の電圧変換アーキテクチャ。48Vの電源電圧から0.8Vのコア電圧を生成するといった場合に一般的に使用されています。
図1. 2段構成の電圧変換アーキテクチャ。48Vの電源電圧から0.8Vのコア電圧を生成するといった場合に一般的に使用されています。

このような2段構成の変換アーキテクチャでは、各段の効率が高くても、全体としての効率が低下するという問題が生じます。例えば、各段の効率が93%であったとします。その場合でも、損失が累積されることによって、全体の効率は約87%(0.93×0.93 = 0.8649)にとどまります。

図2.1段構成の電圧変換アーキテクチャ。48Vの電源電圧から0.8Vのコア電圧を直接生成します。
図2.1段構成の電圧変換アーキテクチャ。48Vの電源電圧から0.8Vのコア電圧を直接生成します。

続いて図2をご覧ください。これは図1のアーキテクチャに代わる1段構成のアーキテクチャです。この構成では、48Vの電源を基に0.8Vのコア電圧を直接生成します。これを可能にしているのは、アナログ・デバイセズのμModule®レギュレータ「LTP8800-4A」です。このソリューション(モジュール)は、負荷電流が100Aの場合に90%を超える効率を達成します。最大出力電流は200Aです。また、このモジュールを複数個並列で動作させれば、1kA以上の出力電流を得ることも可能です。このことは、一部のハイエンドのプロセッサにとって非常に重要な意味を持ちます。

LTP8800-4Aは、コア電圧の生成を目的として設計された専用コンバータです。0.5V~1.1Vのコア電圧を1段構成で生成し、最大200Aの大電流を供給することができます。従来の降圧コンバータでは、48Vから0.5Vに変換する場合、約1%のデューティ・サイクルを実現する必要がありました。ただ、そのようなデューティ・サイクルを実現するのが困難であることは周知の事実でした。スイッチング方式のレギュレータには、スイッチの最小オン時間などに関する固有の制約が存在します。そのため、高いスイッチング周波数でパルス幅の比(デューティ・サイクル)を低くすることには限界があります。結果として、最高の効率を得ることはできませんでした。

2段構成の初段で中間電圧を生成するプロセスを排除することにより、システム構成は簡素化されます。これについては、1段の電圧コンバータを使用するだけで済むのですから明らかです。1段構成の場合、48V~54Vといった高い電源電圧を電圧コンバータに直接接続します。そのため、実装面積を抑えられるだけでなく、必要な銅線の量も削減できます。つまり、コストの削減も図れます。

図3. LTP8800-4Aの外観。フォーム・ファクタの小さいモジュールが実現されています。
図3. LTP8800-4Aの外観。フォーム・ファクタの小さいモジュールが実現されています。

図3に示したのは、LTP8800-4Aの外観です。ご覧のように、フォーム・ファクタの小さいモジュールが実現されています。同製品はμModule技術を適用したものなので、従来必要であった複雑な回路設計を行うことなく優れた電源を実現可能です。また、フォーム・ファクタが小さいので、大規模なデジタルIC(負荷)に隣接する回路基板に容易に実装できます。

LTP8800-4Aは、コア電圧向けの専用品ですが、最新のコンバータ製品でもあります。そのため、PMbus®技術も適用されています。つまり、PMbusを介して高度なデジタル制御機能を利用可能であり、電圧、電流、温度、故障をリアルタイムに監視することができます。また、同製品が内蔵するEEPROMには、様々な設定情報やエラーに関するログを保存することが可能です。更にに、電力コンバータの制御ループはデジタル接続を利用することで微調整できます。

まとめ

本稿では、48Vからコア電圧を直接生成可能な新たなモジュール製品を紹介しました。この製品は、小型なだけでなく、高い効率を達成します。そのため、従来の2段構成の電源アーキテクチャに代わる極めて有力な選択肢だと言えます。

著者について

Frederik Dostal
Frederik Dostalは、アナログ・デバイセズ(ドイツ ミュンヘン)のパワー・マネージメント担当エキスパートです。20年以上にわたって蓄積した設計/アプリケーションに関する知識を活かし、パワー・マネージメント分野のエキスパートとして活躍しています。ドイツのエアランゲン大学でマイクロエレクトロニクスについて学んだ後、2001年にNational Semiconductorに入社。お客様のプロジェクトを支援するフィールド・アプリケーショ...

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