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デバイス・ドライバ

コンポーネントのデジタル・インターフェースとを介して通信するために使用されるCコードやFPGAコードなどのソフトウェアです。

ADF4350 GitHub no-OS Driver Source Code

ADF4350 IIO Wideband Synthesizer GitHub Linux Driver Source Code

機能と利点

  • 50MHz to 6GHz Quadrature Demodulators
  • Wideband PLL LO Synthesizer
  • Simple Interface
  • LO Filtering

回路機能とその特長

図1に示す回路は、VCO内蔵の広帯域シンセサイザADF4350 と広帯域I/Q復調器 ADL5380/ADL5387との簡単な接続方法です。この回路では、広帯域I/Q復調器に対し、ADF4350から高周波かつ低い位相ノイズの局部発振器(LO)信号を供給します。

この回路にはいくつも利点があり、ベースバンドから中間周波数までの直交周波数変換が必要なアプリケーションには、魅力的なソリューションです。

ADF4350からは差動RF信号を出力し、同様にADL5380/ADL5387には差動信号を入力します。この接続方法は、使いやすいだけでなく、性能においても利点があります。差動信号構成によって、同相ノイズが軽減でき、偶数次のLO高調波がキャンセルできることで、I/Q復調器の直交精度を維持できます。さらに、ADF4350の出力電力レベルは、直交復調器の入力電力の条件によく合致しています。このためLOバッファが不要になります。

ADF4350は137.5~4400 MHzの広い周波数範囲の信号を出力できます。ADL5387の周波数範囲は50 MHz~2 GHzで、ADL5380はさらに広い周波数範囲の400 MHz~6 GHzに対応しています。ADL5380とADL5387の間で、RF入力レンジを50 MHz~6 GHzにすることができます。そのため、図1を応用して2素子の回路構成とすれば、50 MHz~4400 GHzまでの広い周波数範囲に対応できます。 

図1. PLLシンセサイザADF4350と直交復調器ADL5380/ADL5387との簡単な接続図(簡略回路図:すべての接続とデカップリングが図示されているわけではありません)

 

回路説明

ADF4350は137.5~4400 MHzの範囲の周波数を出力できる、広帯域フラクショナルN型およびインテジャーN型のフェーズ・ロックド・ループ(PLL)周波数シンセサイザです。ADF4350に内蔵されている電圧制御発振器(VCO)の基本周波数範囲は2200~4400 MHzです。ADF4350は高いシンセサイザ性能を持っています。しかしPLL出力の高調波がI/Q復調器の直交精度に与える影響を最小限に抑えるため、復調器の回路構成によっては、LO出力のフィルタが必要になることもあります。

アナログ・デバイセズは、広い周波数範囲に対応する直交復調器を製品化しています。ADL5387の周波数範囲は50 MHz~2 GHzで、ADL5380はさらに広い範囲の400 MHz~6 GHzに対応しています。ADL5387とADL5380は、それぞれ異なるアーキテクチャを使用して、I相とQ相との間で90°位相シフトを実現しています。ADL5387は局部発振器がRF周波数の2倍になる2 ×LOアーキテクチャ、ADL5380はポリフェーズ・フィルタ・アーキテクチャの位相スプリッタ方式です。ポリフェーズ・フィルタ・アーキテクチャは、2×LOアーキテクチャの位相スプリッタに比べて比帯域幅が狭く(つまり動作するオクターブ範囲が少なく)、PLLからの高調波の影響を受けやすくなります。その結果、ADL5380はI/Q復調器の直交精度を維持するためLOの高調波フィルタリングが必要です。2×LO方式のADL5387は周波数範囲の上限でフィルタリングするだけでかまいません。

図2. 2×LO方式の位相スプリッタの簡略図

 

図2はADL5387の2×LOアーキテクチャ位相スプリッタの簡略図です。Dタイプ・フリップフロップとインバータのデジタル回路によって、LOの90°位相スプリットを実現しています。このアーキテクチャには、必要なLO周波数の2倍で動作する、外付けLOが必要です。

図3. 一次ポリフェーズ・フィルタの簡略図

 

図3はADL5380に実装されている、1次ポリフェーズ回路の簡略図です。このポリフェーズ回路を構成する相補型RC素子は、入力から片側の出力へのローパス伝達関数特性、もう一方の出力へのハイパス伝達関数特性を実現しています。2つの経路のR値とC値が同じな場合、2つの経路が、同じコーナー周波数を持つだけでなく、さらに重要なことに、一方の出力の位相が、他方と90°位相差を持つようになります。


ADF4350 PLLとADL5387 I/Q復調器との接続方法

I/Q復調器ADL5387とADL5380は、正確な直交信号を生成するという最終目的のために、異なるアーキテクチャを利用しています。ADF4350のようなLOシンセサイザとの接続では、LO信号とその高調波に対して、それらのアーキテクチャがどう応答するかを検証しておくことが重要です。これでLOフィルタリングの条件が決まります。図4にADF4350とADL5387との基本的な接続方法を示します。動作周波数に応じて、ADF4350とADL5387との間に、LO高調波フィルタが必要な場合と不要な場合があります。

図4. ADF4350 PLLとADL5387復調器の2×LO方式の位相スプリッタへの接続方法

 

2×LO方式の位相スプリッタでは、直交精度は入力LOのデューティ・サイクルの精度に依存しています。

内部の分周器のフリップフロップのマッチングも、直交精度にわずかながらも影響を与えます。したがって直交誤差を最小限に抑えるには、外部LOは50%デューティ・サイクルであることが重要です。さらに立上がり時間と立下がり時間にアンバランスがあると、偶数次の高調波が現れる原因になります。復調器のLO入力を差動で駆動すると、偶数次高調波をキャンセルすることができ、直交性能が改善できます。

Rev. 0 | Page 3 of 5 図5はイメージ抑制比−40 dBcをターゲットとしたときのADL5387の性能を示しています。差動LO信号源としてADF4350が用いられており、フィルタリングのありなしで測定されています。「信号発生器(Signal Generator)」と示されている青色のプロットは、ADF4350に比べはるかに低高調波な、Rohde & Schwarzの信号発生器を使用して、サイン波のLO出力を生成した理想的なケースです。この理想的なケースを、実験結果との比較対象にすることができます。図5から1 GHz未満ではフィルタリングが必要ないことがわかります。しかし1 GHzを超えると、LOの高調波から生じる小さな誤差が、入力信号の周期の大部分を占めるようになります。この場合は、LOの偶数次高調波をフィルタリングして、さらに減衰させることで、I/Q復調器で規定された直交精度を実現する必要があります。

図5. ADL5387:イメージ除去のRF周波数特性

 

図6. ADF4350とポリフェーズ・フィルタ・アーキテクチャのADL5380復調器との接続方法

 


ADF4350 PLLとADL5380直交復調器との接続方法

ADL5387とは異なるアーキテクチャである、ADL5380の位相スプリッタで用いられているポリフェーズ・フィルタ・アーキテクチャは、ADF4350出力のフィルタリングが必要です(図7を参照)。フィルタリングは、LOの奇数次高調波を減衰させ、ADL5380の直交信号生成ブロックの誤差を最小限に抑えるために必要です。CN-0134で説明した測定結果とシミュレーションによれば、奇数次高調波は偶数次高調波よりも直交誤差の原因として大きくなります。図7に、ADF4350出力をフィルタ処理し、ADL5380の差動LO入力に印加した場合の測定結果を示します。フィルタ後のイメージ除去特性は、低い高調波歪みをもつ信号発生器の場合に匹敵します。

図7. ADL5380:イメージ除去の周波数特性

 


フィルタリング条件

まとめると、ADF4350出力をフィルタリングして、高調波成分を抑圧すれば、復調器の直交位相精度を高く維持できます。ポリフェーズ・アーキテクチャのADL5380の場合、フィルタリングは必須です。一方ADL5387のアーキテクチャは、LO信号の高調波に影響されにくい、デジタル回路の構成です。したがって動作周波数によっては、フィルタリングは必要ありません。

設計でフィルタリングが必要な場合のために、図8にLO出力フィルタの回路図例を示し、表1にフィルタの部品表をまとめて示します。この回路は4つの異なる周波数帯域に対応するために、4種類のフィルタ設計値が示されています。復調器のLO入力回路条件に合わせて、このフィルタは100 Ωの差動入力、50 Ωの差動出力として設計されています。チェビシェフ応答を用いているので、通過帯域リップルは増加しますが、最適なフィルタ・ロールオフを実現しています。ADF4350の出力フィルタリングの詳細については、CN-0134を参照してください。

CN0245_table1

図8. ADF4350のRF出力フィルタ回路図

 

バリエーション回路

上述の接続方法は、差動LO出力を備えたPLL、および1×LOまたは2×LO方式のI/Q復調器に適用できます。 ADL5382 は700~2700 MHzで動作する、1×LO方式のI/Q復調器であり、ADL5380よりも若干高いIP3を実現しています。AD8347 (1 × LO) と AD8348(2×LO)は、フロントエンドに可変ゲイン・アンプと、固定ゲインのベースバンド・アンプを内蔵した低消費電力なI/Q復調器です。

ソフトウェア

設計ツール

ADIsimRF

アナログ・デバイセズのADIsimRF設計ツールは、カスケード・ゲインやノイズ指数、IP3、P1dB、総合消費電力などRFシグナル・チェーン内の最も重要なパラメータの計算を行います。

ADIsimPLL™

アナログ・デバイセズの新しい高性能PLL製品を迅速かつ確実に評価できるツールです。現在利用できるツールの中で、最も総合的なPLLシンセサイザーの設計/シミュレーション・ツールです。実施されるシミュレーションには、主要な非線形効果が含まれており、これはPLLの性能に大きく影響を及ぼします。ADIsimPLLによって、設計プロセスの繰り返し作業が1つ以上排除されるため、設計から製品の市場投入までの期間が大幅に短縮することができます。

回路の評価とテスト

図4と図7に示す回路は、 CN-0134 評価用ボード(CFTL-0134-EVALZ)とADL5387またはADL5380評価用ボードを使用して実現しました。CN-0134評価用プラットフォームには、ADF4350、LOフィルタ用の半田パッド、SMAコネクタへの差動LO出力が含まれています。

ADF4350はプログラムする必要があり、ソフトウェアは評価用ボードに添付されるCDに入っています。

表2はさまざまな評価用ボードのオーダー・ガイドです。 CN-0134評価用ボードは、デフォルトとして、表1に規定の850~2450 MHzのフィルタが設定されています。別のフィルタを実装するには、適切な部品に取り換える必要があります。

CN0245_table2


必要な装置


  • Windows XP、Windows Vista(32ビット)、またはWindows 7(32ビット)搭載のUSBポート付きPC
  • 表2に記載された評価用ボード
  • RF信号源(Rohde & Schwarz SMT06または同等品)
  • スペクトラム・アナライザ(Rohde & Schwarz FSEA30または同等品)
  • 電源:
  • ADL5387-EVALZ: +5 V
    ADL5380-30A-EVALZ: +5 V
    CFTL-0134-EVALZ: +5.5 V

テスト


CN-0134 CN-0134評価用プラットフォームは、水晶発振器を内蔵しているので、評価を簡単に行うことができます。必要なLO周波数にPLLシンセサイザをプログラムするには、ADF4350用ソフトウェアをインストールしたPCが必要です。ADL5387/ADL5380直交復調器は、RF周波数をベースバンドにダウンコンバートします。I相とQ相の差動ベースバンド出力をFFTモードのFSEAスペクトラム・アナライザに接続し、イメージ除去比を測定します。

その他の文書については、CN-0245、CN-0134、CN0144の以下の設計支援パッケージからご覧になることができます。

CN-0245 Design Support Package:
www.analog.com/CN0245-DesignSupport

CN-0134 Design Support Package:
www.analog.com/CN0134-DesignSupport

CN-0144 Deign Support Package:
www.analog.com/CN0144-DesignSupport

 

図9. 機能のテスト・セットアップのブロック図