AN-0990: シングルエンド入力アプリケーションでの 差動アンプの終端

シングルエンド入力アプリケーションの差動アンプを正しく終端するこは、困難な仕事になることがあります。このアプリケ ーション・ノートでは、計算を開始から終了まで見直すことにより作業を簡素化します。最初のステップは、アンプの入力インピーダンスを求めることです。

入力インピーダンスの計算

回路の実効入力インピーダンスは、シングルエンドまたは差動のいずれの信号源でアンプを駆動するかに依存します。平衡差 動入力信号の場合(図 1)、入力間(+DINと−DIN)の入力インピーダンス(RIN, dm)は次式で与えられます。

RIN, dm = 2 × RG

図1.平衡(差動)入力に構成された差動アンプ

図1.平衡(差動)入力に構成された差動アンプ

不平衡(シングルエンド入力信号)の場合(図 2)、入力インピーダンスは式 1 で表されます。

Equation.

図2.不平衡(シングルエンド)入力に構成された差動アンプ

図2.不平衡(シングルエンド)入力に構成された差動アンプ

この回路の入力インピーダンスは、従来型オペアンプがインバータとして接続された場合より実効的に高くなります。これは、差動出力電圧の成分が同相モード信号として入力に現れて、特に入力抵抗 RG両端の電圧を持ち上げるためです。


シングルエンド入力の終端


この例では、ゲイン = 1 に設定された ADA4937-1 を使っています。この方法はすべての差動アンプで使用できることに注意してください。

アンプのゲインはゲイン式から計算できまます。

Equation.

アナログ・デバイセズの ADA4937-1 のデータ・シートでは 200 Ω 抵抗の使用を推奨しています。この回路に接続する信号源は、ソース抵抗 50 Ω の 2 V です。入力終端は、次のシンプルな 4 ステップで計算することができるようになります。

  1. 式 1 を使って入力インピーダンスを計算します。

    Equation.


    図3.シングルエンド入力インピーダンスRIN

    図3.シングルエンド入力インピーダンスRIN

  2. 50 Ω へのソース終端に対して、RT||RIN = 50 Ω を使って終端抵抗(RT)を計算します。これにより RT = 61.9 Ω となります。

    図4.終端抵抗RTの接続

    図4.終端抵抗RTの接続

  3. ゲイン抵抗の不一致を補償するため、補正抵抗(RTS)を反転入力ゲイン抵抗 RG に直列に接続します。RTS はソース抵抗RS || RTのテブナン等価値に一致します。

    図5.テブナン等価電源の計算

    図5.テブナン等価電源の計算


    RTS = RTH = RS||RT = 27.4 Ω

    VTH は VS/2 と等しくなく、これはアンプ回路の入力インピーダンス RIN が終端に影響を与えない場合に相当することに注意してください。

    図6.ゲイン抵抗RGのバランシング

    図6.ゲイン抵抗RGのバランシング

  4. 帰還抵抗を再計算して、次のように出力電圧を所望のレベルへ調整します。
    出力電圧を VOUT = 1 V にするために、次式を使って RFを再計算します。

    Equation.


    VO = VS = 2 V として、入力終端による損失を回復するためには、RFを次のようにする必要があります。

    Equation.


    図7.シングルエンド/差動変換システム

    図7.シングルエンド/差動変換システム

結論

シングルエンド入力差動アンプの入力終端は、4 ステップで実行されます。最初にアンプ入力インピーダンスRINを計算し、次に終端抵抗RTを計算します。反転入力ゲイン抵抗に直列にRTSを追加することにより、アンプ・ゲイン・パスを再度バランスさせます。最後に、正しいゲインの帰還抵抗を計算して調節します。差動アンプの詳細については、http://www.analog.com/jpをご覧ください。

参考資料

ADA4927-1 Data Sheet. Analog Devices, Inc., 2008.

AN-584 Application Note. Analog Devices, Inc., 2002.

著者

Jonathan-Pearson

Jonathan Pearson

Jonathan Pearsonは、2002年8月から当社の高速アンプ・グループのシニア・アプリケーション・エンジニアとして働いています。入社前は、テレコム業界でアナログ回路/システムの設計者をしていました。ノースイースタン大学でBSEE(電気工学理学士)、ウースター・ポリテクニック大学(WPI)でMSEE(電気電子工学修士)の学位を取得しており、4つの特許の著者/共著者でもあります。余暇には家族との団らんや、さまざまなギターの演奏、音楽の録音、真空管ギター・アンプやアンティーク・ラジオの収集などを楽しんでいます。

John Ardizzoni

John Ardizzoni

John Ardizzoniは、アナログ・デバイセズの高速リニア・グループの上級アプリケーション・エンジニアです。 マサチューセッツ州ノースアンドーバーのメリマック・カレッジでBSEE(電子工学士)を取得し、2002年にアナログ・デバイセズに入社しました。エレクトロニクス業界で30年以上のキャリアがあります。