グランド・ノイズとグランドホッグ - 電子技術者たちの民間伝承

質問:

アナログ入力がグランディング(接地)されているのに、 なぜ出力でもグランドが必要なのでしょうか?

RAQ:  Issue 8

回答:

それは、一般的にはグランド・ノイズのためです*。電子技術者たちの間の言い伝えによると、「グランド」とは善良な信号が亡くなったときに行く場所です。要するにゼロ・インピーダンスの一種で、ゼロ電位の万能薬として至るところに三角形やぶら下がり虫のような記号を目にするわけです。現実のグランドには有限のインピーダンスがあるため、2つのグランド・ポイント間を流れる電流によって電位差(PD)が生じます。高精度の回路(場合によっては高精度でなくても)では、このPDによって誤差が発生することがあります。このグランド電流は回路の入力または出力接続からのリターン電流であったり、あるいは近くにあるシステムの電流がその回路の接地線を流れてしまうことがあります。グランド・ノイズの影響を最小限に抑えるための主な戦略は3つあります。1)グランド・インピーダンスを最小限に抑えること、2)高感度回路のグランドを大きい(あるいはノイズの多い)電流から絶縁すること、3)差動信号伝送を使用して信号をグランド・ノイズから絶縁することです。


1)室温の超伝導体は発明済みで、そのうちの1つが銅導線だと考えているような設計者がいます。グランド・パターン配線の幅がわずか数ミルで、ばく大な規模の電圧降下が生じてしまうようなPCボード設計もあります。グランド・インピーダンスを最小限に抑えるには、グランドにできるだけ幅の広いPCパターン配線を使用し、できればグランド・プレーンと呼ばれる切れ目のない連続的な銅のレイヤを用意します。

2)高感度回路と大電流を消費する回路のグランドを別々に設ける方法が役に立ちます。別々に作ったグランド回路は接続しなければなりませんが、そのために一般に「スター結線」と呼ばれるシングル・ポイントを電源の近くに設けます。ここで2つのグランドが一緒になり、共通の基準電位ができます。ミックスド・シグナル・システムのほとんどでは、アナログ・グランドとデジタル・グランドをこのように分離します。このようにした場合は、すべてのA/Dコンバータ(ADC)とD/Aコンバータ(DAC)のAGNDピンとDGNDピンをアナログ・システムのグランドに接地します。

3)接地されていない2本の信号線とリターン線を用いて差動で信号を送信する場合は、グランド・ノイズがその信号の品質に影響を与えることはほとんどありません。ただし、コモン・モード・ノイズのためにいくぶん悪影響が出ることがあります。

実を言うと、グランド・ノイズこそはグランドホッグデーにパンクサトーニーのフィル(有名なグランドホッグ)の目を覚まさせるものなのです。氷は液体の水よりも優れた絶縁体ですが、フィルの穴の周りの氷が溶け始めると、グランドの電流が流れ出し、小さなベルが鳴ってフィルを起こすのです。

* デバイス・ノイズやオフセットもしばしばその原因となります。

 

著者

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James Bryant

James Bryantは、1982年から2009年に定年退職するまで、アナログ・デバイセズの欧州地区アプリケーション・マネージャを務めていました。現在も当社の顧問を務めると共に、様々な記事の執筆に携わっています。リーズ大学で物理学と哲学の学位を取得しただけでなく、C.Eng.、Eur.Eng.、MIEE、FBISの資格を有しています。エンジニアリングに情熱を傾けるかたわら、アマチュア無線家としても活動しています(コールサインはG4CLF)。