質問:
負荷に流れる電流を高い精度で簡単に制限する方法はありませんか?
回答:
電流制限機能を備えるICを利用するとよいでしょう。
パワー・マネージメントのアプリケーションでは、高い精度で電流を制限する機能が求められることがあります。例えば、エネルギー源と負荷の間に位置する回路から負荷に電圧を供給する場合、エネルギー源を保護するために過負荷に対する保護が必要になるでしょう。あるいは、フォルト状態における過電流によって負荷が破損しないように保護用の回路が必要になるケースもあります(図1)。
上記のような要件に対応するために、各社のPOL(Point of Load)レギュレータを検索してみたとしましょう。そうすると、調整が可能な電流制限機能を備える製品の数は限られることに気づかされるはずです。外付けのパワー・スイッチを使用するコントローラ製品であれば、調整が可能な電流制限機能を備えていることもよくあります。しかし、あらゆるICソリューションにこの機能が用意されているわけではありません。また、機能自体は備えていても、高い精度は得られないというケースが多いはずです。加えて、DC/DCコンバータIC(スイッチング・レギュレータIC)が備える電流制限回路は、インダクタに流れる電流を制限するためのものであることが少なくありません。つまり、電源の入力電流や出力電流の制限には使用できないということです。スイッチング・レギュレータが備える電流制限機能は、スイッチング・レギュレータだけを対象として、フォルト状態における損傷から保護するために設計されたものなのです。電流制限を行う場合には、最大出力電流の公称値よりも値の大きい電流を対象とします。ただ、その値を高い精度で設定/検出できるとは限りません。スイッチング・レギュレータを保護することが目的であれば、それでも十分なケースがほとんどでしょう。しかし、それ以外の目的で使用する電流制限回路として見た場合にはどうでしょうか。おそらく、適切な精度で調整が行えるものだとは言えないはずです。
上記の問題に対する解決策は、「LTC7003」のような製品を追加し、柔軟に調整が可能な電流制限機能を加えることです。アプリケーションにもよりますが、この方法であれば約15%の精度を達成できます。LTC7003は、ハイ・サイドのNチャンネルMOSFET用の静的スイッチ・ドライバです。調整可能な電流制限機能と電流監視機能を備えています。一般的なDC/DCコンバータに電流制限機能を追加したい場合に最適な製品です。図2では、降圧コンバータ「ADP2370」の出力電流を監視するためにLTC7003を使用しています。
電流制限を実現する別の方法としては、ハイ・サイドの電流検出アンプを使用する手法も考えられます。一般に、ハイ・サイドの電流検出アンプを使えば、電流検出抵抗によって電源経路に生じるわずかな電圧降下を測定できます。その場合、非常に高い精度で電流を測定することが可能です。ただ、電流を検出する2つの接続の間で許容できる電圧は非常に小さい値になります。このような一般的な電流検出アンプを、負荷によって短絡回路が生じるおそれのある電源で使用する場合、検出抵抗の両端の電圧はすぐに許容範囲を超えてしまう可能性があります。このような場合には、電源での使用を前提としているLTC7003のようなソリューションの方が適しています(図3)。同ICは、センス端子に入力される電圧差が大きい場合にも対応できるように設計されています。また、電流量が設定した閾値に達した際には、外付けのNチャンネルMOSFET(図3のQ1)によって電源の経路を遮断する機能を備えています。図3は、この機能を利用する場合の回路例です。
LTC7003は、IMONピンによって、検出抵抗に流れる電流量に比例した電圧を出力します。この電圧は、システム・グラウンドを基準としており、検出抵抗の両端の電圧の20倍に相当します。値の範囲は0V~1.5Vです。この電圧は、外付けのオペアンプを使用することでスイッチング・レギュレータの帰還回路に入力することができます(図3の灰色の部分)。そうすれば、LTC7003によって検出した電流レベルに比例する形で、DC/DCコンバータの出力電圧を低下させることが可能になります。
このような機能を備えるLTC7003は、様々なシステムにおける電源ラインの監視、電流制限、遮断に使用できます。