PLC評価用ボードによる産業用プロセス制御システムの容易な設計

はじめに

産業用プロセス制御システムのアプリケーションは、単純なトラフィック制御から複雑な電力グリッドまで、あるいは環境制御システムから石油精製プロセス制御に至るまで多岐にわたります。これらの自動システムのインテリジェンスは、測定/制御ユニット内にあります。さまざまなアナログ/デジタル入出力を処理して、機械やプロセスを制御するための最も一般的なコンピュータ・ベースのシステムは、プログラマブル・ロジック・コントローラ1(PLC)と分散制御システム2(DCS)の2つです。これらのシステムは電源、中央処理装置(CPU)、それに各種のアナログ入力、アナログ出力、デジタル入力、デジタル出力のモジュールで構成されています。

標準の通信プロトコルは何年も前から存在しており、対象となるアナログ電圧/電流値は4~20mA、0~5V、0~10V、±5V、±10Vが主流です。次世代システム向けの無線ソリューションについてはさまざまな論議がありますが、設計者の間では4~20 mA通信と制御ループがこれからも長く使用されることになると考えられています。この次世代システムの条件は一歩進んだ高性能、小型化、優れたシステム診断機能、高レベルの保護、低価格などですが、これらの条件はいずれも他社競合製品との差別化を図るために役立ちます。

ここでは、プロセス制御システムとそのアナログ入出力モジュールの重要な性能条件について解説するとともに、最新の集積回路技術によりこれらのビルディング・ブロックを集積した産業用プロセス制御評価システムをご紹介します。また、産業環境下で発生する電気的急速過渡現象(EFT)、静電放電(ESD)、電圧サージに耐える堅牢なシステムを設計する際の課題を取り上げ、設計の堅牢さを検証するデータを示します。

PLCの概要とアプリケーション例

図1に、基本的なプロセス制御システムのビルディング・ブロックを示します。フローレート、ガス濃度などのプロセス変数は入力モジュールによって監視されます。中央制御装置が情報を処理し、出力モジュールがアクチュエータの駆動など特定の動作を実行します。

Figure 1
図1. 代表的なトップレベルのPLCシステム

図2に、このタイプの代表的な産業用サブシステムを示します。ここでは、CO2ガス・センサーが保護領域内に溜まったガスの濃度を判定し、中央制御ポイントに情報を送信します。制御装置は、センサーからの4~20mAの信号をコンディショニングするアナログ入力モジュール、中央処理装置、そして必要なシステム変数を制御するアナログ出力モジュールで構成されています。電流ループは、産業用システム内に見受けられる数百メートル長の通信経路によくある大きな容量性負荷を制御することができます。ガス濃度レベルを表すセンサー素子出力は標準の4~20mA信号に変換され、電流ループを介して送信されます。この簡略化した例では、1個の4~20mAセンサーの出力が1チャンネル入力モジュールに接続され、1個の0~10V出力に至る構成を示しています。実際には、ほとんどのモジュールに複数のチャンネルと複数の設定可能な範囲があります。

入出力モジュールの分解能は一般に12~16ビットであり、工業用温度範囲で精度は0.1%です。入力範囲は、ブリッジ・トランスデューサで±10mVと狭く、アクチュエータ・コントローラでは±10Vと広くなり、プロセス制御システムでは4~20mAの電流範囲になります。アナログ出力の電圧と電流の範囲は一般に±5V、±10V、0~5V、0~10V、4~20mA、0~20mAなどです。D/Aコンバータ(DAC)のセトリング時間の条件は、アプリケーションや回路負荷に応じて10μsから10msまでさまざまです。

Figure 2
図2. ガス・センサー

4~20mAの範囲が通常のガス検出範囲を示すものとして割り当てられており、表1に示すように、この範囲以外の電流値は障害診断情報に利用することができます。

表1. 4~20mAの出力範囲外の電流の割当て

電流出力 (mA) ステータス
0.0 ユニット障害
0.8 ユニット・ウォームアップ
1.2 ゼロ・ドリフト障害
1.6 キャリブレーション障害
2.0 ユニット・スパニング
2.2 ユニット・ゼロイング
4 ~ 20 通常測定モード
4.0 ゼロ・ガス・レベル
5.6 フルスケールの10%
8.0 フルスケールの25%
12 フルスケールの50%
16 フルスケールの75%
20 フルスケール
>20 オーバーレンジ

PLC評価システム

ここで説明するPLC評価システム3は、完全な入出力の設計に必要なすべての回路段を集積しています。4つの完全絶縁ADCチャンネル、RS-232インターフェース付きのARM7TMマイクロプロセッサ、4個の完全絶縁DAC出力チャンネルが含まれています。DC電源で基板を駆動します。ハードウェアで設定できる入力範囲は、0~5V、0~10V、±5V、±10V、4~20mA、0~20mA、±20mAで、熱電対やRTDもあります。ソフトウェアで設定できる入力範囲は0~5V、0~10V、±5V、±10V、4~20mA、0~20mA、0~24mAです。

Figure 3
図3. アナログ入出力モジュール

出力モジュール: 出力モジュール:表2に、PLC出力モジュールの重要な仕様の一部を示します。真のシステム精度は測定チャンネル(ADC)で決まるため、制御機構(DAC)では出力調整に要する分解能しか必要ありません。ハイエンド・システムの場合は、16ビット分解能が必要です。標準のデジタル/アナログ・アーキテクチャを使用すれば、かなり簡単にこの条件を満たすことができます。精度は重要ではありません。12ビットの積分非直線性(INL)で一般にハイエンド・システムに十分です。

25℃で0.05%のキャリブレート済み精度は、出力をオーバーレンジして所望の値に調整することで簡単に実現できます。AD50664などの現代の16ビットDACでは25℃で0.01%(typ)のゲイン誤差と0.05mV(typ)のオフセット誤差が得られるため、多くの場合キャリブレーションは不要です。0.15%の総合精度誤差は簡単に対応できそうに思えますが、全温度範囲で仕様が規定されている場合はかなり厄介です。30ppm/℃の出力ドリフトによって、工業用温度範囲で0.18%の誤差が生じる可能性があります。

表2. 出力モジュールの仕様

システム仕様 条件
分解能 16 ビット
キャリブレーション精度 0.05%
モジュールの総合精度誤差 0.15%
断線検出 必要
短絡検出 必要
短絡保護 必要
アイソレーション 必要

出力モジュールは、電流出力か電圧出力、またはその組み合わせになります。ディスクリート部品を使って4~20mAループを実装する従来のソリューションを図4に示します。16ビットnanoDAC®コンバータAD5660は0~5V出力を提供し、これによってセンス抵抗RSを介して(つまりR1を介して)電流を設定します。この電流はR2を介してミラーリングされます。

Equation 1

RS=15kΩ、R1=3kΩ、R2 = 50Ωに設定して5V DACを使用すると、IR2=20mA(max)になります。

Figure 4
図4. ディスクリート4~20mAの実装

このディスクリート設計には多くの欠点があります。部品数が多いため、システムの複雑さ、サイズ、コストが大幅に増大します。総合誤差の計算は難しく、部品が複数あると係数の極性が異なる可能性があり、程度の異なるさまざまな誤差が加わります。この設計には、短絡検出/保護やいかなるレベルの障害診断機能もありません。また、多くの産業用制御モジュールに必要な電圧出力も含まれていません。これらの機能のどれかを追加すれば、設計の複雑さがさらに増し、部品数も増えます。たとえば、高精度で低価格の12/16ビットD/AコンバータAD5412/AD5422のような優れたソリューションであれば、上述の機能をすべて1個のICに集積しています。このようなソリューションでは、産業用プロセス制御アプリケーションの条件を満たすように設計された完全集積のプログラマブル電流源やプログラマブル電圧出力が得られます。

Figure 5
図5. AD5422のプログラマブル電圧/電流出力

出力電流範囲は4~20mA、0~20mA、または0~24mAのオーバーレンジ機能に設定できます。専用のピンを使用する電圧出力は、0~5V、0~10V、±5V、または±10Vの範囲に設定でき、全範囲で10%のオーバーレンジが可能です。アナログ出力は、短絡保護されています。これは出力の誤配線に対応する重要な機能であり、出力が負荷ではなくグラウンドに接続されたときなどに有効です。AD5422には、電流出力チャンネルを監視して、出力と負荷の間に障害が発生していないか確認する断線検出機能もあります。断線が発生するとFAULTピンがアクティブになり、システム・コントローラにアラートが通知されます。プログラマブル電流/電圧出力ドライバのAD5750には、短絡検出と短絡保護の2つの機能があります。

図6に、PLC評価システムで使用する出力モジュールを示します。従来のシステムは一般に500V~1kVの絶縁を必要としましたが、今日では2kVを上回るレベルが普通です。デジタル・アイソレータADuM1401は、iCoupler®5技術を使ってMCUとリモート負荷の間または入出力モジュールとバックプレーンの間の絶縁を提供します。ADuM1401の3つのチャンネルは同じ方向に通信を行い、4番目のチャンネルはその逆方向の通信を行って、コンバータからの絶縁データの読出しを行います。もっと新しい産業用設計向けには、ADuM3401やその他のデジタル・アイソレータ・ファミリー製品がシステム・レベルの高度なESD保護を提供します。

Figure 6
図6. 出力モジュールのブロック・レベル

AD5422は自らロジック電源(DVCC)を生成し、これをADuM1401のフィールド側に直接接続できるため、絶縁バリア間のロジック電源が必要ありません。AD5422には内部センス抵抗がありますが、低ドリフトが必要な場合は外部抵抗(R1)を使用できます。センス抵抗が出力電流を制御するため、抵抗にドリフトがあれば必ず出力に影響します。内部センス抵抗の代表的な温度係数は15~20ppm/℃であり、60℃の温度範囲で0.12%の誤差が加わります。高性能システム・アプリケーションでは、外部の2ppm/℃センス抵抗を使ってドリフトを0.016%未満に抑えることができます。

AD5422は、PLC評価システムの4個すべての出力チャンネルでイネーブルできる内部10ppm/℃(max)電圧リファレンスを備えています。また、初期精度0.04%、温度係数3ppm/℃の超低ノイズXFET®電圧リファレンスADR445を2つの出力チャンネルに使用し、必要な総合的なシステム性能によって内部リファレンス/外部リファレンスを選択したり、性能を比較することもできます。

入力モジュール: 入力モジュールの設計仕様は出力モジュールと似ています。一般に、高分解能と低ノイズが重要です。産業用アプリケーションでは、熱電対、歪みゲージ、ブリッジ型圧力センサーからの低レベル信号を測定するときに差動入力が必要になります。これは、A/Dコンバータ(ADC)のアナログ入力にノイズを注入するモータやAC電力線などのノイズ源からコモンモード干渉を除去するためです。

入力モジュールには、高精度、高分解能のシグマ・デルタ(ΣΔ)ADCが最もよく使用されます。また、内部のプログラマブル・ゲイン・アンプ(PGA)で小入力信号を正確に測定できます。図7は、評価システムで使用される入力モジュール設計を示しています。3チャンネルの24ビットΣΔADCのAD7793は4~20 mA、±10Vなどの広い範囲の入力信号やセンサーから直接入力される小信号に対応しています。

Figure 7
図7. 入力モジュールの設計

この汎用入力設計は、RTD/熱電対モジュールに簡単に適合させることができるように考えられています。図のように、入力チャンネルごとに2個の入力端末ブロックがあります。1つの入力は、AD7793にダイレクトに接続させることができます。ユーザは内部PGAをプログラムして、最大128までのアナログ・ゲインを設定できます。もう1つの入力では、JFET入力計装アンプAD8220を介して信号のコンディショニングが可能です。この場合、入力信号の減衰、増幅、レベル・シフトが行われ、ADCに対するシングルエンド入力になります。AD8220は、レベル・シフト機能以外にも、広いダイナミック・レンジのアプリケーションで重要な非常に優れた同相ノイズ除去性能を備えています。

低消費電力、高性能のAD7793の消費電流は500μA未満であり、AD8220は750μA未満です。このチャンネルは4~20mA、0~5V、0~10Vのアナログ入力に対応するように設計されています。入力モジュールのその他のチャンネルはバイポーラ動作用であり、±5Vと±10Vの入力信号に対応します。

4~20 mA入力信号を測定するために、低ドリフトの高精度抵抗を回路内へ切り替える(S4)ことができます。この設計の場合、抵抗の値は250Ωですが、生成される電圧がAD8220の入力範囲内にある限り任意の値を使用できます。電圧を測定するとき、S4はオープンのままです。

大部分の入力モジュールの設計では絶縁が必要です。図7は、PLC評価システムの1つのチャンネルでどのように絶縁を実装するかを示しています。4チャンネル・デジタル・アイソレータADuM5401は、isoPower®6技術を使って2.5kV rmsの信号と電源絶縁を提供します。ADuM5401は4つの絶縁信号チャンネルを提供するほか、内蔵DC/DCコンバータで安定化した5V、500mW出力によって入力モジュールのアナログ回路を駆動します。

完全なシステム: 完全なシステムの概要を図8に示します。高精度アナログ・マイクロコントローラ7ADuC7027はメイン・システム・コントローラです。ARM7TDMI®コアを備えた32ビット・アーキテクチャで、24ビットADCに対する簡単なインターフェースを提供します。また、必要に応じて高いコード密度が可能な16ビットThumbモードにも対応します。ADuC7027は16kBのオンボード・フラッシュ・メモリを備えており、最大512kBの外部メモリに接続できます。高精度の低ドロップアウト・レギュレータ(LDO)ADP3339が、マイクロコントローラに安定化された電源を提供します。

Figure 8
図8. システム・レベルの設計

評価用ボードとPC間の通信は、絶縁RS-232トランシーバADM3251Eを介して行います。ADM3251EはisoPower技術を搭載しており、別途絶縁DC/DCコンバータを用意する必要はありません。このデバイスは、電気的に厳しい環境で使用する場合やRS-232ケーブルの抜き差しが頻繁に行われる場合に最適であり、RS-232ピン(Rx、Tx)は最大±15kVの静電放電に対して保護されています。

評価システム・ソフトウェアと評価ツール: 評価システムはきわめて多機能です。PCとの通信はLabViewを使って行い8、マイクロコントローラ(ADuC7027)のファームウェアはC言語で記述され、ADC/DACチャンネルの間でやり取りされる低レベルのコマンドを制御します。

図9は、メイン画面インターフェースを示しています。左側のプルダウン・メニューで、アクティブADC/DACチャンネルを選択できます。各ADC/DACメニューにはプルダウン・レンジ・メニューがあり、これを使って測定や制御の対象とする入力範囲や出力範囲を選択できます。選択できる入出力範囲は4~20mA、0~20mA、0~24mA、0~5V、0~10V、±5V、±10Vです。小信号の入力範囲は、内蔵のPGAを使ってADC上で直接設定できます。

Figure 9
図9. 評価ソフトウェアのメイン画面コントローラ

図10のADC設定画面で、ADCチャンネル、更新レート、PGAゲインなどの設定や、励起電流のイネーブル/ディスエーブル、その他の汎用ADCの設定を行うことができます。各ADCチャンネルをキャリブレートするには、該当するDAC出力チャンネルをADC入力端子に接続して各レンジを調整します。したがって、このキャリブレーション方法を使用すると、AD5422のオフセットとゲイン誤差が各チャンネルのオフセットと誤差を左右します。これで精度が不十分な場合は、必要に応じて超高精度の電流/電圧源をキャリブレーションに使用できます。

Figure 10
図10. ADC設定画面

ADCの入力チャンネル、入力範囲、更新レートを選択すると、図11のADC Status画面に測定したデータを表示できます。この画面で、ユーザは記録するデータ・ポイントの数を選択します。これにより、ソフトウェアが選択されたチャンネルのヒストグラムを生成し、ピークtoピークとRMSノイズを計算し、その結果を表示します。ここに示す測定の場合、入力はAD8220を介してAD7793に接続されています。ゲイン=1、更新レート=16.7Hz、サンプル数=512、入力範囲=±10V、入力電圧=2.5Vです。ピークtoピーク分解能は18.2ビットです。

Figure 11
図11. ADC Status画面

図12では、入力がAD8220をバイパスしてAD7793にダイレクトに接続されています。オンチップの2.5VリファレンスはAD7793のAIN+およびAIN-チャンネルに直接接続し、0Vの差動信号がADCに入力されます。ピークtoピーク分解能は20.0ビットです。ADCの状態が同じままで2.5V入力がAD8220を介して接続されていると、ピークtoピーク分解能は18.9ビットに落ちます。これには2つの理由があります。一つは低ゲイン時にAD8220によってシステムにノイズが入るため、もう一つはスケーリング抵抗による入力減衰によってADCにレンジ・ロスが生じるためです。PLC評価システムでは、スケーリング抵抗を変更してADCのフルスケール・レンジを最適化し、ピークtoピーク分解能を改善することができます。

Figure 12
図12. AD7793の性能

電源入力保護: PLC評価システムは電磁両立性(EMC)について最も有効とされる方法を採用しています。安定化されたDC電源(18~36V)を2線式または3線式インターフェースを介してボードに接続しますが、この電源を障害や電磁干渉(EMI)から保護する必要があります。基板設計において次のような予防措置(図13を参照)をとったことによって、PLC評価システムは電源ポートで発生する干渉に影響されることはありません。

Figure 13
図13. 電源入力保護
  • ピエゾ抵抗R1が電源入力ポートの近くのグラウンドに接続されています。通常動作中、R1の抵抗値は非常に大きいため(メガオームのレベル)、リーク電流はかなり小さくなります(マイクロアンぺアのレベル)。電流サージ(雷などで発生)がポートに誘導されると、ピエゾ抵抗が破壊され、わずかな電圧変化によって急激な電流変化が起こります。数十ナノ秒以内でピエゾ抵抗器の抵抗が急激に低下します。この低い抵抗パスによって不要なエネルギー・サージが入力に戻り、IC回路が保護されます。3つのオプションのピエゾ抵抗(R2、R3、R4)も入力パス内に接続されており、3線式構成でPLCボードを駆動する場合に回路を保護します。ピエゾ抵抗の値段は、一般に米ドルで1ドルにもなりません。
  • 正の温度係数抵抗PTC1が電源入力パターンと直列に接続されています。通常動作時のPTC1抵抗の値はかなり小さいため、回路のほかの部分に影響することはありません。電流が公称値を超えると、PTC1の温度と抵抗が急激に増大します。この高抵抗モードで電流が制限され、入力回路が保護されます。電流の流れが公称限界値まで低下すると、抵抗は通常値に戻ります。
  • YコンデンサC2、C3、C4が、PLCボードがフローティング・グラウンドで動作するときにコモンモード伝導性EMIを抑止します。これらの安全コンデンサには低い抵抗と高い電圧耐性が求められます。使用するYコンデンサはUL認証またはCAS認証のものとし、絶縁強度の規格に準拠しているものを選ぶ必要があります。
  • インダクタL1、L2が、電源ポートに起因するコモンモード誘導性干渉を除去します。ダイオードD1がシステムを逆電圧から保護します。実動作電流で低い順方向電圧特性をもつ汎用シリコンまたはショットキー・ダイオードを使用できます。

アナログ入力保護: PLCボードは電圧入力と電流入力の両方に対応します。図14に入力回路を示します。負荷抵抗R5は、電流モード時に切り替えて使用します。抵抗R6、R7が入力を減衰します。抵抗R8はAD8220のゲインを設定します。

Figure 14
図14. アナログ入力保護回路

これらのアナログ入力ポートは、外部端子との接続ポイントでサージや静電放電の影響を受ける可能性があります。過渡電圧サプレッサ(TVS)が、このような放電に対して高効率の保護機能を提供します。アナログ入力に高エネルギーの過渡電圧が発生すると、TVSが数ナノ秒で高インピーダンスから低インピーダンスに移行します。これによって数千ワットのサージ電力を吸収し、アナログ入力をあらかじめ設定された電圧にクランプすることで、高精度部品を有害なサージから守ります。TVSには、高速の応答、高い過渡電圧を吸収すること、リーク電流が低い、破壊電圧誤差が低い、パッケージ・サイズが小さいなどの利点があります。

計装アンプは、アナログ入力信号の処理によく利用されます。こうした高精度の低ノイズ・デバイスは干渉の影響を受けやすいため、アナログ入力に入る電流を数ミリ・アンペア未満に制限する必要があります。一般に、外部ショットキー・ダイオードで計装アンプを保護することができます。ESD保護ダイオードが内蔵されている場合も、 外部ダイオードを使用することで制限抵抗を小さくし、ノイズ/オフセット誤差を低減できます。2個の直列ショットキー・バリア・ダイオードD4-A、D4-Bによって、過電流が電源またはアース(グラウンド)に導かれます。

熱電対(TC)、抵抗温度デバイス(RTD)などの外部センサーをADCに直接接続するときも、同じような保護対策が必要になります(図15を参照)。

Figure 15
図15. アナログ入力保護回路
  • 2つのクワッドTVSネットワークD5-C、D5-DがJ2入力ピンの後ろに配置され、ポートからの過渡電圧を抑止します。
  • RF減衰フィルタを構成するC7、C8、C9、R9、R10が、ADCの前に置かれています。このフィルタには3つの機能があります。入力ラインからRFエネルギーを最大限除去する機能、各ラインとグラウンド間のAC信号バランスを維持する機能、それに信号源への負荷を避けるために測定帯域幅で十分な高インピーダンスを維持する機能です。このフィルタの-3dB差動モードの帯域幅は7.9kHz、コモンモードの帯域幅は1.6MHzです。AIN2+とAIN2-へのRTD入力チャンネルも同じように保護されています。

アナログ出力保護: PLC評価システムでは、さまざまな範囲のアナログ電圧/電流の出力をソフトウェアで設定できます。高精度、低価格、完全集積の16ビットD/AコンバータAD5422が出力を供給します。AD5422は、プログラマブル電流源とプログラマブル電圧出力を提供します。このコンバータの電圧/電流出力は外部負荷に直接接続されるため、電圧サージやEFTパルスの影響を受けやすくなります。

図16に出力回路を示します。

Figure 16
図16. アナログ出力保護回路
  • TVS(D11)によって、ポートJ5からの過渡電圧をフィルタ処理し、抑制します。
  • 非導電性のセラミック・フェライト・ビーズ(L3)が出力パスに直列に接続されており、高周波過渡電圧ノイズからの絶縁とデカップリングを行います。フェライトは低周波数(100kHz未満)で誘導性を示すため、ローパスLCフィルタとして役に立ちます。100kHz以上になると抵抗性を示しますが、これは高周波フィルタ設計で重要な特性です。フェライト・ビーズには3つの機能があります。システム内のノイズを制限する機能、外部高周波ノイズがAD5422に到達しないようにする機能、そして内部ノイズがシステムの他の場所に伝播するのを防ぐ機能です。フェライトは飽和すると、非直線性を示してフィルタ特性を失います。したがって、フェライトのDC飽和電流が限界を越えないように、特に高い電流を生成するときは気をつける必要があります。
  • 2個の直列ショットキー・バリア・ダイオードD9-A、D9-Bが、過電流を正電源または負電源に流します。C22は、AD5422が最大1μFの容量性負荷を駆動するときに電圧出力バッファと位相補正の機能を提供します。
  • 電流出力チャンネルの保護回路は、電圧出力回路のものとかなり似ていますが、フェライト・ビーズの代わりに10Ω抵抗(R17)を使用します。AD5422の電流出力は、外部のディスクリートNPNトランジスタQ1で増幅されます。外部ブースト・トランジスタを追加すれば、オンチップの出力トランジスタに流れる電流が少なくなるため、AD5422の消費電力を低減できます。Q1の破壊電圧BVCEOは60Vを上回る値にする必要があります。電源電圧、負荷電流、温度範囲の限界値でAD5422を使用するアプリケーションでは、外部の増幅機能が効果的です。また、増幅トランジスタで温度誘導ドリフト量を低減することによって、オンチップ電圧リファレンスのドリフトを最小限に抑え、デバイスのドリフトと直線性を改善することも可能です。
  • 15kΩ、高精度、低ドリフトの電流設定抵抗(R15)をRSETに接続することで、全温度範囲で電流出力の安定性を改善します。
  • PLCデモ・システムは、外部電圧でAD5422を駆動するときに15Vを上回る電圧出力に設定できます。TVSを使用して、電源入力ポートを保護します。ダイオードD6、D7によって、逆バイアスに対し保護します。電源はすべて、10μF固体タンタル電解コンデンサと0.1μFセラミック・コンデンサでデカップリングされています。

IECテストとその結果: 表3の結果は、テスト中に発生したDAC出力の偏差を示しています。テストが終了した後、出力は元の値に戻りました。これは、一般にクラスBと呼ばれるものになります。クラスAは、テスト中の偏差が許容システム精度内の値であったことを意味します。代表的な産業用制御システムの精度は約0.05%です。

表3. IECテスト結果

テスト項目 説明 結果
EN & IEC 61000-4-2
静電放電 (ESD)、 ±4kV VCD CH3での最大偏差0.32%、クラスB
静電放電 (ESD)、±8kV HCD CH3での最大偏差0.28%、クラスB
EN &IEC 61000-4-3
放射耐性80MHz~1GHz
10V/m、垂直アンテナ偏波
Max CH1での最大偏差0.09%、
CH3で0.30%、クラスB
放射耐性80MHz~1GHz
10V/m、水平アンテナ偏波
CH1での最大偏差-0.04%、
CH3で0.22%、クラスB
放射耐性1.4~2GHz
3V/m、垂直アンテナ偏波
CH1での最大偏差0.01%、
CH3で-0.09%、クラスB
放射耐性1.4~2GHz
3V/m、水平アンテナ偏波
Max CH1での最大偏差0.01%、
CH3で0.09%、クラスB
EN &IEC 61000-4-4
電気的ファーストトランジェント応答(EFT) ±2kV電源ポート CH3での最大偏差-0.12%、クラスB
電気的ファーストトランジェント応答(EFT) ±1kV信号ポート
CH3での最大偏差-0.02%、クラスA
EN &IEC 61000-4-5 電力線サージ、±0.5kV
ボードと部品の損傷なし、クラスB合格
EN &IEC 61000-4-6
電源ケーブルの導通耐性テスト、10V/mを5分間
CH3での最大偏差0.09%、クラスB
I/Oケーブルの導通耐性テスト、10V/mを5分間 CH3での最大偏差-0.93%、クラスB
EN &IEC 61000-4-8 磁気耐性、水平アンテナ偏波 CH3での最大偏差-0.01%、クラスA
磁気耐性、垂直アンテナ偏波
CH3での最大偏差-0.02%、クラスA
Figure 17
図17. DACチャンネルDC電圧出力:放射耐性80MHz~1GHz(@10V/mH)
Figure 18
図18. DACチャンネル1 DC電圧出力:放射耐性1.4~2GHz(@3V/mH)

代表的なシステム構成: 図19に、評価システムの写真と代表的なシステム構成を示します。入力チャンネルは、ループ駆動と非ループ駆動の両方のセンサー入力、さらに標準的な産業用電流/電圧入力をすぐに対応できます。完全な設計ではアナログ・デバイセズのコンバータ、絶縁技術、プロセッサ、パワーマネジメント製品を使用するため、シグナル・チェーン全体を容易に評価することができます。

Figure 19
図19. 産業用制御評価システム

参考資料

1http://en.wikipedia.org/wiki/Programmable_logic_controller.

2http://en.wikipedia.org/wiki/Distributed_control_system.

3www.analog.com/en/design-center/evaluation-hardware-and-software/cu_eb_plc_demo_system.html.

4アナログ・デバイセズの製品については、www.analog.com/jpをご覧ください。

5www.analog.com/jp/products/interface-isolation/isolation/standard-digital-isolators.html.

6www.analog.com/jp/products/interface-isolation/isolation/isopower.html

7www.analog.com/jp/analog-microcontrollers/products/index.html

8www.ni.com/labview

Colm Slattery

Colm Slattery

Colm Slatteryは、1995年に電子工学の学士号を取得し、アイルランドのリムリック大学を卒業しました。Microsemi社のテスト開発部門に勤務した後、1998年にアナログ・デバイセズに入社しました。上海のアプリケーション部門で3年間働いたのち、現在は産業および計装分野のシステム・アプリケーション・エンジニアとして活躍しています。

Derrick Hartmann

Derrick Hartmann

Derrick Hartmannは、アイルランド、リムリックにあるアナログ・デバイセズのDACグループのアプリケーション・エンジニアです。Der r ickはLimerick大学で工学士の学位を取得し、卒業後の2008年にアナログ・デバイセズに入社しました。

Li Ke

Li Ke

Li Keは、中国上海にある高精度コンバータ製品ラインのアプリケーション・エンジニアとして2007年にアナログ・デバイセズに入社しました。それ以前は、Agilent Technologies 化学分析グループのR&Dエンジニアとして4年間勤務していました。Liは、西安交通大学で1999年に電気工学の学士号、2003年に生体工学の修士号を取得しています。2005年に中国電気学会の専門家会員になりました。