広ダイナミック・レンジのハイサイド電流検出:3つのソリューション

はじめに

モータ制御、ソレノイド制御、通信インフラストラクチャ、パワーマネジメントなどのアプリケーションでは、高精度クローズドループ制御のために電流検出機能が不可欠です。エンドユーザーは、安全が最優先の自動車や産業用アプリケーションから、パワーと効率が重要なハンドヘルド機器まで多岐にわたります。高精度の電流モニタリングによって、設計者はモータ・トルク(モータ電流に基づく)、DC/DCコンバータの効率、基地局のLDMOS(横方向拡散MOS)パワー・トランジスタのバイアス電流などの瞬時の重要な情報や、グラウンドへの短絡などの診断情報を利用できるようになります。

最も正確でコスト効率に優れた電流センサーの回路基板への選択時に、システム設計者が直面するトレードオフ、選択肢、課題の要点を理解するために、セルラー基地局のパワーアンプやその他の関連アプリケーションでのLDMOSのバイアス電流モニタリングにおける電流検出について詳しく見ていきましょう。

基地局パワーアンプでは電流モニタリングが必要ですが、特に、3GやLTEで使われる複雑な変調方法によるパワーアンプのピーク対平均比は、最も一般的な2GシングルキャリアGSMが3dB(約2:1)であるのに対し、3G W-CDMAの3.5dB(約2.2:1)からLTE OFDMの8.5dB(約7.1:1)までと大きく変動します。制御ループ機能の1 つはLDMOSバイアス電流をモニタリングすることで、これにより所定の出力に対してLDMOSのバイアスを正しく変調することができます。通常、このdc バイアス電流は、平常動作、最大時、またはオフピークの運転に基づいて広ダイナミック・レンジを備えています。つまり、設計者にとってみれば、LDMOSのドレインに28 ~ 60Vの高電圧範囲のバイアスがかけられているのに対し、50mA(あるいはわずか15mA)1~ 20Aの電流を監視するための正確な電流センサーが必要になるということを意味します。シャント抵抗によってこの電流を監視するなら、LDMOS電流が20Aのときにあまり電力を消費しない非常に小さいシャント抵抗しか使えません。たとえば、10mΩのシャント抵抗でも最大電流で4Wも消費してしまいます。

この電力に対応できるシャント抵抗はありますが、ボードによってはより低消費電力が求められることもあります。ただし、このような低抵抗値、たとえば10mΩのシャント抵抗を選択すれば50mAなどの低電流での両端の電圧が極めて小さくなるため(500μV)、正確なモニタリングが課題となり、高い同相電圧にも耐えられる回路が必要になるでしょう。

この記事では、高い同相電圧の条件下で、広範囲のdc電流を正確にモニタリングするための電流検出ソリューションを設計者に提案します。特に注目しているのは、温度性能です。これは、屋外パワーアンプに必須の重要なパラメータですが、大部分の場合、校正が容易ではありません。ここでは、さまざまアプリケーションで実行可能な、高精度で高分解能の電流検出機能を提供する3種類のソリューション手法を、設計が複雑なものから順に説明します。

  1. オペアンプ、抵抗、ツェナー・ダイオードなどのディスクリート部品を使用して電流センサーを構成します。このソリューションでは、中心となる部品としてAD8628ゼロドリフト・アンプを使用します。
  2. AD8210などの高電圧の双方向電流シャント・モニターを使用して高集積度を実現し、外付け部品によってダイナミック・レンジと精度を拡張します。
  3. 使いやすい高集積ゼロドリフト電流センサー(入力同相電圧範囲が4.5 ~ 80V)の新製品AD8217のような、このアプリケーションに最適化されたデバイスを使用します。

標準オペアンプ構成によるハイサイド電流の検出

図1は、AD8628を利用した、オペアンプ・ベースのディスクリート・ソリューションです。ほかのオペアンプでも同じ構成が可能ですが、必要な性能として低入力オフセット電圧、低オフセット電圧ドリフト、低入力バイアス電流、入力と出力のレールtoレール振幅機能があるとよいでしょう。その他の推奨アンプには、AD8538AD8571AD8551 があります。

Figure 1
図1. オペアンプを使用したディスクリートの大電流検出ソリューション

この回路は、ハイサイド電流 をモニタリングしています。アンプには、この場合5.1Vのツェナー・ダイオードで電源バイアスがかけられています。これにより、アンプが高同相レベルで安全に動作し、その電源電圧が許容限度内で安定性を維持し、その間出力はMOSFETによって電流に変換され、RL によってグラウンド基準の電圧に変換されます。このようにして出力電圧がコンバータ、アナログ・プロセッサ、その他のグラウンド基準の部品(アンプやコンパレータなど)に供給され、さらにシグナル・コンディショニングが行われます。

この構成では、RG 両端の電圧はRSHUNT 両端の電圧と等しくなります。MOSFETからのフィードバックによってハイ・インピーダンスのオペアンプの両方の入力が同じ電圧に維持されるためです。RG を流れる電流はFETとRL を通り、VOUTPUT を生成します。シャント抵抗を流れる電流I とVOUTPUT の関係は、式1で表すことができます。

Equation 1
     (1)

RSHUNT の選択 : RSHUNT の最大値は、最大電流における許容消費電力によって制限されます。RSHUNT の最小値は、オペアンプの入力範囲と誤差の許容値によって決まります。10Aを超える電流をモニタリングする場合、通常、RSHUNT の値は1 ~ 10mΩになります。1個の抵抗で消費電力の条件を満たせない場合、あるいは基板に搭載するには大きすぎる場合は、複数の抵抗を並列に接続してRSHUNTを構成しなければならないことがあります。

RG の選択 : RGを使用して、ハイサイド電流に比例した電流をローサイドに変換します。最大RGは、PチャネルMOSFETのドレイン-ソース間のリーク電流によって制限されます。たとえば、一般的なエンハンスメント型Pチャネル・バーチカルDMOSトランジスタBSS84を考えてみましょう。さまざまな条件における最大IDSS を表1に示します。

表1. ドレイン-ソース間のリーク電流

条件 最大 IDSS
VGS = 0 V; VDS = –40 V; TJ = 25°C –100 nA
VGS = 0 V; VDS = –50 V; TJ = 25°C
–10 µA
VGS = 0 V; VDS = –50 V; TJ = 125°C –60 µA

同相電圧が28Vで IDSS が100nAのLDMOSのドレイン電流をモニタリングするとしましょう。RL を流れるミラー電流の最小値は、少なくとも IDSS の20倍でなければなりません。この結果、次のようになります。

Equation 2

最小RG は、最大負荷電流における許容ミラー電流の消費電力によって制限されます。

Equation 3

RBIAS の選択 : RBIAS を流れる電流は分割されて、オペアンプの静止電流と基本的に一定のツェナー・ダイオード電圧VZ になります(これによってオペアンプの電源電圧が決まります)。アンプ電流 ISUPPLY が基本的にゼロで、VIN が最大のとき、ツェナー・ダイオードを流れる電流はその最大規制電流 IZ_MAX を超えないようにしてください。

Equation 4

ダイオード電圧を安定させるには、ISUPPLY が最大でVIN が最小のときに、ダイオードを流れる電流が最小動作電流 IZ_MIN を上回っていなければなりません。

Equation 5

このソリューションでは、ツェナー・ダイオードとRBIAS によって後に続く回路から高い同相電圧が除去され、低電圧の高精度オペアンプが使用できるようになることから、この2つの部品が重要になります。最良の電圧安定性を得るには、ツェナー・ダイオードのダイナミック抵抗は低くし、温度ドリフトを小さくする必要があります。

R1 の選択 : R1 は、入力過渡電流がオペアンプの電源電圧を超えたときにアンプの入力電流を制限するために使用します。10kΩの抵抗を推奨します。

選択したオペアンプのオフセット電圧VOS とオフセット電流IOS は、特にシャント抵抗値が小さくて負荷電流が少ないときに重要となります。VOS + IOS × R1 は、IMIN × RSHUNT よりも小さくする必要があります。さもないとアンプが飽和するおそれがあります。したがって、最適な性能を得るには、クロスオーバー歪みが無いレールtoレール入力オペアンプの使用が推奨されます。

このディスクリート・ソリューションで考慮すべきもう1つの問題は、温度ドリフトです。ドリフトがゼロのオペアンプを使用した場合でも、ディスクリート部品(ツェナー・ダイオード、MOSFET、抵抗器)によって生じるドリフトを最適化するのは極めて難しいか、またはコストが高くなります。表1からわかるように、VGS  =0VかつVDS  =-50Vで動作温度が25℃から125℃に変化すると、MOSFETの最大 IDSS は、-10μAから-60μAに変化します。このドリフトのため、特にモニタリングする電流が低いとき、温度変化によりシステムの精度が低下します。ツェナー・ダイオードのドリフトはオペアンプ電源の安定性に影響するため、使用するオペアンプは電源変動除去の性能(PSR)が高いものにしてください。

さらに、設計者はこのソリューションの電力効率が低いことを考慮に入れる必要があります。これは、RBIAS  の消費電力が大きいためです。たとえば、バスの同相電圧が28V、ツェナー・ダイオードの電圧出力が5.1V、RBIAS  が1000Ω抵抗の場合、この回路では0.52W以上の余計な電力消費が発生します。これにより消費電力の予測量が膨らむため、この増加分も考慮に入れる必要があります。

AD8210と外付け部品によるハイサイド電流の検出

図2aは、高電圧双方向電流シャント・モニタを集積したAD8210 の簡略ブロック図です。図2bは、外部電圧リファレンスを用いた単方向のアプリケーションを示しています。

Figure 2
図2. (a)AD8210高電圧双方向電流シャント・モニタ。
(b)外部 リファレンスを用いた広レンジ単方向アプリケーション。

AD8210は、シャント抵抗を流れる正電流または負電流によって生成された小さい差動入力電圧を増幅します。AD8210は、高い同相電圧(最大65V)を除去して、グラウンド基準のバッファ出力を提供します。

図2aに示すように、AD8210は差動アンプと計装アンプという2つの主要なブロックで構成されています。入力端子は、R1 とR2を経由して差動アンプA1に接続されています。A1は、R1とR2を流れる小さな電流をQ1とQ2で調整することにより、その入力端子の両端に生じた電圧をゼロにします。AD8210への入力信号が0Vのとき、R1 とR2の電流は等しくなります。差動信号がゼロでないとき、抵抗の1つを通る電流が増大し、もう一方の電流が減少します。電流差は、入力信号の大きさと極性に比例します。

Q1とQ2を流れる差動電流は、R3とR4によって差動電圧に変換されます。A2は、計装アンプとして構成されています。差動電圧は、A2により、シングルエンド出力電圧に変換されます。ゲインは、内部で高精度トリミングされた薄膜抵抗により20V/Vに設定されています。

出力リファレンス電圧は、VREF1ピンとVREF2ピンを使用して簡単に調整できます。双方向電流フローを処理するための一般的な構成では、VREF1はVCCに接続し、VREF2はGNDに接続します。この場合、入力信号が0Vのときに出力の中心値がVCC/2となるため、5V電源では出力の中心値が2.5Vになります。出力は、シャント抵抗を流れる電流の方向に応じて、2.5Vより大きくなるか小さくなります。

充電/放電のアプリケーションにはこの構成を有効に使えますが、出力範囲の全体を利用して単方向の電流フローを測定する必要がある場合は、外部電源を使用して範囲を設定する図2bの回路のほうが一般的です。ここでは、抵抗分割器をオペアンプによってバッファし、VREF1ピンとVREF2ピンを相互に接続して駆動し、出力をオフセットします。

負荷電流がゼロに近くなると、アンプだけで負荷電流を監視することが難しくなります。5V電源の場合、AD8210では、最小出力50mVおよび最大出力4.9Vのリニア出力範囲が規定されています。アプリケーションのシャント抵抗を10mΩとすると、AD8210の出力が50mVの最低レベルを確実に上回るようにするには、シャント抵抗を流れる最小電流を250mAより大きい値にする必要があります。

Equation 6

図2bに示す構成では、小さい電流を測定できるようにオフセットを追加します。出力電圧とモニタリング電流の関係は、20V/Vというアンプ・ゲインを利用して、式2によって計算することができます。

Equation 7
     (2)

たとえば、R1R2 (それぞれ9800Ωと200Ω)の抵抗を使用すると、オフセット電圧は100mVになります。差動入力が0Vのとき、AD8210出力は100mVとなり、確実にリニア範囲内に設定されます。RSHUNT =10mΩでシャント電流の範囲が50 ~20Aの場合、入力範囲は0.5 ~ 200mVとなり、AD8210の出力範囲は、10mV~ 4Vにオフセット電圧を加えて0.11 ~ 4.1Vとなり、AD8210の規定のリニア範囲に十分収まります。

実際、この構成を使用すれば、設計者はある程度の非対称を示す任意の電流範囲に対応するためにAD8210の出力を電源範囲内のどのレベルにもオフセットできます。高精度トリミングされた抵抗がリファレンス入力に内部的に接続されているため、分圧器をバッファするためのオペアンプを使用するとよいでしょう。さらに最良の結果を得るには、これらの入力をロー・インピーダンスで駆動してください。外部リファレンスをバッファするために使用できる高精度で低価格なオペアンプとしては、AD8541AD8601AD8603AD8605AD8613AD8691AD8655 などがあります。

ディスクリート・ソリューションと比べ、この集積ソリューションの場合は、電流シャント・モニタに高い同相電圧範囲と出力オフセット(出力電圧範囲が電流検出範囲の条件に合わない場合)が要求されます。しかし、この回路は双方向の電流モニタリングが可能であり、上述の温度ドリフトと消費電力の問題を回避できます。AD8210のオフセット・ドリフトは最大8μV/℃、ゲイン・ドリフトは最大20ppm/℃が保証されています。また、たとえばAD8603をバッファに使用した場合、これによって生じるオフセット電圧ドリフトはわずか1μV/℃であり、AD8210も低いオフセット電圧ドリフトですが、それと比べても無視できる値です。分圧器、R1、R2の消費電力は、次式で表すことができます。

Equation 8

図2bのパラメータを使用すると、わずか1.2mWになります。

ゼロドリフトのAD8217を使用したハイサイド電流のモニタリング

アナログ・デバイセズは最近、ゼロドリフトで500kHz 帯域幅を特長とする高電圧電流センサーAD8217 を発表しました。この製品は、特に広範な温度範囲、入力同相範囲、差動電圧範囲によって分解能と精度を向上させます。図3aはこのデバイスの簡略ブロック図、図3bは代表的なアプリケーションの簡略ブロック図です。

Figure 3
図3. (a) AD8217高分解能ゼロドリフト電流シャント・モニタ。
(b) AD8217を使用したハイサイド電流の検出

小さなシャント抵抗を流れる非常に小さい電流を測定するために、AD8217の出力範囲は温度範囲で最小20mVと、AD8210の50mVに比べて向上しています。このため、シャントの両端でモニタリングされている最小負荷電流が電流センサーから20mVの最小出力(1mVの最小入力)を生成する場合、ユーザーはAD8217を選択して、図3bに示すように構成することができます。AD8217の出力電圧と入力電流の関係は、式3のようになります。

Equation 9
     (3)

AD8217は、低ドロップアウト・レギュレータ (LDO)を内蔵しており、定電圧電源をアンプに供給します。LDOは、4.5 ~80Vで変動する高同相電圧に耐え、基本的に図1のツェナー・ダイオードと類似の機能を実行します。

AD8217のゲインは出荷時に20V/Vに設定されており、最大ゲイン誤差は全温度範囲で±0.35%です。温度に対して±300μVという規定の初期オフセットと±100nV/℃という極めて小さな温度ドリフトによって、どのような要求誤差の許容レベルが向上します。バッファされた出力電圧は、標準のA/Dコンバータのいずれにも直接接続できます。同相かどうかに関係なく、AD8217は入力差動が少なくとも1mVのとき正確な出力電圧を提供します。上述のように、10mΩシャント抵抗を使用することによって、最小電流を100mAにまで低下させることができます。

このシングルチップ・ソリューションには、ディスクリート・ソリューションの温度ドリフトや消費電力の問題はありません。

性能結果の比較

以下に、3種類の方法を比較して得られたテスト結果を示します。シャント抵抗を流れる入力電流は、入力電圧と負荷抵抗の両方を変更することによって調整しました。データでは、基板で使用するすべての部品に伴う初期ゲインとオフセットの誤差を除去するために初期校正を行いました。

図4は、RSHUNT を流れる入力電流の下限値の関数として、RL両端の出力電圧をプロットした直線グラフであり、図1の回路を測定したものです。RSHUNT は10mΩ、RG は13Ω、RBIAS は100Ω、R1 は10kΩ、負荷抵抗は200Ω、RL は200Ω、ツェナー・ダイオード出力は5.1V、オペアンプはAD8628、MOSFETはBSS84です。校正後の最大相対誤差は0.69%、平均誤差は0.21%です。

Figure 4
図4. AD8628を用いた図1の低電流テスト結果

図5は、RSHUNT を流れる入力電流の下限値の関数として、AD8210の出力電圧をプロットした直線グラフであり、図2bの回路を測定したものです。RSHUNT は10mΩ、R1は20kΩ、R2 は0.5kΩ、負荷抵抗は200Ωです。外部リファレンス・バッファはAD8603です。校正後の最大相対誤差は0.03%、平均誤差は0.01%です。

Figure 5
図5. AD8210を用いた図2bの低電流テスト結果

図6は、図3bの回路を使用し、AD8217の出力電圧に対してRSHUNT を流れる入力電流の下限値をプロットした直線グラフです。RSHUNT は10mΩ、負荷抵抗は50Ωです。リニア補正後の最大相対誤差は0.088%、平均誤差は0.025%です。

Figure 6
図6. AD8217を用いた図3bの低電流テスト結果

テストは必然的に範囲の下限に集中し、必ずしも50mA~ 20Aの全範囲を対象としませんでした。これは、直線性の課題が主に低出力電圧(低ユニポーラ電流)の部分にあるためです。

各ソリューションの温度実験も-40℃、+25℃、+85℃で行いました。表2は、+25℃と同じ補正係数を使用して-40℃と+85℃でデータを校正したときの最大相対誤差と平均誤差を示しています。

表2. 異なる温度で同じ補正係数を使用したときの最大誤差と平均誤差

ソリューション回路 AD8628
AD8210 AD8217
–40°C 最大誤差 (%)
11.982
2.117 0.271
平均誤差(%)
4.929
2.059
0.171
+25°C 最大誤差(%) 1.806 0.075 0.103
平均誤差(%) 0.228 0.039 0.022
+85°C 最大誤差(%) 6.632 3.800
0.918
平均誤差(%) 5.769
3.498
0.421

温度センサーをシステムで利用できる場合、各温度で異なる補正係数を使用してデータを校正することができますが、部品が増えて製造コストが増大します。表3は、-40℃、+25℃、+85℃で異なる補正係数を使用したときの最大相対誤差と平均誤差を示しています。

表3. 各温度で異なる補正係数を使用したときの最大誤差と平均誤差

ソリューション回路 AD8628
AD8210 AD8217
–40°C 最大誤差 (%)
1.981
0.022 0.114
平均誤差(%)
0.303
0.009
0.023
+25°C 最大誤差 (%) 1.806 0.075 0.103
平均誤差 (%) 0.228 0.039 0.022
+85°C 最大誤差 (%) 1.844 0.038
0.075
平均誤差 (%) 0.241
0.013
0.020

温度実験から、オートゼロ技術を使用したデバイスの場合、特にAD8217では広い温度範囲で高精度が得られることがわかります。

Figure 7
図7. AD8628によるディスクリート・ソリューションを使用したときの温度実験
Figure 8
図8. AD8210による集積ソリューションを使用したときの温度実験
Figure 9
図9. AD8217によるシングルチップ・ソリューションを使用したときの温度実験

結論

テスト結果は、3つのソリューションのいずれも広ダイナミック・レンジのハイサイド電流の検出に使用できることを示しています。出力は3つのソリューションのすべてでリニアな応答を示していますが、AD8217を使用したソリューションでは、スタンドアロンの電源なしに最良の誤差性能が得られます。±100nV/℃のオフセット・ドリフト特性は、-40 ~+125℃の温度範囲の全体で最大限に高精度な性能を得るのに最適です。システム設計の観点から見れば、シングルチップ・ソリューションによって基板面積の低減、基板レイアウトの単純化、システム費用の低減、信頼性の向上を実現できます。この結果は、特に、負荷電流範囲が広く、ダイナミック・レンジが重要となる単方向の電流検出アプリケーションに適用されます。

これらのテスト結果に基づけば、広ダイナミック・レンジの単方向ハイサイド電流の検出とモニタリングには、3つのソリューションの中でもAD8217のソリューションが一番適しています。また、AD8210のソリューションは0Vに近い入力でも動作するため、グラウンド短絡条件で有用であることがわかります。さらにAD8210は、充電/放電アプリケーションのようなバイポーラ電流フローのシングルチップ・モニタリングにも対応できます。

最良のシステム性能を必要とする実用的なシステム設計では、校正と温度検出を推奨します。



謝辞

Ry an Du 氏は、アナログ・デバイセズでの実習のかたわら、この記事のディスクリート・ソリューションのセットアップと測定を手伝ってくださいました。

1AISG(Antenna Interface Standards Group)1.1による

Neil-Zhao

Neil Zhao

Neil Zhaoは、フィールド・アプリケーション・エンジニアとして、中国全土でアナログ製品全般に関するサポートをしています。2008年1月にBeihang University(北京航空航天大学)で通信・情報システムの修士号を取得し、弊社製品、ソリューション等に関する記事も多数執筆しています。

Wenshuai Liao

Wenshuai Liao

Wenshuai Liaoは、米国マサチューセッツ州ウィルミントンに拠点を置くアナログ・デバイセズのリニア製品グループ(LPG)のマーケティング・エンジニアです。中国の清華大学で光工学の修士号を取得後、大唐電信科技産業グループで3G Node BのRFエンジニアとして3年間勤務。その後、2002年8月にアナログ・デバイセズに入社しました。

Henri Sino

Henri Sino

Henri Sinoは、マサチューセッツ州ウィルミントンにあるアナログ・デバイセズの統合アンプ製品(IAP)グループのアプリケーション・エンジニアです。ワーセスター・ポリテクニック・インスティチュートでBSEE(電気工学士)を取得した後、アナログ・デバイセズに勤務して6年になります。アナログ・デバイセズでは、主に自動車市場と通信市場に関連する製品および顧客サポート業務を担当しています。