熱電対の簡便性、精度、フレキシビリティを利用して温度を測定する2つの方法

   Matthew DuffJoseph Towey著 (コメントは英語でお願いいたします

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はじめに


熱電対は温度の測定に広く使用されている単純な部品です。この記事では熱電対の基本的な概要を説明し、熱電対を利用する設計に伴うよくある課題を検討し、2つのシグナル・コンディショニング・ソリューションを提案します。最初のソリューションは、リファレンス・ジャンクション補償とシグナル・コンディショニング機能を1個のアナログICに実装し、使いやすさや高い利便性を提供します。もう一つのソリューションは、リファレンス・ジャンクション補償とシグナル・コンディショニング機能を分離して、高いフレキシビリティと精度を持ったデジタル温度検出機能を提供します。

熱電対の理論


図1の熱電対は2本の異種金属線を一端で接合したもので、この接合部を測温接点(ホットジャンクション)と呼びます。もう一端の接合されていない2線は、一般に銅で配線されたシグナル・ コンディショニング・回路に接続します。熱電対の異種金属と銅配線の接点は、基準接点(冷接点)と呼ばれます。*

図1. 熱電対
図1. 熱電対

基準接点で生じる電圧は、測温接点と基準接点の両方の温度に左右されます。熱電対は絶対温度測定デバイスではなく差動デバイスであるため、正確な絶対温度値を取得するには基準接点温度を知る必要があります。このプロセスを基準接点補償(冷接点補償)といいます。

熱電対は、広範囲な温度を適度な精度で優れた費用効果的で測定するための業界標準の手法(ツール)となっています。ボイラー、温水器、オーブン、航空機のエンジンなど、さまざまなアプリケーションに使用されており、最大約+ 2500℃まで対応できます。最も一般的な熱電対はタイプKで、Chromel®(クロムを含むニッケル合金の商標)とAlumel®(アルミニウム、マンガン、シリコンを含むニッケル合金の商標)があり、その測定範囲は-200℃~+1250℃です。

*ここでは、従来の「ホット・ジャンクション」や「冷接点」ではなく、「測温接点」や「基準接点」という用語を使用します。測温接点が基準接点より低温(コールド)のアプリケーションも数多くあるため、従来の用語法は誤解を招きやすいことがあります。

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なぜ熱電対を使用するのか?


長所
  • 温度範囲:熱電対は、低温物理学からジェット・エンジン排気まで、ほとんどの実用的な温度範囲に対応できます。熱電対は使用する金属線に応じて、-200℃~+2500℃の範囲 の温度を測定できます。
  • 堅牢性:熱電対は衝撃や振動の影響を受けない堅牢なデバイスであり、劣悪な環境での使用に適しています。
  • 高速応答:熱電対は小さく、熱容量が低いため、温度変化にすぐに反応します。検出ジャンクションが露出している場合は特にそうです。急激な温度変化に数百ミリ秒以内で応答できます。
  • 自己発熱なし:熱電対は励起電力を必要としないため、自己発熱が生じにくく、本質的に安全です。
短所
  • 複雑なシグナル・コンディショニング:熱電対の電圧を利用可能な温度値に変換するために、相当な規模のシグナル・コンディショニングが必要です。従来は、精度の低下を招く誤 差が生じないように設計時にシグナル・コンディショニングのために多大な投資をしなければなりませんでした。
  • 精度:冶金的特性に起因する熱電対特有の低精度に加え、測定精度は基準接点温度が測定できる限りの精度しかありませんでした(従来の精度は1 ~ 2℃)。
  • 腐食の影響を受けやすい:熱電対は2個の異種金属で構成されているため、環境によっては、時間の経過に伴って腐食が発生し、精度が低下することがあります。したがって、熱電対を保護するための処理が必要で、管理と保守は不可欠です。
  • ノイズの影響を受けやすい:マイクロボルト・レベルの信号の変化を測定するときに、浮遊電磁界からのノイズが問題になることがあります。熱電対の配線をツイストペアにすることにより、磁界ピックを大幅に低減できます。また、シールド・ケーブルを使用するか、金属電線管やガーディングにワイヤを通せば、電界ピックアップを大幅に低減できます。測定デバイスは、ハードウェアまたはソフトウェアによって信号のフィルタ処理を行い、ライン周波数(50Hz/60Hz)と その高調波を適正に除去する必要があります。

熱電対による測定の難しさ


熱電対で生成された電圧を正確な温度値に変換することは、そう簡単ではありません。これには多くの理由があります。電圧信号が小さいこと、温度と電圧の関係が非直線的であること、リファ レンス・ジャンクション補正が必要であること、熱電対によってグラウンディングの問題が生じることなどが挙げられます。これらの問題を一つずつ考えてみましょう。

電圧信号が小さい:最も一般的な熱電対のタイプはJ、K、Tです。室内温度では、これらの電圧はそれぞれ52μV/ ℃、41μV/℃、41μV/℃で変化します。温度による電圧変化がこれより小さいタイプもありますが、あまり一般的ではありません。このような小信号の場合は、A/D変換の前に高ゲイン段が必要です。表1では、各熱電対タイプの感度を比較しています。

表1. 25℃時の各種熱電対の温度に対する電圧変化
(ゼーベック係数)

熱電対のタイプ
ゼーベック係数
(µV/°C)
E
61
J
52
K
41
N
27
R
9
S
6
T
41

電圧信号が小さいため、シグナル・コンディショニング回路には一般に100倍程度のゲインが必要です。これは、かなりシンプルなシグナル・コンディショニングになります。もっと難しいのは、 実際の信号と熱電対のリードに混入したノイズとを区別することです。熱電対のリード線は長く、電気的にノイズの多い環境を通ることがよくあります。リード線に混入したノイズは熱電対の小 さい信号レベルを簡単に越えます。

ノイズから信号を抽出するには、一般に2つの方法を組み合わせて使用します。その一つは、計装アンプなどの差動入力アンプを使って信号を増幅する方法です。ノイズの多くが両方のワイヤに現れるため(同相)、差動で測定することによって除去できます。もう一つは、ローパス・フィルタ処理で帯域外ノイズを除去する方法です。ローパス・フィルタは、アンプ内の整流現象で発生 する無線周波数干渉(1MHzを超えるもの)と50Hz/60Hz(電源)ハムの両方を除去します。アンプの前に無線周波数干渉用のフィルタを配置すること(またはフィルタ処理入力を持つアンプ を使用すること)が重要です。一般に50Hz/60Hz フィルタの位置はそれほど重要でなく、RFI フィルタと組み合わせたり、アンプとADCの間に置いたり、シグマ・デルタADCの一部として 組み込んだり、あるいは平均化フィルタとしてソフトウェアにプログラムすることができます。

基準接点補正:正確な絶対温度値を得るには、熱電対の基準接点の温度を知る必要があります。熱電対が最初に使用された当時は、基準接点をアイス・バスの中に置いてこれを行いました。図2に熱電対回路を示します。この図の回路の一端は未知の温度であり、他端はアイス・バス(0℃)の中にあります。この方法を用いて各種熱電対の性能が広く評価されたため、熱電対テーブルではほぼすべてが0℃を基準温度として使用しています。

図2. 基本的な鉄-コンスタンタン熱電対回路
図2. 基本的な鉄-コンスタンタン熱電対回路

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しかし、熱電対の基準接点をアイス・バスの中に入れておくのは、ほとんどの測定システムで実用上無理があります。大部分のシステムでは、その代わりに基準接点補償(冷接点補償ともいいます)という技法を使用します。基準接点温度は、別の温度検出デバイス、一般にはIC、サーミスタ、ダイオード、またはRTD(抵抗温度検出器)で測定します。熱電対の電圧値は基準接点温度を反映した補償が行われます。基準接点温度はできる限り正確に読み取ることが重要であり、高精度の温度センサーを基準接点と同じ温度に維持します。基準接点温度の読取り誤差は、熱電対の最終読取り値にそのまま現れます。

リファレンス温度の測定にはさまざまなセンサーを使用できます。

  1. サーミスタ:高速応答で小型パッケージですが線形化を必要とし、特に広い温度範囲では精度に限界があります。また、励起のための電流が必要であり、これによって自己発熱が 生じて、ドリフトが生じる可能性があります。シグナル・コンディショニングと組み合わせたシステム総合精度が低下する可能性があります。
  2. 測温抵抗体(RTD):RTDは精度、安定性、直線性に優れていますが、パッケージ・サイズや高コストのために、用途はプロセス制御アプリケーションに限られます。
  3. リモート・サーマル・ダイオード:ダイオードは、熱電対コネクタの近くの温度を検出するために使用します。コンディショニング・チップは、温度に比例するダイオード電圧をアナログまたはデジタル出力に変換します。その精度は約±1℃に制限されています。
  4. 集積温度センサー:集積温度センサーは温度をローカルに検出するスタンドアロンICです。リファレンス・ジャンクションの近くに実装します。リファレンス・ジャンクション補償とシグナル・コンディショニングの両方を行うことができます。1℃の数分の1の精度を実現できます。

電圧信号が非線形:熱電対の応答曲線の傾きは温度によって変化します。たとえば、0℃の場合、T型熱電対の出力は39μV/℃で変化しますが、100℃の場合、曲線の傾きは増大し、47μV/℃になります。

熱電対の非線形性を補償するには、一般的に3つの方法があります。比較的平坦な曲線の一部を選択してその領域内の傾きを直線として近似する。この方法は制限された温度範囲における測定に特に有効です。この場合、複雑な計算は必要ありません。KとJ の熱電対が普及している理由の一つは、両方とも広い温度範囲で感度(ゼーベック係数)が上昇する傾きがかなり一定であるためです(図3を参照)。

図3. 温度に対する熱電対の感度の違い。Kタイプのゼーベック係数は、0~1000℃まで約41μV/℃でほぼ一定です。
図3. 温度に対する熱電対の感度の違い。
Kタイプのゼーベック係数は、0~1000℃まで約41μV/℃でほぼ一定です。

もう一つの方法は、熱電対の各電圧を各温度にマッチングさせるルックアップ・テーブルをメモリに保存するものです。テーブル内の2つの最も近いポイント間で線形補間を使用し、ほかの温度 値を求めます。

のです。この方法が最も正確ですが、計算の量が一番多くなります。各熱電対には、対応する2 セットの式があります。そのうちの1 つは温度を熱電対の電圧に変換するためのもので(基 準接点補正に使用)、残りは熱電対の電圧を温度に変換するためのものです。熱電対テーブルと高次の熱電対式については、http://srdata.nist.gov/its90/main/ をご覧ください。このテーブルと式は、すべて0℃のリファレンス・ジャンクション温度 に基づいています。リファレンス・ジャンクションが0℃以外の温度であれば、必ずリファレンス・ジャンクション補償を使用しなければなりません。

グラウンディング条件:熱電対のメーカーは、測定ジャンクションの先端を絶縁したものと、グラウンド・レベルにしたものを提供しています(図4)。

図4. 熱電対の測定ジャンクションのタイプ
図4. 熱電対の測定ジャンクションのタイプ

熱電対のシグナル・コンディショニングの設計では、グラウンド電位の熱電対を測定する場合にグラウンド・ループができないようにしますが、絶縁した熱電対を測定するときはアンプの入力バ イアス電流が通る経路が必要になります。熱電対の先端がグラウンド・レベルになっている場合、アンプの入力範囲は、熱電対の先端と測定システムのグラウンドの間のグラウンド電位の差に対応できるようにします(図5)。

図5. 異種先端を使用する場合のグラウンディングの方法
図5. 異種先端を使用する場合のグラウンディングの方法

非絶縁システムの場合、両電源のシグナル・コンディショニング・システムのほうが一般的にグラウンド電位型や露出型の先端に対して堅牢性があります。両電源アンプは同相入力範囲が広いため、PCB(プリント回路基板)のグラウンドと熱電対先端のグラウンドの間の大きな電圧差に対応できます。アンプの同相範囲が単電源構成でグラウンド以下のレベルを測定できる条件を満たしていれば、単電源システムでも3種類の先端のどれでも十分に機能します。単電源システムによっては、同相範囲の制約に対処するために熱電対をミッドスケール電圧にバイアスすると効果的な場合があります。この方法は絶縁された熱電対の先端に対して、あるいは測定システム全体が絶縁されている場合に効果的ですが、接地型や露出状態の熱電対を非絶縁システムで測定することは推奨できません。

実用的な熱電対ソリューション:熱電対のシグナル・コンディショニングは他の温度測定システムのものより複雑です。シグナル・コンディショニングの設計やデバッグに時間がかかるため、製品の市場化までの時間が長くなることがあります。シグナル・コンディショニング、特に基準接点補償における誤差は、精度を低下させる原因となります。次に説明する2つのソリューションは、これらの問題に対応するものです。

最初のものはシンプルなアナログ集積ハードウェア・ソリューションで、直接的な熱電対測定と基準接点補償をシングルICに実装するものです。次に説明するソリューションはソフトウェア・ベースの基準接点補償技法であり、これによって熱電対測定の精度を高めるとともに、さまざまなタイプの熱電対を柔軟に使用できるようになります。

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測定ソリューション1:簡便性のための最適化


図6 に、Kタイプの熱電対を測定するIC回路図を示します。これは、Kタイプの熱電対を測定するように特に設計されたAD8495 熱電対アンプを使用するものです。このアナログ・ソリューションは、設計時間が最小になるように考案されています。シンプルなシグナル・チェーンを備えており、ソフトウェアのコーディングは不要です。

図6. 測定ソリューション1:簡便性のための最適化
図6. 測定ソリューション1:簡便性のための最適化

この単純なシグナル・チェーンでKタイプの熱電対のシグナル・コンディショニング条件にどのように対応するのでしょうか?

ゲインおよび出力のスケール・ファクタ:小さな熱電対信号はAD8495のゲイン値122によって増幅され、出力信号感度は5mV/℃になります(200℃/V)。

ノイズの低減:高周波の同相および差動ノイズは外部のRFIフィルタで除去します。低周波の同相ノイズはAD8495の計装アンプが除去します。残りのノイズはすべて外部のポスト・フィルタで対処します。

基準接点補償:AD8495は周囲温度の変化を補償する温度センサーを備えています。正確な基準接点補償を行うために、このデバイスを基準接点の近くに配置して両方が同じ温度を保つようにします。

非直線性の補正:AD8495 を校正することによって、Kタイプの熱電対曲線の直線部分で5mV/℃の出力が得られるようにします。この場合、直線性誤差は- 25℃~+ 400℃の温度範囲で2℃未満です。この範囲を越える温度が必要な場合は、アナログ・デバイセズのアプリケーション・ノート「AN-1087」を参照してください。マイクロプロセッサのルックアップ・テーブルまた式を使って温度範囲を拡張する方法について説明しています。

図7. AD8495の機能ブロック図
図7. AD8495の機能ブロック図

表2に、AD8495を用いた高集積ハードウェア・ソリューションの性能の概要を示します。

表2. ソリューション1(図6)の性能の概要

熱電対のタイプ 測温接点の温度範囲 基準接点の温度範囲 25°Cにおける精度 消費電力
K –25°C to +400°C 0°C to 50°C ±3°C (A グレード)
±1°C (C グレード)
1.25 mW

絶縁型、接地型、露出型の熱電対への対応:図5の1MΩの抵抗が接地されている回路は熱電対のすべての先端タイプに対応することができます。AD8495は、図のような単電源での使用時にグラウンドより数百ミリボルト下の電圧を測定できるように特に設計されています。より大きなグラウンド電位差が予想される場合は、AD8495を両電源で使用することもできます。

AD8495に関する詳細:図7にAD8495熱電対アンプのブロック図を示します。アンプA1、A2、A3と図に示す抵抗によってKタイプの熱電対の出力を増幅する計装アンプが構成されてお り、このアンプのゲインによって5mV/℃の出力電圧を生成します。「Ref junction compensation」(基準接点補償)というラベルの付いたボックス内には、周囲温度センサーがあります。測温接点温度が一定であれば、基準接点温度が何らかの理由で上昇すると、熱電対の差動電圧が低下します。小型(3.2mm×3.2mm×1.2mm)のAD8495を基準接点に熱的に近接させて配置すると、基準接点補償回路がアンプに制御電圧を入力して出力電圧を一定 の状態に維持し、基準温度の変化を補償します。

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測定ソリューション2:最適な精度とフレキシビリティ


図8に、J、K、Tタイプの熱電対を高精度で測定する回路を示します。この回路は、小信号の熱電対電圧を測定する高精度ADCと基準接点温度を測定する高精度温度センサーを備えてい ます。このデバイスは両方ともSPIインターフェース経由で外部マイクロコントローラで制御されます。

図8. 測定ソリューション2:精度とフレキシビリティのために最適化
図8. 測定ソリューション2:精度とフレキシビリティのために最適化

この構成で上述のシグナル・コンディショニング条件にどのように対応するのでしょうか?

ノイズの除去と電圧の増幅:図9に詳しく示した高精度、低消費電力のアナログ・フロントエンドAD7793は熱電対の電圧の測定に使用します。熱電対の出力は外部でフィルタ処理され、1組 の差動入力AIN1(+)およびAIN1(-)に接続します。その後、この信号はマルチプレクサ、バッファ、計装アンプ(小さい熱電対信号を増幅)、およびADC(信号をデジタル変換)に送られます。

図9. AD7793の機能ブロック図
図9. AD7793の機能ブロック図

基準接点温度の補償ADT7320(図10に詳しく図示)は、基準接点のすぐ近くに配置されていれば、温度範囲-10℃~+85℃、精度±0.2℃で基準接点温度を測定することができます。オンチップの温度センサーが絶対温度に比例する電圧を生成し、その電圧を内部電圧リファレンスと比較し、高精度のデジタル変調器に印加します。変調器のデジタル出力によって16ビットの温度レジスタが更新されます。マイクロコントローラがSPIインターフェースを使ってそのレジスタの温度値を読み出し、ADCから得た温度値と組み合わせて補償を行います。

図10. ADT7320の機能ブロック図
図10. ADT7320の機能ブロック図

非直線性の補正:ADT7320は規定の温度範囲全体(-40℃~+125℃)で優れた直線性があるため、ユーザによる補正や校正は不要です。そのデジタル出力は、基準接点の状態を正確に表していると考えることができます。

実際の熱電対温度を求めるには、米国標準技術局(NIST)が提供している計算式を使って、このリファレンス温度測定値を等価な熱電圧に変換する必要があります。その電圧をAD7793 によって測定された熱電対の電圧に加算し、もう一度NIST式を使って合計値を熱電対の温度に戻します。

絶縁型熱電対とグラウンド電位型熱電対への対応:図8は、先端が露出した熱電対を示しています。この場合は最適な応答時間が得られますが、先端を絶縁した熱電対もこれと同じ回路構成を使用することができます。

表3に、ソフトウェアをベースにした基準接点測定ソリューションの性能の概要を示します(NISTデータを使用)。

表3. ソリューション2(図8)の性能の概要

熱電対のタイプ 測定ジャンクションの温度範囲 基準接点の温度範囲 精度 消費電力
J, K, T フルレンジ –10°C to +85°C
–20°C to +105°C
±0.2°C
±0.25°C
3 mW
3 mW

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結論


熱電対はかなり広い温度範囲で堅牢な温度測定機能を提供しますが、設計時間と精度のトレードオフとなる検証が必要になるため、温度測定のために最初から熱電対の使用が選択されることはあまりありません。この記事では、このような問題を解決する費用効果的な方法を提案しています。

最初のソリューションは、ハードウェア・ベースのアナログ基準接点補償技法を用いて測定の複雑さを軽減することを中心としています。このソリューションは熱電対アンプAD8495に内蔵さ れた機能を利用することで、シグナル・チェーンを簡素化し、ソフトウェアのプログラミングを不要にします。AD8495は、各種マイクロコントローラのアナログ入力に送る5mV/℃の出力信号を生成します。

もう一つのソリューションは最高精度の測定が得られるだけでなく、さまざまなタイプの熱電対を使用できます。ソフトウェア・ベースの基準接点補償技法として、高精度のデジタル温度セン サーADT7320を利用し、従来よりもはるかに高い精度の基準接点補償の測定ができます。ADT7320は、出荷前に-40℃~+125℃の温度範囲で完全な校正と仕様規定が行われています。この製品は従来のサーミスタやRTDセンサー測定と違ってあらゆる点で分り易く、ボード組立て後の費用のかさむ校正は必要なく、校正係数やリニアライゼーション・ルーチンでプロセッサやメモリの資源を消費することはありません。このデバイスはマイクロワット・レベルの電力しか消費しないため、従来の抵抗センサー・ソリューションに見られた自己発熱による精度低下の問題を回避できます。

付録


NIST式によるADT7320の熱から電圧への変換
熱電対の基準接点補償は次の関係式に基づいています。

ここで、
   ΔV =熱電対出力電圧
   V @ J1 =測温度接点で生成された電圧
   V @ J2=基準接点で生成された電圧
この補償関係式を有効にするには、基準接点の両方の終端を同じ温度に維持する必要があります。温度を同一にするには、等温端子台を使って電気的絶縁を維持しながら両端の温度を同じにします。

基準接点温度を測定したら、これを等価な熱電圧に変換しなければなりません。熱電圧は、測温接点により生成されます。べき級数多項式を使用する方法があります。熱電圧は次式のように計算します。

ここで、
   E=熱電圧(マイクロボルト)
   an =熱電対のタイプに依存する多項式係数
   T=温度(℃)
   n=多項式の次数
NISTは、各種熱電対の多項式係数のテーブルを提供しています。これらのテーブルには、係数リスト、オーダー(多項式の項の数)、各係数リストの有効な温度範囲、誤差範囲が記載されています。熱電対のタイプによっては、温度動作範囲全体に対応するために複数の係数テーブルを必要とします。べき級数多項式のテーブルは本文に掲載されています。

 

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