正しいタイミング

アナログ回路の多くは、何らかのクロック信号を必要とします。あるいは、一定時間が経過した後にタスクを実行することが求められます。このようなアプリケーションに対しては、いくつかソリューションを使用することができます。単純なタイミング・タスクには標準的な555回路を使用でき、この555回路と適切な外付け部品を組み合わせることで、様々なタスクを実行することができます。

しかし、広く使われているこの555タイマーの短所の1つとして、タイマー設定の精度の低さが挙げられます。555タイマーは、外付けコンデンサを充電して電圧閾値を検出することにより機能します。この回路は実装は極めて容易ですが、その精度はコンデンサの実際の値に大きく影響されます。

より高い精度が求められるアプリケーションには、水晶発振器が適しています。水晶発振器は高精度ですが、信頼性の面で弱点があります。電気機器の修理に関わったことのある人なら、故障の多くは主に大型の電解コンデンサが原因となっていることを誰でも知っていますが、水晶発振器はこれに次ぐ故障原因となっています。

時間の長さを測る、あるいはクロック信号を生成するための3つめの方法は、シンプルな小型マイクロコントローラを使用することです。この場合も様々なコンポーネントの選択肢があり、適用できる最適化手法も異なります。しかし、これらのコンポーネントはいずれもプログラムする必要があり、その扱いには深い理解が求められます。また、デジタル設計であることからクリティカル・アプリケーションの場合は慎重な検討が必要になります。例えば、マイクロコントローラが動作を停止してしまった場合にシステムはどうなるのか、といった検討をしておかなければなりません。

これら3つのクロック生成用基本ビルディング・ブロックほど知られてはいませんが、他にも方法は存在します。その代替手法の1つが、アナログ・デバイセズの提供するTimerBloxモジュールです。TimerBloxはシリコンベースのタイミング・モジュールで、マイクロコントローラと異なり、動作は完全なアナログ方式で、抵抗で調整することができます。したがってソフトウェアのプログラミングは不要で、機能の面でも非常に高い信頼性を備えています。基本機能がそれぞれ異なる様々なTimerBloxモジュールを図1に示します。これらの基本ビルディング・ブロックを使用することで、他にも無数の機能を作り出すことができます。

図1. 様々なタイミング機能を生成するTimerBlox回路

図1. 様々なタイミング機能を生成するTimerBlox回路

広く使われている555タイマー回路と異なり、TimerBlox回路では外付けコンデンサを充電する必要がありません。すべての設定は抵抗で行われるため、機能の精度が高くなり、1%~2%の精度を実現できます。水晶発振器は更に100倍程度も高精度ですが、この種のソリューションにありがちな欠点も備えています。

タイミング・ブロック用のアプリケーションは多種多様で、アナログ・デバイセズからも、これまで多数の回路例が発表されています。図2にエンベロープ検出器を示します。この検出器は、複数の短いパルスを組み合わせて長いパルスを生成します。LTC6993-2は、最も少ない外付け部品でこのアプリケーションを実現します。この回路のコンデンサは電源電圧に対応するための単なるバックアップ・コンデンサで、タイミング・モジュールの精度には影響しません。

図2. LTC6993 TimerBlox ICを使用したエンベロープ検出器

図2. LTC6993 TimerBlox ICを使用したエンベロープ検出器

この他、興味深いアプリケーションとしては、電源用の複数のスイッチング・レギュレータの位相シフト同期や、同期入力スイッチング・レギュレータICへのスペクトラム拡散変調の追加などがあります。更にもう1つの代表的アプリケーションが、所定の遅延を提供することで、つまり特定回路部分にスイッチオン遅延を設定するためのタイマー機能です。

クロック信号の生成や時間ベースの種々のタスクを実行するための技術的ソリューションには様々なものがあり、これらのソリューションにはそれぞれ長所と短所があります。TimerBloxモジュールのようなシリコン発振器の特長は、使いやすいこと、コンデンサではなく可変抵抗を使用するため高い精度が得られること、そして信頼性に優れていることです。

Frederik Dostal

Frederik Dostal

Frederik Dostalは、ドイツのエアランゲン・ニュルンベルク大学でマイクロエレクトロニクスについて学びました。2001年にパワー・マネージメント事業の分野で働き始め、アリゾナ州フェニックスで4年間にわたってスイッチング電源を担当したほか、さまざまなアプリケーション分野の業務に携わってきました。2009年にADIに入社し、ミュンヘンのアナログ・デバイセズでパワー・マネージメントのフィールド・アプリケーション・エンジニアとして従事しています。