理想ダイオード付きサージ・ストッパーによる入力および出力の保護

自動車や産業用機器のアプリケーションでの電源システムは、短時間の高電圧サージに対処し、負荷における電圧を維持すると同時に、損傷を受けやすい回路を危険なトランジェントから保護する必要があります。ある一般的な保護方式では、鉄芯のインダクタと容量値の大きい電解バイパス・コンデンサの直列回路を過電圧サプレッサ(TVS)とヒューズで補強した回路が必要です。この古くからある手法では、かなり広い基板占有面積が必要です。また、大型のインダクタやコンデンサは、多くの場合、システム内での高さが最も高い部品です。たとえこの保護方式であっても、(自動車環境で考えられるシナリオである)逆入力電位や電源電圧の低下に対して保護することはできません。これらの事象から出力を保護して出力電圧を維持するため、設計者は逆流防止ダイオードを追加しますが、ダイオード内部に生じる新たな電圧降下によって電力損失が増加します。

LTC4364は、少ない設置面積で負荷を保護して出力を保持するための包括的な制御ソリューションで、場所をとる部品や望ましくない電圧降下を排除できます。LTC4364 の機能ブロック図を図1に示します。このデバイスは、back to back 接続された2つのNチャネルパストランジスタを駆動します。一方は電圧サージから保護して出力に対する安定化電圧を維持します(図1のM1)。もう一方は逆入力保護および出力保持用の理想ダイオードとして機能します(図1のM2)。

図1.LTC4364の簡略ブロック図

図1.LTC4364の簡略ブロック図

また、LTC4364は、過負荷および短絡から保護し、出力電圧の反転に耐え、入力低電圧状態でMOSFETをオフに保ち、入力過電圧状態でのターンオンまたは自動再試行を阻止します。シャットダウン・モードでは、電源電流が10µA程度まで減少します。

高い電圧に耐えて安全な動作を確保する先進のサージ・ストッパー

LTC4364 の標準的応用例を図2 に示します。通常の動作状態では、LTC4364 は入力電源から負荷回路までの電圧降下を最小限に抑えるように、サージ・ストッパーのNチャネルMOSFET(M1)を完全に導通させ、理想ダイオードNチャネルMOSFET(M2)のVDS を30mVに安定化します。VOUT が上昇して、VINより0.7V低い電圧になると、ENOUTピンは“H”になり、負荷回路が起動します。

図2.逆電流制限保護機能を備えたサージ・ストッパーは、VINでの200V/–24Vトランジェントに耐えます。

図2.逆電流制限保護機能を備えたサージ・ストッパーは、VINでの200V/–24Vトランジェントに耐えます。

入力電圧サージが印加されている間、LTC4364はHGATEピンの電圧を安定化して、出力電圧をMOSFET M1と抵抗分割器を介してクランプし、FBピンの電圧が1.25Vに維持されるようにします。図3に示すように、電源電圧が設定値よりやや大きく増加しても負荷回路は引き続き動作します。

図3.LTC4364は出力を27Vで安定化するのに対して、負荷回路は92Vの入力スパイクを受けても引き続き動作します。

図3.LTC4364は出力を27Vで安定化するのに対して、負荷回路は92Vの入力スパイクを受けても引き続き動作します。

電流が過負荷になった場合、LTC4364はM1を流れる出力電流を制限して、SENSEピンとOUTピンの間の電圧を50mVに維持します(OUTピンの電圧が2.5Vより高い場合)。OUTピンの電圧が1.5Vより低くなる重度の出力短絡の場合は、MOSFETをさらに保護するために電流制限検出電圧が25mVに再設定されます(図4)。

図4.電流制限の2:1のフォールドバックにより、重度の出力短絡時にMOSFETのストレスを軽減します。

図4.電流制限の2:1のフォールドバックにより、重度の出力短絡時にMOSFETのストレスを軽減します。

タイマ・コンデンサの電圧は、出力制限(図5に示す過電圧または過電流による制限)が行われると必ず上昇します。TMRピンの電圧が1.25Vに達するのに十分なほどこの状態が続くと、FAULTピンは“L” になり、電力損失の危険が迫っているという早期警告をユーザに知らせます。1.35Vになると、タイマによってMOSFETがオフになり、冷却時間が経過するのを待ってから再起動を試行します。

図5.LTC4364-2の過電圧フォルト後の自動再試行タイマ・シーケンスにより、非常に長い冷却期間(デューティ・サイクル0.1%)が実現されます。

図5.LTC4364-2の過電圧フォルト後の自動再試行タイマ・シーケンスにより、非常に長い冷却期間(デューティ・サイクル0.1%)が実現されます。

LTC4364はMOSFETの両端にかかる電圧をモニタし、VCC – VOUTの値が増加するのに比例してターンオフ・タイマの間隔を短くします。このように、非常にストレスの大きい短絡状態が続く時間は、短時間で軽度の過負荷状態よりも短い時間で済むので、MOSFETがその安全動作領域内で動作することを保証するのに役立ちます。

LTC4364は、過電圧と過電流のいずれの状態の場合でも再起動時のデューティ・サイクルが約0.1%と非常に低いことを特長としているので、フォルトに起因するターンオフ後の再起動までに、MOSFETを確実に冷却できます。図5は、過電圧フォルト後のLTC4364-2の自動再試行タイマ・シーケンスを示しています。

LTC4364の重要な特長は、抵抗(図2のR4)などの電流制限素子を入力電源とVCCピンの間に配置できることです。これにより、VCCピンに生じた過電圧は、コンデンサ(図2のC1)を使用して除去するか、ツェナー・ダイオード(図2のD1)でクランプすることができます。適切なMOSFET M1を選択した場合は、この方法により、100Vよりはるかに高い過電圧に耐えることができます。図2の回路では、200Vまでの過電圧に耐えることができます。

不必要なターンオンを防止する入力電圧モニタ

LTC4364は、低電圧バッテリなどの入力低電圧状態をUVピンを使用して検出し、UVピンの電圧が1.25Vより低い場合はMOSFETをオフに保ちます。また、LTC4364は入力過電圧状態もモニタし、出力フォルト状態後の起動または再起動に備えてMOSFETをオフに保ちます。

電源投入時、100µs のパワーオンリセットディレイが経過する前か、UVピンの電圧が1.25Vより高くなる前にOVピンの電圧が1.25Vより高くなっている場合は、OVピンの電圧が1.25Vより低くなるまでMOSFETはオフのままです。この機能により、OVピンとUVピンに2つの異なる抵抗分割器および適切なフィルタリング・コンデンサを使用することで、過電圧の電源に基板が差し込まれた場合に起動を阻止することができます(図6)。

図6.入力のUVモニタとOVモニタを構成すると、過電圧状態での起動を阻止できます。

図6.入力のUVモニタとOVモニタを構成すると、過電圧状態での起動を阻止できます。

起動後、通常の状態になった後で入力過電圧状態になってもMOSFETはオフしませんが、出力フォルト後の自動再試行は阻止されます。OVピンの電圧が1.25Vより高い場合にフォルト後の冷却タイマ・サイクルが終了すると、MOSFETは入力過電圧状態が解消されるまでオフのままです。

理想ダイオードによるわずかな電圧降下による逆入力保護および低電圧保護

逆入力から保護するため、電子システムの電力経路には逆流防止用ショットキ・ダイオードが組み込まれることがよくあります。このダイオードは電力を消費するだけでなく、負荷回路に供給できる動作電圧も低下させます。特に、自動車のコールド・クランク状態時など、低入力電圧の場合に顕著です。LTC4364では、DGATEピンを組み込んで、逆方向に接続された第2のMOSFET(図2のM2)を駆動することにより、従来の逆流防止用ショットキ・ダイオードとその電圧損失および電力損失を回避します。

通常の動作状態では、LTC4364は順方向の電圧降下(M2のVDS)をわずか30mVに安定化します。負荷電流が十分に大きく、30mVの順方向電圧降下より大きくなると、M2は完全な導通状態に駆動され、そのVDS はRDS(ON) • ILOAD に等しくなります。

入力短絡または電源の故障が発生した場合は、逆電流が一時的にM2に流れます。LTC4364は逆電圧降下を検出し、M2を直ちにオフにして出力平滑コンデンサの放電を最小限に抑え、出力電圧を保持します。12Vの入力電源をグランドに短絡した場合の結果を図7a に示します。LTC4364は、DGATEピンを“L” にして逆電流の経路を遮断し、出力電圧が保持されるようにすることで、この状況に対応します。

図7.LTC4364の入力保護:a.入力短絡または入力電圧の低下が発生すると、DGATEピンは“L”になり、理想ダイオードのMOSFETをシャットダウンして出力電圧を保持します。b.逆入力状態では、DGATEピンの電圧がSOURCEピンの電圧まで低下し、理想ダイオードのMOSFETはオフに維持されて逆給電が遮断されます。

図7.LTC4364の入力保護:a.入力短絡または入力電圧の低下が発生すると、DGATEピンは“L”になり、理想ダイオードのMOSFETをシャットダウンして出力電圧を保持します。b.逆入力状態では、DGATEピンの電圧がSOURCEピンの電圧まで低下し、理想ダイオードのMOSFETはオフに維持されて逆給電が遮断されます。

逆バッテリ接続の場合、LTC4364 は外付け部品不要でDGATEピンを( 入力に追従する)SOURCEピンに短絡し、M2をオフ状態に維持して、図7bに示すように負荷回路を入力から切り離します。VCCSHDN、UV、OV、HGATE、SOURCE、DGATE のすべてのピンは、GND電位より最大で100V高い電位と40V低い電位に耐えることができます。

内蔵の出力ポート保護回路

図8に示すように出力をコネクタに接続している場合は、過電圧、短絡、または逆電圧が生じる可能性があります。LTC4364は、以下に示すように、いくつかの機能によってこれらの状態から負荷回路と入力電源を保護します。

  • 入力より電圧が高い電源に出力ポートが差し込まれた場合は、図9aに示すように理想ダイオードであるMOSFET M2がオフになり、逆給電経路が遮断されます。
  • 出力ポートがグランドに短絡すると、HGATEピンの制御により、まず順方向電流が電流制限値に安定化され、その後フォルト状態がタイムアウトになるとMOSFET M1がオフになります。
  • 出力ポートに逆電源が印加された場合は、OUTピンの電圧がGND電位より低くなると、LTC4364 はパスMOSFET M1をオフにして、順方向の導通電流経路を遮断し、入力でバッテリが消耗しないようにします。
図8.LTC4364は、過電圧、短絡、または逆電圧に対する出力ポート保護回路を内蔵しています。

図8.LTC4364は、過電圧、短絡、または逆電圧に対する出力ポート保護回路を内蔵しています。

図9.LTC4364の出力ポート保護:a.出力電圧が入力電圧より高い状態を強制されると、DGATEピンは“L”になり、逆給電は遮断されます。b.出力をGND電位より強制的に低くすると、HGATEピンの電圧はSOURCEピンの電圧まで低下し、順方向の導通が遮断されて、入力でのバッテリの電力が節減されます。

図9.LTC4364の出力ポート保護:a.出力電圧が入力電圧より高い状態を強制されると、DGATEピンは“L”になり、逆給電は遮断されます。b.出力をGND電位より強制的に低くすると、HGATEピンの電圧はSOURCEピンの電圧まで低下し、順方向の導通が遮断されて、入力でのバッテリの電力が節減されます。

–12Vの電源を出力に印加した場合の結果を図9bに示します。LTC4364は、HGATEピンを(出力に追従する)SOURCEピンに直ちに短絡し、MOSFET M1をオフにして、入力電源が障害状態の出力から切り離されるようにします。

LTC4364のOUTピンとSENSEピンは、GND電位より最大で100V高い電圧と20V低い電圧に耐えることができます。出力ポートの電位が強制的にグランドより低くなる可能性があるアプリケーションでは、適正な電圧定格を持つセラミックのバイパス・コンデンサを出力に使用して、電圧および電流制限ループを安定化し、入力トランジェントの容量性の貫通を最小限に抑えるようにします(図8参照)。漏れ電流の少ないダイオード(図8のD2)を使用して、FBピンを保護してください。

まとめ

LTC4364は、電圧および電流を制限して安定化し、(100Vを超えるものを含む)危険な過電圧から、損傷を受けやすい負荷回路を保護する小型で包括的なソリューションです。このデバイスは、自動車用システムや産業用システムで使用される従来からの大掛かりな保護回路に代わる、実装が容易で高性能の代替製品です。

LTC4364の一体化された理想ダイオード・ドライバは、入力短絡時、電源電圧低下時、または逆入力印加時に出力電圧を保持すると同時に、逆流防止用ダイオードに伴う電圧損失を低減します。出力がコネクタ側に接続されている場合は、内蔵の出力ポート保護が役立ちます。この機能セットは、入力のUVモニタとOVモニタおよび低電流シャットダウン・モードによって完了します。

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Zhizhong Hou

Zhizhong Hou is a Senior Design Engineer in Analog Devices’ Power Products Group in Santa Clara, CA. Since joining Linear Technology (now part of ADI) in 2003, he has designed and released a variety of power path ICs including hot swap controllers with telemetry, surge stopper with ideal diode, and high voltage power monitor. These products have found applications in telecommunication, industrial and automotive markets. Between 1999 and 2003 he designed analog and mixed-signal ICs with Texas Instruments and Xicor. He is the inventor or co-inventor of eight granted US patents.