電源設計におけるボーデ線図の活用法、動的制御の条件を満たすか否かを確認する

本稿では、ボーデ線図を利用して、電源の設計が動的制御の条件を満たしているか否かを短時間で確認する方法を紹介します。通常、電源回路は制御ループを利用して出力電圧を一定に維持します。その制御ループは、設計次第で安定している可能性もあれば不安定である可能性もあります。また、レギュレートの速度が速いことも遅いこともあるはずです。ほとんどの場合、制御ループの特性は、ボーデ線図を使用することにより把握することが可能です。言い換えれば、その制御ループはどのくらい安定しているのか、レギュレートの速度はどのくらい速いのか遅いのかといったことを迅速に確認できます。

図1に示したのは、スイッチング・レギュレータ(DC/DCコンバータ)の回路例です。典型的な降圧トポロジの回路であり、高い入力電圧を基に低い出力電圧を生成します。この回路では、出力電圧VOUTをできるだけ厳密にレギュレートすることが目標になります。そのためには、FBピンを使用した帰還制御ループを利用します。この制御ループでは、VOUTの変化を検出します。その結果を踏まえ、できるだけ正確にVOUTを再調整するために、速やかに応答するよう回路を構成しなければなりません。入力電圧や負荷電流が変化した場合にも、出力電圧をすぐに再調整できるようにする必要があります。

図1. スイッチング・レギュレータの例。出力電圧をレギュレートするために、緑色の枠線で囲んだ制御ループを使用します。

図1. スイッチング・レギュレータの例。出力電圧をレギュレートするために、緑色の枠線で囲んだ制御ループを使用します。

図2に示したボーデ線図は、制御ループのゲインを表しています。この図からは、2つの重要な情報が得られます。まず、ゲインが1(つまり0dB)になる周波数を読み取ることができます。つまり、いわゆるクロスオーバー周波数を把握できます。図2の制御ループの場合、同周波数は80kHz付近にあるということがわかります。経験則から、この周波数が、DC/DCコンバータで使用するスイッチング周波数の1/10未満になるようにすべきです。これに反すると、回路の動作が不安定になります。2つ目の重要な情報は、ゲインの曲線の下の領域にあります。つまり、この関数の積分です。DCゲインとクロスオーバー周波数が高いほど、その制御ループは出力電圧を一定のレベルに維持しやすいと言えます。

図2. 制御ループのゲインを表すボーデ線図。ゲインは80kHz付近で0dBに達しています。

図2. 制御ループのゲインを表すボーデ線図。ゲインは80kHz付近で0dBに達しています。

図3に示したのは、制御ループの位相をプロットしたボーデ線図です。この曲線からは、最も重要な情報として位相余裕を読み取ることができます。位相余裕の値は、制御ループの安定性を表す重要な指標です。ゲインの曲線(図2)から得られるクロスオーバー周波数の位置で読み取った値が位相余裕になります。上述したように、図2からはクロスオーバー周波数が80kHzであることがわかります。図3において、この周波数の位置の値を読むと、位相余裕は約60°ということになります。位相余裕が約40°を下回る場合、その回路は不安定であると見なされます。この種の制御ループの場合、40°~70°の位相余裕が得られれば理想的だと言えます。この範囲に、レギュレーションの速度と安定性との間の適切な妥協点が存在します。位相余裕が70°よりも大きい場合、非常に安定なシステム動作が得られる傾向があります。但し、レギュレーションの速度はかなり遅くなります。

図3. 制御ループの位相を表すボーデ線図。位相余裕は約60°です。

図3. 制御ループの位相を表すボーデ線図。位相余裕は約60°です。

通常、DC/DCコンバータICやコントローラICのデータシートには、ボーデ線図は記載されていません。この特性は、電源回路全体の設計に大きく依存するからです。使用するスイッチング周波数、インダクタや出力コンデンサといった外付け部品の値、入力電圧/出力電圧、負荷電流などの要因が大きな影響を及ぼします。そのような理由から、多くの場合、ボーデ線図はLTpowerCAD®などの設計ツールやLTspice®などのシミュレーション・ツールを使用して取得されます。そうしたツールを利用すれば、設計中の回路が動的制御の条件を満たしているか否かを短時間で確認することができます。

Frederik Dostal

Frederik Dostal

Frederik Dostalは、ドイツのエアランゲン・ニュルンベルク大学でマイクロエレクトロニクスについて学びました。2001年にパワー・マネージメント事業の分野で働き始め、アリゾナ州フェニックスで4年間にわたってスイッチング電源を担当したほか、さまざまなアプリケーション分野の業務に携わってきました。2009年にADIに入社し、ミュンヘンのアナログ・デバイセズでパワー・マネージメントのフィールド・アプリケーション・エンジニアとして従事しています。