Ćukレギュレータのエミッションを最小限に抑制

Ćukトポロジは、正の電源電圧から負の出力電圧を生成するのに最適です。多くのシステムでは、特定センサーからの信号を有効に読み出せるようにするために、負の電圧が必要になります。このためには、例えば+5Vと−5V、場合によっては+15Vと−15Vを使ってシグナル・チェーンに電源を供給しなければならないことがあります。負の電圧は、シリコン・カーバイド(SiC)などの特定スイッチング素子を安全にスイッチングするために使われることもあります。

Ćukトポロジでは電源パスに2個のインダクタが必要なので、2L反転トポロジと呼ばれることもあります。Ćukトポロジの回路図を図1に示します。

図1 負の電圧を生成するĆukトポロジの回路図

図1 負の電圧を生成するĆukトポロジの回路図

適切なスイッチング・レギュレータICを選択する場合は、負電圧用の帰還ピン付きのものを選ぶことが重要です。アナログ・デバイセズは、スイッチを内蔵した適切なモノリシック・スイッチング・レギュレータICや、外付けのスイッチング・トランジスタを使用するコントローラICを多数揃えています。

何より、2個のインダクタが必要であるという事実は、コストとスペースに関する要素を示しています。しかし、これら2つの部品は、入力側と出力側両方のパワー・パスにインダクタンスを発生させます。これは、入力側だけでなく出力側でも急峻なスイッチング電流をを防ぐ役割を果たします。結果として、一般にĆukトポロジは、特にノイズの小さいトポロジと見なすことができます。もちろん、他のあらゆるスイッチング・レギュレータ同様、Ćukトポロジでもスイッチング電流が発生します。これらの電流を、ホット・ループとして図1に青で示します。ホット・ループという言葉は、遷移時のdi/dtが大きいパターンのグループを表します。スイッチング電流によって生じる干渉を最小限にするには、寄生インダクタンスと、それに伴うこのループの空間的広がりを、できるだけ小さくするように設計しなければなりません。

したがって、Ćukコンバータの最適なボード・レイアウトでは、フリーホイール・ダイオードD、カップリング・コンデンサC、およびスイッチS1を、互いにできるだけ近付けて配置する必要があります。LT8330などのICの対応ピン配置では、問題なくこれらのラインをコンパクトに配置することができます。実際のボード・レイアウトにおけるスイッチング電流のパワー・パス領域(ホット・ループ)を、図2に示します。

図2 Ćukトポロジ用に最適化されたボード・レイアウト

図2 Ćukトポロジ用に最適化されたボード・レイアウト

クリティカル・ループは、外付けダイオードD、カップリング・コンデンサC、およびLT8330スイッチング・レギュレータIC内部のGNDピンとSWピンの接続で構成されており、ホット・ループはできるだけ小さく、コンパクトになるように設計されています。

Ćukトポロジ用のレギュレータに適したLT8330を使用した回路の例を、図3に示します。ここで重要な特長はFBXピンです。このピンは特別なタイプのFBピンで、Ćukトポロジに必要な負電圧と、正電圧の両方を処理することができます。LT8330を昇圧トポロジやSEPICトポロジで使用する場合は、正極性の帰還ピンが必要です。

図3 LT8330を使用したĆukレギュレータの回路例

図3 LT8330を使用したĆukレギュレータの回路例

レギュレータの入力側と出力側のインダクタンスは、共にそのレギュレータに発生する伝導エミッションの大きさに影響します。ホット・ループをコンパクトに抑えて最適化されたボード・レイアウトを実現できれば、非常にノイズの小さいソリューションが得られます。これらの特長により、Ćukレギュレータは低ノイズの負電圧生成に極めて適しています。

Frederik Dostal

Frederik Dostal

Frederik Dostalは、ドイツのエアランゲン・ニュルンベルク大学でマイクロエレクトロニクスについて学びました。2001年にパワー・マネージメント事業の分野で働き始め、アリゾナ州フェニックスで4年間にわたってスイッチング電源を担当したほか、さまざまなアプリケーション分野の業務に携わってきました。2009年にADIに入社し、ミュンヘンのアナログ・デバイセズでパワー・マネージメントのフィールド・アプリケーション・エンジニアとして従事しています。