状態監視向けのMEMSソリューション、振動検出に最適なシステムを構築する

状態監視は、産業分野で最も大きな注目を集めている技術のひとつだと言えます。モータやジェネレータ、ギアを使用する機械系の設備や技術系のシステムの異常をいかに検出するかということが大きな課題になっているからです。的確な保守は、産業分野だけでなく、機械を使用するあらゆる分野において、ダウンタイムのリスクを最小限に抑えるためにますます重要になっています。保守の必要性の有無を判定するために使われているのが、機械の振動パターンを解析する手法です。通常、ギア・ボックスで生じる振動は、周波数領域で見ると軸速度(周波数)の倍数に当たる成分として観測されます。様々な周波数に不規則に現れる成分は、摩耗や不均衡、部品の緩みを表します。周波数の測定には、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)をベースとする加速度センサーがよく用いられます。その種のセンサーは、圧電センサーよりも高い分解能、優れたドリフト性能、高い感度、良好なS/R比を実現できるからです。また、DCに近い低周波の振動を検出できることも特徴の1つです。

本稿では、MEMS加速度センサーを使用した振動計測用のソリューションを紹介します。その特徴は、広帯域に対応し、直線性が高く、ノイズが小さいことです。MEMS加速度センサーとしては、アナログ・デバイセズの「ADXL1002」を使用します。このソリューションは、ベアリング(軸受)の解析やエンジンの監視のほか、最大±50gの広いダイナミック・レンジとDC~11kHzの周波数応答が求められる各種アプリケーションに適用できます。

図1に示したのが、その回路例です。ADXL1002のアナログ出力信号は、2極RCフィルタを通過した後、逐次比較型(SAR)のA/Dコンバータ(ADC)「AD4000」に入力されます。高度な信号処理を行うために、アナログ信号をデジタル・データに変換するということです。

図1. ADXL1002を使用して構成した回路の例

図1. ADXL1002を使用して構成した回路の例

ADXL1002は、高い周波数に対応可能な1軸のMEMS加速度センサーです。その出力信号の通過帯域は、センサーの共振周波数を超える広い領域となります。そのため、3dB帯域幅の外側の周波数も観測したいというニーズに対応できます。このような仕様を実現するために、ADXL1002の出力アンプは、70kHzの小信号帯域幅をサポートしています。また、同アンプは、最大100pFの容量性負荷を駆動することが可能です。100pF以上の負荷に対応させたい場合には、8kΩ以上の直列抵抗を追加します。

ADXL1002の出力アンプには、エイリアシング・ノイズなどを除去するためのフィルタを外付けする必要があります。その他のノイズの例としては、ADXL1002の内部クロック(200kHz)が結合することによって生じる内部ノイズが挙げられます。フィルタの帯域幅は、発生し得るノイズに応じて設定する必要があります。R1、R2、C1、C2として、図1に示す各値を採用した場合には、200kHzにおいて約84dBの減衰量が得られます。また、後段のADCのサンプリング・レートは、アンプの帯域幅(例えば32kHz)よりも高い値に設定するべきです。

ADXL1002の電源電圧とADCのリファレンスには、同じ電圧を供給しています。ADXL1002の出力アンプは、電源電圧とレシオメトリックな関係にあるからです。また、電源電圧(通常は外部のレギュレータから供給)の許容誤差と電圧の温度係数は加速度センサーとADCに影響を及ぼしますが、電源電圧とリファレンス電圧に関連する潜在的な誤差は相殺されます。

周波数応答

この加速度センサーの周波数応答は、システムにおける最も重要な特性だと言えます。図2に示すように、ADXL1002のゲインは2kHz~3kHzより高い周波数領域で増加します。共振周波数(11kHz)では、出力電圧に約12dB(4倍)のゲイン(ピーク値)が加わります。

図2. ADXL1002の周波数応答

図2. ADXL1002の周波数応答

ADXL1002は、計測範囲のオーバーシュート(オーバーレンジ)が発生した場合に、そのことを示すための出力(ORピン)を備えています。また、同製品が内蔵するモニタ機能は、大幅なオーバーレンジが発生した際に警告を発します。

実装時に機械的な面で考慮すべき事柄

加速度センサーを使用する場合には、適切に配置するよう特別な注意を払う必要があります。加速度センサーは、基板上の固定支持位置(基板のマウント個所)の近くに配置する必要があります。それによって、基板自体の振動を避けると共に、基板の非減衰振動によって生じる計測誤差を避けなければならないということです。このように配置することで、基板のすべての振動周波数は、加速度センサーの共振周波数よりも確実に高くなります。その結果、実質的に加速度センサーからそれらの振動は見えなくなります。センサーの近くに基板のマウント個所が複数存在することや、基板を厚くすることも、システムの共振がセンサーによる測定結果に及ぼす影響を低減することに寄与します。

まとめ

図1のように、MEMSベースの加速度センサーを使用する振動検出機能は、比較的簡単に構成できます。このような回路を使用することで、回転機械の状態監視でよく求められるDCから11kHzまでの振動検出が可能になります。

参考資料

回路ノート CN-0303「周波数応答補償付きのMEMS振動アナライザ」、Analog Devices、2016年9月

Thomas Brand

Thomas Brand

Thomas Brand。2015年、修士論文作成の一環で、ミュンヘンのアナログ・デバイセズでのキャリアを開始。卒業後、アナログ・デバイセズのトレイニー・プログラムを受講。2017年、フィールド・アプリケーション・エンジニアとなる。中央ヨーロッパの産業分野の大型顧客をサポートすると共に、工業用イーサネットの分野を専門とする。モースバッハ産学連携州立大学で電気工学を専攻後、コンスタンツ応用科学大学で国際セールスの修士課程を修了。