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再生可能エネルギー向けの蓄電システム、より先進的なスマート・グリッドに向けて


集中管理型のグリッド(電力網)は、電力の生成源、高圧送電線、低圧送電線から成るネットワークとして構築されます。長距離にわたる送電を実現することで、日々の暮らしや経済を支える生命線として機能しています。

世界はますます電力に依存するようになってきました。そうしたなか、老朽化した送電網にかかるストレスや負担が大きな懸念事項になっています。また、従来にも増して、ピーク時の電力使用量が急増するようにもなってきました。インドやアフリカといった国/地域では、容量不足やインフラの障害によって電圧が低下するという現象が頻繁に起きています1

蓄電システム(ESS:Energy Storage System)を採用すれば、風力や太陽光といった再生可能エネルギーを基に生成した電力を貯蔵することができます。その電力を利用すれば、より安定性の高いグリッドを構築することが可能になります。一般に、再生可能エネルギーを利用する発電には、電力源に間欠性が伴うという問題が存在します。ESSを利用すれば、その問題を軽減することができます。言い換えると、これまで風力発電や太陽光発電の普及を阻んできた障壁を取り除くことが可能になるということです。その結果、電気自動車(EV)の充電、ビル/病院/学校への電力供給など、あらゆる用途でいつでも電力を利用できるようになります。また、ESSを使えば、ピーク時のグリッドの負担を軽減することができます。それだけでなく、グリッドに対する過負荷やグリッドの崩壊といったリスクを回避し、既存のインフラを維持することが可能になります。

ESSを利用すれば、従来からの発電/送電システムに、再生可能エネルギーを使用する発電システムを効果的に統合することができます。

Conor Power

アナログ・デバイセズ オートメーション/エネルギー・グループ エネルギー担当ディレクタ

EVに代表されるように、今後、電動化の技術が広く普及すると予想されています。それに伴い、蓄電やESSに対する注目も世界的に高まっています。ESSは、EVの成長を支える存在です。それだけでなく、バッテリの二次利用先となる主要なアプリケーションとしても注目されています。

Recycle

リサイクル

EVのライフサイクルが終わっても、バッテリにはまだ利用価値があります。

Refabricate

再製品化

使用済みのバッテリ・モジュールをテストした後、再度組み立てを行います。

Reuse

再利用

バッテリ・モジュールを定置型のESSに組み込みます。

Resell

再販売

再構築した大型バッテリからの電力を、グリッドの安定化などのために使用します。

持続可能なエネルギー利用を支える

通常、再生可能エネルギーを使用した発電システムは分散型で構築されます。また、得られる電力量が変動するという特徴があります。ESSは、そうした電力を取得して貯蔵する役割を果たします。このことは、環境に対するメリットにつながります。それだけでなく、先進国、開発途上国を問わず、電動化による経済活動が促進され、人々の生活を維持できるというメリットがもたらされます。ESSを利用すれば、需要の少ないときにエネルギーを蓄えておき、需要が多いときにそれを使用するということが行えます。化石燃料を使用する発電所は大気汚染の原因になります。ESSを活用すれば、そうした発電所を新設したり、送電線を延長したりするための何兆ドルもの投資を回避しつつ、将来にわたってグリッドを運用することができます。

未来の電力利用を支える再生可能エネルギー

再生可能エネルギーによる発電量は、2017年には世界の電力消費量の18.1%、2018年には26%を占めていました。エネルギー源の内訳は、7.5%が従来のバイオマス、4.2%が熱エネルギー(非バイオマス)、1%が運輸向けのバイオ燃料、3.6%が水力、2%が風力、太陽光、バイオマス、地熱、海洋となっています2

将来にわたって持続可能なグリッドを実現するために、変動を伴う再生可能エネルギー源を統合する動きが加速しています。それに伴い、グリッドのレジリエンス(弾力性、回復力)を最大化することを可能にするESSの採用が加速しています。蓄電の市場は、EVなどの電動化技術の普及に支えられ、今後数十年の間に急成長すると見られています。また、今後20年の間に、エネルギー貯蔵に向けた投資額は6200億米ドル(約65兆円)も急増すると期待されています3

65%
2030年までにグリッドに追加される蓄電容量のうち、変動を伴う再生可能エネルギー源を統合するために使用される割合

2030年までにグリッドに追加される蓄電容量のうち、65%は変動を伴う再生可能エネルギー源を統合するために使用されると予想されています。また、様々なグリッド・サービスを提供するために、30%が住宅、商業施設、産業施設向けに、5%がEV用のインフラ向けに使用される見込みです。


蓄電市場の成長予測4

  • 蓄電市場は、2020年から2025年までの間に24%の年平均成長率(CAGR)で拡大すると予想されています
  • 蓄電市場においては、住宅の分野が最大のシェアを占めると期待されています。
  • 最も急速に成長する市場は中東、アフリカで、最大の市場はアジア太平洋地域になる見込みです。

電動化、蓄電、EVに関する予測5

  • 世界の発電量は急増し、2050年には再生可能エネルギーによる発電がその80%を占めると予想されています。
  • 現在、世界の蓄電容量は650GWhです。それが31TWhまで拡大し、バッテリによる供給電力が最大の割合を占めるようになると見られています。
  • 電力需要を最も引き上げるのはEVです。その値は、2017年の0.3PWhから2050年には9.1PWhまで拡大すると推定されます。

分散型グリッドへの道

City Skyline at Dusk
太陽光や風力などの再生可能エネルギー源を基に、分散型の発電システムを使用してクリーンな電力を生成している消費者は、余った電力をグリッドに送出することができます。

分散型のエネルギー・ネットワークを構築するためには、多くの障壁を打破する必要があります。経済的な意味での規模の小ささと、再生可能エネルギー技術にかかるコストは、局所的な太陽光発電所、小規模の風力発電所、バッテリによる蓄電設備の利用が広まった結果、ここ10年の間に大きく改善されました。

アナログ・デバイセズのエネルギー/産業用システム部門でゼネラル・マネージャを務めるMario Battelloは、「グリッドは、集中管理型の発電所をベースとするものから、再生可能エネルギー源を使用する分散型のものへと変貌しつつあります。それにより、蓄電に関連する大きなビジネス・チャンスが生まれています」と説明します。蓄電には、メータ前(front of the meter)、メータ後(behind the meter)という2つの形態が存在します。メータ前の蓄電というのは、グリッド・スケール蓄電として知られるものです。これは、大手発電事業者向けに設計されます。一方のメータ後の蓄電は、住宅地の所有者や事業者が、敷地内に設置する様々な蓄電用の選択肢から利用するものです。2019年に、ビジネス・サービス会社のLloyd's Register Groupは、「再生可能エネルギーを使用する分散型システムで生成した電力は、2025年までにグリッドからの電力よりも安くなる」との予測を示しました6

同時多発的な困難が絶好の機会を生み出す

現在は電動化に関連する環境が急速に変化している状況にあります。また、蓄電市場は比較的未成熟な段階にあります。先見性のあるグローバルな蓄電関連の企業は、先駆者としてESSの分野に参入し、需要を拡大して大きな市場シェアを獲得することで、業界のリーダーになろうとしています。そうした企業は同時多発的な困難に直面しているとも言えます。

この課題に対応するために、あるESS企業(以下、X社と呼ぶことにします)はアナログ・デバイセズとパートナーシップを結ぶことにしました。X社は、ハードウェア・システムに関する当社の広範な専門知識、業界をリードするバッテリ管理システム(BMS:Battery Management System)技術、高い評価を得ている総合的なオンサイトのサポートを活用したいと考えたのです。何よりも、X社は、革新的な次世代のESSソリューションを提供するために、リーダーシップについてのビジョンを共有でき、妥協を許さない意欲を備えた協力者を必要としていました。X社とアナログ・デバイセズは共同で、機能安全の認証を取得済みの高精度/高性能なESSを迅速に開発し、製品化することになりました。

概要

事業内容

エネルギーの生成、伝送、利用の未来を実現するESS企業。グローバル市場におけるパイオニアであり、電気化学、パワー・エレクトロニクス、システム・インテグレーションに関する専門知識を融合して、手頃な価格のESSを開発している。

アプリケーション分野

住宅用/産業用のESSや、再生可能エネルギーを利用する用途向けのESS。

課題

既存のグリッドのインフラを費用対効果に優れた効率的な方法でアップグレードし、電力に対する将来のニーズに対応できるようにする。認証を取得した高精度のESSソリューションを開発し、製造に移行する準備を整える。アプリケーション開発のサポート、市場投入までにかかる時間の短縮、収益を生み出すまでの時間の短縮という重要な要件を満たすために支援してくれるパートナーを見いだす。

目標

BMS向けの最良のソフトウェアと高品質のESS製品の開発に集中することで、市場における差別化を実現し、業界のリーダーとしての地位を確立する。

Battery Room in Power Plant

2013年以来、X社はグローバルなESS企業として事業を行ってきました。住宅用/商業用のESSや、規模の大きいグリッドタイのESSによるエネルギーの生成、伝送、利用を実現し、2GWhに対応するESSを世界中に供給しています。特筆すべきは、バッテリの正極材料や、バッテリ・セル、BMSを自社開発できる技術を有していることです。同社は、LiFePO4(リン酸鉄リチウム)バッテリのトップ・メーカーでもあり、オフグリッド電源用のバッテリと充電器も供給しています。

協業によって、優れた製品を創り出す

長年にわたる協業に基づき、2018年に、アナログ・デバイセズとX社は機能安全の認証を取得済みのESSを迅速に製品化するプロジェクトに着手しました。アナログ・デバイセズのオートメーション/エネルギー・グループ エネルギー担当ディレクタを務めるConor Powerは「X社にとっては、許容されるコストで高性能を実現することが課題の1つでした。それに加え、市場投入までの時間と収益を生み出すまでの時間を短縮することも課題になっていました」と述べています。その上で、「X社が求めていたのは、単なる部品ではなく、システムの統合、消費電力の削減、完全なシステム・ソリューションの設計に関する支援や助言を提供してくれるパートナーだったのです」と説明します。

アナログ・デバイセズの目標は、エンジニアリング領域における最も難易度の高い課題を解決し、知見を共有することで、パートナーやお客様が適切なソリューションを設計できるよう支援する技術を生み出すことです。それらを自由に使えるようにし、人間の潜在能力を活かしながら、世界中の人々に力を提供したいと考えています。この目標は、半世紀以上もの間、変わっていません。

X社は、競合他社がひしめく加熱した環境にいました。市場で成功を収めるには、X社のソリューションを競合他社の製品よりも優れたものとして明確に差別化できるようにする必要がありました。X社は、自社の中核的な強みであるソフトウェアと、卓越した精度を備えるアナログ・デバイセズのBMSを活用することにしました。

BMSの精度が違いを生む

アナログ・デバイセズのPowerは、「当社のBMS技術を使用して精度を高めることにより、1回の充電による航続距離を15%~20%延ばしつつ、バッテリの寿命を延伸することができます」と述べています。その上で、「充電に関連する要素の測定精度が高ければ、バッテリの保証期間の延長にもつながります。何百万ドルものコストがかかる大規模なESSでは、かなりの金額を節約できることになります」と語ります。

アナログ・デバイセズの専任フィールド・アプリケーション・エンジニア(FAE)のチームは、ハードウェア・システムに関する広範な専門知識と業界をリードするBMS技術を活用し、ソフトウェアに関する知識を有するX社と密に連携して作業を進めました。当社はバッテリ・モニタIC「LTC6813」を提供し、バッテリ・セルの監視/計測を行って電圧と電流に関する正確な情報が得られるようにしました。Battelloは、「LTC6813は、現在市場で最も高い精度を誇る製品です」と述べています。「これを使用することにより、X社の技術者はマイクロコントローラを活用し、バッテリのSoC(State of Charge)やSoH(State of Health)を極めて高い精度で計算できるようになります」(Battello)。

Electric Car Charging at Public Station

バッテリの正確な放電率を特定し、EVの航続距離を延ばすためには、より精度の高いBMSを使用しなければなりません。あとどれだけの距離を走行できるのか判断するには、どれだけの電力が残っているのかということを正確に把握する必要があります。また、バッテリをどの程度充電すればよいのか、どの時点で放電を停止すればよいのか把握するのは非常に重要なことです。さもなければ、バッテリの性能が損なわれたり、バッテリが損傷してしまったりするかもしれません。Powerは、「測定精度が高ければ、そうでない場合と比べてEVのバッテリの寿命を確実に延ばすことができます。住宅用や商業用の蓄電システムについても同じことが言えます」と語ります。

「FAEの同席」が成功の秘訣

アナログ・デバイセズのFAEは、X社の技術者と同席し、共同でリファレンス設計を完成させました。Battelloは、「当社の場合、システム・レベルでリファレンス設計を構築します」と述べています。X社には、2種類のIC、BMS、絶縁通信チャンネルが提供されました。アナログ・デバイセズのPowerは、「当社の競合企業の場合、お客様と共に現場で作業を行うことはありません。彼らの評価プロセスは、評価を行うために設計されています。言い換えれば、ソリューションを提供することが目的になっているわけではありません。それに対し、当社は最終的なソリューションを実現することを目指しています。BMSに関する案件については、当社のFAEチームから同様のサポートが提供されます」と語ります。

X社は改良を重ねながら、競合他社のソリューションよりも低コストで、より高いシステム精度とより優れた機能を提供するESSを開発しました。その結果、ESSからの電力とグリッドからの電力を同時に利用し、堅牢性が高く高速に充電できる高エネルギー対応の蓄電ソリューションを実現することができました。

Worker in Energy Storage Area

複雑でありながら、シンプルに使用できる製品群

Battelloは、「アナログ・デバイセズのBMS製品は、チップ内に複雑な回路を内蔵しています。しかし、当社からのサポートが得られることから、お客様が設計に組み込むのは難しくありません」と述べています。「X社は、LTC6813に加えて絶縁型通信インターフェースである『LTC6820』を採用してESSの量産を開始しました。その後も常に当社と連絡を取り合い、自社製品に当社の新たな製品を適用することで競合他社の先を行けるかどうかを確認しています」(Battello)。現在、X社と当社は、新世代の設計について議論を進めています。

House with Solar Panels in Summer

協業のメリット――市場投入までの時間を短縮できる

X社は、単なる部品メーカーの枠をはるかに超える当社をパートナーとして選択しました。つまり、システム・レベルの広範な知識や、深い専門知識、ESSに関する非常に重要な経験/知見を有する、信頼できる協力者に巡りあえたということです。

アナログ・デバイセズは専門家レベルのFAEをX社に派遣し、技術サポートを提供しました。また、BMS、電源、監視システム用の製品を供給し、高い精度/性能/信頼性を実現しました。それだけでなく、市場投入のタイミングが非常に重要な意味を持つという条件の下、開発期間の短縮という課題にも対応したのです。その結果、X社は、加熱する市場において新規の顧客を獲得すると共に、収益の創出までの時間を短縮することができました。

「ESSは、グリッドのレジリエンス、効率、持続可能性を高め、コストの削減を実現します。その結果、より良い世界がもたらされます。」

Energy Storage Association

人と地球をより健康に

エネルギーに対する需要と消費者の役割は変化し続けています。その変化は、環境破壊の原因となる化石燃料を使用する世界から、よりクリーンで持続可能なエネルギーを利用する電動化された世界へ移行するまでの準備段階に生じるものです。ESSのソリューションは、世界中に電力を供給する上で、より重要な役目を果たすようになるでしょう。

ESSを利用することにより、高い効率でグリッドに再生可能エネルギー源を接続することが可能になります。言い換えると、ESSは再生可能エネルギーが従来よりもはるかに大きな規模で利用されるよう促進する役割を果たします。また、グリッドの既存のインフラを高い費用対効果でアップグレードすることが可能なので、何兆ドルといったレベルでコストを削減できるようになるかもしれません。

Solar Panel Fields on Green Hills

電動化を進める原動力としては、EVの普及が挙げられます。これを阻害する障壁は、相変わらずコスト、航続距離、充電時間です。しかし、障壁のうち1つは排除されました。アナログ・デバイセズとX社のパートナーシップにより、高速な充電装置が実現されたからです。高精度かつ安全で、費用対効果に優れたESSソリューションを開発することで、この重大な障壁が取り除かれたということです。両社は、エネルギーの自給、より持続可能性が高い電動化された未来、より健全な環境/生態系への道を切り開いています。




1 Quratz Africa「The cost of electricity shortages in Africa is more than just a problem of access(アフリカにおける電力不足の問題は、グリッドへの接続だけでは解消しない)2018年10月21日

2 Renewable Energy Policy Network for the 21st Century(21世紀の自然エネルギー政策ネットワーク)

3 Environmental Defense Fund「Energy storage market booms, with more growth to come(蓄電市場が急成長、さらに拡大の見込み)

4 Mordor Intelligence「Energy Storage Market - Growth, Trends, and Forecast (2020 - 2025)(蓄電市場――その成長、トレンド、予測(2020年~2025年))」

5 DVN-GL 「Energy Transition Outlook 2019, Power Supply and Use report(エネルギー推移の展望 2019年、電力の供給と利用に関する報告)」

6 Raconteur「Moving Towards a Decentralized Grid(分散型グリッドへの移行)」2019年