要約
ディスプレイのバックライトや他の照明アプリケーション用に白色LEDを利用するにあたって、これらを定電流で駆動するのには、以下の2つの理由があります。
- 絶対最大定格電流に違反して、信頼性を損ねることを避けるため
- 各LEDから、予測可能な整合された光度と色度を得るため
ランダムに選択した6つの白色LED (製造業者2社から各3つ)の順方向電流対順方向電圧を図1に示します。このケースでは、3.4Vでこれら6つのLEDを駆動すると、それぞれのLEDに応じて順方向電流が10mA~44mAの間で変動します。
図1. ランダムな6つの白色LED (主要な製造業者2社から各3つ)の順方向電流対順方向電圧。いずれの電圧でも、順方向電流が大幅に変動しているのがわかります。例えば、3.4Vでは、10mAから44mAまで変動します。
信頼性のため、LEDの絶対最大定格電流を超過しないことが重要です。標準値は、最大30mA (絶対最大定格)とされていますが、図2に示すとおり、周囲温度の上昇に対処するために、最大電流の定格は下げられています。一般的に、最大50℃で使用できるように、電流は20mAに制限します。図1と図2の情報を組み合わせると、定電圧で白色LEDを駆動することが、信頼性あるソリューションでないことは明白です。
図2. 白色LEDの絶対最大順方向電流は、通常、周囲温度の上昇により定格が下がります(Nichia Corporation提供)。
また、重要なことですが、白色LEDを定電流で駆動することで、白色LEDの光度と色度(色)をテストして、最適に制御できることがわかります。標準的な白色LEDの仕様を図3に示します。
図3. 標準の白色LEDについて、すべての電気仕様をIF = 20mAでテストしています。したがって、整合されて予想可能な光度と色度(色)を得るには、定電流での駆動をお勧めします(Nichia Corporation提供)。
図4は、白色LEDを駆動する4つの一般的な電源回路を示しています。図5は、ランダムに選択した6つのLEDを調整した場合の対応するレギュレーションの精度を示しています。図5では、レギュレータの出力負荷ライン特性をLEDのVf曲線の上にプロットしています。ラインの交差点が、各LEDのレギュレーションのポイントになります。
図4. 白色LEDは通常、(a)電圧源と安定抵抗器、(b)電流源と安定抵抗器、(c)複数の電流源、及び(d) LEDを直列に接続した電流源の4つの方法で駆動されます。
図5. 白色LEDの順方向電圧(Vf)の変動は、レギュレーション方式に応じて、電流レギュレーションの精度に異なる影響を与えます。その方式とは、(a)電圧源と安定抵抗器、(b)電流源と安定抵抗器、及び(c)複数の電流源、またはLEDを直列に接続した電流源の3つです。ランダムに選択した6つの白色LED (ロットAから3つ、及びロットBから3つ)のVf曲線を示しています。レギュレータの出力負荷ライン曲線がLEDのVf曲線と交差している部分が、レギュレーションのポイントです。
図4aの回路は、電圧レギュレータと安定抵抗器を使用してLED電流を制御する方法を示しています。この手法の長所は、多種多様な電圧レギュレータをこの方法に適用できるということと、わずか1つの端子だけでレギュレータをLEDに接続できるということです。短所は、安定抵抗器内で電力が失われるために効率があまり良くないということと、LEDの順方向電流が正確に制御されないということです。図5aは、ランダムに選択した6つのLEDの電流が14.2mA~18.4mAの間で変動し、ブランドAがブランドBよりも平均で約2mA明るく動作していることを示しています。
図4bの回路は、LEDに供給される総電流を調整しますが、LED間の整合のために安定抵抗器が依然として使用されています。MAX1910は、このタイプの電流レギュレーションの一例です。この回路は、一つの製造業者のロット内ではLED間の整合が良くなるという事実、また変動のほとんどがロット間またはブランド間で生じるという事実を利用しています。このため、前記の回路と同様の電流制御を行いながら、安定抵抗器の値を減らして電力の消費を半分に低減することができます。図5bは、ランダムに選択した6つのLED内での電流が、15.4mA~19.6mAの間で変動することを示しています。ただし、ブランドAの変動はより少なく、ブランドA、Bとも同じ17.5mA/LEDの平均電流で動作しています。短所は、安定抵抗器内では依然としてかなりの電力損失があり、LEDの電流が完全には整合されないということです。しかしながら、この回路は、性能と単純化との間で優れた妥協点を示しています。
図4cの回路は、各LEDの個々の電流を調整し、安定抵抗器は必要としません。電流レギュレーションの精度と整合性は、個々の電流レギュレーションの精度によって制御されます。MAX1570は、このタイプの電流レギュレーションの一例で、2%の標準電流精度と0.3%の標準電流整合を実現します。電流レギュレータは、低ドロップアウトであるため、効率を非常に高くするこが可能です。図5cは、調整された電流が、ランダムに選択した6つの白色LEDのすべてについて一定の17.5mAであることを示しています。安定抵抗器がないので、基板スペースが節約されますが、レギュレータとLEDの間で4つの端子が必要です。このタイプの回路は、容易にインダクタベースのソリューションと競合できる高性能のソリューションとなります。
図4dの回路は、電流を調整するために構成された高効率のインダクタベースのブーストコンバータです。フィードバックのスレッショルドが低いため、電流検知抵抗器で消費される電力が最小限に抑えられます。LEDが直列に配置されるため、LEDの電流はどのような条件下でも完全に整合されます。電流の精度は、レギュレータのフィードバックスレッショルドの精度によって決まり、LEDの順方向電圧の変動に影響されません。MAX1848とMAX1561は、このタイプの電流レギュレーションの一例で、それぞれ87% (3つのLED)及び84% (6つのLED)の効率(PLED/PIN)を実現します。その他の長所として、抵抗とLED間の端子が2つだけであるということ、またLEDの直列配置は、特定のブーストコンバータが使用されることの影響を受けないので、設計者はより多くの柔軟性を得ることができます。短所としては、インダクタのサイズ(特に高さ)、コスト、及びEMI放射があります。